いつか雨が上がるように…
2002年9月26日昨夜、MIDIの話の後暫くして竜樹さんからメールが届いた。
「いつ退院してもいいねんて!今日友達が見舞いに来てくれたわ。28日の晩外泊するから、いつもの駅で待ち合わせしよう。友達が病院まで迎えにくるから、俺と霄と友達とで私の家に帰ることになるよ」
急な話にびっくりした。
竜樹さんの回復が早いのには目を見張ったけれど、これほどまでに退院の話が早い段階で出てくるなんて思わなかった。
「みんなでお祝いするんですね(*^_^*)
よかったです。
…何か用意しておくものはありますか?」
ただ思ってたよりも早く退院できそうだということが嬉しくて、お返事を飛ばす。
「ないよ。出前でも取ろう。詳細は未定。」
いやにあっさりとしたお返事にて終了。
気分良く眠りについた。
幾分いつもよりかは身体も重くなく、ひとまず今日1日頑張ろうと気力を起こして家を出た。
移動しながら定例の朝メールを飛ばし、ふと見ると封筒マークが飛び込んでくる。
…………………(/-\*)……
昨日私が投げかけた質問に対する答は、思いっきりテレるものだった。
ほっぺた赤くなってやしないだろうかと思いながら、竜樹さんに短い返事を返し、そのままメールを打ちつづける。
…明日竜樹さんが一時的にせよ竜樹邸に戻ってくるんだぁ(*^-^*)
その嬉しさひとつを抱えて、人外魔境に入ったけれど…
…しょっぱなから、バタバタ続きだった(>へ<)
ここ数ヶ月、午前中が忙しければ昼から静かな仕事の流れ、午前中が暇ならば昼から仕事がバタつくというのがお約束なので、「あぁ、これで昼からは大丈夫だろう」とタカを括っていたけれど…
…昼からも、こてんぱんにやられた
ぐったりした状態のまま、ただぼんやりと社屋を後にした。
意識が落ちそうになるのを必死で堪えて移動していると、携帯にメールがひとつ。
…私の小さな夢が死なない方向へ連れて行ってくれるようなやさしい風を感じながら、機嫌よく家路を急ぐ。
途中でふと思い出したことがあって、途中下車。
…今日は浜田麻里のライブのDVDの発売日。
今日買ったところでいつ見られるのかは判らないけれど、5月のあの日のことを思い返して元気になれるならいいなと思って即買い。
さらに機嫌よく家に帰った。
それでも異常なる眠気は覚めることなく、夕飯も食べずに寝てしまいそうになったけれど、それは「構ってー構ってー」と押しかけてくるプードルさんと「撫でれー、撫でれー」と擦り寄ってくる猫に阻止されて、辛うじて夕飯を摂るところまではこぎつけた。
…けれど、その後の記憶がない。
どうやら転寝していたらしく、携帯のメールの着信音で目が覚める。
「友達が病院まで来てくれるので、霄も14時には病院に来てほしい。頼むよ」
…………………………(゜д゜)………
…いきなり病院でご対面?
今まで竜樹さんサイドの人で会ったことがあるのは竜樹さんファミリーと竜樹さんのおばあちゃんくらい。
竜樹さんのご家族でない人と会うのは初めて。
最近人絡みでいろいろあったので、100%の前向きな気持ちで出かけていく気にはならないけれど、ほかならぬ竜樹さんが大事にしてる友達だもの。
迷いは完全に払拭できなくても、機嫌よい状態で出かけていきたいと思う。
あまりの急展開にびっくりして、すっかり目が覚めてしまった。
何となく眠れずに暫くパソコンの前で作業をしながらぼけっとしてると、窓の外からいきなり激しい雨音が聞こえる。
雨に触れると、竜樹さんの身体の具合が気になる。
手術が無事に済んだことで、過敏なくらいに心配する必要はなくなったんだろうとは思うけれど。
長い間、忌まわしいものとして認識されたものが、そう簡単によいものとして受け止められよう筈などないけれど…
…いつか雨音を聞いても、それが竜樹さんの不調の象徴として見なさなくても済むんだよね?
術後のめざましい回復力を目の当たりにしたじゃないか?
竜樹さんの回復と共に、いろんなことが動き出すのはごくごく当たり前のこと。
臆せず、気負わず目の前に現れるいろんなことをただ静かに受け止めよう。
そうすることで、私も竜樹さんも笑顔を取り戻せるのなら…
そんな風に前向きな意識に移行しようと思ってる間も雨脚は強まるばかり。
雨の記憶がようよう生み出したなけなしの前向きを折り曲げてしまいそうになるけれど。
…いつか雨が上がるように、いろんな迷いからも出ることはできるから
お夜寝して暫く起きてから再び寝なおすのはしんどいけれど、遅くまで起きて遅くまで寝ている訳にもいかないから、早く休もう。
十分に睡眠を取って、身体から元気を呼び戻そう。
いつか来る雨上がりの空を希いながら、また短い眠りについた。
「いつ退院してもいいねんて!今日友達が見舞いに来てくれたわ。28日の晩外泊するから、いつもの駅で待ち合わせしよう。友達が病院まで迎えにくるから、俺と霄と友達とで私の家に帰ることになるよ」
急な話にびっくりした。
竜樹さんの回復が早いのには目を見張ったけれど、これほどまでに退院の話が早い段階で出てくるなんて思わなかった。
「みんなでお祝いするんですね(*^_^*)
よかったです。
…何か用意しておくものはありますか?」
ただ思ってたよりも早く退院できそうだということが嬉しくて、お返事を飛ばす。
「ないよ。出前でも取ろう。詳細は未定。」
いやにあっさりとしたお返事にて終了。
気分良く眠りについた。
幾分いつもよりかは身体も重くなく、ひとまず今日1日頑張ろうと気力を起こして家を出た。
移動しながら定例の朝メールを飛ばし、ふと見ると封筒マークが飛び込んでくる。
…………………(/-\*)……
昨日私が投げかけた質問に対する答は、思いっきりテレるものだった。
ほっぺた赤くなってやしないだろうかと思いながら、竜樹さんに短い返事を返し、そのままメールを打ちつづける。
…明日竜樹さんが一時的にせよ竜樹邸に戻ってくるんだぁ(*^-^*)
その嬉しさひとつを抱えて、人外魔境に入ったけれど…
…しょっぱなから、バタバタ続きだった(>へ<)
ここ数ヶ月、午前中が忙しければ昼から静かな仕事の流れ、午前中が暇ならば昼から仕事がバタつくというのがお約束なので、「あぁ、これで昼からは大丈夫だろう」とタカを括っていたけれど…
…昼からも、こてんぱんにやられた
ぐったりした状態のまま、ただぼんやりと社屋を後にした。
意識が落ちそうになるのを必死で堪えて移動していると、携帯にメールがひとつ。
…私の小さな夢が死なない方向へ連れて行ってくれるようなやさしい風を感じながら、機嫌よく家路を急ぐ。
途中でふと思い出したことがあって、途中下車。
…今日は浜田麻里のライブのDVDの発売日。
今日買ったところでいつ見られるのかは判らないけれど、5月のあの日のことを思い返して元気になれるならいいなと思って即買い。
さらに機嫌よく家に帰った。
それでも異常なる眠気は覚めることなく、夕飯も食べずに寝てしまいそうになったけれど、それは「構ってー構ってー」と押しかけてくるプードルさんと「撫でれー、撫でれー」と擦り寄ってくる猫に阻止されて、辛うじて夕飯を摂るところまではこぎつけた。
…けれど、その後の記憶がない。
どうやら転寝していたらしく、携帯のメールの着信音で目が覚める。
「友達が病院まで来てくれるので、霄も14時には病院に来てほしい。頼むよ」
…………………………(゜д゜)………
…いきなり病院でご対面?
今まで竜樹さんサイドの人で会ったことがあるのは竜樹さんファミリーと竜樹さんのおばあちゃんくらい。
竜樹さんのご家族でない人と会うのは初めて。
最近人絡みでいろいろあったので、100%の前向きな気持ちで出かけていく気にはならないけれど、ほかならぬ竜樹さんが大事にしてる友達だもの。
迷いは完全に払拭できなくても、機嫌よい状態で出かけていきたいと思う。
あまりの急展開にびっくりして、すっかり目が覚めてしまった。
何となく眠れずに暫くパソコンの前で作業をしながらぼけっとしてると、窓の外からいきなり激しい雨音が聞こえる。
雨に触れると、竜樹さんの身体の具合が気になる。
手術が無事に済んだことで、過敏なくらいに心配する必要はなくなったんだろうとは思うけれど。
長い間、忌まわしいものとして認識されたものが、そう簡単によいものとして受け止められよう筈などないけれど…
…いつか雨音を聞いても、それが竜樹さんの不調の象徴として見なさなくても済むんだよね?
術後のめざましい回復力を目の当たりにしたじゃないか?
竜樹さんの回復と共に、いろんなことが動き出すのはごくごく当たり前のこと。
臆せず、気負わず目の前に現れるいろんなことをただ静かに受け止めよう。
そうすることで、私も竜樹さんも笑顔を取り戻せるのなら…
そんな風に前向きな意識に移行しようと思ってる間も雨脚は強まるばかり。
雨の記憶がようよう生み出したなけなしの前向きを折り曲げてしまいそうになるけれど。
…いつか雨が上がるように、いろんな迷いからも出ることはできるから
お夜寝して暫く起きてから再び寝なおすのはしんどいけれど、遅くまで起きて遅くまで寝ている訳にもいかないから、早く休もう。
十分に睡眠を取って、身体から元気を呼び戻そう。
いつか来る雨上がりの空を希いながら、また短い眠りについた。
想いの柱
2002年9月25日短い睡眠をとり、起きて昨日の晩できなかった作業を片した。
人間眠ると気持ちの中にあるものはある程度リセットされるものだとよくボスが口にしていたけれど、心は相変わらずすっきりしないまま。
心も身体もここに来て、疲労感が累積される一方で少しも休まった感じがしない。
竜樹さんの手術が終わったこと。
竜樹さんは無事に戻ってきた上に、身体の具合は以前よりも格段によくなっていること。
ひとつの山を越えた時、目の前に広がるものがいいものばかりだったから、少し気が抜けてしまったのかもしれない。
本当に大変なのはこれからだというのに、妙な疲れが体中に広がっている。
病院に行って竜樹さんの身の回りの手伝いが出来ることは嬉しいこと。
役に立てることが多ければ多いほど頑張ろうという気になるし、会社帰りで疲れていても竜樹さんの笑顔があればまた頑張れる気がするから。
けれど、それと同時に病院に行くともれなくついてくるのは、過剰な気遣い。
竜樹さんに対してもだけど、彼を周りにいる人達に対して。
何処へ行っても気遣いが必要なのはごくごく当然なのだけれど、拾い上げるアンテナを少々過敏にしとかないと感情の部分に障る言葉を撒き散らす可能性がある。
本人にそのつもりがなくても、受け取り手が必ずしもよいようには解釈しない。
それがとりわけきついところに竜樹さんはいらっしゃるから。
消耗感が強く出てる時は、敢えて病院には出向かない方がいいかもしれない。
竜樹さんも具合がよくなってきてるとはいえ、決して安定してる訳でもない。
竜樹さんから元気を吸い上げてるようじゃ、お話にならない。
一度固めて休養を取って、竜樹さんの要請があるまで行かない方がいいかもしれない。
そんなことを考えながら、会社へ向かった。
仕事を始めると、トラブル続出でまた滅入っていく。
滅入って立て直して問題解決すると、またトラブル発生。
自分の事情はここでは関係ないと知りながら、正直「もう勘弁してくれよ」という気分にもなる。
しょっぱなからのトラブル続きで消耗し尽くしたところに、先輩の足止め攻撃。
午前中だけですっかり疲れてしまった。
幸い、昼からは仕事の流れが格段に穏やかになり、簡単な雑用を片しながらぼんやりと自分の中で散らばってるものを整理してみた。
ちょうど今日あげようとしていた日記の内容を思い返しながら、3分の2ヶ月ほど遅れてる日と今の状況が何となく被ってる感じがして、何だか妙な感じがした。
更新作業がぐずぐず状態だから、たまたま似たような情況に出くわしてるだけだと思うけど…(^-^;
それがバイオリズム重なるよな質のものなら、まずは自分の気持ちを整理してみるところから始めて、竜樹さんの状態を見ながらゆっくり詰めていったらいい。
いつも小器用には出来なかったけれど、どうにかこうにかしながら歩いてきたんだもの。
竜樹さんの状態を見ながら詰めればいいや。
体中を埋め尽くしてる疲労感が取れてる訳ではないけれど、上向きな兆しを少しだけ見出した状態で家に帰った。
携帯にも他の場所にも、暖かな気持ちが届いた。
それはとてもありがたいこと。
人の想いが直接問題を解決する訳でなくても、誰かが判ろうとしてくれたことを握り締めているだけで、気持ちはうんと楽になるから。
ゆっくりとでも、自分の気持ちを見つめ直そうと思った。
自室に戻ってぼんやりしてると、携帯が鳴る。
…竜樹さんからだ。
構えなくてもよさそうなものなのに、咄嗟に構える自分が嫌になる。
「…はい」
「なぁ、霄ぁ。平井堅の曲ってネットでどやって拾うん?」
……………………………(゜д゜)………
惺さんと2人でネットをしてて、平井堅のMIDIか彼の歌自体をダウンロードした買ったらしい。
「検索かけて調べた?」と聞くと、沢山引っかかってきて訳がわからなくなったらしい。
ひとつひとつ開いてると何時になっても終わりそうにないので、困ったらしい。
ひとまずゾンビっちを開けて目鼻をつけてから連絡しなおすとだけ伝えて、一旦電話を切った。
…昨日のあの気まずさは何処へ行ったんだろう?
竜樹さんは何事もなかったように全然関係のない話をするために電話をしてくる。
私はというと、それを解決すべくゾンビっちと戯れる。
…あれほど悩んだことは、一体なんだったんだろう?
何一つとして解決した訳じゃないのに、さも解決してるかのように次から次へといろんなことが起こってはまた形を潜める。
自分を取り巻く想いや事象の変化にいささか首を捻りながら、竜樹さんの要求してるだろう答に辿り着く目鼻をつけ、また竜樹さんに電話をする。
竜樹さんは私の話を聞き、それをそのまま惺さんに伝えてる。
電話の向こうの惺さんは何となく楽しそうにしてはる感じ。
…正直、ちょっとほっとした。
結局、平井堅の曲自体をダウンロードするにはお金がかかることが判って、みんなして納得の上断念。
遠く離れた場所で3人でネットをしたということだけが残った。
警戒心を剥き出しにしても守りたいものがあった。
そんな感情を剥き出しにしてまで守ろうとする必要があったかどうかを突き詰めて考えると、未だに見えてこないものはあるけれど。
いつでも私が大切に思うのは竜樹さん。
想いのかけらを守りたかったのではなく、守りたいのはいつでも彼そのもの。
感情が漣立とうが凪いでいようが変わりないこと。
それが本当に不変かどうかは、私が一生かけて自ら証明するのだろうけど…
迷いの森の出口は見えそうで見えないけれど、はっきりしてるのは。
本当に大切なものはいつでも竜樹さんなのだと。
想いの柱はいつでも竜樹さんただ一人なのだと。
疲労感にどっぷり浸かってもなお、その柱だけは残っていたことが判った。
いろんなことの先行きが見えなくても、それだけで十分なのだと今は思う。
想いの柱が自分の中にありさえすれば…
人間眠ると気持ちの中にあるものはある程度リセットされるものだとよくボスが口にしていたけれど、心は相変わらずすっきりしないまま。
心も身体もここに来て、疲労感が累積される一方で少しも休まった感じがしない。
竜樹さんの手術が終わったこと。
竜樹さんは無事に戻ってきた上に、身体の具合は以前よりも格段によくなっていること。
ひとつの山を越えた時、目の前に広がるものがいいものばかりだったから、少し気が抜けてしまったのかもしれない。
本当に大変なのはこれからだというのに、妙な疲れが体中に広がっている。
病院に行って竜樹さんの身の回りの手伝いが出来ることは嬉しいこと。
役に立てることが多ければ多いほど頑張ろうという気になるし、会社帰りで疲れていても竜樹さんの笑顔があればまた頑張れる気がするから。
けれど、それと同時に病院に行くともれなくついてくるのは、過剰な気遣い。
竜樹さんに対してもだけど、彼を周りにいる人達に対して。
何処へ行っても気遣いが必要なのはごくごく当然なのだけれど、拾い上げるアンテナを少々過敏にしとかないと感情の部分に障る言葉を撒き散らす可能性がある。
本人にそのつもりがなくても、受け取り手が必ずしもよいようには解釈しない。
それがとりわけきついところに竜樹さんはいらっしゃるから。
消耗感が強く出てる時は、敢えて病院には出向かない方がいいかもしれない。
竜樹さんも具合がよくなってきてるとはいえ、決して安定してる訳でもない。
竜樹さんから元気を吸い上げてるようじゃ、お話にならない。
一度固めて休養を取って、竜樹さんの要請があるまで行かない方がいいかもしれない。
そんなことを考えながら、会社へ向かった。
仕事を始めると、トラブル続出でまた滅入っていく。
滅入って立て直して問題解決すると、またトラブル発生。
自分の事情はここでは関係ないと知りながら、正直「もう勘弁してくれよ」という気分にもなる。
しょっぱなからのトラブル続きで消耗し尽くしたところに、先輩の足止め攻撃。
午前中だけですっかり疲れてしまった。
幸い、昼からは仕事の流れが格段に穏やかになり、簡単な雑用を片しながらぼんやりと自分の中で散らばってるものを整理してみた。
ちょうど今日あげようとしていた日記の内容を思い返しながら、3分の2ヶ月ほど遅れてる日と今の状況が何となく被ってる感じがして、何だか妙な感じがした。
更新作業がぐずぐず状態だから、たまたま似たような情況に出くわしてるだけだと思うけど…(^-^;
それがバイオリズム重なるよな質のものなら、まずは自分の気持ちを整理してみるところから始めて、竜樹さんの状態を見ながらゆっくり詰めていったらいい。
いつも小器用には出来なかったけれど、どうにかこうにかしながら歩いてきたんだもの。
竜樹さんの状態を見ながら詰めればいいや。
体中を埋め尽くしてる疲労感が取れてる訳ではないけれど、上向きな兆しを少しだけ見出した状態で家に帰った。
携帯にも他の場所にも、暖かな気持ちが届いた。
それはとてもありがたいこと。
人の想いが直接問題を解決する訳でなくても、誰かが判ろうとしてくれたことを握り締めているだけで、気持ちはうんと楽になるから。
ゆっくりとでも、自分の気持ちを見つめ直そうと思った。
自室に戻ってぼんやりしてると、携帯が鳴る。
…竜樹さんからだ。
構えなくてもよさそうなものなのに、咄嗟に構える自分が嫌になる。
「…はい」
「なぁ、霄ぁ。平井堅の曲ってネットでどやって拾うん?」
……………………………(゜д゜)………
惺さんと2人でネットをしてて、平井堅のMIDIか彼の歌自体をダウンロードした買ったらしい。
「検索かけて調べた?」と聞くと、沢山引っかかってきて訳がわからなくなったらしい。
ひとつひとつ開いてると何時になっても終わりそうにないので、困ったらしい。
ひとまずゾンビっちを開けて目鼻をつけてから連絡しなおすとだけ伝えて、一旦電話を切った。
…昨日のあの気まずさは何処へ行ったんだろう?
竜樹さんは何事もなかったように全然関係のない話をするために電話をしてくる。
私はというと、それを解決すべくゾンビっちと戯れる。
…あれほど悩んだことは、一体なんだったんだろう?
何一つとして解決した訳じゃないのに、さも解決してるかのように次から次へといろんなことが起こってはまた形を潜める。
自分を取り巻く想いや事象の変化にいささか首を捻りながら、竜樹さんの要求してるだろう答に辿り着く目鼻をつけ、また竜樹さんに電話をする。
竜樹さんは私の話を聞き、それをそのまま惺さんに伝えてる。
電話の向こうの惺さんは何となく楽しそうにしてはる感じ。
…正直、ちょっとほっとした。
結局、平井堅の曲自体をダウンロードするにはお金がかかることが判って、みんなして納得の上断念。
遠く離れた場所で3人でネットをしたということだけが残った。
警戒心を剥き出しにしても守りたいものがあった。
そんな感情を剥き出しにしてまで守ろうとする必要があったかどうかを突き詰めて考えると、未だに見えてこないものはあるけれど。
いつでも私が大切に思うのは竜樹さん。
想いのかけらを守りたかったのではなく、守りたいのはいつでも彼そのもの。
感情が漣立とうが凪いでいようが変わりないこと。
それが本当に不変かどうかは、私が一生かけて自ら証明するのだろうけど…
迷いの森の出口は見えそうで見えないけれど、はっきりしてるのは。
本当に大切なものはいつでも竜樹さんなのだと。
想いの柱はいつでも竜樹さんただ一人なのだと。
疲労感にどっぷり浸かってもなお、その柱だけは残っていたことが判った。
いろんなことの先行きが見えなくても、それだけで十分なのだと今は思う。
想いの柱が自分の中にありさえすれば…
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思考の迷路
2002年9月24日竜樹さんに貰ったものを眺めながらいろんなことを考えていたけれど、病院で生まれた小さな不安は完全に拭うことは出来なかった。
夕方話した友達から気遣いのメールが届いたので、折り返し連絡して暫く話し込む。
竜樹さんに伝えないまま思い煩っても仕方がないので、事情を説明することを心に決めて眠りについた。
最近、朝晩とても涼しくて、うっかりすると風邪をひきそうな感じ。
相変わらず、不調を抱えたまま家を出る。
電車の中から定例の朝メールの他に、竜樹さんにお願いメールをこさえて飛ばす。
…竜樹さんに判りやすい説明だったかどうかは判らないけれど、あとは竜樹さんに対応を預けよう。
話してしまえば不安が拭えるかと言えば、そんなこともなくて。
そんな不安を抱くこと自体をどうかと思う自分もいて、自分の中で感情の整理がついてない段階で話してえみたってすっきりなんてしやしないんだということは判っていたけれど。
誰かの力になりたいと、それが竜樹さんが気にかける人のことならなおのことそう思うけれど、それと同時に自分が築いてきたものを守りたいと、それが竜樹さんに関わることならなおのことだという想いもあるのは事実で。
二手の気持ちに引きずられるようにして、仕事を始める。
会社で起こる出来事のすべてがガラス一枚通したような感じ。
いつもなら過敏なくらいにいろんなことが気に障ったり、飛び込んでくることの対処に追われたりするというのに。
皮肉なもので、どうでも良くないことを抱えてると、本当にどうでもいい連中のことなどどうでもよくなるのかもしれない。
少なくとも、今の私においては。
さりとて、いつもよりも手を煩わされてないかと言えばそうでもなくて。
やっとこ開放されたかと思ってた先輩の足止めは復活してるし、チェックをお願いしていたことがザルで、方々に謝り倒すことも多かったような気はする。
事象に対する諦めではなく、どうでもいいわという感情だけを残して、社屋を後にする。
…竜樹さんはどんな答を返してこられるのかな?
そればかりが気になりながら、電車を乗り継ぎ移動する。
こんなことは珍しい。
竜樹さんと話してて、その場どう受け答えすればいいか迷うことは未だにあるけれど、竜樹さんの答がどんなものかについて不安を抱きながら待つなんてことは随分久しぶりのような気がする。
家に帰ってひと段楽した頃、携帯が鳴る。
「…霄に頼まれたことを実行しようと思ってんねんけど、どやったらええんかなぁ?」
少ししんどそうな、心持ち怒っているような感じにも受け取れる質の声。
言葉を選び選びあれこれと説明するけれど、今ひとつ噛みあわなくて私にも竜樹さんにも焦燥感が見え隠れする。
思ってることの背景をどこまで説明したらいいのか、判らない。
すべて説明したってよかったのかもしれない。
ちゃんと話を詰めれば、竜樹さんは私の言い分を軽んじるような人ではない。
場に応じて最善の対策を取ろうと努力する人だもの。
それは信じてるんだ。
けれど、伝えるべき情報を今は選り分ける必要があるという思いの方が強かった。
…術後すぐの竜樹さんの体調自体が不安定だから
「余計なことで竜樹さんの心煩わせたくない」という想いが余計に事態を混乱させると知りながら。
それでも、私が少しずつ築いたものが互いの足元を掬うかもしれないという危惧以上に、竜樹さんに新たな心配の素を生みたくなかったのは事実。
上手に伝えられないもどかしさから、口にしてはならないだろう言葉を零した。
「…もういいです。そのまま置いといてください」
その判断がどんな結末を齎すかに不安がないわけではないし、そんな風に片付けるくらいなら最初から言わなければよかったとも思ったけれど。
いずれにしてもこれ以上この話を引っ張っても建設的な結論は導けない。
それ以前に、建設的な結論を導き出すために必要な的確な表現も何も浮かんでは来なかっただけなのだけど…
「…大丈夫やから。
霄が心配してるようなことはせぇへんから、もう少しだけ力貸してやってくれへんか?」
電話の向こうの竜樹さんはどう思ったのかは判らない。
静かに怒りを孕んでるようにも受け取れるけれど、少なくとも体調が悪かった時に出る強めの、ともすると強引に会話に幕を引くような感じの強い言葉ではなかった。
でも何だか疲れてしまった。
きっと竜樹さんはもっと疲れたんだと思うと、一人で不安を拭えなかったことが悔やまれてならなくて。
ただただ謝り続ける私を、ただ静かに受け止める竜樹さん。
そのまま二言三言言葉を交わして、電話を切った。
少し考えたら、私の不安は杞憂に過ぎないだろうことは判りそうなものだったけれど。
それでも、素直に「大丈夫」だと確信が持てるほどに信じられたわけじゃない。
竜樹さんの想いや言葉、竜樹さん自身を信じることは出来ても、竜樹さんのエリアにあるものという理由だけでは手放しで信じて安心できないことは確かにあるんだ。
人は自分が願うほどいいものではないのかも知れないという嫌な思考。
信じて大丈夫だと思うに足りる要素は自分で拾いあげられなければ信じるための柱にはなり得ない。
ここんとこ竜樹さんとの関係の外側で、信じたいと願えどそれを覆されるようなことが少しばかり続いたから、どうしてもその要素が拾えない状態でまで良心的な解釈が利かない。
ここひと月ばかりの間に、人の持ついいところも嫌なところもみんな剥き出しになった心に飛び込んできた。
嬉しいと思う感情のすぐ傍で、刃のような冷たいものが刺さったことも確かにあったから、手放しで何事もいいようには取れる状態ではなかった。
それでも、疑うべきでないことは確かにあるんだ。
その判断がつかないほどに、今の自分はいろんな意味でガタきてるんだと気づいた。
思考の迷路は心の闇の中に横たわる。
疲れたままの状態で歩き続けても仕方がないと知りながら、飛び込んでくる事態には待ったはかけられずに奥へ奥へと迷い込む。
気持ちの整理のつもりで纏めたものはさらに思考を迷い込ませる。
足掻くのを諦めて何もする気になれず、そのまま眠った。
夕方話した友達から気遣いのメールが届いたので、折り返し連絡して暫く話し込む。
竜樹さんに伝えないまま思い煩っても仕方がないので、事情を説明することを心に決めて眠りについた。
最近、朝晩とても涼しくて、うっかりすると風邪をひきそうな感じ。
相変わらず、不調を抱えたまま家を出る。
電車の中から定例の朝メールの他に、竜樹さんにお願いメールをこさえて飛ばす。
…竜樹さんに判りやすい説明だったかどうかは判らないけれど、あとは竜樹さんに対応を預けよう。
話してしまえば不安が拭えるかと言えば、そんなこともなくて。
そんな不安を抱くこと自体をどうかと思う自分もいて、自分の中で感情の整理がついてない段階で話してえみたってすっきりなんてしやしないんだということは判っていたけれど。
誰かの力になりたいと、それが竜樹さんが気にかける人のことならなおのことそう思うけれど、それと同時に自分が築いてきたものを守りたいと、それが竜樹さんに関わることならなおのことだという想いもあるのは事実で。
二手の気持ちに引きずられるようにして、仕事を始める。
会社で起こる出来事のすべてがガラス一枚通したような感じ。
いつもなら過敏なくらいにいろんなことが気に障ったり、飛び込んでくることの対処に追われたりするというのに。
皮肉なもので、どうでも良くないことを抱えてると、本当にどうでもいい連中のことなどどうでもよくなるのかもしれない。
少なくとも、今の私においては。
さりとて、いつもよりも手を煩わされてないかと言えばそうでもなくて。
やっとこ開放されたかと思ってた先輩の足止めは復活してるし、チェックをお願いしていたことがザルで、方々に謝り倒すことも多かったような気はする。
事象に対する諦めではなく、どうでもいいわという感情だけを残して、社屋を後にする。
…竜樹さんはどんな答を返してこられるのかな?
そればかりが気になりながら、電車を乗り継ぎ移動する。
こんなことは珍しい。
竜樹さんと話してて、その場どう受け答えすればいいか迷うことは未だにあるけれど、竜樹さんの答がどんなものかについて不安を抱きながら待つなんてことは随分久しぶりのような気がする。
家に帰ってひと段楽した頃、携帯が鳴る。
「…霄に頼まれたことを実行しようと思ってんねんけど、どやったらええんかなぁ?」
少ししんどそうな、心持ち怒っているような感じにも受け取れる質の声。
言葉を選び選びあれこれと説明するけれど、今ひとつ噛みあわなくて私にも竜樹さんにも焦燥感が見え隠れする。
思ってることの背景をどこまで説明したらいいのか、判らない。
すべて説明したってよかったのかもしれない。
ちゃんと話を詰めれば、竜樹さんは私の言い分を軽んじるような人ではない。
場に応じて最善の対策を取ろうと努力する人だもの。
それは信じてるんだ。
けれど、伝えるべき情報を今は選り分ける必要があるという思いの方が強かった。
…術後すぐの竜樹さんの体調自体が不安定だから
「余計なことで竜樹さんの心煩わせたくない」という想いが余計に事態を混乱させると知りながら。
それでも、私が少しずつ築いたものが互いの足元を掬うかもしれないという危惧以上に、竜樹さんに新たな心配の素を生みたくなかったのは事実。
上手に伝えられないもどかしさから、口にしてはならないだろう言葉を零した。
「…もういいです。そのまま置いといてください」
その判断がどんな結末を齎すかに不安がないわけではないし、そんな風に片付けるくらいなら最初から言わなければよかったとも思ったけれど。
いずれにしてもこれ以上この話を引っ張っても建設的な結論は導けない。
それ以前に、建設的な結論を導き出すために必要な的確な表現も何も浮かんでは来なかっただけなのだけど…
「…大丈夫やから。
霄が心配してるようなことはせぇへんから、もう少しだけ力貸してやってくれへんか?」
電話の向こうの竜樹さんはどう思ったのかは判らない。
静かに怒りを孕んでるようにも受け取れるけれど、少なくとも体調が悪かった時に出る強めの、ともすると強引に会話に幕を引くような感じの強い言葉ではなかった。
でも何だか疲れてしまった。
きっと竜樹さんはもっと疲れたんだと思うと、一人で不安を拭えなかったことが悔やまれてならなくて。
ただただ謝り続ける私を、ただ静かに受け止める竜樹さん。
そのまま二言三言言葉を交わして、電話を切った。
少し考えたら、私の不安は杞憂に過ぎないだろうことは判りそうなものだったけれど。
それでも、素直に「大丈夫」だと確信が持てるほどに信じられたわけじゃない。
竜樹さんの想いや言葉、竜樹さん自身を信じることは出来ても、竜樹さんのエリアにあるものという理由だけでは手放しで信じて安心できないことは確かにあるんだ。
人は自分が願うほどいいものではないのかも知れないという嫌な思考。
信じて大丈夫だと思うに足りる要素は自分で拾いあげられなければ信じるための柱にはなり得ない。
ここんとこ竜樹さんとの関係の外側で、信じたいと願えどそれを覆されるようなことが少しばかり続いたから、どうしてもその要素が拾えない状態でまで良心的な解釈が利かない。
ここひと月ばかりの間に、人の持ついいところも嫌なところもみんな剥き出しになった心に飛び込んできた。
嬉しいと思う感情のすぐ傍で、刃のような冷たいものが刺さったことも確かにあったから、手放しで何事もいいようには取れる状態ではなかった。
それでも、疑うべきでないことは確かにあるんだ。
その判断がつかないほどに、今の自分はいろんな意味でガタきてるんだと気づいた。
思考の迷路は心の闇の中に横たわる。
疲れたままの状態で歩き続けても仕方がないと知りながら、飛び込んでくる事態には待ったはかけられずに奥へ奥へと迷い込む。
気持ちの整理のつもりで纏めたものはさらに思考を迷い込ませる。
足掻くのを諦めて何もする気になれず、そのまま眠った。
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Ambivalence
2002年9月23日手術後最初の連休の最終日。
昨日の夜遅くまで友達と話しこんだとはいえ、気分よく休めたので体調はそれほど悪くはない。
昨日、「15時頃においで」と電話で言われたので、起きてからぼんやりと過ごす。
暫くすると、携帯にメールがひとつ飛び込む。
「豚まん、4個買ってきてください」
昨日電話で話した時、同室の人のお母さんからたこ焼きの差し入れを頂いたと聞いていたので、そのお返しなのだろう。
忘れないようにぶつぶつ繰り返してると、またメールがひとつ。
「マヨネーズ、買ってきて!ね(^○^)!めざしも、ね(^○^)!」
…竜樹さん、こないだ差し入れしためざし、もう食べ尽くしたの?(゜o゜)
買い忘れないようにぶつぶつ言いながら階下に降りると、金岡母と姪御ちゃんと海衣の旦那さんとが外から戻ってきたところだった。
「お姉ちゃん、どこにいたの?」
「んー、お姉ちゃん、寝てたのよ」
…金岡母、そんなことは正直に話さなくてもいいんだってば(^-^;
そんな風に思いながらも、姪御ちゃんと遊び、「構ってー構ってー」と寄って来るプードルさんとも遊ぶ。
ひと騒ぎしたのもつかの間、帰り支度を終えた海衣の旦那さんと姪御ちゃんは金岡母の車に乗って帰っていった。
…次に帰ってくるのはいつになるのかな?
何でも今年は七五三のために戻ってくるとかいう話がちらりほらり聞こえてはきてるから、次に逢うのはそう遠い先ではないのかもしれない。
毎度のことながら、賑やかだった場所が急に静かになるのは何だか切ない。
そのうち、そんな寂寥感を残して私自身も出て行くことになるのかもしれないけれど。
寂寥感に躓いていると家を出るのがおっくうになりそうなので、気分転換にシャワーを浴びて、用意して竜樹さんの病院に向かう。
駅へ向かう途中、めざしとマヨネーズを調達して電車に乗り込む。
そして途中下車して豚まんを買って、また電車に乗る。
普段の生活に病院通い定着しつつある。
それはそれで私と竜樹さんの足跡のひとつだから決して嫌なものではないけれど、できるならできるだけ早く元気になって、早く病院から戻ってきて欲しい。
それで完全にこの病気と決別できるかどうかは判らないけれど、ただ竜樹さんの元気な笑顔を見たいから。
そう思いながら、移動を繰り返す。
…病院に着いたのは、15時を少し過ぎてからだった。
病室に入ると、竜樹さんが出迎えてくれる。
まずお土産の豚まんを手渡すと、竜樹さんはそこから2個入りの箱と辛子を取り出して、同室の方に渡された。
「ごめんなぁ、宅配便が遅れておやつの時間に間に合わなかったわぁ(^人-)」
「わぁ、ありがとうございます」
竜樹さんと同室の惺さんは、竜樹さんより12,3歳下の人。
集中治療室に遊びに来てたお友達よりもはるかに物静かな感じの方なんだけど、竜樹さんとは馬が合うらしく、気疲れしないんだとのこと。
こないだばたばたとしてきちんとご挨拶できてなかったのでご挨拶した後、テレビを見ながら竜樹さんとお話。
忘れないうちに、差し入れと手術前に頼まれていたスリッパとペアリングを手渡す。
「あぁ、持って来てくれてんなぁ(*^-^*)」
指輪を眺めてほにゃっと笑う竜樹さん。
その何気ない笑顔が妙に嬉しい。
取り立てていつもと変わりない感じで話していると、ふと竜樹さんがサイドデスクの引き出しを開けるように言う。
開けてみると、ずっと私が欲しいと願っていたものが入っていた。
竜樹さんから説明を受けながら暫くそれを眺め、また会話は続く。
それを見ていろんな思いが駆け巡る。
感情の一つ一つを整理しながらずっと眺めていると…
「…霄が欲しいなら、その箱の中のもの、どれでも持って帰ってええで(*^-^*)」
竜樹さんからお許しが出た(*^-^*)
絶対貰える筈のないものだと承知でお願いしてたから、持たせてもらえるなんて思いもしなかった。
私にとって大事なものであると同時に、竜樹さんにとって新たな道の始まりとなったもの。
竜樹さんの中で正反対の意味合いを持ち続けたもの。
だからこそ、欲しいと願っていたんだ。
諦めていたものが手に入ることになったらなったで、どうしていいのか判らないままおたおたする私。
「これなんか、ええんちゃうか?」
そう言って竜樹さんが私の掌に乗せてくれたのは、欲しいと思っていたものの中でも一番欲しいと願ったもの。
「…これ、本当に貰っていいんですか?(゜o゜)」
「かまへんで。霄は大事にしてくれるやろ?(*^-^*)」
「当たり前ですよ。大事にしないわけないよ」
どんなものを貰うよりも、これを頂けたことが一番嬉しい。
彼の背負った痛みも苦しみも、そして生命を守ったことも。
みんな知ってるものだもの。
竜樹さんがそれを私に託してくれたことが、本当に嬉しかった。
暫くそうして話し、自販機で飲み物を買いに行って少々ビビることがあって、慌てて戻ってくると、惺さんはパソコンを開いていた。
…この病院、ホンマにどうなってんの?(゜o゜)
昨日も二人で夕方からネットして遊んではったらしい。
ちょこちょこ部屋の中を移動しながらネットしやすい場所に落ち着き、3人でパソコンを眺めていた。
「霄ぁ、ちょっと惺に教えてやってくれへんか?」
惺さんが探してるサイトを見つけるための知恵を貸すことになった。
…そのことで少しの迷いと大きな不安が生まれたのだけど
心に広がりそうになる嫌な感情を何とか抑え抑え対処してるうちに、面会時間も終わりに近づく。
笑顔で見送る竜樹さんになけなしの笑顔を返して、病院を後にした。
不安は拭えるどころかどんどん大きくなってどうしようもなくなって。
友達の声を聞いて、ようよう家にたどり着く。
夕飯を食べて後片付けを済ませて自室に戻り、私が欲しいと願ってやまなかったものを取り出して、ぼんやりと心と向き合う。
…そこにメールが飛び込む
「無事に着きましたか?
今日は、ご苦労様でした。めざし、食べまーす。ありがとっ!(*^-^*)」
張り詰めた気持ちが幾分緩んだので、お返事する。
「ちゃんと帰り着いてるよー♪
おいしい夕飯も食べました(*^_^*)
めざしが役に立ってるなら何よりです。
ゆっくり休んで元気になろうね」
いろいろと思うことはあるけれど。
そのすべては解決などしないけれど。
今は大切なものを託されたことをただありがたいと思おう。
憎くもあり、愛しくもある。
そんな、彼の中で息づいていたAmbivalenceが手の中にあることを…
昨日の夜遅くまで友達と話しこんだとはいえ、気分よく休めたので体調はそれほど悪くはない。
昨日、「15時頃においで」と電話で言われたので、起きてからぼんやりと過ごす。
暫くすると、携帯にメールがひとつ飛び込む。
「豚まん、4個買ってきてください」
昨日電話で話した時、同室の人のお母さんからたこ焼きの差し入れを頂いたと聞いていたので、そのお返しなのだろう。
忘れないようにぶつぶつ繰り返してると、またメールがひとつ。
「マヨネーズ、買ってきて!ね(^○^)!めざしも、ね(^○^)!」
…竜樹さん、こないだ差し入れしためざし、もう食べ尽くしたの?(゜o゜)
買い忘れないようにぶつぶつ言いながら階下に降りると、金岡母と姪御ちゃんと海衣の旦那さんとが外から戻ってきたところだった。
「お姉ちゃん、どこにいたの?」
「んー、お姉ちゃん、寝てたのよ」
…金岡母、そんなことは正直に話さなくてもいいんだってば(^-^;
そんな風に思いながらも、姪御ちゃんと遊び、「構ってー構ってー」と寄って来るプードルさんとも遊ぶ。
ひと騒ぎしたのもつかの間、帰り支度を終えた海衣の旦那さんと姪御ちゃんは金岡母の車に乗って帰っていった。
…次に帰ってくるのはいつになるのかな?
何でも今年は七五三のために戻ってくるとかいう話がちらりほらり聞こえてはきてるから、次に逢うのはそう遠い先ではないのかもしれない。
毎度のことながら、賑やかだった場所が急に静かになるのは何だか切ない。
そのうち、そんな寂寥感を残して私自身も出て行くことになるのかもしれないけれど。
寂寥感に躓いていると家を出るのがおっくうになりそうなので、気分転換にシャワーを浴びて、用意して竜樹さんの病院に向かう。
駅へ向かう途中、めざしとマヨネーズを調達して電車に乗り込む。
そして途中下車して豚まんを買って、また電車に乗る。
普段の生活に病院通い定着しつつある。
それはそれで私と竜樹さんの足跡のひとつだから決して嫌なものではないけれど、できるならできるだけ早く元気になって、早く病院から戻ってきて欲しい。
それで完全にこの病気と決別できるかどうかは判らないけれど、ただ竜樹さんの元気な笑顔を見たいから。
そう思いながら、移動を繰り返す。
…病院に着いたのは、15時を少し過ぎてからだった。
病室に入ると、竜樹さんが出迎えてくれる。
まずお土産の豚まんを手渡すと、竜樹さんはそこから2個入りの箱と辛子を取り出して、同室の方に渡された。
「ごめんなぁ、宅配便が遅れておやつの時間に間に合わなかったわぁ(^人-)」
「わぁ、ありがとうございます」
竜樹さんと同室の惺さんは、竜樹さんより12,3歳下の人。
集中治療室に遊びに来てたお友達よりもはるかに物静かな感じの方なんだけど、竜樹さんとは馬が合うらしく、気疲れしないんだとのこと。
こないだばたばたとしてきちんとご挨拶できてなかったのでご挨拶した後、テレビを見ながら竜樹さんとお話。
忘れないうちに、差し入れと手術前に頼まれていたスリッパとペアリングを手渡す。
「あぁ、持って来てくれてんなぁ(*^-^*)」
指輪を眺めてほにゃっと笑う竜樹さん。
その何気ない笑顔が妙に嬉しい。
取り立てていつもと変わりない感じで話していると、ふと竜樹さんがサイドデスクの引き出しを開けるように言う。
開けてみると、ずっと私が欲しいと願っていたものが入っていた。
竜樹さんから説明を受けながら暫くそれを眺め、また会話は続く。
それを見ていろんな思いが駆け巡る。
感情の一つ一つを整理しながらずっと眺めていると…
「…霄が欲しいなら、その箱の中のもの、どれでも持って帰ってええで(*^-^*)」
竜樹さんからお許しが出た(*^-^*)
絶対貰える筈のないものだと承知でお願いしてたから、持たせてもらえるなんて思いもしなかった。
私にとって大事なものであると同時に、竜樹さんにとって新たな道の始まりとなったもの。
竜樹さんの中で正反対の意味合いを持ち続けたもの。
だからこそ、欲しいと願っていたんだ。
諦めていたものが手に入ることになったらなったで、どうしていいのか判らないままおたおたする私。
「これなんか、ええんちゃうか?」
そう言って竜樹さんが私の掌に乗せてくれたのは、欲しいと思っていたものの中でも一番欲しいと願ったもの。
「…これ、本当に貰っていいんですか?(゜o゜)」
「かまへんで。霄は大事にしてくれるやろ?(*^-^*)」
「当たり前ですよ。大事にしないわけないよ」
どんなものを貰うよりも、これを頂けたことが一番嬉しい。
彼の背負った痛みも苦しみも、そして生命を守ったことも。
みんな知ってるものだもの。
竜樹さんがそれを私に託してくれたことが、本当に嬉しかった。
暫くそうして話し、自販機で飲み物を買いに行って少々ビビることがあって、慌てて戻ってくると、惺さんはパソコンを開いていた。
…この病院、ホンマにどうなってんの?(゜o゜)
昨日も二人で夕方からネットして遊んではったらしい。
ちょこちょこ部屋の中を移動しながらネットしやすい場所に落ち着き、3人でパソコンを眺めていた。
「霄ぁ、ちょっと惺に教えてやってくれへんか?」
惺さんが探してるサイトを見つけるための知恵を貸すことになった。
…そのことで少しの迷いと大きな不安が生まれたのだけど
心に広がりそうになる嫌な感情を何とか抑え抑え対処してるうちに、面会時間も終わりに近づく。
笑顔で見送る竜樹さんになけなしの笑顔を返して、病院を後にした。
不安は拭えるどころかどんどん大きくなってどうしようもなくなって。
友達の声を聞いて、ようよう家にたどり着く。
夕飯を食べて後片付けを済ませて自室に戻り、私が欲しいと願ってやまなかったものを取り出して、ぼんやりと心と向き合う。
…そこにメールが飛び込む
「無事に着きましたか?
今日は、ご苦労様でした。めざし、食べまーす。ありがとっ!(*^-^*)」
張り詰めた気持ちが幾分緩んだので、お返事する。
「ちゃんと帰り着いてるよー♪
おいしい夕飯も食べました(*^_^*)
めざしが役に立ってるなら何よりです。
ゆっくり休んで元気になろうね」
いろいろと思うことはあるけれど。
そのすべては解決などしないけれど。
今は大切なものを託されたことをただありがたいと思おう。
憎くもあり、愛しくもある。
そんな、彼の中で息づいていたAmbivalenceが手の中にあることを…
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何もない日なんて…
2002年9月22日3連休2日目は中休み。
昨日の疲れからか、派手に寝飛ばしてしまった。
窓の外は青空が広がっているのに、どういう訳か頭痛とお友達。
鎮痛剤は薬疹が出ることが多くてなるべく飲まないようにしている。
最近になってやっと薬疹の出ない鎮痛剤を見つけたけれど、それだって頻繁に飲んでいればいずれは薬疹が出るかもしれないからと思うと、迂闊に飲むことが出来ない。
うんうん唸りながら、寝たり起きたりを繰り返す。
今日の夕方までには、竜樹さんはまた病院に戻る。
メスを入れた場所のガーゼ交換をしないとならないから。
昨日のお風呂の時もその部分に水がかかったり汗が入ったりしないように注意しながら入っていたんだけど…
ガーゼ替えてみてびっくりな状態になってないといいなぁと思いながら、ぼけっと青空を眺めていた。
1日ぼんにゃり過ごしていると、つい「その時間を何かに充てたら、もちょっといろんなことができるのに…」と思うけれど、どういう訳か休日はいつも頭痛とお友達。
竜樹さんからメールや電話が入る時、決まって「頭痛くないか?」という言葉が定番のように出てくるようになってる。
…何だか、ありがたいんだかありがたくないんだか、判らないよなぁ?
気遣われるのは嬉しいけれど、それが挨拶代わりになるのもちょっと…(-_-;)
どうせなら、言う方も言われる方も機嫌よくなるようなフレーズが挨拶代わりになればいいのにと思うと、やっぱり完全休養の日は必要なんだろう。
そう言い聞かせて、時折階下に降りて洗い物をしたり、プードルさんと格闘したりして傍目には非常に生産性のない時間を過ごす。
ふと気がつくと、金岡両親がやたらばたばたしている。
お昼前に降りてきた時はよりそこそこ部屋がきちんと整頓されてる。
かと思えば、普段は出ていないようなものが出てきてたり…
「どうかしたの?」
「今晩、海衣の旦那さんと姪御ちゃん、こっちに泊まりに来るのよ」
「…何で?海衣は?」
どうやら海衣の旦那のお父さんが還暦だか何だかのお祝いで、こちらで食事会をしたらしい。
海衣と旦那のお母さんとは犬猿の仲(というより旦那のお母さんが言いがかりつけてるだけだけど)なので、海衣は来ないのだという。
…姪御ちゃん、受難よのぉ(-_-;)
まだ小さいのに、あっちに飛んだりこっちに飛んだりせんなん姪御がある意味気の毒な気がするけれど、きっと姪御はそんな大人の事情など知らずににこにこしてるんだろう。
子供の成長は早いから、どんな風になってるのか、会うのが楽しみだ。
本当なら何もしないでぼんにゃりしてるだけで終わるはずだった休養日は最後の最後で賑やかになるんだろう。
それを嬉しく思う自分を振り返って、ふと気づく。
…いろいろあっても、結局海衣の家族も好きなんだということ。
部屋の片づけを手伝ったり、ご飯の支度をしたりしても姪御ちゃんが来るのがどこか楽しみで、「いつ着くんだろう」と思ったり。
一家3人、首を長くして姪御ちゃんが来るのを待っていた(旦那はどこへ?)
23時過ぎに金岡家に電話が入り、金岡母が迎えに行く。
こちらにやってきた姪御ちゃんは、夜中にもかかわらずとても元気だった。
暫く賑やかな金岡家。
ありきたりの休養日は、こうして少しだけ変化が加わった形で幕を下ろすかと思いきや…
終わりの終わりに大好きな友達から連絡を貰って、ずっと話し続けることになった。
幸せについて、そしてそこから転がる話題を楽しみながら話しつづけて、気持ちよく横になった。
何もない日なんて、ないのかもしれない。
何もない中にも何かあるのかもしれない。
1日の終わりにぎゅっと詰まってやってきた出来事から、そんなことを思いながら眠りに就いた。
昨日の疲れからか、派手に寝飛ばしてしまった。
窓の外は青空が広がっているのに、どういう訳か頭痛とお友達。
鎮痛剤は薬疹が出ることが多くてなるべく飲まないようにしている。
最近になってやっと薬疹の出ない鎮痛剤を見つけたけれど、それだって頻繁に飲んでいればいずれは薬疹が出るかもしれないからと思うと、迂闊に飲むことが出来ない。
うんうん唸りながら、寝たり起きたりを繰り返す。
今日の夕方までには、竜樹さんはまた病院に戻る。
メスを入れた場所のガーゼ交換をしないとならないから。
昨日のお風呂の時もその部分に水がかかったり汗が入ったりしないように注意しながら入っていたんだけど…
ガーゼ替えてみてびっくりな状態になってないといいなぁと思いながら、ぼけっと青空を眺めていた。
1日ぼんにゃり過ごしていると、つい「その時間を何かに充てたら、もちょっといろんなことができるのに…」と思うけれど、どういう訳か休日はいつも頭痛とお友達。
竜樹さんからメールや電話が入る時、決まって「頭痛くないか?」という言葉が定番のように出てくるようになってる。
…何だか、ありがたいんだかありがたくないんだか、判らないよなぁ?
気遣われるのは嬉しいけれど、それが挨拶代わりになるのもちょっと…(-_-;)
どうせなら、言う方も言われる方も機嫌よくなるようなフレーズが挨拶代わりになればいいのにと思うと、やっぱり完全休養の日は必要なんだろう。
そう言い聞かせて、時折階下に降りて洗い物をしたり、プードルさんと格闘したりして傍目には非常に生産性のない時間を過ごす。
ふと気がつくと、金岡両親がやたらばたばたしている。
お昼前に降りてきた時はよりそこそこ部屋がきちんと整頓されてる。
かと思えば、普段は出ていないようなものが出てきてたり…
「どうかしたの?」
「今晩、海衣の旦那さんと姪御ちゃん、こっちに泊まりに来るのよ」
「…何で?海衣は?」
どうやら海衣の旦那のお父さんが還暦だか何だかのお祝いで、こちらで食事会をしたらしい。
海衣と旦那のお母さんとは犬猿の仲(というより旦那のお母さんが言いがかりつけてるだけだけど)なので、海衣は来ないのだという。
…姪御ちゃん、受難よのぉ(-_-;)
まだ小さいのに、あっちに飛んだりこっちに飛んだりせんなん姪御がある意味気の毒な気がするけれど、きっと姪御はそんな大人の事情など知らずににこにこしてるんだろう。
子供の成長は早いから、どんな風になってるのか、会うのが楽しみだ。
本当なら何もしないでぼんにゃりしてるだけで終わるはずだった休養日は最後の最後で賑やかになるんだろう。
それを嬉しく思う自分を振り返って、ふと気づく。
…いろいろあっても、結局海衣の家族も好きなんだということ。
部屋の片づけを手伝ったり、ご飯の支度をしたりしても姪御ちゃんが来るのがどこか楽しみで、「いつ着くんだろう」と思ったり。
一家3人、首を長くして姪御ちゃんが来るのを待っていた(旦那はどこへ?)
23時過ぎに金岡家に電話が入り、金岡母が迎えに行く。
こちらにやってきた姪御ちゃんは、夜中にもかかわらずとても元気だった。
暫く賑やかな金岡家。
ありきたりの休養日は、こうして少しだけ変化が加わった形で幕を下ろすかと思いきや…
終わりの終わりに大好きな友達から連絡を貰って、ずっと話し続けることになった。
幸せについて、そしてそこから転がる話題を楽しみながら話しつづけて、気持ちよく横になった。
何もない日なんて、ないのかもしれない。
何もない中にも何かあるのかもしれない。
1日の終わりにぎゅっと詰まってやってきた出来事から、そんなことを思いながら眠りに就いた。
Votre visage de sourire est mon tresor.
2002年9月21日今日は手術後最初の外出。
先週の金曜日に手術して次の週の土曜日には(一時的にせよ)自宅に戻れるなんて、一体どういうことなんだろうと思うけれど。
担当医も積極的に「自宅に戻ってみましょうね」と勧めるらしい。
竜樹さん本人もびっくりな展開を喜びながらも、それを手放しで喜んでよいものかどうか戸惑う自分がいるのも事実。
私自身は去りかけとはいえお客がまだ居座ってる状態なので、あまり動き回ることもできない。
竜樹さんに迷惑がかからない程度に今日も頑張ろうと思いながら、出かける用意をする。
術後の経過がいいとはいえ、あまり外で待たせるわけには行かないので、いつもよりも早めに家を出た。
ここ数日涼しかったのに、今日は何だか妙に蒸し暑い。
蒸し暑くても竜樹さんの身体が痛みやしないかと、手術前の経験則から不安が拭えない。
電車に乗っていても何だか気が気でなくて、ただ竜樹さんに早く会いたかった。
会いさえすれば、取り敢えず安心は出来るから。
私が待ち合わせの駅に着いた頃、竜樹さんからメールが入る。
今いると仰ってる場所を探し回るけれど、竜樹さんには会えなくて。
あちらこちらをうろうろしてると、竜樹さんの方から見つけてくれた。
病院でいろいろあるらしくちょっとお疲れの様子だったけれど、以前に比べたら格段に元気でびっくりする。
こちらに来る電車の中で、ちょっとお困りだった模様。
そんな話をしながら、電車に乗って竜樹邸の最寄の駅まで移動。
それからタクシーに乗ると仰るので「やっぱり体調が悪かったんだ」と思ってどきどきしてると、運転手さんにカラオケボックスに行ってくださいと話している竜樹さん。
運転手さんがよく判らない場所にあるような感じだったので、竜樹さんがその場所までナビする状態。
…カラオケ歌いたい気分なのかな?
竜樹さんの指示通りにタクシーはカラオケボックスまで連れてきてくれた。
降りて暫くどこへも動こうとしない竜樹さん。
「どうするんだろう?」と思っていたら、手を繋いで歩くような形になる。
…………………(/-\*)……
手術前最後のデート同様、お風呂付部屋に行くことになった。
途中、竜樹さんのおうちから電話が入り、「お見舞いに行くけれど…」という話になったので、外泊届を貰って竜樹邸へ帰るという話をしてる。
電話の向こうでなかなか話がかみ合わなかったみたいで、いらいらと、だけどあまり詳細について触れないような形で竜樹さんは説明を続けてる。
…まさか、「これから霄とお風呂付部屋に行くねん」なんて言えへんもんなぁ(^-^;
竜樹さんの様子に何とも複雑な思いを抱いて、お風呂付部屋に向かう。
部屋に入り、何をする訳でなくただくっついてお話をする。
テレビを見たり飲み物を飲んだり。
竜樹邸でもできるようなことをしてるうちに、「お風呂に入ろう」という話になる。
…どうやら、純粋に身体を洗いたかったらしい。
手術をした患部はまだ抜糸が終わってないので、濡らすわけにはいかない。
ただ現状では自分で洗いにくい個所がいくつかあるのだという。
それを私が手伝う形で、和みのお風呂タイムになる。
身体を洗ってあげると、気持ちよさそうにしてる竜樹さん。
その表情を見るだけで嬉しくなる。
どうしてもカッコがカッコなのでじゃれあってしまう場面もあるんだけど、どちらかというと今日はお風呂がメイン。
あとは移動で疲れた体を休めたり、これから竜樹邸に戻るための休息に充てる感じでお風呂付部屋を利用した感じ。
…竜樹さんはもう少しいちゃいちゃしたかったのかも知れないけれど(^-^;
時期が時期なのでそれはまたいずれということでご容赦頂き、お風呂付部屋を後にする。
…問題はこの後、どうやって竜樹邸に戻るかだ。
ひとまず何か目標物になるものを探しながら歩く。
暫く歩くとコンビニに辿り着いたので、そこで竜樹邸で食べる食糧を調達。
タクシー会社に電話して、コンビにまで迎えに来てもらった。
タクシーはお金がかかるけど、車のない時の移動手段としては非常に便利。
竜樹さん自身が以前に比べたら元気とはいえ消耗著しかったのには違いないから、きちんと座れて乗り換えの手間もない移動はありがたいものだ。
予想よりも大幅に早く竜樹邸に戻り、のんびりする。
いくら派手に動き回った訳でないとはいえ、お客が去ってない状態の時は必要以上に疲れを感じやすくて、何だかふらふらしてる私。
「ご飯を食べて、少し休み?」と竜樹さんが言ってくれたので、買ってきた食糧を広げて食べていると、竜樹母さんがいらっしゃる。
竜樹母さんが来られると楽しいけれど、気は遣うからいろいろ考えながら立ち回ってると余計にふらふらしてくる。
それが竜樹さんからも見て取れたらしく、「霄がしんどうそうやから、休ませたって」と竜樹母さんに話してくれた。
その後、後片付けも放棄して、暫く眠ってしまった。
…次に起きたら、夕飯の時間だった。
私が眠ってる部屋には竜樹さんはいなかった。
布団の上にぺたりと座り込みぼけっとしてると、竜樹さんが2階から降りて来られた。
「もうしんどいの、治ったか?」
「まだぼんやりとはしてますけど、頭痛もないし大丈夫ですよ?」
「夕飯どうするんだろう」とは思うけれど、私自身は食べてすぐ寝てしまったのであまりお腹は空いていない。
竜樹さんに聞くと、竜樹さんもあまりお腹が空いてないのだとか。
竜樹母さんがお見えになった時、「久しぶりにみんなで外へ食べに出ましょう」とお誘いを受けていたけれど、2人とも外出できる状態ではない。
取り敢えずご実家にお断りを入れ、夕飯をどうするか考えることに。
竜樹さんは、私がいつか食べ損ねたレバニラが食べたいそう。
私はそれを横からつまむことにして、1人前だけ買いに出るつもりだった。
そこへ竜樹父さんが買出しに行くついでに買って来てくれると仰ったのでお願いして、また2人とも暫くぼけっとしてる。
ほどなく竜樹父さんがレバニラを運んでくれるけど、私は少ししか食べることが出来ず、寝たり起きたりを繰り返す。
何となく身体しゃんとしないまま時計を見ると、確実に午前様コース。
帰るのが体力的にしんどかったのもあったけれど、明日病院に戻る竜樹さんと出来るだけ長く一緒にいたかった。
そう思いながらさらにぐずぐずしてると、今度は竜樹さんが疲れて寝入りかけ。
思わず一緒になって眠りかけて、「今日はもうお帰り(p_-) ...」と竜樹さんにねむねむ声で諭され、仕方なくタクシー会社に電話を入れて帰る支度をする。
名残惜しい気持ちとねむねむな竜樹さんを置いて、タクシーに乗ってうちへ帰った。
…そうして泣く泣く家に帰ったら。
金岡両親は既に眠っていて、お迎えに来てくれたのはプードルさんだけだった
…やっぱり、泊まってきたらよかったo(;-_-;)o
どんなに遅くても帰ってくると信用されてるからこそ、眠ってしまったことを忘れてた。
…そう遠くない将来、竜樹邸から帰るために移動することなんてなくなるんだから。
そう自分に言い聞かせ、持ち物を片付けお休みモード。
一緒にいた暖かな時間、竜樹さんの笑顔。
以前より格段に元気になった竜樹さんのすべてが私の宝物。
その宝物のような姿を思い返しながら眠りに着いた。
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これからもずっと…
2002年9月20日今日も青空が広がる。
ついこないだまで蒸し暑かったのに、急に涼しい風が吹くと何を着たらよいのか迷ってしまう。
季節の変わり目がはっきりしないので、なかなか身体がついていかないのも困りもの。
いろんなことが早く安定してくれればと思う。
今日が終われば2回目の3連休。
竜樹さんの手術が終わってから2度目の週末。
前回の手術の時のように術後七転八倒する様子もなく、経過が異常によいのにただただびっくりしている。
…このままずっと具合がよい日が長く続いて、それが当たり前のところまで持っていけたらいいのになぁ
元気が当たり前だなんてありよう筈はないのに、竜樹さんの経過を見聞きするとそんなわがまますら顔を出してくる。
生命に付き纏う影に怯えたり思いを巡らせたりすることから、少しだけでいいから開放されたいと思う自分がいるのかもしれない。
自分の想いがどうとかじゃなくて、単に竜樹さんが元気ならそれでいいんだけど。
頭の中で一人思考を転がしていると、お弁当鞄が揺れる。
ごそごそと鞄の中から携帯を取り出すと、竜樹さんからだった。
「土曜の1時30分くらいに駅で待つ」
……………………(/-\*)……
その後に続いていた言葉に少々テレながら返事を飛ばし、勢いよく人外魔境を目指す。
親会社棚卸の関係で俄かに多忙を極めてきてるというのに、今日は締日。
締日にはいつもよりも多くの書類が飛び交う。
おまけに洗濯当番という、ありがたい雑務付。
洗濯が絡んでくると仕事がめちゃくちゃになるから、忙しい時にはあまり進んでやりたい雑用じゃないけれど、噛み付くように鳴り響く電話の相手をしたり、飛び交う書類を処理したりするだけで1日終えるよりかは、水を触って気晴らしするのもいいのかもしれない。
洗濯物の籠を持って洗濯機があるフロアまで降りて、洗濯の作業を始める。
涼しくなっても、まだ触るのが嫌になるほどには水は冷たくない。
洗濯機を回してる間に書類を片付け、また洗濯機のフロアへ。
それを数回繰り返し、キレイになった洗濯物を干して作業終わり。
また事務所に戻って、黙々と飛び交う書類を片付ける。
夢中になって書類を片付けているうちに、お昼になった。
ここ数日、お昼休み賑やかな社長は少し静かだ。
一昨日、同僚さんは社長に辞意を表明したらしい。
社長は彼女が進む道を静かに受け入れたらしい。
「がんばれよー」といつもの口調で、でもどこか寂しそうに仰ったそう。
社長が自分が思ってた以上に自分を大事にしてくれてたことを改めて感じ取って、居たたまれない気持ちになったというお手紙を貰った。
泣けてくるほどに申し訳ない気持ちで一杯なのだと、彼女は言う。
相手がどんな想いを抱いているのか。
それが行動に置き換わる時にどのように変化するかなど、そんなに容易く判る筈もなく。
どこか切ないすれ違いは、何処に行ってもそれなりに存在するのだろう。
その切なさに胸が痛んでも、次へ向かう気持ちが曇らないことを願うばかり。
私が洗濯してる時に、彼女はボスに退職願を出したのだろうか?
連休明けにボスがじわりじわりと同僚さんにかけていた圧力は、跡形もなくない。
すべてはこうして実しやかに流れていくのだろうか?
そんな風にぼんやり考えながら、ぼそぼそとお昼ご飯を食べる。
…実しやかには、流れてくれてなかった(>_<)
彼女に向けていた圧力の矛先が、今度は私の方に向いたらしい。
ぼそぼそとご飯を食べ、いつものようにお昼2度目のお茶を煎れボスのデスクに届けると…
「なぁ、金ちゃん!それはホンマもんか?それとも魔除けか?(・∀・)♪」
竜樹さんと交わしたペアリングをしてる左手を指差して、大声で指摘なさる。
「……や、これは道端で拾ったんですよ(^-^;」
到底通るはずのない冗談でのらりくらりやってると、
「嘘つけぇ。ええヤツおるんやろ?
付き合い、もう長いもんなぁ…」
………………………( ̄○ ̄;)!
な、なんで知ってるんだ。
確か前回の手術の頃、お昼休みに竜樹さんから携帯に頻繁に電話が入ってて、それを知ったほかの社員さんがボスにちくったことがあるってのは知ってたけど。
そんな昔のことを未だに覚えているのか?
「いやいや、結婚なんてする気はないんですよ」
「なぁ、金ちゃん。結婚する時は絶対呼んでくれよ。
わしは金ちゃんの結婚式でスピーチするのを楽しみにしてるんやo(^-^o)o(^-^)o(o^-^)o」
…そんなもな、楽しみにしないで下さいo(;-_-;)o
そう言いたかったけれど、「まぁ、そんな話があればってことで…(^-^;」とさらにのらりくらりしながら、台所へ引っ込んで洗い物をする。
…何でそんなこと、急に言うんだろう?
今までも「はよ結婚しぃやぁ」とか「うちにも同じような娘がおるから、ほっとかれへんねん」程度のことは言われていたけれど、ここまで突っ込んだ指摘をされたことはなかった。
…これは同僚さんと一緒に辞めてくれということなのか?
それとも新手のおふざけか?
おじさんのやることは判らない。
ちょっと動揺が出たのか、急須を落っことして割りそうになったけれど。
どきどきを押さえながら何食わぬ顔をして仕事をし、とっとと会社を出た。
…いつも以上にどっと疲れた。
ボスに言ったことはみんな嘘。
竜樹さんとは入社前からずっとお付き合いしてるし、いずれは結婚する気でもいてる。
指輪は拾い物じゃないし、「そんな話」は2年前から出ては消え出ては消えしてもまだ燃え残ってる。
ボスには申し訳ないけれど、竜樹さんを「ボス詣」に参加させる気はないんだ。
きっと2人が結婚の形をとる頃には、私はここにはいてない。
…てか、いない方向に持っていくために来年末まで全力投球しようと思ってるんだもの。
初めて2人が並んで歩くようになってから、冷めるどころか想いは深くなるばかり。
その想いをずっと抱きしめながら、多分機嫌のよい明日を探して生きていくんだ。
2人が笑顔でいられる場所を目指して。
これからもずっと手を繋いで歩いてく。
ついこないだまで蒸し暑かったのに、急に涼しい風が吹くと何を着たらよいのか迷ってしまう。
季節の変わり目がはっきりしないので、なかなか身体がついていかないのも困りもの。
いろんなことが早く安定してくれればと思う。
今日が終われば2回目の3連休。
竜樹さんの手術が終わってから2度目の週末。
前回の手術の時のように術後七転八倒する様子もなく、経過が異常によいのにただただびっくりしている。
…このままずっと具合がよい日が長く続いて、それが当たり前のところまで持っていけたらいいのになぁ
元気が当たり前だなんてありよう筈はないのに、竜樹さんの経過を見聞きするとそんなわがまますら顔を出してくる。
生命に付き纏う影に怯えたり思いを巡らせたりすることから、少しだけでいいから開放されたいと思う自分がいるのかもしれない。
自分の想いがどうとかじゃなくて、単に竜樹さんが元気ならそれでいいんだけど。
頭の中で一人思考を転がしていると、お弁当鞄が揺れる。
ごそごそと鞄の中から携帯を取り出すと、竜樹さんからだった。
「土曜の1時30分くらいに駅で待つ」
……………………(/-\*)……
その後に続いていた言葉に少々テレながら返事を飛ばし、勢いよく人外魔境を目指す。
親会社棚卸の関係で俄かに多忙を極めてきてるというのに、今日は締日。
締日にはいつもよりも多くの書類が飛び交う。
おまけに洗濯当番という、ありがたい雑務付。
洗濯が絡んでくると仕事がめちゃくちゃになるから、忙しい時にはあまり進んでやりたい雑用じゃないけれど、噛み付くように鳴り響く電話の相手をしたり、飛び交う書類を処理したりするだけで1日終えるよりかは、水を触って気晴らしするのもいいのかもしれない。
洗濯物の籠を持って洗濯機があるフロアまで降りて、洗濯の作業を始める。
涼しくなっても、まだ触るのが嫌になるほどには水は冷たくない。
洗濯機を回してる間に書類を片付け、また洗濯機のフロアへ。
それを数回繰り返し、キレイになった洗濯物を干して作業終わり。
また事務所に戻って、黙々と飛び交う書類を片付ける。
夢中になって書類を片付けているうちに、お昼になった。
ここ数日、お昼休み賑やかな社長は少し静かだ。
一昨日、同僚さんは社長に辞意を表明したらしい。
社長は彼女が進む道を静かに受け入れたらしい。
「がんばれよー」といつもの口調で、でもどこか寂しそうに仰ったそう。
社長が自分が思ってた以上に自分を大事にしてくれてたことを改めて感じ取って、居たたまれない気持ちになったというお手紙を貰った。
泣けてくるほどに申し訳ない気持ちで一杯なのだと、彼女は言う。
相手がどんな想いを抱いているのか。
それが行動に置き換わる時にどのように変化するかなど、そんなに容易く判る筈もなく。
どこか切ないすれ違いは、何処に行ってもそれなりに存在するのだろう。
その切なさに胸が痛んでも、次へ向かう気持ちが曇らないことを願うばかり。
私が洗濯してる時に、彼女はボスに退職願を出したのだろうか?
連休明けにボスがじわりじわりと同僚さんにかけていた圧力は、跡形もなくない。
すべてはこうして実しやかに流れていくのだろうか?
そんな風にぼんやり考えながら、ぼそぼそとお昼ご飯を食べる。
…実しやかには、流れてくれてなかった(>_<)
彼女に向けていた圧力の矛先が、今度は私の方に向いたらしい。
ぼそぼそとご飯を食べ、いつものようにお昼2度目のお茶を煎れボスのデスクに届けると…
「なぁ、金ちゃん!それはホンマもんか?それとも魔除けか?(・∀・)♪」
竜樹さんと交わしたペアリングをしてる左手を指差して、大声で指摘なさる。
「……や、これは道端で拾ったんですよ(^-^;」
到底通るはずのない冗談でのらりくらりやってると、
「嘘つけぇ。ええヤツおるんやろ?
付き合い、もう長いもんなぁ…」
………………………( ̄○ ̄;)!
な、なんで知ってるんだ。
確か前回の手術の頃、お昼休みに竜樹さんから携帯に頻繁に電話が入ってて、それを知ったほかの社員さんがボスにちくったことがあるってのは知ってたけど。
そんな昔のことを未だに覚えているのか?
「いやいや、結婚なんてする気はないんですよ」
「なぁ、金ちゃん。結婚する時は絶対呼んでくれよ。
わしは金ちゃんの結婚式でスピーチするのを楽しみにしてるんやo(^-^o)o(^-^)o(o^-^)o」
…そんなもな、楽しみにしないで下さいo(;-_-;)o
そう言いたかったけれど、「まぁ、そんな話があればってことで…(^-^;」とさらにのらりくらりしながら、台所へ引っ込んで洗い物をする。
…何でそんなこと、急に言うんだろう?
今までも「はよ結婚しぃやぁ」とか「うちにも同じような娘がおるから、ほっとかれへんねん」程度のことは言われていたけれど、ここまで突っ込んだ指摘をされたことはなかった。
…これは同僚さんと一緒に辞めてくれということなのか?
それとも新手のおふざけか?
おじさんのやることは判らない。
ちょっと動揺が出たのか、急須を落っことして割りそうになったけれど。
どきどきを押さえながら何食わぬ顔をして仕事をし、とっとと会社を出た。
…いつも以上にどっと疲れた。
ボスに言ったことはみんな嘘。
竜樹さんとは入社前からずっとお付き合いしてるし、いずれは結婚する気でもいてる。
指輪は拾い物じゃないし、「そんな話」は2年前から出ては消え出ては消えしてもまだ燃え残ってる。
ボスには申し訳ないけれど、竜樹さんを「ボス詣」に参加させる気はないんだ。
きっと2人が結婚の形をとる頃には、私はここにはいてない。
…てか、いない方向に持っていくために来年末まで全力投球しようと思ってるんだもの。
初めて2人が並んで歩くようになってから、冷めるどころか想いは深くなるばかり。
その想いをずっと抱きしめながら、多分機嫌のよい明日を探して生きていくんだ。
2人が笑顔でいられる場所を目指して。
これからもずっと手を繋いで歩いてく。
疲れ知らずでいられないなら
2002年9月19日今朝も青空が広がる。
運動会をするなら、絶好の天気だろう。
こんな日はどこかへ出かけたい気がするけれど、親会社の棚卸の関係で直接関わりのない部署にまで忙しさの波は押し寄せてきてる。
その関係で自分の仕事に直接関わりのない面倒な作業が増えるので、いい加減嫌にもなるけれど。
ここで棚卸を迎えるのは、今年度末と来期の半期決算のみ。
「来年で終わるんだから…」と言い聞かせて、社屋に入る。
最近、同僚さんが辞めることで私の中の枷が外れすぎてるのか、すっかりやる気が出なくなってきてる。
しょうもないことはぐちぐち考えてしまうくせに、ある時ぽーんとリミッター振り切りそうになる。
このままでは再就職先探す前に辞めてしまいそう(-_-;)
どこか投げやりチックに、でもトラブルの元を生み出さないように黙々と仕事を進め、ふと思う。
会社が終わった後お見舞いに行くと、決まって疲れた顔をしてるらしいのか。
竜樹さんに「もう辞めても、ええねんで?」と何度も言われる。
次の指針が決まるまでゆっくりしたっていいんだろうけど、動かなくなることになれてしまって、それっきり動けなくなる方がある意味危険な気がするから。
もう少しだけ、仕事との距離と自分自身のあり方について模索しながら、やってこうと思う。
きりきりと仕事を進め、ようやっと昼休みが来る。
時折斜め左方向から飛んでくるボスのお話に受け答えしながら、お昼二度目のお茶を煎れ、洗い物を片付ける。
…なんか、昼休みが昼休みとして機能してへんような気が(-_-;)
そう思って何だかげんなりしてると、机の上の携帯が踊っている。
「おーい、金ちゃーん♪牛蛙鳴いてるぞーーー(^○^)」
マナーモードにしてる携帯の音をウシガエルの鳴き声に例えるあたりがボスらしい。
携帯を覗き込むと、メールがひとつ。
「土、日、月の予定を教えて」
…竜樹さんからだった(*^-^*)
今度の3連休をどうするか考えているんだろう。
嬉しくて返事を打とうとすると、すかさずメールマークが浮かぶ。
「土、日、月の予定を教えて。会える日を」
会いたいって思ってくれることが、とても嬉しい。
今度こそ即座に返事を!!と思ってると、昼からの業務が始まっていた。
携帯を引き出しに置き隙間からこっそりキーを打ち、メールを飛ばす。
「オールフリーですので、いつでも逢えます。」
そのお返事はなかったけれど、それひとつで機嫌がよくなる。
俄然元気が出て、やってくる仕事をどんどん片付ける。
仕事が思ってたよりは立て込まなかったせいか、そんなに慌てることなく定時を迎えた。
とっとと事務所を後にする。
親会社の棚卸に纏わる煩わしい業務はこれからますます増えることが予想できてて、この程度の作業量で疲れきってたんじゃダメなんだけど、最近どうにも疲れが抜けない。
家に帰ってから物理的に時間がない訳ではない筈なのに、自宅に帰り着いた途端、何もかもする気をなくす。
気持ちを解き放すためのネットも、時に自分の喉元を締め上げていくような感じがしてあまり長時間に渡ってする気になれない。
竜樹さんが無事でいてくれたことで気が抜けてしまったからか。
それとも竜樹さんの手術がひと段落したために、それまで敢えて見ようとしなかったものに意識が向き始めてるのか。
疲労感はいつまでも抜けない。
竜樹さんが生きてそこにいてくれてることが、私の力の源であるはずなのに…
…取るに足りへんような些細な物事に躓いてるようじゃ、あかへんやん?
タフさが足りない気がする。
これからが正念場なのにね。
「会える日を教えて」
竜樹さんが私と会いたいと思ってくれてるのなら、もっと元気でないと。
生きてこちらに戻って来れたことが嬉しくなるような私でいたいんだ。
疲れ知らずでいられないなら。
せめて、疲れを引っ張り過ぎない状態を作りたい。
竜樹さんの願いひとつで疲れが吹き飛ぶのは実証済みだから、あとはそれをどやって維持するか。
…これからの課題は、その方法を探すことなのかもしれない。
運動会をするなら、絶好の天気だろう。
こんな日はどこかへ出かけたい気がするけれど、親会社の棚卸の関係で直接関わりのない部署にまで忙しさの波は押し寄せてきてる。
その関係で自分の仕事に直接関わりのない面倒な作業が増えるので、いい加減嫌にもなるけれど。
ここで棚卸を迎えるのは、今年度末と来期の半期決算のみ。
「来年で終わるんだから…」と言い聞かせて、社屋に入る。
最近、同僚さんが辞めることで私の中の枷が外れすぎてるのか、すっかりやる気が出なくなってきてる。
しょうもないことはぐちぐち考えてしまうくせに、ある時ぽーんとリミッター振り切りそうになる。
このままでは再就職先探す前に辞めてしまいそう(-_-;)
どこか投げやりチックに、でもトラブルの元を生み出さないように黙々と仕事を進め、ふと思う。
会社が終わった後お見舞いに行くと、決まって疲れた顔をしてるらしいのか。
竜樹さんに「もう辞めても、ええねんで?」と何度も言われる。
次の指針が決まるまでゆっくりしたっていいんだろうけど、動かなくなることになれてしまって、それっきり動けなくなる方がある意味危険な気がするから。
もう少しだけ、仕事との距離と自分自身のあり方について模索しながら、やってこうと思う。
きりきりと仕事を進め、ようやっと昼休みが来る。
時折斜め左方向から飛んでくるボスのお話に受け答えしながら、お昼二度目のお茶を煎れ、洗い物を片付ける。
…なんか、昼休みが昼休みとして機能してへんような気が(-_-;)
そう思って何だかげんなりしてると、机の上の携帯が踊っている。
「おーい、金ちゃーん♪牛蛙鳴いてるぞーーー(^○^)」
マナーモードにしてる携帯の音をウシガエルの鳴き声に例えるあたりがボスらしい。
携帯を覗き込むと、メールがひとつ。
「土、日、月の予定を教えて」
…竜樹さんからだった(*^-^*)
今度の3連休をどうするか考えているんだろう。
嬉しくて返事を打とうとすると、すかさずメールマークが浮かぶ。
「土、日、月の予定を教えて。会える日を」
会いたいって思ってくれることが、とても嬉しい。
今度こそ即座に返事を!!と思ってると、昼からの業務が始まっていた。
携帯を引き出しに置き隙間からこっそりキーを打ち、メールを飛ばす。
「オールフリーですので、いつでも逢えます。」
そのお返事はなかったけれど、それひとつで機嫌がよくなる。
俄然元気が出て、やってくる仕事をどんどん片付ける。
仕事が思ってたよりは立て込まなかったせいか、そんなに慌てることなく定時を迎えた。
とっとと事務所を後にする。
親会社の棚卸に纏わる煩わしい業務はこれからますます増えることが予想できてて、この程度の作業量で疲れきってたんじゃダメなんだけど、最近どうにも疲れが抜けない。
家に帰ってから物理的に時間がない訳ではない筈なのに、自宅に帰り着いた途端、何もかもする気をなくす。
気持ちを解き放すためのネットも、時に自分の喉元を締め上げていくような感じがしてあまり長時間に渡ってする気になれない。
竜樹さんが無事でいてくれたことで気が抜けてしまったからか。
それとも竜樹さんの手術がひと段落したために、それまで敢えて見ようとしなかったものに意識が向き始めてるのか。
疲労感はいつまでも抜けない。
竜樹さんが生きてそこにいてくれてることが、私の力の源であるはずなのに…
…取るに足りへんような些細な物事に躓いてるようじゃ、あかへんやん?
タフさが足りない気がする。
これからが正念場なのにね。
「会える日を教えて」
竜樹さんが私と会いたいと思ってくれてるのなら、もっと元気でないと。
生きてこちらに戻って来れたことが嬉しくなるような私でいたいんだ。
疲れ知らずでいられないなら。
せめて、疲れを引っ張り過ぎない状態を作りたい。
竜樹さんの願いひとつで疲れが吹き飛ぶのは実証済みだから、あとはそれをどやって維持するか。
…これからの課題は、その方法を探すことなのかもしれない。
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笑顔の傍にいるために…
2002年9月18日一夜明けて、今日は青空が広がっている。
今日は竜樹さんに差し入れを届けに行く。
普通の病室に戻って、リハビリを開始してるだろう竜樹さんに笑顔とめざしを届けたい。
いろいろ思うところはあるけれど、今日は機嫌よく過ごせたらいい。
出来たら仕事が立て込まなければいい。
そんな風に思いながら家を出た。
今日はボスも社長も出張に出ていないので、同僚さんに対するプレスはないだろう。
そうすれば、彼女も私も機嫌よくは過ごせる。
飛び込んでくる仕事の内容にも依るけれど、理不尽なものでなければ少々立て込んでも我慢しよう。
…その後には、竜樹さんが待っているんだから。
そう思えば、何とか気力は振り絞れるもので。
午前中からハイペースに仕事を片付けていく。
切れ間なくやるべき仕事をどんどこ片付けていると、午前中に殆どの仕事が終わってしまった。
午前中が終わって、どっと疲れが出たけれど、6時間ほど後には竜樹さんに会えるんだと思えば、それだけで元気が戻る気がする。
ご飯をぼそぼそと食べて、後片付けをして、少しだけお昼寝。
少し元気を取り戻し、昼からイレギュラーの物件が増えすぎないことをただただ祈りながら仕事を始めたけれど、厄介なことは殆ど起こることなく、定時に事務所を出られた。
そこへメールがひとつ。
「部屋が変わったので、注意!」
それを見て、「どこの部屋に変わったのよ/( ̄□ ̄)\!」と突っ込みたくなったけれど、メールを打ち返すのももどかしくて、自転車をかっ飛ばし、駅へ向かう。
めざしを抱えてホームに滑り込んできた電車に飛び乗る。
乗り換えの駅に着いてダッシュ、滑り込んでくる電車に飛び乗る。
それを繰り返した後、途中下車。
「こっちに来る時は、ちゃんと晩御飯食べて来るねんで」
竜樹さんの言いつけを守るべく、ファーストフードの店に飛び込み、簡単なご飯を食べる。
本当はもっとちゃんとしたものを食べた方がいいんだろうけど、あまりゆっくりしてもいられない。
ご飯をきっちり食べるために、面会時間が終わってしまったら意味がないから。
熱いスープを流し込み、だかだかとパンを食べ、また電車に乗って移動。
…何とか面会時間終了1時間半前には病院に入れた。
竜樹さんの病室がどこへ変わったかを聞こうとエレベーターを降りてナースセンターに向かったけれど、ナースセンターには誰もいない。
仕方なく、ドアの横の名前のプレートを眺めながら、フロアを一通り歩く。
最後の最後でやっと竜樹さんの病室が見つかった。
「…よう、来てくれたなぁ。部屋番、誰が教えてくれたん?」
「…誰も教えてくれませんよ。自分で歩いて探しました」
「…え?誰も教えてくれへんかったん?」
「うん、ナースセンターには誰もいなかったから」
………………………(゜д゜)………
竜樹さんが部屋番を敢えて私に知らせなかったのには、彼なりの理由があったらしい。
けれど、その目的は果たすことが出来ないまま、私が足で見つけてしまった。
2日ぶりに会う竜樹さんはちょっとしんどそう。
話を聞いてみると、前日あまり眠れなかったらしく、少ししんどいとのこと。
それでも、身体を起こせずにじっとしてるしかなかった以前と比べるとはるかにいい感じ。
身体を起こしてご飯を食べれるし、食べ終わった食器も自分で運べる。
届けためざしも喜んでくれる(笑)
ただそれだけが嬉しい。
ふと、竜樹さんは隣の患者さんにお願いして、冷蔵庫から何かを取り出してもらってた。
「これ、食べぇや♪」
ケーキ屋さんのゼリーをひとつ貰った。
「どうしはったんですか?」
「今日、学校時代の友達が彼女と一緒に来てくれてん(*^-^*)」
友達がどんな人なのか、その彼女がどんな人なのか、いろいろと話してくれる。
よほど楽しい時間だったんだろう。
竜樹さんはとても嬉しそうに話を続ける。
ゼリーを食べながら、こくこく聞いてる私。
「…あ、そうやそうや。
『元気になったら、みんなで会いましょう』って言ってたで(*^-^*)」
嬉しそうに言う竜樹さんに、『うん、会おうね』と笑顔で答えることは出来なかった。
その理由はきっと取るに足らないことだとは思う。
竜樹さんに言ったら「何を言うてんねん」って笑われるような本当につまらない理由。
けれど、能動的に「元気になったら、是非是非お会いしましょうねとお伝えください」とは言う気になれなかった。
竜樹さんも敢えてその件には触れない。
正直、少しばかりほっとした。
テレビのニュースを見ながら、取り止めもなく話をしてると面会時間終了15分前を告げる館内放送が流れる。
「まだ明日も明後日もあるから、今日はもう帰り?」
そう言われて、病室を後にした。
エレベーターに乗り、薄暗い鰻の寝床のような通路を歩き、病院の外に出る。
駅までの道をとっとこ歩き、いつものように電車に乗る。
…なんで、ちゃんと返事せぇへんかったんやろ?
竜樹さんがたとえ友達のお連れ様とは言え、誉めすぎるくらいに誉めることはない。
だからと言って、普段から人をそう悪く言うわけでもないけれど。
竜樹さんの話を聞いていると、学校のお友達の話をいろいろ聞く中で彼女の悪い話はまったくと言っていいほど出てこない。
常日頃、何かにつけては竜樹さんのお叱りを受ける私には、そこまで誉める人の前に引きずり出されるのは、何となく気分が乗るものではない。
出来るなら、そのお友達まとめて能動的には会いたくないなぁと思ってしまう自分がいる。
…そんなん言うてたら、何処にも出て行けなくなるけどね(-_-;)
あぁでもないこうでもないと、窓に映る夜景を見ながらぼんにゃり考える。
…竜樹さんはどう答えることを望んでたんだろう?
別にどう答えようとどうでもいいような気もするけれど。
自分のエリアの人と話す時はがっちがちに構えては話して欲しくないと随分昔聞いたような記憶もある。
そうしたら、自ずとどんな風に言えば竜樹さんが喜んでくれるかくらい、判りそうなもの。
電車を乗り換えて、鞄の中から携帯を取り出した。
「言いそびれた!
竜樹さんが元気になったら、お友達とその彼女さんに会いましょう。
取り急ぎ、ご連絡まで(笑)」
多分、竜樹さんがこの話を出した時、即座にそう返事をするべきだったんだとは思う。
その約束を履行するかどうかは竜樹さんが決めることであって、海のものとも山のものとも知れないうちからがたがた言っても仕方のないこと。
こんな風に言ってしまうことで、会う方向に動き出してしまったらその時考えよう。
そんな風に思って、電車から気持ちを固めるような言葉を夜空に飛ばした。
電車・バスと乗り継いで家に帰った頃、携帯にメールがひとつ。
「無事、帰宅か?
友達と彼女に会ってもらいましょう(*^-^*)」
嬉しそうな顔文字を見て、その判断は違ってなかったんだと思う。
「さっき帰りついたの。
いつもと比べるとあまり眠くありません。
何だか不思議です(笑)
竜樹さんに元気を貰ったからかも知れません。でも、無理せずゆっくり休みます。
今日はよく眠れるといいね♪(*^_^*)」
そう打って、夜空に飛ばした。
臆する自分をひっくり返せるほどには、自分はまだ何も持ちえてない気はするけれど。
ただ竜樹さんの笑顔の傍に自分がいたいと願って動けるなら。
きっといつかはどこかすっきりしない自分を飛び出すことができるだろう。
竜樹さんの笑顔の傍にいるために頑張れたらって思ってる。
今日は竜樹さんに差し入れを届けに行く。
普通の病室に戻って、リハビリを開始してるだろう竜樹さんに笑顔とめざしを届けたい。
いろいろ思うところはあるけれど、今日は機嫌よく過ごせたらいい。
出来たら仕事が立て込まなければいい。
そんな風に思いながら家を出た。
今日はボスも社長も出張に出ていないので、同僚さんに対するプレスはないだろう。
そうすれば、彼女も私も機嫌よくは過ごせる。
飛び込んでくる仕事の内容にも依るけれど、理不尽なものでなければ少々立て込んでも我慢しよう。
…その後には、竜樹さんが待っているんだから。
そう思えば、何とか気力は振り絞れるもので。
午前中からハイペースに仕事を片付けていく。
切れ間なくやるべき仕事をどんどこ片付けていると、午前中に殆どの仕事が終わってしまった。
午前中が終わって、どっと疲れが出たけれど、6時間ほど後には竜樹さんに会えるんだと思えば、それだけで元気が戻る気がする。
ご飯をぼそぼそと食べて、後片付けをして、少しだけお昼寝。
少し元気を取り戻し、昼からイレギュラーの物件が増えすぎないことをただただ祈りながら仕事を始めたけれど、厄介なことは殆ど起こることなく、定時に事務所を出られた。
そこへメールがひとつ。
「部屋が変わったので、注意!」
それを見て、「どこの部屋に変わったのよ/( ̄□ ̄)\!」と突っ込みたくなったけれど、メールを打ち返すのももどかしくて、自転車をかっ飛ばし、駅へ向かう。
めざしを抱えてホームに滑り込んできた電車に飛び乗る。
乗り換えの駅に着いてダッシュ、滑り込んでくる電車に飛び乗る。
それを繰り返した後、途中下車。
「こっちに来る時は、ちゃんと晩御飯食べて来るねんで」
竜樹さんの言いつけを守るべく、ファーストフードの店に飛び込み、簡単なご飯を食べる。
本当はもっとちゃんとしたものを食べた方がいいんだろうけど、あまりゆっくりしてもいられない。
ご飯をきっちり食べるために、面会時間が終わってしまったら意味がないから。
熱いスープを流し込み、だかだかとパンを食べ、また電車に乗って移動。
…何とか面会時間終了1時間半前には病院に入れた。
竜樹さんの病室がどこへ変わったかを聞こうとエレベーターを降りてナースセンターに向かったけれど、ナースセンターには誰もいない。
仕方なく、ドアの横の名前のプレートを眺めながら、フロアを一通り歩く。
最後の最後でやっと竜樹さんの病室が見つかった。
「…よう、来てくれたなぁ。部屋番、誰が教えてくれたん?」
「…誰も教えてくれませんよ。自分で歩いて探しました」
「…え?誰も教えてくれへんかったん?」
「うん、ナースセンターには誰もいなかったから」
………………………(゜д゜)………
竜樹さんが部屋番を敢えて私に知らせなかったのには、彼なりの理由があったらしい。
けれど、その目的は果たすことが出来ないまま、私が足で見つけてしまった。
2日ぶりに会う竜樹さんはちょっとしんどそう。
話を聞いてみると、前日あまり眠れなかったらしく、少ししんどいとのこと。
それでも、身体を起こせずにじっとしてるしかなかった以前と比べるとはるかにいい感じ。
身体を起こしてご飯を食べれるし、食べ終わった食器も自分で運べる。
届けためざしも喜んでくれる(笑)
ただそれだけが嬉しい。
ふと、竜樹さんは隣の患者さんにお願いして、冷蔵庫から何かを取り出してもらってた。
「これ、食べぇや♪」
ケーキ屋さんのゼリーをひとつ貰った。
「どうしはったんですか?」
「今日、学校時代の友達が彼女と一緒に来てくれてん(*^-^*)」
友達がどんな人なのか、その彼女がどんな人なのか、いろいろと話してくれる。
よほど楽しい時間だったんだろう。
竜樹さんはとても嬉しそうに話を続ける。
ゼリーを食べながら、こくこく聞いてる私。
「…あ、そうやそうや。
『元気になったら、みんなで会いましょう』って言ってたで(*^-^*)」
嬉しそうに言う竜樹さんに、『うん、会おうね』と笑顔で答えることは出来なかった。
その理由はきっと取るに足らないことだとは思う。
竜樹さんに言ったら「何を言うてんねん」って笑われるような本当につまらない理由。
けれど、能動的に「元気になったら、是非是非お会いしましょうねとお伝えください」とは言う気になれなかった。
竜樹さんも敢えてその件には触れない。
正直、少しばかりほっとした。
テレビのニュースを見ながら、取り止めもなく話をしてると面会時間終了15分前を告げる館内放送が流れる。
「まだ明日も明後日もあるから、今日はもう帰り?」
そう言われて、病室を後にした。
エレベーターに乗り、薄暗い鰻の寝床のような通路を歩き、病院の外に出る。
駅までの道をとっとこ歩き、いつものように電車に乗る。
…なんで、ちゃんと返事せぇへんかったんやろ?
竜樹さんがたとえ友達のお連れ様とは言え、誉めすぎるくらいに誉めることはない。
だからと言って、普段から人をそう悪く言うわけでもないけれど。
竜樹さんの話を聞いていると、学校のお友達の話をいろいろ聞く中で彼女の悪い話はまったくと言っていいほど出てこない。
常日頃、何かにつけては竜樹さんのお叱りを受ける私には、そこまで誉める人の前に引きずり出されるのは、何となく気分が乗るものではない。
出来るなら、そのお友達まとめて能動的には会いたくないなぁと思ってしまう自分がいる。
…そんなん言うてたら、何処にも出て行けなくなるけどね(-_-;)
あぁでもないこうでもないと、窓に映る夜景を見ながらぼんにゃり考える。
…竜樹さんはどう答えることを望んでたんだろう?
別にどう答えようとどうでもいいような気もするけれど。
自分のエリアの人と話す時はがっちがちに構えては話して欲しくないと随分昔聞いたような記憶もある。
そうしたら、自ずとどんな風に言えば竜樹さんが喜んでくれるかくらい、判りそうなもの。
電車を乗り換えて、鞄の中から携帯を取り出した。
「言いそびれた!
竜樹さんが元気になったら、お友達とその彼女さんに会いましょう。
取り急ぎ、ご連絡まで(笑)」
多分、竜樹さんがこの話を出した時、即座にそう返事をするべきだったんだとは思う。
その約束を履行するかどうかは竜樹さんが決めることであって、海のものとも山のものとも知れないうちからがたがた言っても仕方のないこと。
こんな風に言ってしまうことで、会う方向に動き出してしまったらその時考えよう。
そんな風に思って、電車から気持ちを固めるような言葉を夜空に飛ばした。
電車・バスと乗り継いで家に帰った頃、携帯にメールがひとつ。
「無事、帰宅か?
友達と彼女に会ってもらいましょう(*^-^*)」
嬉しそうな顔文字を見て、その判断は違ってなかったんだと思う。
「さっき帰りついたの。
いつもと比べるとあまり眠くありません。
何だか不思議です(笑)
竜樹さんに元気を貰ったからかも知れません。でも、無理せずゆっくり休みます。
今日はよく眠れるといいね♪(*^_^*)」
そう打って、夜空に飛ばした。
臆する自分をひっくり返せるほどには、自分はまだ何も持ちえてない気はするけれど。
ただ竜樹さんの笑顔の傍に自分がいたいと願って動けるなら。
きっといつかはどこかすっきりしない自分を飛び出すことができるだろう。
竜樹さんの笑顔の傍にいるために頑張れたらって思ってる。
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引くことでしか…
2002年9月17日4連休明けは雨のスタート。
いつものように家を出る前は小降りで、駅に着いたら本降りなどというような生易しい雨じゃなく、起きた時からざざ降りの雨。
今まで袖を通すかどうか迷っていたレインジャケットに袖を通すことを決意。
頭痛と胃痛を抱えたまま、出かける用意をする。
レインジャケットを着ると、レインジャケットの中で身体が泳いでいる。
一番小さいサイズを買ったはずなのに、異常に大きくて身体がぷかぷかしてる(-_-;)
袖口についてるマジックテープを絞り気味にして着ると、袖はそれ以上ずり落ちてこないけれど、レインジャケットに被せられてる感じ。
カッコよく着れるかもと楽しみにして買っただけに、かなりがっかり感は否めない。
…姉さまにそのべっこり感をレポしたら面白い返事が返ってきて、思わず笑ってしまった。
少しだけ機嫌をよくして、雨に向かって自転車を走らせる。
ぷかぷかなレインジャケットはきちっと雨を避けてくれたので、さらに気分をよくした。
世間様は3連休、私は手術の立会いで休んでいるから4連休。
今日は覚悟しないといけないだろうなぁとは思っていたけれど。
予想に違わず忙しい。
噛み付くように鳴り響く電話、無秩序に飛んでくる仕事。
「どう考えてもこれはあんたの手抜きでしょう?」というミスの処理…
…「来るんじゃなかった」という気分200%
それだけでもげんなりしてるのに。
まだ社長にもボスにも知らせていない同僚さんの退職をどこからかぎつけたのか、ボスが妙な圧力を彼女にかけている。
「(同僚さんが)おらんかったら、社長は元気なくして早死にしよるから、ずっとおったってなぁ」
「社長には(同僚さんが)おらんとあかんねや」
「(社長は)口うるさいじいさんやけど、堪えたってなぁ」
みんながいるところで、連発する謎な言葉。
同僚さんは首をひねるばかり。
私もまた首をひねるばかり。
…辞めるのも、大変だなぁ(>_<)
彼女はよく気もつくし、仕事も出来ない方じゃない。
社長が彼女のことをめっちゃ気に入ってるてのは周知の事実だから、周りとしても辞められたら困るってのは判るけど。
そんな風に外堀から徐々に埋めてくような圧力の掛け方で退職の意向を彼女が翻すとでも思ってるんだろうか。
…そんな風にすればするほど、彼女はますます辞めたいと思うだけなのにね。
私が辞める時はすんなり二つ返事で辞められるだろうと思うから、関係のない話だとは思うけれど。
ボスが妙な圧力をかけるたびに「どないしょー」っておたつく同僚さんを見ていると、何とも言えない気持ちになる。
気に入ってるからこそ、かけたちょっかい。
ストレートに思ったことを言えないから、かける言葉が歪む。
それが彼女の心には嫌なものとして重くのしかかる。
同僚さんも決して社長のことが嫌いだったわけじゃないから、考えに考えた末に辞めることを選んだ。
…何とも皮肉な話だなぁと思う。
何でもかんでも思ったことをストレートに言えばいいってもんじゃない。
先輩のように「構ってー構ってー」で自分の都合ばかり押し付けてくるようなやり方されたら、何を言われても気分が悪いだけ。
職場じゃなければ、相手のことを慮ってものが言えるんだろうか?
それとも、会社だからこそ相手のことを慮って言うべきなんだろうか?
きっとそれは場所によるものではなく、基本的に誰といてもある程度は相手のことを慮って話すべきなんだろうたぁ思うけれど。
プライベートほど、意志を詰める手段も余地もないのかもしれない。
だとしたら、社長には気の毒だけどやっぱり彼女は辞めた方がいいんだと思う。
人との付き合い方って難しいなぁって思いながら、ばたばたの人外魔境を後にした。
よろよろぐったりで、それ以上物を考えたくなかった。
ただぼんにゃりと自転車を飛ばして駅を目指す。
ホームに上がって、何とはなしに竜樹さんにメールを送った。
しんどい気持ちを伝えたいからじゃなく、ただ竜樹さんに言葉を発する時、否が応でも元気は集まってくる気がするから。
それに頼りたかったのかもしれない。
でなきゃ、一日が終わりを迎えるまでよろよろぐったりなままで終わってしまうから。
せめて、明日に繋げる元気が欲しかった。
「リハビリいかがですか?
今朝は雨の降りが強かったので、買ったまま一度も着たことのなかったレインジャケットを着ました。
うきうきとして着たのですが、ぶかぶかで体がジャケットの中で泳いでました(-_-;)
竜樹さんがが着たのが似合いそうな感じです。
しょぼーん。
明日はめざしをお土産にそちらに行きます。
お楽しみに♪(*^_^*)」
そう打って夜空に変わる前の微妙な色の空に放った。
電車を乗り継ぎ途中下車して、焼いてあるめざしを探しに行く。
竜樹さんに頼まれていためざしを小さなコンビニ袋一杯に買い込み、家に戻った。
気持ちの伝え方がいかに難しいかは、常日頃感じてることだけど。
互いの気持ちの詰める余地のない場所でのやり取りはさらに困難を極めると。
それが好意であれ悪意であれ。
その真意を問い質すことも、それをどうこうすることもできないことは確かにあるんだと。
…何も語ることなく、引くことでしか幕を下ろせない現実は確かにあるんだね?
私、私と主張したところで何一つ解決しないことは確かにあるんだなぁと、今更なことにげんなりした1日だった。
いつものように家を出る前は小降りで、駅に着いたら本降りなどというような生易しい雨じゃなく、起きた時からざざ降りの雨。
今まで袖を通すかどうか迷っていたレインジャケットに袖を通すことを決意。
頭痛と胃痛を抱えたまま、出かける用意をする。
レインジャケットを着ると、レインジャケットの中で身体が泳いでいる。
一番小さいサイズを買ったはずなのに、異常に大きくて身体がぷかぷかしてる(-_-;)
袖口についてるマジックテープを絞り気味にして着ると、袖はそれ以上ずり落ちてこないけれど、レインジャケットに被せられてる感じ。
カッコよく着れるかもと楽しみにして買っただけに、かなりがっかり感は否めない。
…姉さまにそのべっこり感をレポしたら面白い返事が返ってきて、思わず笑ってしまった。
少しだけ機嫌をよくして、雨に向かって自転車を走らせる。
ぷかぷかなレインジャケットはきちっと雨を避けてくれたので、さらに気分をよくした。
世間様は3連休、私は手術の立会いで休んでいるから4連休。
今日は覚悟しないといけないだろうなぁとは思っていたけれど。
予想に違わず忙しい。
噛み付くように鳴り響く電話、無秩序に飛んでくる仕事。
「どう考えてもこれはあんたの手抜きでしょう?」というミスの処理…
…「来るんじゃなかった」という気分200%
それだけでもげんなりしてるのに。
まだ社長にもボスにも知らせていない同僚さんの退職をどこからかぎつけたのか、ボスが妙な圧力を彼女にかけている。
「(同僚さんが)おらんかったら、社長は元気なくして早死にしよるから、ずっとおったってなぁ」
「社長には(同僚さんが)おらんとあかんねや」
「(社長は)口うるさいじいさんやけど、堪えたってなぁ」
みんながいるところで、連発する謎な言葉。
同僚さんは首をひねるばかり。
私もまた首をひねるばかり。
…辞めるのも、大変だなぁ(>_<)
彼女はよく気もつくし、仕事も出来ない方じゃない。
社長が彼女のことをめっちゃ気に入ってるてのは周知の事実だから、周りとしても辞められたら困るってのは判るけど。
そんな風に外堀から徐々に埋めてくような圧力の掛け方で退職の意向を彼女が翻すとでも思ってるんだろうか。
…そんな風にすればするほど、彼女はますます辞めたいと思うだけなのにね。
私が辞める時はすんなり二つ返事で辞められるだろうと思うから、関係のない話だとは思うけれど。
ボスが妙な圧力をかけるたびに「どないしょー」っておたつく同僚さんを見ていると、何とも言えない気持ちになる。
気に入ってるからこそ、かけたちょっかい。
ストレートに思ったことを言えないから、かける言葉が歪む。
それが彼女の心には嫌なものとして重くのしかかる。
同僚さんも決して社長のことが嫌いだったわけじゃないから、考えに考えた末に辞めることを選んだ。
…何とも皮肉な話だなぁと思う。
何でもかんでも思ったことをストレートに言えばいいってもんじゃない。
先輩のように「構ってー構ってー」で自分の都合ばかり押し付けてくるようなやり方されたら、何を言われても気分が悪いだけ。
職場じゃなければ、相手のことを慮ってものが言えるんだろうか?
それとも、会社だからこそ相手のことを慮って言うべきなんだろうか?
きっとそれは場所によるものではなく、基本的に誰といてもある程度は相手のことを慮って話すべきなんだろうたぁ思うけれど。
プライベートほど、意志を詰める手段も余地もないのかもしれない。
だとしたら、社長には気の毒だけどやっぱり彼女は辞めた方がいいんだと思う。
人との付き合い方って難しいなぁって思いながら、ばたばたの人外魔境を後にした。
よろよろぐったりで、それ以上物を考えたくなかった。
ただぼんにゃりと自転車を飛ばして駅を目指す。
ホームに上がって、何とはなしに竜樹さんにメールを送った。
しんどい気持ちを伝えたいからじゃなく、ただ竜樹さんに言葉を発する時、否が応でも元気は集まってくる気がするから。
それに頼りたかったのかもしれない。
でなきゃ、一日が終わりを迎えるまでよろよろぐったりなままで終わってしまうから。
せめて、明日に繋げる元気が欲しかった。
「リハビリいかがですか?
今朝は雨の降りが強かったので、買ったまま一度も着たことのなかったレインジャケットを着ました。
うきうきとして着たのですが、ぶかぶかで体がジャケットの中で泳いでました(-_-;)
竜樹さんがが着たのが似合いそうな感じです。
しょぼーん。
明日はめざしをお土産にそちらに行きます。
お楽しみに♪(*^_^*)」
そう打って夜空に変わる前の微妙な色の空に放った。
電車を乗り継ぎ途中下車して、焼いてあるめざしを探しに行く。
竜樹さんに頼まれていためざしを小さなコンビニ袋一杯に買い込み、家に戻った。
気持ちの伝え方がいかに難しいかは、常日頃感じてることだけど。
互いの気持ちの詰める余地のない場所でのやり取りはさらに困難を極めると。
それが好意であれ悪意であれ。
その真意を問い質すことも、それをどうこうすることもできないことは確かにあるんだと。
…何も語ることなく、引くことでしか幕を下ろせない現実は確かにあるんだね?
私、私と主張したところで何一つ解決しないことは確かにあるんだなぁと、今更なことにげんなりした1日だった。
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美味しい食事と楽しい会話
2002年9月16日今日はかねてより姉さまとお約束してた、ランチデートの日。
どの店に食べに行くのか以外は直前になるまで決まらないのがお約束な二人。
昨晩、日付が変わった頃に何時集合にするかメールで問い合わせると、「金岡さんの起きる時間に合わせる?(笑)」とのこと(爆)
「竜樹さんの術後は順調?」という質問を用件の前に添えてあるのが、何とも姉さまらしいなと思いながら、お返事打ちながら寝てしまった(-_-;)
…目が覚めたら、9時だった。
慌てて返事を送る。
「お返事遅くなって、ごめんなさい。
ランチ14時までらしいので13時頃はいかがでしょう。
もっと早いのがよかったらあわせます(*^_^*)」
ほどなくメールが返ってくる。
「私もそれ位が良いです。
12時過ぎに着く気持ちで(笑)行きます」
その後待ち合わせ場所を協議。
メールで埒があかなくなってきたので、電話でお話。
今日食事をする店のある近辺は、私がまったくと言っていいほど土地鑑がない場所。
ひとまずパソコンで店の場所を確認しながらどこで待ち合わせするのがいいのか打ち合わせて電話を切り、慌てて出かける用意をする。
念のため、パソコンのディスプレイに映ってる店の地図をデジカメで撮影して鞄に入れておいた。
外は昨日とは違って、いいお天気。
だけど、何となく蒸し暑い。
発作的に薄着にしたのは正解だったなぁと感じたのは、坂道を駆け下りて駅に着いてからだった。
電車に乗っても駅をひとつ通過するごとに人口密度が増すせいで、車内の温度は上がる一方。
乗り換えの駅に着く頃にはよろよろになっていた。
電車を乗り換えて移動してると、微妙に間に合わない感じ。
どんなに早く起きて用意をしようとも、何故か5分から10分ほど遅れるコースに入る。
姉さまにひとまず連絡しようとメールを打っていると、携帯にメールが飛び込む。
…姉さまも遅刻コースだったらしい
安心してはならないけれど、ちょっとだけ安心して移動を繰り返す。
待ち合わせの駅に着いて改札を出ると、相変わらず姉さまは目立つ。
着るもの持つものすべてにおいて、仕立てのいいものばかりだから立ってるだけで目立つ。
申し訳なさげにそばに寄っていって、そのまま目的の店に歩いていく。
デジカメの画像を見ながら、あぁでもないこうでもないと言いながら歩き、いざ店に着くと……
…料理屋さん、休みだった・゜・(ノД`;)・゜・
「確か、定休日は日曜日だけって書いてなかった?」
「あちゃらさんの国の方は日曜日も祝日もいっしょくたなんかも知れへんね(^-^;」
いきなり出鼻を挫かれ、当てもなく彷徨う女が2人。
気がつくと、アメリカ村まで出ていた。
取り敢えず通りがかりのイタリア料理店に飛び込み、二人でラザニアセットを食べる。
食事を摂りながら、日頃の愚痴だのワールドサッカーの話だのいろんな方面に花が咲く。
これまで姉さまに依頼された作業のまとまったものを広げて、あぁだこうだと話をしていたけれど、さすがに居座りすぎと感じて移動。
また当てもなくふらりふらりと歩き始める。
ビッグステップ内のアランジアロンゾの店に寄って、ふとアランジアロンゾの本店にいったことがないという話になった。
移転する前はしょっちゅう行っていたのだけど、移転してからは土地鑑がないあまりすっかりご無沙汰してた。
ちょうど最初の料理屋に蹴られたこともあって、不完全燃焼起こしてた2人はそのまま寄り道しながらアランジアロンゾの本店に向かうことにした。
途中、お米ギャラリーに寄って、一休みがてらお話し、その後姉さまが寄りたい店があるというので、さるブランドの直営店に飛び込む。
何でも頼んでたものが届いたと連絡があったので、現品を見たいとのこと。
私には少々場違いな感じが否めなかったけれど、姉さまもいることだし(?)どきどきしながら飛び込んだ。
お店の人に入荷したら連絡をもらえるように頼んでたという旨を伝えると商品が出てきた。
変わったデザインの、すんごいきれいな靴。
どうやらコレクションの映像を見て一目惚れしたらしい。
験し履きした感じもすんごいキレイで見惚れたけれど、金額を見てびっくり。
…いくらなんでも、普段履きの靴にそんな金額払えないよー( ̄○ ̄;)!
恐れおののく私を尻目に、買う気満々のお姉さま。
けれど靴のストラップがリボン状になってるのがどうにもお気に召さなかったらしい。
履いてみた感じをデジカメで撮って、対応は保留。
そのあと、鞄やら服やらアクセサリーを眺めて店を出る。
暫し非日常を体験した後、引き続きアランジショップを目指して歩く。
ちょろちょろ迷いはしたけれど、ようやっと到着。
本当はてつくん(ワイヤーフォックステリア)に会いたかったけれど、あいにく不在。
少々がっかりしながら、少しばかりグッズを買って、アランジカフェで一休み。
歩き疲れて小腹がすいてた私たちはライトミールを狙っていたけれど、すべて売り切れ。
仕方なく姉さまはケーキセット、私はよだれちゃんのチョコレートパフェたらいうものを頼んだ。
ちょっと量は少なめだけど、甘さ控えめで美味しい。
ここでもまた、作業の話だの日常の話だのに花が咲く。
…一体、私たちは何時間喋れば気が済むんだろう?(^-^;
アランジカフェでもだべりすぎて、ばつが悪くなって撤収。
そのあとまた当て所なくふらふらと歩き、フレッシュネスバーガーへ。
ここでは姉さまはシュリンプトルティーヤとレモン&クランベリーソーダ、私はベーコンオムレツバーガーとオレンジティをチョイス。
性懲りもなく話したおす。
途中、ちょっと話の齟齬で雰囲気悪くなったけれど、ちゃんと思ってることを話し合ってまた機嫌よく話を続ける。
ここでもまた散々喋り倒して、いよいよお開きに。
駅に向かう途中、姉さまがお土産を買いたいというのでついて行くと、たこ焼き屋さんに到着。
どうやらお姉さまが古くからなじみの店らしく、店員さんがご機嫌。
焼きあがるのを待つ間、何個も焼きたてのたこ焼きを食べさせてもらう。
…口の中が大やけどだったけれど、外がかりっとしてて中がとろりとしてる味は絶品♪
また来たいなぁと思ってしまうお店だった。
2人してたこ焼きの袋を提げて駅へ向かう。
次回こそ、フラれた料理店でリベンジディナー大会をしようねと固く約束して解散。
あつあつのたこ焼きを提げて、家路を急いだ。
…明日から仕事だというのに、午前様をかましてしまった(;^_^A
いつもなら寝ているはずの金岡両親が珍しく起きていたので、お土産のたこ焼きを広げる。
醤油味のたこ焼きとソース味のたこ焼きを並べて親子3人(+くれくれプードルさん)夜中にたこ焼きを黙々と食べている。
姉さまに教えてもらったとおり、醤油味のたこ焼きをポン酢で食べたら、めちゃめちゃ美味しくて感動(*^-^*)
気分良く食べ歩きな一日を終える。
予定がぼしゃっても何しても。
結局私と姉さまは美味しい食事と楽しい会話があれば十分らしい。
あとどれくらい、こんな風に過ごせるかは判らないけれど。
出来るだけ長い間、こんな時間が取れればいいなぁと思う。
どの店に食べに行くのか以外は直前になるまで決まらないのがお約束な二人。
昨晩、日付が変わった頃に何時集合にするかメールで問い合わせると、「金岡さんの起きる時間に合わせる?(笑)」とのこと(爆)
「竜樹さんの術後は順調?」という質問を用件の前に添えてあるのが、何とも姉さまらしいなと思いながら、お返事打ちながら寝てしまった(-_-;)
…目が覚めたら、9時だった。
慌てて返事を送る。
「お返事遅くなって、ごめんなさい。
ランチ14時までらしいので13時頃はいかがでしょう。
もっと早いのがよかったらあわせます(*^_^*)」
ほどなくメールが返ってくる。
「私もそれ位が良いです。
12時過ぎに着く気持ちで(笑)行きます」
その後待ち合わせ場所を協議。
メールで埒があかなくなってきたので、電話でお話。
今日食事をする店のある近辺は、私がまったくと言っていいほど土地鑑がない場所。
ひとまずパソコンで店の場所を確認しながらどこで待ち合わせするのがいいのか打ち合わせて電話を切り、慌てて出かける用意をする。
念のため、パソコンのディスプレイに映ってる店の地図をデジカメで撮影して鞄に入れておいた。
外は昨日とは違って、いいお天気。
だけど、何となく蒸し暑い。
発作的に薄着にしたのは正解だったなぁと感じたのは、坂道を駆け下りて駅に着いてからだった。
電車に乗っても駅をひとつ通過するごとに人口密度が増すせいで、車内の温度は上がる一方。
乗り換えの駅に着く頃にはよろよろになっていた。
電車を乗り換えて移動してると、微妙に間に合わない感じ。
どんなに早く起きて用意をしようとも、何故か5分から10分ほど遅れるコースに入る。
姉さまにひとまず連絡しようとメールを打っていると、携帯にメールが飛び込む。
…姉さまも遅刻コースだったらしい
安心してはならないけれど、ちょっとだけ安心して移動を繰り返す。
待ち合わせの駅に着いて改札を出ると、相変わらず姉さまは目立つ。
着るもの持つものすべてにおいて、仕立てのいいものばかりだから立ってるだけで目立つ。
申し訳なさげにそばに寄っていって、そのまま目的の店に歩いていく。
デジカメの画像を見ながら、あぁでもないこうでもないと言いながら歩き、いざ店に着くと……
…料理屋さん、休みだった・゜・(ノД`;)・゜・
「確か、定休日は日曜日だけって書いてなかった?」
「あちゃらさんの国の方は日曜日も祝日もいっしょくたなんかも知れへんね(^-^;」
いきなり出鼻を挫かれ、当てもなく彷徨う女が2人。
気がつくと、アメリカ村まで出ていた。
取り敢えず通りがかりのイタリア料理店に飛び込み、二人でラザニアセットを食べる。
食事を摂りながら、日頃の愚痴だのワールドサッカーの話だのいろんな方面に花が咲く。
これまで姉さまに依頼された作業のまとまったものを広げて、あぁだこうだと話をしていたけれど、さすがに居座りすぎと感じて移動。
また当てもなくふらりふらりと歩き始める。
ビッグステップ内のアランジアロンゾの店に寄って、ふとアランジアロンゾの本店にいったことがないという話になった。
移転する前はしょっちゅう行っていたのだけど、移転してからは土地鑑がないあまりすっかりご無沙汰してた。
ちょうど最初の料理屋に蹴られたこともあって、不完全燃焼起こしてた2人はそのまま寄り道しながらアランジアロンゾの本店に向かうことにした。
途中、お米ギャラリーに寄って、一休みがてらお話し、その後姉さまが寄りたい店があるというので、さるブランドの直営店に飛び込む。
何でも頼んでたものが届いたと連絡があったので、現品を見たいとのこと。
私には少々場違いな感じが否めなかったけれど、姉さまもいることだし(?)どきどきしながら飛び込んだ。
お店の人に入荷したら連絡をもらえるように頼んでたという旨を伝えると商品が出てきた。
変わったデザインの、すんごいきれいな靴。
どうやらコレクションの映像を見て一目惚れしたらしい。
験し履きした感じもすんごいキレイで見惚れたけれど、金額を見てびっくり。
…いくらなんでも、普段履きの靴にそんな金額払えないよー( ̄○ ̄;)!
恐れおののく私を尻目に、買う気満々のお姉さま。
けれど靴のストラップがリボン状になってるのがどうにもお気に召さなかったらしい。
履いてみた感じをデジカメで撮って、対応は保留。
そのあと、鞄やら服やらアクセサリーを眺めて店を出る。
暫し非日常を体験した後、引き続きアランジショップを目指して歩く。
ちょろちょろ迷いはしたけれど、ようやっと到着。
本当はてつくん(ワイヤーフォックステリア)に会いたかったけれど、あいにく不在。
少々がっかりしながら、少しばかりグッズを買って、アランジカフェで一休み。
歩き疲れて小腹がすいてた私たちはライトミールを狙っていたけれど、すべて売り切れ。
仕方なく姉さまはケーキセット、私はよだれちゃんのチョコレートパフェたらいうものを頼んだ。
ちょっと量は少なめだけど、甘さ控えめで美味しい。
ここでもまた、作業の話だの日常の話だのに花が咲く。
…一体、私たちは何時間喋れば気が済むんだろう?(^-^;
アランジカフェでもだべりすぎて、ばつが悪くなって撤収。
そのあとまた当て所なくふらふらと歩き、フレッシュネスバーガーへ。
ここでは姉さまはシュリンプトルティーヤとレモン&クランベリーソーダ、私はベーコンオムレツバーガーとオレンジティをチョイス。
性懲りもなく話したおす。
途中、ちょっと話の齟齬で雰囲気悪くなったけれど、ちゃんと思ってることを話し合ってまた機嫌よく話を続ける。
ここでもまた散々喋り倒して、いよいよお開きに。
駅に向かう途中、姉さまがお土産を買いたいというのでついて行くと、たこ焼き屋さんに到着。
どうやらお姉さまが古くからなじみの店らしく、店員さんがご機嫌。
焼きあがるのを待つ間、何個も焼きたてのたこ焼きを食べさせてもらう。
…口の中が大やけどだったけれど、外がかりっとしてて中がとろりとしてる味は絶品♪
また来たいなぁと思ってしまうお店だった。
2人してたこ焼きの袋を提げて駅へ向かう。
次回こそ、フラれた料理店でリベンジディナー大会をしようねと固く約束して解散。
あつあつのたこ焼きを提げて、家路を急いだ。
…明日から仕事だというのに、午前様をかましてしまった(;^_^A
いつもなら寝ているはずの金岡両親が珍しく起きていたので、お土産のたこ焼きを広げる。
醤油味のたこ焼きとソース味のたこ焼きを並べて親子3人(+くれくれプードルさん)夜中にたこ焼きを黙々と食べている。
姉さまに教えてもらったとおり、醤油味のたこ焼きをポン酢で食べたら、めちゃめちゃ美味しくて感動(*^-^*)
気分良く食べ歩きな一日を終える。
予定がぼしゃっても何しても。
結局私と姉さまは美味しい食事と楽しい会話があれば十分らしい。
あとどれくらい、こんな風に過ごせるかは判らないけれど。
出来るだけ長い間、こんな時間が取れればいいなぁと思う。
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今より機嫌のいい明日
2002年9月15日昨日は気が抜けたのか1日頭痛に苦しんだ。
手術が終わって竜樹さんが無事であることも両親にはまだ伝えられていない。
…どうも、私はタイミングの計り方がへったくそなんだよなぁ
臆せずに言えばいいようなものだけど、竜樹さんの件については付き合い始めの頃から随分抵抗があったので、どうしても慎重になってしまう。
今日は昼から髪を切りに行った後、竜樹さんの病院に行く予定。
カーン様に会いに札幌に行く前日に髪を切ったのが最後だから、かれこれ3ヶ月くらい放りっぱなしだったことになる。
昨日やっと予約の電話を入れたけれど、どんな髪型にしてもらうのかも、どんな色に染めるのかも決めていない。
ただ、竜樹さんが手術室に向かう前に「髪の毛、もう少し落ち着いた色にしときや」と言い残したことだけが頭に残ってる。
手術室に入る前に言うことってよっぽどのことだと思うので、私の頭の色はよっぽど派手な色に化けていたのだろうかと考えてしまう。
ひとまず夏の日差しで色の抜けてしまった部分を切り落として、少し落ち着いたトーンの色を入れてもらおう。
ぼんにゃりと考えながら用意をして、出かけた。
外は鈍色の空。
今にも雨が降り出しそう。
肌に触れる空気も湿気を帯びていて、蒸し暑くて仕方がない。
こんな天気の時は、竜樹さんが冷暖房完備で一定温度に保たれている病院にいてくれてることをありがたいと思う。
美容院に着いて、鏡の前に置いてある本とにらめっこしながら髪形を考える。
今まで同じ店で何度も髪を整えてもらうこと自体なかったけれど、去年個々でお世話になってから妙に気に入って、最近はここで定着。
…といっても、早くて3ヶ月、長いときは半年くらい来ないのだけど(^-^;
本を片手に「今度はこんなんにしようと思うんです」と言うと、「短いですよ、これ。本当にいいんですか?」と何度も聞き返される。
そんなにあわんかなぁと思って、こころもち写真よりも長めで決着。
あとは美容師さんにおまかせ。
カットは担当の人がするけれど、他のことはいろんな人が立ち代り入れ替わり…
カラーリングをしてくれてる美容師さんは、確か前の時もカラーリングしてくれた人。
この方よく覚えてはる人で、そんなに頻繁にくる訳でない私の嗜好をよく覚えていらっしゃる。
私は美容院で本を出されると、外国のファッション雑誌系の本を1冊だけ貰ってずーーっとそれをゆっくり読んでいる。
カラーリングをしてる間読むための本を持ってきてくれはった時も、外国ファッション誌の日本語版を1冊だけ持ってきてくれた。
…すごーい♪(・∀・)
しょうもないことで何だか感動。
会社でたまに接客せざるを得ないことがあるとおたおたするけれど、こんな風にするといいんだぁとその美容師さんがしてはることをちらちらと見ながら、ファッション誌に目をやる。
そういう人間ウォッチも密かに好きな金岡霄。
カット・カラーリングで3時間近く座りっぱなしで少々疲れたけれど。
すっかりキレイにしてもらって、ご機嫌さん。
「雨が降りそうだから…」とお店の人がくれたビニール傘を持って、竜樹さんの病院に向かう。
電車を乗り継ぎ乗り継ぎして、病院に到着。
鰻の寝床みたいな通路を歩いてエレベーターに乗り、竜樹さんのいる部屋に向かう。
「…おー、来てくれたんかぁ(*^-^*)」
竜樹さんは手術の日よりもずっと顔色がいい。
おまけにベッドの上で身体を起こしておられる。
「身体起こしてて、大丈夫ですか?」
「昨日はさすがに痛うてしゃあなかったけど、今日は随分マシやねん」
ほにゃと笑う竜樹さんを見てると、目を疑う。
正直、手術ひとつしただけでこんなに違うなんて思わなかったから。
ただただびっくりしていた。
「…竜樹さーん、買ってきたでぇ」
患者さんと思しき人が買い物袋を提げてやってくる。
「おう、悪いな」
そう言って買い物袋から新聞を受け取り、お金を払う。
…………………\(◎0◎;)/
「…竜樹さん。まさか人を使ったんじゃ(-"-;)」
「手術前は自分で売店まで買いに行っててんけど、今日日曜で売店休みやしこの部屋出られへんから、買ってきてもらえるよう頼んでん(*^-^*)」
「そうなんっすよー。俺たちメル友なんです♪」
お使い頼まれた患者さん、パジャマのポケットからすちゃっと携帯を取り出す。
……………………………(゜д゜)……………
「病院、携帯使ったらダメなんちゃいますのん?」
「いいんすよー、みんな使ってるしー♪」
「いい訳ないやないですか」
「音は切ってるし、大丈夫っすよー♪」
「…みたいやで?」
…そういう問題か?(-_-;)
全く呆れた不良患者たちである。
暫く賑やかに3人で話し、買い物をしてきてくれた患者さんを探していた看護婦さんに患者さんは強制連行されて病室に戻っていった。
「ここにいはる人はみんなあんな感じなんですか?」
「そやねん、面白いやろー?(*^-^*)」
…何ともけったいな病院である。
竜樹さんに頼まれて前にいた病室に時々物を取りに行っては戻ってを繰り返す。
その間も何人かの患者さんがふらっとやってきてはまた出て行く。
前の病院の集中治療室じゃありえないような風景。
…どうりで竜樹さんの機嫌が良いわけだ。
妙に納得してしまった。
竜樹さんが夕飯を摂るまで部屋であれこれ手伝って。
ご褒美にと、夕飯についてきたメロンを貰った。
:*.;".*・;・^;・:\(*^▽^*)/:・;^・;・*.";.*:
病院食なのに、めちゃめちゃ甘いメロン。
こんないい食事が出る病院があるなんて知らなかった。
びっくりすること続きで少々疲れてしまったけれど、竜樹さんが元気そうにしてくれてることがただ嬉しい。
帰る前、ふと気になって聞いてみたら、思わぬ答が返ってきてがっかりしながらも妙に納得。
何事につけても、意欲的になってる竜樹さんを嬉しく思いながら病室を後にした。
帰る電車の中からお友達への報告メールを打ち、夜空に放つ。
何度か移動を繰り返してるところに、メールが飛び込む。
「めざしを今度来る時に買って来て。もちろん、既に焼いてあるのをね。
コンビニで売ってるやつ。多めに買って持って来てくれる!(^○^)」
………………ヾ(>▽<)ゞ
「めざし」というタイトルを見るなり、吹き出してしまった。
…カルシウム摂って、骨を強くしながら元気になるんだね?
連休明けには元の部屋に戻って、リハビリを始める竜樹さん。
傷口が痛んだりしないだろうかと、かつての記憶を思い起こしては胸に痛みが走るけれど。
前よりよくなるために、今を生きてる。
竜樹さんが生きて頑張ろうとする気持ちを上手にサポートできるように頑張ろう。
そうして、今より機嫌のよい明日を手に入れよう。
手術が終わって竜樹さんが無事であることも両親にはまだ伝えられていない。
…どうも、私はタイミングの計り方がへったくそなんだよなぁ
臆せずに言えばいいようなものだけど、竜樹さんの件については付き合い始めの頃から随分抵抗があったので、どうしても慎重になってしまう。
今日は昼から髪を切りに行った後、竜樹さんの病院に行く予定。
カーン様に会いに札幌に行く前日に髪を切ったのが最後だから、かれこれ3ヶ月くらい放りっぱなしだったことになる。
昨日やっと予約の電話を入れたけれど、どんな髪型にしてもらうのかも、どんな色に染めるのかも決めていない。
ただ、竜樹さんが手術室に向かう前に「髪の毛、もう少し落ち着いた色にしときや」と言い残したことだけが頭に残ってる。
手術室に入る前に言うことってよっぽどのことだと思うので、私の頭の色はよっぽど派手な色に化けていたのだろうかと考えてしまう。
ひとまず夏の日差しで色の抜けてしまった部分を切り落として、少し落ち着いたトーンの色を入れてもらおう。
ぼんにゃりと考えながら用意をして、出かけた。
外は鈍色の空。
今にも雨が降り出しそう。
肌に触れる空気も湿気を帯びていて、蒸し暑くて仕方がない。
こんな天気の時は、竜樹さんが冷暖房完備で一定温度に保たれている病院にいてくれてることをありがたいと思う。
美容院に着いて、鏡の前に置いてある本とにらめっこしながら髪形を考える。
今まで同じ店で何度も髪を整えてもらうこと自体なかったけれど、去年個々でお世話になってから妙に気に入って、最近はここで定着。
…といっても、早くて3ヶ月、長いときは半年くらい来ないのだけど(^-^;
本を片手に「今度はこんなんにしようと思うんです」と言うと、「短いですよ、これ。本当にいいんですか?」と何度も聞き返される。
そんなにあわんかなぁと思って、こころもち写真よりも長めで決着。
あとは美容師さんにおまかせ。
カットは担当の人がするけれど、他のことはいろんな人が立ち代り入れ替わり…
カラーリングをしてくれてる美容師さんは、確か前の時もカラーリングしてくれた人。
この方よく覚えてはる人で、そんなに頻繁にくる訳でない私の嗜好をよく覚えていらっしゃる。
私は美容院で本を出されると、外国のファッション雑誌系の本を1冊だけ貰ってずーーっとそれをゆっくり読んでいる。
カラーリングをしてる間読むための本を持ってきてくれはった時も、外国ファッション誌の日本語版を1冊だけ持ってきてくれた。
…すごーい♪(・∀・)
しょうもないことで何だか感動。
会社でたまに接客せざるを得ないことがあるとおたおたするけれど、こんな風にするといいんだぁとその美容師さんがしてはることをちらちらと見ながら、ファッション誌に目をやる。
そういう人間ウォッチも密かに好きな金岡霄。
カット・カラーリングで3時間近く座りっぱなしで少々疲れたけれど。
すっかりキレイにしてもらって、ご機嫌さん。
「雨が降りそうだから…」とお店の人がくれたビニール傘を持って、竜樹さんの病院に向かう。
電車を乗り継ぎ乗り継ぎして、病院に到着。
鰻の寝床みたいな通路を歩いてエレベーターに乗り、竜樹さんのいる部屋に向かう。
「…おー、来てくれたんかぁ(*^-^*)」
竜樹さんは手術の日よりもずっと顔色がいい。
おまけにベッドの上で身体を起こしておられる。
「身体起こしてて、大丈夫ですか?」
「昨日はさすがに痛うてしゃあなかったけど、今日は随分マシやねん」
ほにゃと笑う竜樹さんを見てると、目を疑う。
正直、手術ひとつしただけでこんなに違うなんて思わなかったから。
ただただびっくりしていた。
「…竜樹さーん、買ってきたでぇ」
患者さんと思しき人が買い物袋を提げてやってくる。
「おう、悪いな」
そう言って買い物袋から新聞を受け取り、お金を払う。
…………………\(◎0◎;)/
「…竜樹さん。まさか人を使ったんじゃ(-"-;)」
「手術前は自分で売店まで買いに行っててんけど、今日日曜で売店休みやしこの部屋出られへんから、買ってきてもらえるよう頼んでん(*^-^*)」
「そうなんっすよー。俺たちメル友なんです♪」
お使い頼まれた患者さん、パジャマのポケットからすちゃっと携帯を取り出す。
……………………………(゜д゜)……………
「病院、携帯使ったらダメなんちゃいますのん?」
「いいんすよー、みんな使ってるしー♪」
「いい訳ないやないですか」
「音は切ってるし、大丈夫っすよー♪」
「…みたいやで?」
…そういう問題か?(-_-;)
全く呆れた不良患者たちである。
暫く賑やかに3人で話し、買い物をしてきてくれた患者さんを探していた看護婦さんに患者さんは強制連行されて病室に戻っていった。
「ここにいはる人はみんなあんな感じなんですか?」
「そやねん、面白いやろー?(*^-^*)」
…何ともけったいな病院である。
竜樹さんに頼まれて前にいた病室に時々物を取りに行っては戻ってを繰り返す。
その間も何人かの患者さんがふらっとやってきてはまた出て行く。
前の病院の集中治療室じゃありえないような風景。
…どうりで竜樹さんの機嫌が良いわけだ。
妙に納得してしまった。
竜樹さんが夕飯を摂るまで部屋であれこれ手伝って。
ご褒美にと、夕飯についてきたメロンを貰った。
:*.;".*・;・^;・:\(*^▽^*)/:・;^・;・*.";.*:
病院食なのに、めちゃめちゃ甘いメロン。
こんないい食事が出る病院があるなんて知らなかった。
びっくりすること続きで少々疲れてしまったけれど、竜樹さんが元気そうにしてくれてることがただ嬉しい。
帰る前、ふと気になって聞いてみたら、思わぬ答が返ってきてがっかりしながらも妙に納得。
何事につけても、意欲的になってる竜樹さんを嬉しく思いながら病室を後にした。
帰る電車の中からお友達への報告メールを打ち、夜空に放つ。
何度か移動を繰り返してるところに、メールが飛び込む。
「めざしを今度来る時に買って来て。もちろん、既に焼いてあるのをね。
コンビニで売ってるやつ。多めに買って持って来てくれる!(^○^)」
………………ヾ(>▽<)ゞ
「めざし」というタイトルを見るなり、吹き出してしまった。
…カルシウム摂って、骨を強くしながら元気になるんだね?
連休明けには元の部屋に戻って、リハビリを始める竜樹さん。
傷口が痛んだりしないだろうかと、かつての記憶を思い起こしては胸に痛みが走るけれど。
前よりよくなるために、今を生きてる。
竜樹さんが生きて頑張ろうとする気持ちを上手にサポートできるように頑張ろう。
そうして、今より機嫌のよい明日を手に入れよう。
Black Jackには逢えなかったけれど…(後編)
2002年9月14日ふと窓の外にやっていた視線を待合室に戻す。
時計を見ると、13時30分だった。
終了予定は14時。
あと30分ほどで終わるはずだけれど、執刀医の先生が遅れて来られてるので、具体的に何時終わるかは判らない。
「…ちょっと俺、飯食ってくるわぁ」
………………( ̄○ ̄;)!
びっくりする竜樹母さんと私を他所に、竜樹父さんは出かけていってしまった。
竜樹母さんは一生懸命話し掛けてこられる。
私は少し気もそぞろだけど、それに精一杯答えてる。
…不安を拭いたいのがよく判るから。
待合で話していると、どうしても竜樹さんの話ばかりになる。
竜樹父さんにはそれがちょっと重たかったのかもしれない。
3人三様の手術に対する想いがある。
…本当は私も少しだけ一人でいたかったけれど。
無駄に泣いたり取り乱したりしないだけよいのかもしれないと言い聞かせながら、竜樹父さんのお帰りを待った。
竜樹母さんと話しているうちに竜樹父さんが戻ってこられて、「飯でも食って来いや」といわれたので、2人で食堂に行く。
食堂の窓から見える景色は光溢れるもので、気分的に何だかそぐわない感じ。
物を口にする心境じゃないけれど、口にしなければ心配をかけるから、ひとまず食べることにした。
黙々と食べ、竜樹母さんが食べ終わるのを待ってコーヒーを運んでもらった時、窓をこつこつ叩く音がする。
…見上げると、竜樹父さんだった。
「終わったで」と言ってはるのが、口元から見て取れる。
慌ててコーヒーを流し込み、竜樹母さんをせかして(ごめんなさい)食堂の外に出る。
「竜樹さんは?」
「集中治療室で寝てよるらしいわ。(執刀医の)先生がお母さん探してたから、見にきたんや」
執刀医の先生はここの先生じゃないから、手術が終わったらすぐに帰ってしまわれる。
ひとまず集中治療室のある階に戻り、看護婦さんに執刀医の先生の居場所を聞く。
ある科の外来にいると判り、竜樹さんのご両親はそちらに向かうことに。
私も会いに行こうか、迷った。
3年前、ばっさりと部外者呼ばわりしたくせに、ご両親には「いつも診察について来られる方は(竜樹さんと)どのようなご関係の方ですか?」などと問い掛ける、訳判らん人。
あの時感じたことは決して私とって愉快なことではなかったから、別にわざわざ会いに行ってその傷口広げる必要なんてなかったのかもしれないけれど。
…私は3年間、逃げずに「ここ」にいたのだと、ただ顔を見せることで知らせられたらそれでよかったのかもしれない。
それが所詮自己満足以外の何物でもなかったとしても…
「霄ちゃんも来る?」
竜樹母さんに聞かれて惑ってると、「霄ちゃんは竜樹の傍にいてやってくれへんか?」と竜樹父さん。
確かにまともに相手にされるかどうか判らない執刀医に会いに行くよりも、手術を終えて眠ってるだろう竜樹さんの傍にいる方が正しい対応だと思ったから、その場に残った。
竜樹さんのご両親が移動されたのを確認して、集中治療室に入る。
青白い顔をして酸素マスクをかけて眠ってる竜樹さん。
手術がどれほど大掛かりだったのか、何となくだけど見て取れる。
「…霄ぁ、親父らどないしたん?」
「執刀医の先生、探しに行ってはるよ?」
「………そっかぁ」
暫くすると、竜樹さんのご両親も戻ってこられた。
「…先生、どうしてはった?」
「…いやぁ、外来のとこにいはる言うんでな、行って来たんや。
身体の中の状態がどうなってたんか教えてもらって、お礼言うたら喜んでくれはってなぁ……」
「親父らだけ、ずるいわ。俺かってお礼言いたかったのに……(-"-;)
先生、俺には『竜樹さん、もう大丈夫ですよ』って言ってくれただけやねんでぇ。
ホンマに愛想も何もない、ブラックジャックみたいな人や……」
青白い顔をしてむくれてる竜樹さんはまるで子供のよう。
途中喋りづらくなったのか、息苦しくなったのか、酸素マスクを外してしまった。
「…竜樹さん、そんなん勝手にはずしたらあかへんやん?」
「…息しずらいねや(-"-;)」
そう言って、暫く酸素マスクを顎の下に持ってきてたけど、入ってきた看護婦さんに見つかって、また口元にかけられた。
様子を見に来た担当医の先生から、竜樹さんの手術のこと、身体の中がどうなってたのかを聞かされる。
…一体、何をどうしたらそんなことになるんよ?と思うようなことが、彼の身体の中で起こっていたんだ。
彼の病気の根本を阻止し、だけど彼の身体に痛みを齎したそれを欲しいなぁと思ったけれど、竜樹さんのご両親がいる手前、お願いするのをやめてしまった。
「……悪い、一人にしてくれへんかぁ」
そう言われたので、集中治療室の外に出る。
…私は一体、何をしに来たのだろう?
病院に着くのは遅れるわ、手術室の前には行けないわ。
無駄に喋りを続けるわ、執刀医には会えないわ。
本当に役に立ったかどうかも判らないまま、ぼんにゃりと竜樹さんのご両親の動向を眺める。
暫くすると、帰ることになったのでひとまず竜樹さんにご挨拶。
「…今日はありがとうなぁ。
これから大変やと思うけど、無理しすぎへんようになぁ。
この後のことは頼んだで」
そう言って、そっと手に触れる。
いつも暖かい竜樹さんの手が冷たくてどきりとしたけれど。
取り敢えず竜樹さんのご両親と一緒に竜樹邸に行って、頼まれていたものを取って来ないとならない。
昨日の晩、殆ど寝ずにいてしんどそうになさってる竜樹さんのご両親が楽に帰れるようにタクシーを手配。
待ち時間の間に会社に電話を入れ、手術が無事に終わったことと締日にもかかわらず休みを取らせてくれたことのお礼を同僚さんに伝える。
「竜樹くんに『おめでとう』って伝えておいてね」
最後の最後までありがたいなぁと思いながら電話を切り、迎えに来たタクシーに乗って竜樹邸へ向かう。
竜樹邸に着いて必要なものを取り出してると、ご両親が集まってまたお話大会。
暫くすると、竜樹父さんは気晴らしに外出、私は後片付けをした後、自宅へ戻った。
長い長い1日が終わった。
今日は区切りであって、これで終わりではない。
竜樹さんが敬愛するBlack Jackには逢えなかったけれど、立ち会えたことはよかったのかもしれない。
…どうして竜樹さんが執刀医の先生を「Brack Jack」と呼び、敬愛するのかも判った気がするから。
「竜樹さんをこちら側に連れて帰ってきてくださって、ありがとうございました」
いつかBlack Jackに会って、きちんと伝えられる日が来ることを楽しみにしながら、また続く道を歩いてく。
時計を見ると、13時30分だった。
終了予定は14時。
あと30分ほどで終わるはずだけれど、執刀医の先生が遅れて来られてるので、具体的に何時終わるかは判らない。
「…ちょっと俺、飯食ってくるわぁ」
………………( ̄○ ̄;)!
びっくりする竜樹母さんと私を他所に、竜樹父さんは出かけていってしまった。
竜樹母さんは一生懸命話し掛けてこられる。
私は少し気もそぞろだけど、それに精一杯答えてる。
…不安を拭いたいのがよく判るから。
待合で話していると、どうしても竜樹さんの話ばかりになる。
竜樹父さんにはそれがちょっと重たかったのかもしれない。
3人三様の手術に対する想いがある。
…本当は私も少しだけ一人でいたかったけれど。
無駄に泣いたり取り乱したりしないだけよいのかもしれないと言い聞かせながら、竜樹父さんのお帰りを待った。
竜樹母さんと話しているうちに竜樹父さんが戻ってこられて、「飯でも食って来いや」といわれたので、2人で食堂に行く。
食堂の窓から見える景色は光溢れるもので、気分的に何だかそぐわない感じ。
物を口にする心境じゃないけれど、口にしなければ心配をかけるから、ひとまず食べることにした。
黙々と食べ、竜樹母さんが食べ終わるのを待ってコーヒーを運んでもらった時、窓をこつこつ叩く音がする。
…見上げると、竜樹父さんだった。
「終わったで」と言ってはるのが、口元から見て取れる。
慌ててコーヒーを流し込み、竜樹母さんをせかして(ごめんなさい)食堂の外に出る。
「竜樹さんは?」
「集中治療室で寝てよるらしいわ。(執刀医の)先生がお母さん探してたから、見にきたんや」
執刀医の先生はここの先生じゃないから、手術が終わったらすぐに帰ってしまわれる。
ひとまず集中治療室のある階に戻り、看護婦さんに執刀医の先生の居場所を聞く。
ある科の外来にいると判り、竜樹さんのご両親はそちらに向かうことに。
私も会いに行こうか、迷った。
3年前、ばっさりと部外者呼ばわりしたくせに、ご両親には「いつも診察について来られる方は(竜樹さんと)どのようなご関係の方ですか?」などと問い掛ける、訳判らん人。
あの時感じたことは決して私とって愉快なことではなかったから、別にわざわざ会いに行ってその傷口広げる必要なんてなかったのかもしれないけれど。
…私は3年間、逃げずに「ここ」にいたのだと、ただ顔を見せることで知らせられたらそれでよかったのかもしれない。
それが所詮自己満足以外の何物でもなかったとしても…
「霄ちゃんも来る?」
竜樹母さんに聞かれて惑ってると、「霄ちゃんは竜樹の傍にいてやってくれへんか?」と竜樹父さん。
確かにまともに相手にされるかどうか判らない執刀医に会いに行くよりも、手術を終えて眠ってるだろう竜樹さんの傍にいる方が正しい対応だと思ったから、その場に残った。
竜樹さんのご両親が移動されたのを確認して、集中治療室に入る。
青白い顔をして酸素マスクをかけて眠ってる竜樹さん。
手術がどれほど大掛かりだったのか、何となくだけど見て取れる。
「…霄ぁ、親父らどないしたん?」
「執刀医の先生、探しに行ってはるよ?」
「………そっかぁ」
暫くすると、竜樹さんのご両親も戻ってこられた。
「…先生、どうしてはった?」
「…いやぁ、外来のとこにいはる言うんでな、行って来たんや。
身体の中の状態がどうなってたんか教えてもらって、お礼言うたら喜んでくれはってなぁ……」
「親父らだけ、ずるいわ。俺かってお礼言いたかったのに……(-"-;)
先生、俺には『竜樹さん、もう大丈夫ですよ』って言ってくれただけやねんでぇ。
ホンマに愛想も何もない、ブラックジャックみたいな人や……」
青白い顔をしてむくれてる竜樹さんはまるで子供のよう。
途中喋りづらくなったのか、息苦しくなったのか、酸素マスクを外してしまった。
「…竜樹さん、そんなん勝手にはずしたらあかへんやん?」
「…息しずらいねや(-"-;)」
そう言って、暫く酸素マスクを顎の下に持ってきてたけど、入ってきた看護婦さんに見つかって、また口元にかけられた。
様子を見に来た担当医の先生から、竜樹さんの手術のこと、身体の中がどうなってたのかを聞かされる。
…一体、何をどうしたらそんなことになるんよ?と思うようなことが、彼の身体の中で起こっていたんだ。
彼の病気の根本を阻止し、だけど彼の身体に痛みを齎したそれを欲しいなぁと思ったけれど、竜樹さんのご両親がいる手前、お願いするのをやめてしまった。
「……悪い、一人にしてくれへんかぁ」
そう言われたので、集中治療室の外に出る。
…私は一体、何をしに来たのだろう?
病院に着くのは遅れるわ、手術室の前には行けないわ。
無駄に喋りを続けるわ、執刀医には会えないわ。
本当に役に立ったかどうかも判らないまま、ぼんにゃりと竜樹さんのご両親の動向を眺める。
暫くすると、帰ることになったのでひとまず竜樹さんにご挨拶。
「…今日はありがとうなぁ。
これから大変やと思うけど、無理しすぎへんようになぁ。
この後のことは頼んだで」
そう言って、そっと手に触れる。
いつも暖かい竜樹さんの手が冷たくてどきりとしたけれど。
取り敢えず竜樹さんのご両親と一緒に竜樹邸に行って、頼まれていたものを取って来ないとならない。
昨日の晩、殆ど寝ずにいてしんどそうになさってる竜樹さんのご両親が楽に帰れるようにタクシーを手配。
待ち時間の間に会社に電話を入れ、手術が無事に終わったことと締日にもかかわらず休みを取らせてくれたことのお礼を同僚さんに伝える。
「竜樹くんに『おめでとう』って伝えておいてね」
最後の最後までありがたいなぁと思いながら電話を切り、迎えに来たタクシーに乗って竜樹邸へ向かう。
竜樹邸に着いて必要なものを取り出してると、ご両親が集まってまたお話大会。
暫くすると、竜樹父さんは気晴らしに外出、私は後片付けをした後、自宅へ戻った。
長い長い1日が終わった。
今日は区切りであって、これで終わりではない。
竜樹さんが敬愛するBlack Jackには逢えなかったけれど、立ち会えたことはよかったのかもしれない。
…どうして竜樹さんが執刀医の先生を「Brack Jack」と呼び、敬愛するのかも判った気がするから。
「竜樹さんをこちら側に連れて帰ってきてくださって、ありがとうございました」
いつかBlack Jackに会って、きちんと伝えられる日が来ることを楽しみにしながら、また続く道を歩いてく。
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Black Jackには逢えなかったけれど…(前編)
2002年9月13日…運命の朝はやってきた。
今日は竜樹さんの再手術の日。
昨晩降っていた雨はあがり、窓一面にペールブルーの空が広がる。
ぼんにゃりと用意をしながら、大切な人たちに届ける言葉を考える。
けれど、どれだけ考えてもたった一言しか出てこない。
「ありがとう」
そんな想いを拙い言葉に乗せて置手紙に代えた。
家を出ようとすると、いきなり金岡母からダメ出しを食らう。
病院に行くことを考えて選んだ服が彼女のお気に召さなかったらしい。
「時間ないんだから、しょうもないことでダメ出しせんといてよ!」
「もっとちゃんとして行ってよ!恥ずかしいじゃないの!」
竜樹さんの手術に立会いに行くのに、豪勢なカッコでもしろってかと思いながら、自室に帰り着替えてまたダメ食らって…(-_-;)
いい年齢してんだから、緊急事態の時まで麗々しく母親の言うことなんて聞いてんじゃありませんよと、自分自身に毒づきながら家を出て坂道を駆け下りる。
…電車は行ったところだった・゜・(ノД`;)・゜・
へたり込みそうになりながら鞄の中の携帯を取り出すとメールがひとつ。
大好きなお友達からだった。
手術の当日まで私と竜樹さんのことを心に留めていてくれたことが嬉しくて、お返事を飛ばす。
ほどなくホームに滑り込んできた電車に飛び乗り、昨日お参りにまで行ってくれたという友達にもお礼のメールを飛ばす。
乗り換えの駅に着いて離れたホームまでダッシュ。
そこからまた電車に乗ってさらに乗り換え。
次の乗り換えはもっと距離が離れているので、猛ダッシュかけたけれど電車は行ったところ・゜・(ノД`;)・゜・
…今度は15分も電車が来ない(-_-;)
駅を通過する電車を見るたびに、いらいらは募る。
「もう二度と母親の言うことになんて耳貸すもんか!」とか「手術室に入る前に竜樹さんに会えなくて、それっきり二度と逢えなくなったら…」とか第三者的にはかなり理不尽なことをいらいらと思いながら長い長い15分を過ごす。
多分、病院に着く頃には麻酔を打ってもらって私が来たことすら判らない状態だろう。
「こんな時にまで遅れるのかよ」と怒られるならまだしも、私が来たことすら判らなかったら?
長い15分をホームで過ごし、やっとこやってきた電車に飛び乗る。
電車に乗っても走り出したくなるような気持ちを抑えながら、じっとしてる。
病院の最寄駅に着き、脱兎の如く飛び出して病院まで走る。
…結局、20分以上遅れてしまった。
竜樹さんの病室に入ると、竜樹さんのご両親が来ておられて、竜樹さんは手術の準備のために体温を測り、皮下注射を打ってもらう準備に入っていた。
私が来るとは思ってなかった竜樹母さんはびっくり、9時に来ることになっていたはずの私が遅れてきたことに苦笑いの竜樹さん。
「………ホンマ、最後の最後までお前らしいわ」
「……ごめんなさい、足止め食らったんですよ。出かけしなに」
「………なんや、ややこしいことでもあったんか?」
「ううん、大したことじゃないんですよ。ホントに…」
そうして話してると、皮下注射を打つ準備をしてる看護婦さんが竜樹さんに尋ねる。
「ご家族の方ですか?」
「…いえ、違うんですよ?」
「違うんですか?」
「……俗に言う、彼女です」
病院関係者の方に私の続柄を話すとは思わなかった。
今度は私がびっくり目だ。
「皮下注射打ってもらったら、もう殆ど意識なくなるから。
言いたいことがあったら今いいやぁ?」
…この時、私どんな表情してたんだろう?
竜樹さんの顔をまっすぐ見るのが怖いけど、でも目を逸らしたくなくて。
ただじっと竜樹さんの顔を見ていた気がする。
その度に「どした?」って聞かれるのがちょっと辛くて、口を開くと泣いてしまいそうで、ぶつっと口を閉じたまま首を横に振るのが精一杯。
途中で看護婦さんが執刀医の先生の到着が遅れることを伝える。
時折、竜樹さんのご両親が出入りするけれど、殆どずっと2人でいたような気がする。
10時過ぎ。
何人かの看護婦さんが迎えにきた。
病室の外から幼稚園の年少さんくらいの子供さんがこちらを見ている。
「……よぉ、来てくれたんかぁ」
「おにーちゃん、がんばりや」
どうやら病院でこんな小さなお友達が出来てたらしい。
ベッドごと竜樹さんが部屋の外に出ると、何処からともなく人が集まってくる。
「竜樹はん、頑張りやぁ」
「彼女まで来てくれてんねんし、ちゃんと帰っておいでやぁ」
病院でお友達が出来てるあたりがいかにも竜樹さんらしいなぁと思いながら運ばれてく。
エレベータに乗せられる前、少しだけ握手するような形になった。
そして、ドアが閉まる。
本当は手術室の前にいたかったのだけど、この病院の手術室には付き添いの人が待ってるスペースがないらしい。
この後どこで手術が行われるのかも、私は知らない。
取り敢えず、一旦病院の外に出ることになった。
病院の近くの喫茶店でブランチを摂ることになる。
正直、何かを口にしたい心境じゃないけれど、へこんでますな表情を見せるわけにも行かず。
竜樹さんのご両親と共にモーニングを頼んだ。
やってきたたまごサンドのボリュームにも驚いたけれど、それを美味しいなぁと思って食べてる自分にも驚いた。
竜樹さんがしんどい時に自分がちゃんとご飯を食べたりそれなりに楽しい時間を過ごしてたりしたときに感じたことと同じことを思った。
けれど一人でへこみそうになると、竜樹さんのご両親が話し掛けてこられる。
それは店を出て、竜樹さんのいたフロアの待合に移動してからも同じ。
誰ともなく口を開き、それに話をあわせてはまた黙り…
誰にとっても、一人でいない方がよかったのかもしれない。
そのうち竜樹父さんがどこかに行って戻ってこられて教えてくれた。
「竜樹は向かいの棟の同じ階で手術受けとるみたいやで」
待合から手術室は見えなかったけれど。
暫く竜樹さんのご両親から離れてじっと向かいの棟を見つめていた。
…絶対に戻ってきてね
彼がBrack Jackと呼ぶ、ちらっとしかお目にかかったことのない執刀医の先生が竜樹さんを救い出してくれるますようにと、祈るような気持ちで暫く竜樹さんが今いるだろう病棟を眺めていた。
(字数オーバーしそうなので、翌日に続きます)
今日は竜樹さんの再手術の日。
昨晩降っていた雨はあがり、窓一面にペールブルーの空が広がる。
ぼんにゃりと用意をしながら、大切な人たちに届ける言葉を考える。
けれど、どれだけ考えてもたった一言しか出てこない。
「ありがとう」
そんな想いを拙い言葉に乗せて置手紙に代えた。
家を出ようとすると、いきなり金岡母からダメ出しを食らう。
病院に行くことを考えて選んだ服が彼女のお気に召さなかったらしい。
「時間ないんだから、しょうもないことでダメ出しせんといてよ!」
「もっとちゃんとして行ってよ!恥ずかしいじゃないの!」
竜樹さんの手術に立会いに行くのに、豪勢なカッコでもしろってかと思いながら、自室に帰り着替えてまたダメ食らって…(-_-;)
いい年齢してんだから、緊急事態の時まで麗々しく母親の言うことなんて聞いてんじゃありませんよと、自分自身に毒づきながら家を出て坂道を駆け下りる。
…電車は行ったところだった・゜・(ノД`;)・゜・
へたり込みそうになりながら鞄の中の携帯を取り出すとメールがひとつ。
大好きなお友達からだった。
手術の当日まで私と竜樹さんのことを心に留めていてくれたことが嬉しくて、お返事を飛ばす。
ほどなくホームに滑り込んできた電車に飛び乗り、昨日お参りにまで行ってくれたという友達にもお礼のメールを飛ばす。
乗り換えの駅に着いて離れたホームまでダッシュ。
そこからまた電車に乗ってさらに乗り換え。
次の乗り換えはもっと距離が離れているので、猛ダッシュかけたけれど電車は行ったところ・゜・(ノД`;)・゜・
…今度は15分も電車が来ない(-_-;)
駅を通過する電車を見るたびに、いらいらは募る。
「もう二度と母親の言うことになんて耳貸すもんか!」とか「手術室に入る前に竜樹さんに会えなくて、それっきり二度と逢えなくなったら…」とか第三者的にはかなり理不尽なことをいらいらと思いながら長い長い15分を過ごす。
多分、病院に着く頃には麻酔を打ってもらって私が来たことすら判らない状態だろう。
「こんな時にまで遅れるのかよ」と怒られるならまだしも、私が来たことすら判らなかったら?
長い15分をホームで過ごし、やっとこやってきた電車に飛び乗る。
電車に乗っても走り出したくなるような気持ちを抑えながら、じっとしてる。
病院の最寄駅に着き、脱兎の如く飛び出して病院まで走る。
…結局、20分以上遅れてしまった。
竜樹さんの病室に入ると、竜樹さんのご両親が来ておられて、竜樹さんは手術の準備のために体温を測り、皮下注射を打ってもらう準備に入っていた。
私が来るとは思ってなかった竜樹母さんはびっくり、9時に来ることになっていたはずの私が遅れてきたことに苦笑いの竜樹さん。
「………ホンマ、最後の最後までお前らしいわ」
「……ごめんなさい、足止め食らったんですよ。出かけしなに」
「………なんや、ややこしいことでもあったんか?」
「ううん、大したことじゃないんですよ。ホントに…」
そうして話してると、皮下注射を打つ準備をしてる看護婦さんが竜樹さんに尋ねる。
「ご家族の方ですか?」
「…いえ、違うんですよ?」
「違うんですか?」
「……俗に言う、彼女です」
病院関係者の方に私の続柄を話すとは思わなかった。
今度は私がびっくり目だ。
「皮下注射打ってもらったら、もう殆ど意識なくなるから。
言いたいことがあったら今いいやぁ?」
…この時、私どんな表情してたんだろう?
竜樹さんの顔をまっすぐ見るのが怖いけど、でも目を逸らしたくなくて。
ただじっと竜樹さんの顔を見ていた気がする。
その度に「どした?」って聞かれるのがちょっと辛くて、口を開くと泣いてしまいそうで、ぶつっと口を閉じたまま首を横に振るのが精一杯。
途中で看護婦さんが執刀医の先生の到着が遅れることを伝える。
時折、竜樹さんのご両親が出入りするけれど、殆どずっと2人でいたような気がする。
10時過ぎ。
何人かの看護婦さんが迎えにきた。
病室の外から幼稚園の年少さんくらいの子供さんがこちらを見ている。
「……よぉ、来てくれたんかぁ」
「おにーちゃん、がんばりや」
どうやら病院でこんな小さなお友達が出来てたらしい。
ベッドごと竜樹さんが部屋の外に出ると、何処からともなく人が集まってくる。
「竜樹はん、頑張りやぁ」
「彼女まで来てくれてんねんし、ちゃんと帰っておいでやぁ」
病院でお友達が出来てるあたりがいかにも竜樹さんらしいなぁと思いながら運ばれてく。
エレベータに乗せられる前、少しだけ握手するような形になった。
そして、ドアが閉まる。
本当は手術室の前にいたかったのだけど、この病院の手術室には付き添いの人が待ってるスペースがないらしい。
この後どこで手術が行われるのかも、私は知らない。
取り敢えず、一旦病院の外に出ることになった。
病院の近くの喫茶店でブランチを摂ることになる。
正直、何かを口にしたい心境じゃないけれど、へこんでますな表情を見せるわけにも行かず。
竜樹さんのご両親と共にモーニングを頼んだ。
やってきたたまごサンドのボリュームにも驚いたけれど、それを美味しいなぁと思って食べてる自分にも驚いた。
竜樹さんがしんどい時に自分がちゃんとご飯を食べたりそれなりに楽しい時間を過ごしてたりしたときに感じたことと同じことを思った。
けれど一人でへこみそうになると、竜樹さんのご両親が話し掛けてこられる。
それは店を出て、竜樹さんのいたフロアの待合に移動してからも同じ。
誰ともなく口を開き、それに話をあわせてはまた黙り…
誰にとっても、一人でいない方がよかったのかもしれない。
そのうち竜樹父さんがどこかに行って戻ってこられて教えてくれた。
「竜樹は向かいの棟の同じ階で手術受けとるみたいやで」
待合から手術室は見えなかったけれど。
暫く竜樹さんのご両親から離れてじっと向かいの棟を見つめていた。
…絶対に戻ってきてね
彼がBrack Jackと呼ぶ、ちらっとしかお目にかかったことのない執刀医の先生が竜樹さんを救い出してくれるますようにと、祈るような気持ちで暫く竜樹さんが今いるだろう病棟を眺めていた。
(字数オーバーしそうなので、翌日に続きます)
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新しい朝を迎えたら
2002年9月12日手術まであと1日。
昨晩、寝入った頃にメールの着信音が鳴った。
…竜樹さんからだ
はっきりしない意識のままで携帯を触って、メールを読む。
明日の手術の時間と予定、それに伴う指示が続いた後、少々不安定な内容の文章が続く。
けれどその不安定な部分が途中で切れていて今ひとつ理解に苦しむので、ボケた頭のまま続きがどんな話なのかを問い合わせるメールを打って、送信。
そのまま続きが来るのを待てずに、また意識は落ちていく。
朝起きて届いたメールを見ると、やっぱり気持ちが落ち着かないんだろうなぁという内容でどうしたらいいものか考えてしまった。
手術の前日に会いに行っても竜樹さんだって困るだろうし、他にもしないといけないことは竜樹さんから指示されている。
やるせない気持ちを抱えたまま、家を出る。
あぁでもない、こうでもないと落ち着かないまま文字を打っては飛ばす作業を繰り返してるところに、メールが飛び込む。
「親には連絡済!(*^-^*)」
昨夜のメールが心に引っかかったままだけれど、取り敢えずするべきことはひとつ終わってしまった。
あとは竜樹さんの不安を手術前までにどうやって取り除くかを考えるだけ。
小さな命題を抱えて、社屋に入った。
今日はボスも含め、事務所には同僚さんと私以外に誰もいない。
こんな日は決まっていない人めがけて電話がかかってきて、右往左往させられる羽目になる。
おまけに明日は締日なので、明日しないとならないことはすべて今日前倒しで済ませておかねばならない。
俄かに戦闘モードに切り替えて仕事がやってくる前にあるものは全て片付ける。
とにかく最小限度のストレスで済むようにと願いながら、だったか片付ける。
…どういう訳か、仕事はきれいに片付いた。
いつもなら訳の判らない電話に右往左往、その余波で本来するべき仕事が片付かないという悪循環に陥るはずが、今日はものの見事にそれがない。
ありがたいなぁと誰にともなく、感謝。
済んでしまった日のことをいろんなものから掘り起こして纏めながら、ずっと竜樹さんのことを考えていた。
今までいろんなことがあって、泣いたり笑ったりいろいろあって。
「あ、こんなこと言われたのが嬉しかったなぁ」とか「こんな言いかたされて泣いてもたなぁ」とかいろいろ思い返して、ふと気づく。
…なんだかんだ言っても、私は竜樹さんに大事にされてきたんだなぁ
自分が切羽詰った状態でも、意識の中の少しのスペースでも私のために割いてくれる。
窓ガラス蹴破って飛び降りたろかと思うような嫌なことも言われたことは確かにあったけれど、結局いつも心のどこかに私のことを置いていてくれている。
自分の生き死にがかかってなお、それは変わることがなくて。
…そんな竜樹さんに私からは何ができただろう?
私ができたことと言えば、自分のしんどさから逃れるために竜樹さんの手を振りほどかなかったことくらい。
それはただ執着心が強いだけの話かもしれないけれど。
今、私から竜樹さんにできること。
これから、私から竜樹さんにできること。
その答を探し続けてるうちに定時になり、事務所を後にした。
「明日竜樹くんに会ったら、よろしく言っといてね」
同僚さんが帰り際、そう声を掛けてくれた。
彼女は前の手術の時もそうやって何気なく竜樹さんと私のことを気にしていてくれた。
本当にありがたいなぁって思う。
今回の件で、竜樹さんが無事に戻ってこられるようにと気持ちを割いてくれた人がいる。
心に留めていてくれるだけでもありがたいのに、祈ってくれたり、お参りしてくれたり。
そんな報告を聞くと、それだけで嬉しくなる。
けれど、自分自身の不安は取れていない。
それを振り払いたいなぁと思ってると、竜樹さんの声を思い出して途中下車。
ショッピングモールに飛び込み、食べ物系の催物会場の誘惑を振り切り(笑)、紅茶のお店に行く。
そこで香りのよいブレンドティーを見つけたので、入れ物と一緒に購入した。
昔から、大勝負の前に紅茶を飲んでいる。
それをすれば絶対に勝てるとは思わないけれど、気分的に落ち着く気がするから。
そうすると、不思議と事態が悪くならなかった。
そんな話を以前竜樹さんにしてから、彼自身もちょっとした勝負事に出るときは「紅茶たてといてなぁ」と言ってくるようになった。
竜樹さんのことであっても、そうした時は悪いことは殆ど起こらなかった。
竜樹さんにお願いされたわけじゃないけれど、「紅茶いれたよ」と話したら、少しだけ安心してもらえるかもしれない。
かつての記憶に拠り所を求めるあたりがどうかしてる気はする。
けれど、それがちょっとした不安を払うならそれで十分。
機嫌よくまた電車に飛び乗り、家路を急いだ。
自宅に戻り夕飯を食べて後片付けをして、自室に戻ったら電話が鳴った。
…竜樹さんから、最後の連絡。
「昨日のメールの感じが変やったから、心配してたんですよ」
「今はもう大丈夫や。あとは先生にすべて託すだけや」
竜樹さんの声はしんどそうではあったけれど、どこか静かでとても落ち着いていた。
「紅茶、いれておきますからね」
「いいもの、見えそうか?」
「大丈夫だと思いますよ。『これ』って葉っぱに出逢ったから…」
「そっかぁ(*^-^*)」
そんなやり取りの後、明日のことを少し打ち合わせして、電話を切る。
リビングに降りて、買ってきた紅茶の袋を開く。
ジャスミンティをブレンドしたお茶のいい香りがする。
カップとポットを暖め、お茶を入れる。
竜樹さんから貰ったマグカップに注いだ紅茶を飲んだら、いつものように気分が落ち着いた。
…きっと、大丈夫。
夜が明け、太陽が手術の日の朝を連れてくる。
不安を木っ端微塵に出来たかどうかは判らないけれど、ただ元気な笑顔を取り戻すために竜樹さんの傍にいよう。
新しい朝を迎えたら、笑顔を取り戻しに行こう。
昨晩、寝入った頃にメールの着信音が鳴った。
…竜樹さんからだ
はっきりしない意識のままで携帯を触って、メールを読む。
明日の手術の時間と予定、それに伴う指示が続いた後、少々不安定な内容の文章が続く。
けれどその不安定な部分が途中で切れていて今ひとつ理解に苦しむので、ボケた頭のまま続きがどんな話なのかを問い合わせるメールを打って、送信。
そのまま続きが来るのを待てずに、また意識は落ちていく。
朝起きて届いたメールを見ると、やっぱり気持ちが落ち着かないんだろうなぁという内容でどうしたらいいものか考えてしまった。
手術の前日に会いに行っても竜樹さんだって困るだろうし、他にもしないといけないことは竜樹さんから指示されている。
やるせない気持ちを抱えたまま、家を出る。
あぁでもない、こうでもないと落ち着かないまま文字を打っては飛ばす作業を繰り返してるところに、メールが飛び込む。
「親には連絡済!(*^-^*)」
昨夜のメールが心に引っかかったままだけれど、取り敢えずするべきことはひとつ終わってしまった。
あとは竜樹さんの不安を手術前までにどうやって取り除くかを考えるだけ。
小さな命題を抱えて、社屋に入った。
今日はボスも含め、事務所には同僚さんと私以外に誰もいない。
こんな日は決まっていない人めがけて電話がかかってきて、右往左往させられる羽目になる。
おまけに明日は締日なので、明日しないとならないことはすべて今日前倒しで済ませておかねばならない。
俄かに戦闘モードに切り替えて仕事がやってくる前にあるものは全て片付ける。
とにかく最小限度のストレスで済むようにと願いながら、だったか片付ける。
…どういう訳か、仕事はきれいに片付いた。
いつもなら訳の判らない電話に右往左往、その余波で本来するべき仕事が片付かないという悪循環に陥るはずが、今日はものの見事にそれがない。
ありがたいなぁと誰にともなく、感謝。
済んでしまった日のことをいろんなものから掘り起こして纏めながら、ずっと竜樹さんのことを考えていた。
今までいろんなことがあって、泣いたり笑ったりいろいろあって。
「あ、こんなこと言われたのが嬉しかったなぁ」とか「こんな言いかたされて泣いてもたなぁ」とかいろいろ思い返して、ふと気づく。
…なんだかんだ言っても、私は竜樹さんに大事にされてきたんだなぁ
自分が切羽詰った状態でも、意識の中の少しのスペースでも私のために割いてくれる。
窓ガラス蹴破って飛び降りたろかと思うような嫌なことも言われたことは確かにあったけれど、結局いつも心のどこかに私のことを置いていてくれている。
自分の生き死にがかかってなお、それは変わることがなくて。
…そんな竜樹さんに私からは何ができただろう?
私ができたことと言えば、自分のしんどさから逃れるために竜樹さんの手を振りほどかなかったことくらい。
それはただ執着心が強いだけの話かもしれないけれど。
今、私から竜樹さんにできること。
これから、私から竜樹さんにできること。
その答を探し続けてるうちに定時になり、事務所を後にした。
「明日竜樹くんに会ったら、よろしく言っといてね」
同僚さんが帰り際、そう声を掛けてくれた。
彼女は前の手術の時もそうやって何気なく竜樹さんと私のことを気にしていてくれた。
本当にありがたいなぁって思う。
今回の件で、竜樹さんが無事に戻ってこられるようにと気持ちを割いてくれた人がいる。
心に留めていてくれるだけでもありがたいのに、祈ってくれたり、お参りしてくれたり。
そんな報告を聞くと、それだけで嬉しくなる。
けれど、自分自身の不安は取れていない。
それを振り払いたいなぁと思ってると、竜樹さんの声を思い出して途中下車。
ショッピングモールに飛び込み、食べ物系の催物会場の誘惑を振り切り(笑)、紅茶のお店に行く。
そこで香りのよいブレンドティーを見つけたので、入れ物と一緒に購入した。
昔から、大勝負の前に紅茶を飲んでいる。
それをすれば絶対に勝てるとは思わないけれど、気分的に落ち着く気がするから。
そうすると、不思議と事態が悪くならなかった。
そんな話を以前竜樹さんにしてから、彼自身もちょっとした勝負事に出るときは「紅茶たてといてなぁ」と言ってくるようになった。
竜樹さんのことであっても、そうした時は悪いことは殆ど起こらなかった。
竜樹さんにお願いされたわけじゃないけれど、「紅茶いれたよ」と話したら、少しだけ安心してもらえるかもしれない。
かつての記憶に拠り所を求めるあたりがどうかしてる気はする。
けれど、それがちょっとした不安を払うならそれで十分。
機嫌よくまた電車に飛び乗り、家路を急いだ。
自宅に戻り夕飯を食べて後片付けをして、自室に戻ったら電話が鳴った。
…竜樹さんから、最後の連絡。
「昨日のメールの感じが変やったから、心配してたんですよ」
「今はもう大丈夫や。あとは先生にすべて託すだけや」
竜樹さんの声はしんどそうではあったけれど、どこか静かでとても落ち着いていた。
「紅茶、いれておきますからね」
「いいもの、見えそうか?」
「大丈夫だと思いますよ。『これ』って葉っぱに出逢ったから…」
「そっかぁ(*^-^*)」
そんなやり取りの後、明日のことを少し打ち合わせして、電話を切る。
リビングに降りて、買ってきた紅茶の袋を開く。
ジャスミンティをブレンドしたお茶のいい香りがする。
カップとポットを暖め、お茶を入れる。
竜樹さんから貰ったマグカップに注いだ紅茶を飲んだら、いつものように気分が落ち着いた。
…きっと、大丈夫。
夜が明け、太陽が手術の日の朝を連れてくる。
不安を木っ端微塵に出来たかどうかは判らないけれど、ただ元気な笑顔を取り戻すために竜樹さんの傍にいよう。
新しい朝を迎えたら、笑顔を取り戻しに行こう。
明日はどうか…
2002年9月11日手術まであと2日。
今日から竜樹さんは手術の準備のため絶食に入る。
次にまともな食事を取れるのは手術後何日くらい経ってからになるんだろうか?
「絶食に入ったら、病院に来てもらってもまともな応対はできへんかもしれへんし」と仰ってたことを思い返すと、次に会うのは手術の当日だろう。
…手術までに伝えたかったことは何かなかっただろうか?
思い返しながら、出かける準備をする。
階下に降りると、金岡父がばたばたとしてる。
「お母さんダウンしたから、今日は早く戻ってこなあかんで」
…………………(>_<)
竜樹さんの手術目前に私自身も風邪っぴき、その上金岡母までダウンなんて。
続く時は続くものだ。
取り敢えず今日は仕事をたったか片付けてとっとと帰ってこようと心に決めて、勢い良く玄関を飛び出し坂道を駆け下りる。
金岡母の体調不良があまり長く続かなければいいなと思う。
術後暫くは会社帰りに竜樹さんの病院に寄る機会は格段に増える。
そうすると否が応でも帰宅は遅くなる。
金岡母がいるから多少遅く戻っても家の方は大丈夫だろうと思うけれど、金岡母の具合が悪ければ早く戻っていろいろとしないといけないことは多い。
家族の晩御飯にプードルさんと猫の世話。
家の雑用だってほりっぱなしって訳にはいかないだろう。
…せめて、人外魔境があまり消耗しすぎる状態でありませんように
祈るような気持ちで社屋に入る。
「今日はいつも以上にきりきりと仕事を片付けるぞ」と意気込んで事務所に入ったものの、気持ち悪いくらい仕事がない。
いつも仕事はそんなにないとは言え、イレギュラーも何もない。
片付ける書類も、忙しい時なら放りっぱなしの雑用すらない。
気持ち悪いくらい暇だと消耗の度合いは小さくていいとは言え、「こんなんでええのん?」という申し訳程度の疑問と有り余る時間の使い方を考えてしまう。
無理やり雑用を掘り繰り返しながら、日々あったことを振り返り、今後のことに思いを馳せる。
結局暇なまま定時を迎え、とっとと家に戻ってきた。
電車に乗って夕飯に何を作るか考えながら移動を繰り返し、少しばかりの食材を買い足して家に戻った。
玄関を開けてびっくり。
リビングの方から美味しそうなにおいがする。
慌てて靴を脱ぎ捨てて台所に向かうと、白い顔をした金岡母が夕飯を作っている。
「…起きてて大丈夫なん?私がやるつもりで帰ってきたのに」
「寝てたら少しマシになったから、大丈夫かなぁと思って」
「白い顔して何を言ってるのよ。寝てなまたぶり返すよ?」
「でももうマシになったから」
……………ヽ(`⌒´)ノ
元気な時は「ちょっとは家のことも省みてよね」とむくれるくせに、自分がダウンしたら無理やりにでも起きて何かをしようとする。
けれど、ご飯を作ってる時白かった顔色は時間が経つにつれ、少しずつよくなってくる。
後片付けや他の諸々のことは遅れて帰ってきた金岡父と2人で分担し、ご飯を食べ薬を飲んだ金岡母は寝室へ強制連行。
そのまま起きてちょろちょろしないように言い含めて、雑用を片付け自室に戻る。
会社でいろんなストレスを余り溜めずにすんだおかげで、あまりしんどくないのは救い。
少しばかり姉さまとメールのやり取りをして、そのまま横になる。
…明日は事務所に同僚さんと私以外誰もいないんだよなぁ。
そういう日はトラブル満載デーになることは、経験則で判るので憂鬱になるけれど。
今日は手術前最後の中休みを貰ったと思えばいいのだろう。
出来るだけ疲れすぎずに、「その日」を迎えられたらそれでいい。
眠って次に目が覚めたら、手術はまた一歩近づく。
来るべき時のために、体力気力とも温存できたのはありがたいことだと思う。
明日もどうか人外魔境は穏やかでありますように。
明日はどうか大切な人たちが元気で過ごせますように。
今日から竜樹さんは手術の準備のため絶食に入る。
次にまともな食事を取れるのは手術後何日くらい経ってからになるんだろうか?
「絶食に入ったら、病院に来てもらってもまともな応対はできへんかもしれへんし」と仰ってたことを思い返すと、次に会うのは手術の当日だろう。
…手術までに伝えたかったことは何かなかっただろうか?
思い返しながら、出かける準備をする。
階下に降りると、金岡父がばたばたとしてる。
「お母さんダウンしたから、今日は早く戻ってこなあかんで」
…………………(>_<)
竜樹さんの手術目前に私自身も風邪っぴき、その上金岡母までダウンなんて。
続く時は続くものだ。
取り敢えず今日は仕事をたったか片付けてとっとと帰ってこようと心に決めて、勢い良く玄関を飛び出し坂道を駆け下りる。
金岡母の体調不良があまり長く続かなければいいなと思う。
術後暫くは会社帰りに竜樹さんの病院に寄る機会は格段に増える。
そうすると否が応でも帰宅は遅くなる。
金岡母がいるから多少遅く戻っても家の方は大丈夫だろうと思うけれど、金岡母の具合が悪ければ早く戻っていろいろとしないといけないことは多い。
家族の晩御飯にプードルさんと猫の世話。
家の雑用だってほりっぱなしって訳にはいかないだろう。
…せめて、人外魔境があまり消耗しすぎる状態でありませんように
祈るような気持ちで社屋に入る。
「今日はいつも以上にきりきりと仕事を片付けるぞ」と意気込んで事務所に入ったものの、気持ち悪いくらい仕事がない。
いつも仕事はそんなにないとは言え、イレギュラーも何もない。
片付ける書類も、忙しい時なら放りっぱなしの雑用すらない。
気持ち悪いくらい暇だと消耗の度合いは小さくていいとは言え、「こんなんでええのん?」という申し訳程度の疑問と有り余る時間の使い方を考えてしまう。
無理やり雑用を掘り繰り返しながら、日々あったことを振り返り、今後のことに思いを馳せる。
結局暇なまま定時を迎え、とっとと家に戻ってきた。
電車に乗って夕飯に何を作るか考えながら移動を繰り返し、少しばかりの食材を買い足して家に戻った。
玄関を開けてびっくり。
リビングの方から美味しそうなにおいがする。
慌てて靴を脱ぎ捨てて台所に向かうと、白い顔をした金岡母が夕飯を作っている。
「…起きてて大丈夫なん?私がやるつもりで帰ってきたのに」
「寝てたら少しマシになったから、大丈夫かなぁと思って」
「白い顔して何を言ってるのよ。寝てなまたぶり返すよ?」
「でももうマシになったから」
……………ヽ(`⌒´)ノ
元気な時は「ちょっとは家のことも省みてよね」とむくれるくせに、自分がダウンしたら無理やりにでも起きて何かをしようとする。
けれど、ご飯を作ってる時白かった顔色は時間が経つにつれ、少しずつよくなってくる。
後片付けや他の諸々のことは遅れて帰ってきた金岡父と2人で分担し、ご飯を食べ薬を飲んだ金岡母は寝室へ強制連行。
そのまま起きてちょろちょろしないように言い含めて、雑用を片付け自室に戻る。
会社でいろんなストレスを余り溜めずにすんだおかげで、あまりしんどくないのは救い。
少しばかり姉さまとメールのやり取りをして、そのまま横になる。
…明日は事務所に同僚さんと私以外誰もいないんだよなぁ。
そういう日はトラブル満載デーになることは、経験則で判るので憂鬱になるけれど。
今日は手術前最後の中休みを貰ったと思えばいいのだろう。
出来るだけ疲れすぎずに、「その日」を迎えられたらそれでいい。
眠って次に目が覚めたら、手術はまた一歩近づく。
来るべき時のために、体力気力とも温存できたのはありがたいことだと思う。
明日もどうか人外魔境は穏やかでありますように。
明日はどうか大切な人たちが元気で過ごせますように。
なけなしの気遣い
2002年9月10日気持ちよく眠れたせいか、身体は割と軽い気がする。
胃が痛いのやおなかが痛いのは相変わらずだし油断したのか風邪をひいたっぽい感じだけど、いつもより機嫌はいい。
頭の上には、クリアブルーの空が広がる。
今までしんどくなればなるほど口を閉ざし、それを察した友達にはへらりへらりと平気そうな顔を作り、誤魔化せそうになくなると音信不通を通してきたけれど。
どういう訳か、今回は人の手を沢山借りすぎてる気はする。
それは年数経って人寂しくなったのか、それとも壁に向かう気概が足りないのか、よく判らないけれど…
前回の時だって、竜樹さんが手術を受けるという話を知って気持ちを割いてくれた人は確かにいた。
ただ自らそのことについて話そうとしなかっただけ。
正直、こうして想いを綴る過程の中でもう一度竜樹さんが手術を受けることになるなんて夢にも思わなかった。
調子が狂ってしまったとしたら、ちょっと喋りすぎる場所を持ってしまったからかもしれない。
自分のことを喋りすぎることを何だか自嘲気味な気分で眺めながら、それでも間違いなく人の暖かさにより多く触れることが出来たこと。
それは別の力を与えてもらってるに違いはないんだから。
クリアブルーの空は前向きな気持ちを少しばかり連れてきてくれたみたい。
人外魔境に入ると、徐々に体調の悪さが加速していく感じはするけれど、幸い仕事の流れ方は緩やかでようよう仕事はこなせてる。
ただ気を抜くと一気に具合が悪くなりそうな感じも否めなかったので、気だけは緩めないように気は付けていたけれど…
ちょっとぐったり気味で昼を迎え、竜樹さんにメールを飛ばす。
「熱いんだか涼しいんだか判らないですね。
こんにちは。
お加減いかがですか?
何か届けるものがあれば、お声かけてね♪(*^_^*)」
それにお返事はないまま、昼からの仕事を迎えたけれど、私の具合の方はどんどこ悪くなっていく。
薬に頼りたくなくて風邪薬のストックが切れたままほりっぽかしにしてるのも悪かったかもしれない。
関節が痛んだり、頭が痛んだり、俄かに身体がご機嫌斜めになっていく。
ついでに仕事の流れまでご機嫌斜め。
何とか定時に会社を出れたものの、自転車飛ばしててもどこかよろよろしてる感じが否めない。
竜樹さんの病院に寄るかどうか随分迷ったけれど、結局まっすぐ帰る方を選んでしまった。
自分がしんどいだけなら、どうとでも誤魔化すんだ。
誰のことでもなく竜樹さんのことだから、病院に行けば役に立つというのなら這ってでも行きたいと思うけれど。
風邪っぴきの状態のまま、病院には行けない。
竜樹さんに風邪を感染したら、手術に悪影響を及ぼす。
最後のデートの時も「手術前に風邪を引いたら、下手すると手術が延期になるかも知れへんから注意せんなんねん」と竜樹さんが話してた。
手術まであと3日。
明日から竜樹さんは絶食に入る。
抵抗力だってますます落ちるだろう。
薬に頼る生活を改善したくて極力風邪薬を調達したくなかったんだけど、あまりにしんどいので行きつけの薬局に行った。
…あと3日で風邪を治さなきゃならないから。
レジで風邪薬を出してもらう。
いつも応対してくれる店員さんが同じだから顔を覚えられてしまったのだろうか。
「いつもありがとーございまーす♪(*^_^*)」
と明るく言われてしまった。
……………………Σ(゜д゜)………
「絶対に薬いらずの元気な身体を作るぞ」と決意を新たにした。
自宅に戻ってプードルさんと遊び、夕飯を摂って自室に戻る。
暫くすると、竜樹さんから電話を貰った。
「明日から絶食で殆ど動かなくなるやろうから、取り急ぎ伝えなあかんことだけ言うわなぁ…」
そんな風に言われたので、受話器を耳に強く押し当て集中力全開で聞くと…
「会社帰りにこっちに来る時は、ちゃんと夕飯食べて来いよ。体、もたへんから」
………………………(*゜-゜*)………
それから少しだけ話して、竜樹さんは病室に戻っていった。
火急の用は私の身体を気遣った言葉だった。
手術まであと少しで自分のことで手一杯のはずなのに、そんな風に私の身体を気遣ってくれる。
…はよ、治してしまおう
いつもならそのままネットの海を漂いつづけるけれど、今日は風邪薬を飲んでそのまま眠ろう。
気持ちの部分も身体の部分も、クリアになるように。
いつでもって訳にはいかなくても、竜樹さんに元気な姿を沢山見せられるように…
竜樹さんのなけなしの気遣いにきちんと応えたいって思うから…
胃が痛いのやおなかが痛いのは相変わらずだし油断したのか風邪をひいたっぽい感じだけど、いつもより機嫌はいい。
頭の上には、クリアブルーの空が広がる。
今までしんどくなればなるほど口を閉ざし、それを察した友達にはへらりへらりと平気そうな顔を作り、誤魔化せそうになくなると音信不通を通してきたけれど。
どういう訳か、今回は人の手を沢山借りすぎてる気はする。
それは年数経って人寂しくなったのか、それとも壁に向かう気概が足りないのか、よく判らないけれど…
前回の時だって、竜樹さんが手術を受けるという話を知って気持ちを割いてくれた人は確かにいた。
ただ自らそのことについて話そうとしなかっただけ。
正直、こうして想いを綴る過程の中でもう一度竜樹さんが手術を受けることになるなんて夢にも思わなかった。
調子が狂ってしまったとしたら、ちょっと喋りすぎる場所を持ってしまったからかもしれない。
自分のことを喋りすぎることを何だか自嘲気味な気分で眺めながら、それでも間違いなく人の暖かさにより多く触れることが出来たこと。
それは別の力を与えてもらってるに違いはないんだから。
クリアブルーの空は前向きな気持ちを少しばかり連れてきてくれたみたい。
人外魔境に入ると、徐々に体調の悪さが加速していく感じはするけれど、幸い仕事の流れ方は緩やかでようよう仕事はこなせてる。
ただ気を抜くと一気に具合が悪くなりそうな感じも否めなかったので、気だけは緩めないように気は付けていたけれど…
ちょっとぐったり気味で昼を迎え、竜樹さんにメールを飛ばす。
「熱いんだか涼しいんだか判らないですね。
こんにちは。
お加減いかがですか?
何か届けるものがあれば、お声かけてね♪(*^_^*)」
それにお返事はないまま、昼からの仕事を迎えたけれど、私の具合の方はどんどこ悪くなっていく。
薬に頼りたくなくて風邪薬のストックが切れたままほりっぽかしにしてるのも悪かったかもしれない。
関節が痛んだり、頭が痛んだり、俄かに身体がご機嫌斜めになっていく。
ついでに仕事の流れまでご機嫌斜め。
何とか定時に会社を出れたものの、自転車飛ばしててもどこかよろよろしてる感じが否めない。
竜樹さんの病院に寄るかどうか随分迷ったけれど、結局まっすぐ帰る方を選んでしまった。
自分がしんどいだけなら、どうとでも誤魔化すんだ。
誰のことでもなく竜樹さんのことだから、病院に行けば役に立つというのなら這ってでも行きたいと思うけれど。
風邪っぴきの状態のまま、病院には行けない。
竜樹さんに風邪を感染したら、手術に悪影響を及ぼす。
最後のデートの時も「手術前に風邪を引いたら、下手すると手術が延期になるかも知れへんから注意せんなんねん」と竜樹さんが話してた。
手術まであと3日。
明日から竜樹さんは絶食に入る。
抵抗力だってますます落ちるだろう。
薬に頼る生活を改善したくて極力風邪薬を調達したくなかったんだけど、あまりにしんどいので行きつけの薬局に行った。
…あと3日で風邪を治さなきゃならないから。
レジで風邪薬を出してもらう。
いつも応対してくれる店員さんが同じだから顔を覚えられてしまったのだろうか。
「いつもありがとーございまーす♪(*^_^*)」
と明るく言われてしまった。
……………………Σ(゜д゜)………
「絶対に薬いらずの元気な身体を作るぞ」と決意を新たにした。
自宅に戻ってプードルさんと遊び、夕飯を摂って自室に戻る。
暫くすると、竜樹さんから電話を貰った。
「明日から絶食で殆ど動かなくなるやろうから、取り急ぎ伝えなあかんことだけ言うわなぁ…」
そんな風に言われたので、受話器を耳に強く押し当て集中力全開で聞くと…
「会社帰りにこっちに来る時は、ちゃんと夕飯食べて来いよ。体、もたへんから」
………………………(*゜-゜*)………
それから少しだけ話して、竜樹さんは病室に戻っていった。
火急の用は私の身体を気遣った言葉だった。
手術まであと少しで自分のことで手一杯のはずなのに、そんな風に私の身体を気遣ってくれる。
…はよ、治してしまおう
いつもならそのままネットの海を漂いつづけるけれど、今日は風邪薬を飲んでそのまま眠ろう。
気持ちの部分も身体の部分も、クリアになるように。
いつでもって訳にはいかなくても、竜樹さんに元気な姿を沢山見せられるように…
竜樹さんのなけなしの気遣いにきちんと応えたいって思うから…
いろんな流れに出逢った日
2002年9月9日Je ne veux pas vous priver deja qui ont perdu de diverses choses de rien davantage que ceci.
Meme si il n’indique jamais, je veux vous donner toutes les choses a que "il peut avoir ou aucun puisque la maladie est tenue" ne sera riche et a ce que je suis donne de sorte qu’il puisse etre controle.
昨日の晩、久しぶりに友達と話した。
随分心配かけたようだったから申し訳ないなぁと思いつつ、ただ心に留めていてくれたことが嬉しかった。
気分よく会話を交わし、横になる。
気持ちは十分満たされたはずなのに、どういう訳か眠りは浅かった。
そのせいか、いつもよりも早く目が覚めた。
外の空気はひんやりしてる。
いつもよりも早く家を出て、乗り慣れない何本か早い電車に乗る。
早い電車に乗ると、移動時間が短いためにメールに取れる時間も減る。
随分中途半端に書き散らしたようなものをあちこちにばら撒いて、電車を降りる。
自転車かっ飛ばして会社について、更衣室で着替えてるとお弁当鞄が揺れる。
見てみると、メールがひとつ。
「家に行って、シャツと靴下を持って帰っておいて貰おうと思って電話したのよ。
けど、外が暑そうだったので、霄に言うのをやめたんよ」
昨日竜樹さんが電話してこられたことの用件だった。
…そんなもの、遠慮なんてしなくてもよかったのに
そう返事を打ちたかったけれど、事務所に上がらないとならない時間帯だったので断念。
そのまま事務所にあがり、仕事前の作業を手伝いに流し場に入る。
流し場で同僚さんが小声で聞いてきた。
「つかぬ事を聞くけど、職安がどこにあるか知らない?」
今住んでる場所に近いところに職安があるかどうかが知りたかったらしい。
「…もしかして、動くの?」
何となくそんな気がして聞き返すと、案の定そうだった。
数ヶ月前から時々メッセージのやり取りをしていたのだけれど、最近、社長が随分彼女のやることにケチをつけてきてて煩わしいのだという話は聞いていた。
元々したいことが明確に決まってる人だったし、しようとしてることに都合がいいからこの会社にいたんだってことは知っている。
社長とも折り合いよくやれてる部分もあったからこそ、多少の不満には目をつぶってきたのも。
けれど、どうにも我慢が出来なくなったらしい。
年末退職に向けて、俄かに動き出すとのこと。
私自身、入社当時から仕事の内容にも人間関係にも半ばうんざりしていて、「早く辞めたい」と思わない日はなかったし、竜樹さんの術後の経過がよければ私も年内中、もしくは来年の末にはここを出ることになるとは思う。
彼女は入社当時から仲良くしてくれてた、社内では数少ない理解者だった。
彼女も自分の彼とのことを良く話してくれたし、それにつられるようにして竜樹さんのことも話したので、いろんなことを知っていてくれてる。
そんな人がいなくなるのが寂しくないわけではないのだけれど。
日々の生活を送る上で過剰なストレスを抱えることがいいとも思わないし、ましてやライフワークのように続けたいと思ってることもあるのだから、引き止めるのもどうかと思う。
竜樹さんの手術に、同僚さんの退職。
次から次へとまぁいろいろあるものだ。
…でも、もしかしたら。
私自身も動き出すにはいい時期なのかもしれない。
あくまで、竜樹さんの術後の経過次第という条件はつくのだけれど。
不思議なもので、ひとつ動き出すと一斉に物事が流れ出す瞬間がある。
時に、それに乗るか乗らないかを考える間もなく流されていくこともある。
私はこの流れとどう向き合い、どう関わっていくのか。
少しばかりの不安と少しばかりの期待が心の中でせめぎ合う状態で仕事を始める。
業務が始まると、相変わらずの鬱陶しさ。
それをボスが上手く緩和してくれているというのもいつものこと。
けれど、ボスだって何時までもいるわけじゃないだから、動く方向で前向きに考えようという気にもなる。
「ストレスを過剰に抱えるのがいいとは思わない」
それは私自身にもいえたことで。
いつまでも竜樹さんに逢う度に、「霄ぁ、会社ではどうなん?」と心配そうに聞かれてるようじゃダメなんだと思う。
竜樹さんの体調が不安定なうちは、いつでも手を貸せるように有給が容易に取れるところに留まる必要があるからこそ、可能な限り我慢は続けるけれど。
…飛び立てる時が来たら、ちゃんと飛び出すわさ
竜樹さんが元気になって抱える問題がうんとこ小さくなったなら、今度は溢れる笑顔で竜樹さんを包んであげたいから。
「あと少しだけ、頑張るか」
少し気を吐き、また意識を仕事に戻した。
今日はそれほど仕事が立てこむこともなく、定時に会社を出られた。
いつもは更衣室が狭い関係で同僚さんとは時間を少しずらしていくのだけれど、今日は一緒に降り玄関まで一緒に出た。
数少ない理解者がもうすぐいなくなるというのに、気持ちはあまり沈んではいない。
それは実感がないからかも知れないし、私自身もまた指針がはっきりしてきてるからかもしれない。
ちょっと気をよくして、そのまま寄り道コースに入る。
日曜日、姉さまが「ついでの時でいいので、ライブのチケットを取りに行って欲しい」とメールを送ってきてたのを思い出し、かなり遠出をすることにした。
姉さまのお目当てのライブのチケットを取りに行く場所は、元気な頃の竜樹さんとよく遊びに行った場所に程近い。
傍目にはただの姉さまのパシリのようだけれど、気分転換にはもってこいだと思った。
ライブハウスにチケットを取りに行き、その足でふらりふらりと寄り道。
物欲がぐつぐついってるのと暫し格闘しつつ、元気だった頃の竜樹さんと歩いた場所を歩き回り、電車に乗って家路につく。
…立ち通しで疲れてしまったけれど
「いつも通り」に変化が加わる時、それはいろんなものを動かしていく。
その流れに乗るのか逆らうのか、自分の意志だけで決まらないこともあるからどうなるおのかすら見えはしないけれど。
流れと折り合いをつけながら、意志と折り合いをつけながら。
なるべく機嫌よく生きられる道を、竜樹さんと幸せな毎日が送れる道を選び取っていけたらなぁ。
そんな風に思ってると、突然部屋電が鳴った。
ずっと私の想いを見守っていてくれた、お友達からの電話。
彼女の声は暖かく、身体の中をすーっと通っていく感じ。
心の中にある淀みもすかんと流れていく感じ。
私はというと、かーなりあがってしまってて意味不明なことをほたえてた気もするけれど。
暖かな数時間を過ごし、ようやく不眠症から開放されそうな感じ。
いろんな流れに出逢った日。
人の流れの中で暖かなものは確かに息づき、自分を動かしていくのだと確認した、そんな1日。
Meme si il n’indique jamais, je veux vous donner toutes les choses a que "il peut avoir ou aucun puisque la maladie est tenue" ne sera riche et a ce que je suis donne de sorte qu’il puisse etre controle.
昨日の晩、久しぶりに友達と話した。
随分心配かけたようだったから申し訳ないなぁと思いつつ、ただ心に留めていてくれたことが嬉しかった。
気分よく会話を交わし、横になる。
気持ちは十分満たされたはずなのに、どういう訳か眠りは浅かった。
そのせいか、いつもよりも早く目が覚めた。
外の空気はひんやりしてる。
いつもよりも早く家を出て、乗り慣れない何本か早い電車に乗る。
早い電車に乗ると、移動時間が短いためにメールに取れる時間も減る。
随分中途半端に書き散らしたようなものをあちこちにばら撒いて、電車を降りる。
自転車かっ飛ばして会社について、更衣室で着替えてるとお弁当鞄が揺れる。
見てみると、メールがひとつ。
「家に行って、シャツと靴下を持って帰っておいて貰おうと思って電話したのよ。
けど、外が暑そうだったので、霄に言うのをやめたんよ」
昨日竜樹さんが電話してこられたことの用件だった。
…そんなもの、遠慮なんてしなくてもよかったのに
そう返事を打ちたかったけれど、事務所に上がらないとならない時間帯だったので断念。
そのまま事務所にあがり、仕事前の作業を手伝いに流し場に入る。
流し場で同僚さんが小声で聞いてきた。
「つかぬ事を聞くけど、職安がどこにあるか知らない?」
今住んでる場所に近いところに職安があるかどうかが知りたかったらしい。
「…もしかして、動くの?」
何となくそんな気がして聞き返すと、案の定そうだった。
数ヶ月前から時々メッセージのやり取りをしていたのだけれど、最近、社長が随分彼女のやることにケチをつけてきてて煩わしいのだという話は聞いていた。
元々したいことが明確に決まってる人だったし、しようとしてることに都合がいいからこの会社にいたんだってことは知っている。
社長とも折り合いよくやれてる部分もあったからこそ、多少の不満には目をつぶってきたのも。
けれど、どうにも我慢が出来なくなったらしい。
年末退職に向けて、俄かに動き出すとのこと。
私自身、入社当時から仕事の内容にも人間関係にも半ばうんざりしていて、「早く辞めたい」と思わない日はなかったし、竜樹さんの術後の経過がよければ私も年内中、もしくは来年の末にはここを出ることになるとは思う。
彼女は入社当時から仲良くしてくれてた、社内では数少ない理解者だった。
彼女も自分の彼とのことを良く話してくれたし、それにつられるようにして竜樹さんのことも話したので、いろんなことを知っていてくれてる。
そんな人がいなくなるのが寂しくないわけではないのだけれど。
日々の生活を送る上で過剰なストレスを抱えることがいいとも思わないし、ましてやライフワークのように続けたいと思ってることもあるのだから、引き止めるのもどうかと思う。
竜樹さんの手術に、同僚さんの退職。
次から次へとまぁいろいろあるものだ。
…でも、もしかしたら。
私自身も動き出すにはいい時期なのかもしれない。
あくまで、竜樹さんの術後の経過次第という条件はつくのだけれど。
不思議なもので、ひとつ動き出すと一斉に物事が流れ出す瞬間がある。
時に、それに乗るか乗らないかを考える間もなく流されていくこともある。
私はこの流れとどう向き合い、どう関わっていくのか。
少しばかりの不安と少しばかりの期待が心の中でせめぎ合う状態で仕事を始める。
業務が始まると、相変わらずの鬱陶しさ。
それをボスが上手く緩和してくれているというのもいつものこと。
けれど、ボスだって何時までもいるわけじゃないだから、動く方向で前向きに考えようという気にもなる。
「ストレスを過剰に抱えるのがいいとは思わない」
それは私自身にもいえたことで。
いつまでも竜樹さんに逢う度に、「霄ぁ、会社ではどうなん?」と心配そうに聞かれてるようじゃダメなんだと思う。
竜樹さんの体調が不安定なうちは、いつでも手を貸せるように有給が容易に取れるところに留まる必要があるからこそ、可能な限り我慢は続けるけれど。
…飛び立てる時が来たら、ちゃんと飛び出すわさ
竜樹さんが元気になって抱える問題がうんとこ小さくなったなら、今度は溢れる笑顔で竜樹さんを包んであげたいから。
「あと少しだけ、頑張るか」
少し気を吐き、また意識を仕事に戻した。
今日はそれほど仕事が立てこむこともなく、定時に会社を出られた。
いつもは更衣室が狭い関係で同僚さんとは時間を少しずらしていくのだけれど、今日は一緒に降り玄関まで一緒に出た。
数少ない理解者がもうすぐいなくなるというのに、気持ちはあまり沈んではいない。
それは実感がないからかも知れないし、私自身もまた指針がはっきりしてきてるからかもしれない。
ちょっと気をよくして、そのまま寄り道コースに入る。
日曜日、姉さまが「ついでの時でいいので、ライブのチケットを取りに行って欲しい」とメールを送ってきてたのを思い出し、かなり遠出をすることにした。
姉さまのお目当てのライブのチケットを取りに行く場所は、元気な頃の竜樹さんとよく遊びに行った場所に程近い。
傍目にはただの姉さまのパシリのようだけれど、気分転換にはもってこいだと思った。
ライブハウスにチケットを取りに行き、その足でふらりふらりと寄り道。
物欲がぐつぐついってるのと暫し格闘しつつ、元気だった頃の竜樹さんと歩いた場所を歩き回り、電車に乗って家路につく。
…立ち通しで疲れてしまったけれど
「いつも通り」に変化が加わる時、それはいろんなものを動かしていく。
その流れに乗るのか逆らうのか、自分の意志だけで決まらないこともあるからどうなるおのかすら見えはしないけれど。
流れと折り合いをつけながら、意志と折り合いをつけながら。
なるべく機嫌よく生きられる道を、竜樹さんと幸せな毎日が送れる道を選び取っていけたらなぁ。
そんな風に思ってると、突然部屋電が鳴った。
ずっと私の想いを見守っていてくれた、お友達からの電話。
彼女の声は暖かく、身体の中をすーっと通っていく感じ。
心の中にある淀みもすかんと流れていく感じ。
私はというと、かーなりあがってしまってて意味不明なことをほたえてた気もするけれど。
暖かな数時間を過ごし、ようやく不眠症から開放されそうな感じ。
いろんな流れに出逢った日。
人の流れの中で暖かなものは確かに息づき、自分を動かしていくのだと確認した、そんな1日。
最初のキス/逢いたかった
2002年9月8日駅の改札はすぐ目の前。
ここから私と竜樹さんは反対向いて帰ることになる。
…離れたくないなぁ
そう思うけど、金岡家に連れて帰る訳にも私が病院に行くわけにもいかない。
「霄ぁ、腹ごなしにカラオケにでも行こかぁ」
突然竜樹さんは改札とは違う方向にどんどん歩き始めた。
「帰る時間はいいんですか?」
「うん、大丈夫やから(*^-^*)」
そう言って、手を繋いだままよく行くカラオケボックスまでのたのた歩く。
そこで1時間だけ歌うことにした。
久しぶりに竜樹さんの歌を聞く。
本当に久しぶりのせいか、少し歌いにくそうにしてるけれど。
相変わらず竜樹さんの歌声が大好きで、にこにこしながら聞いている。
「カラオケに来るって判ってたら、MD持ってきたのに〜」
「こんな調子に乗れへん時のん、とらんでええって」
「だって、竜樹さんの歌、好きやもの」
「もっと元気になって、上手く歌えるようになったら何ぼでもとらしたるから」
竜樹さんの歌う福山雅治の歌は本人がお歌いになってるもの以上に好き。
「MESSAGE」に「桜坂」、「HEAVEN」「SQUALL」…
本当にMD持って来たらよかったと、よじれるほど後悔。
二人とも歌いなれた歌から初挑戦ものまで1時間目一杯歌って終了。
今度こそ本当に帰るために駅まで手を繋いで歩く。
改札を通り、何となく離れがたくて竜樹さんが帰る方のホームにそのまま居残る。
向かい側のホームに滑り込んでくる電車を見て、「あれに乗らなくて大丈夫なん?」と竜樹さん。
「いや、途中まで送りますよ。ちゃんと帰れるか心配やし」
そう言ってそのまま竜樹さんと同じ電車に乗り込む。
乗り換える前にペットボトルに入ったスポーツドリンクを買って竜樹さんに渡し、また一緒に乗り換える。
「楽しかったねぇ(o^−^o)」
「ホンマに楽しかったわぁ。ありがとうなぁ(*^-^*)」
電車に乗ってからもずっと並んで座っていろいろと話をしてるけれど、今度こそ本当に別れないとならなくなってしまった。
手を繋いだまま、改札に向かって階段を降りていく。
改札へ向かうエスカレーターの陰で暫く立ちつくしてしまった。
「…じゃあ、手術までの間に何かあったらいつでも呼んでね」
「そうする。けど、無理はせんときや?
本当に霄の手が必要になるのは、術後の方やと思うから…」
ひとしきり別れの挨拶をして、少し沈黙が流れて。
「そのまま行ってしまうのかな?」と思ってると、竜樹さんはそっとキスをひとつくれた。
激しくも雄弁でもない、ただ優しいキス。
「…そしたら、行ってくるなぁ」
そう言って手をあげて改札の向こうへ行ってしまった。
7年間一緒にいて、誰が見てるか判らない外でキスをしたことなどなかった。
それは竜樹さんの性格的なものだから、不満に思ったことも疑問に思ったこともなかったけれど。
そのキスに込められたものが、ぼんやりとだけど自分の心の中で花を開いてく感じがする。
…竜樹さんが勇気奮った最初のキスが最後のキスになりませんように
そう思いながら、階段を駆け上がり電車に飛び込んだ。
車窓を流れる夜景を見つめながら、竜樹さんと一緒にいた時間を振り返る。
「本当にこれが来週手術せんなん人のすることなんだろうか?」と思うくらいにいろんなことをした。
楽しいことも暖かいことも愛しいこともみんな分け合って、本当に満たされた気がしたんだ。
…私が満たされたように、竜樹さんも満たされててくれてたらいいけど
まだ唇にわずかに残る竜樹さんの熱を愛しく思いながら、これが最後でないことを祈りながら。
油断すると落ちそうになる涙を一生懸命堪えながら家に帰った。
家にたどり着いて自室に戻り、携帯を見ると姉さまからメールが何通も届いていたので慌ててお返事。
竜樹さんとのデートの余韻を抱きしめて眠ったのは14通ものメールのやり取りが済んでからだった。
翌日は昨日はしゃぎすぎた反動なのかなかなか起きることが出来ず、気がつくと昼近かった。
昼ごはんを食べにリビングに降り、後片付けをして部屋に戻ると部屋電に着信がある。
…竜樹さんからだった(T^T)
何か用があったに違いないので、折り返しメールを飛ばす。
「電話ありがとう。ご飯食べてて出れなかったのm(__)m
どしたの?」
それに対するお返事はなかった。
連絡を待ってるうちに少し転寝して、次に起きたら激しい頭痛。
携帯にも部屋電にも着信はなく、メールも届いていなかった。
意地でも出て行って竜樹さんに直接聞きたいとも思ったけれど、頭痛がなかなか治まらない。
鎮痛剤を飲むと薬疹が出たり、果ては胃の中のものを吐き尽くすまで吐いてしまうから、うかつに鎮痛剤に手が出せない。
仕方なく横になりながら、頭痛が引くのを待つ。
やっとこ頭痛が引いたのは、夕方の6時を回っていた。
この時間から出て行っても、竜樹さんのお手伝いは殆ど出来ない。
…火急の用事なら、どんなことがあっても呼んでくれるはず
…メールを打つのも辛いほど、具合が悪いのかもしれない
いろいろ考えてると、また頭痛がぶり返す。
…何で、いつもこうなんだろうね?
昨日あれだけ楽しい時間を作ってもらったのに、肝心な時には役に立てなくて。
私が出て行けば何が変わるとも思わないけれど、そこにいれば役に立つことだってある。
…私自身も竜樹さんの傍で何か出来る方が精神的にも安定するのに…
肝心なところで足を引っ張り続ける自分の身体とそれを振り払えない自分の弱さにいらだたしさを覚えてならないけれど、術後に備えての休暇だと自分に言い聞かせようか?
それでも本当は逢いたかった。
この先少しでも長く竜樹さんといられるように、この先不調を来さぬよう注意しよう。
「逢いたかったのに…」と嘆かずに済むように、頑丈な自分を育てよう。
ここから私と竜樹さんは反対向いて帰ることになる。
…離れたくないなぁ
そう思うけど、金岡家に連れて帰る訳にも私が病院に行くわけにもいかない。
「霄ぁ、腹ごなしにカラオケにでも行こかぁ」
突然竜樹さんは改札とは違う方向にどんどん歩き始めた。
「帰る時間はいいんですか?」
「うん、大丈夫やから(*^-^*)」
そう言って、手を繋いだままよく行くカラオケボックスまでのたのた歩く。
そこで1時間だけ歌うことにした。
久しぶりに竜樹さんの歌を聞く。
本当に久しぶりのせいか、少し歌いにくそうにしてるけれど。
相変わらず竜樹さんの歌声が大好きで、にこにこしながら聞いている。
「カラオケに来るって判ってたら、MD持ってきたのに〜」
「こんな調子に乗れへん時のん、とらんでええって」
「だって、竜樹さんの歌、好きやもの」
「もっと元気になって、上手く歌えるようになったら何ぼでもとらしたるから」
竜樹さんの歌う福山雅治の歌は本人がお歌いになってるもの以上に好き。
「MESSAGE」に「桜坂」、「HEAVEN」「SQUALL」…
本当にMD持って来たらよかったと、よじれるほど後悔。
二人とも歌いなれた歌から初挑戦ものまで1時間目一杯歌って終了。
今度こそ本当に帰るために駅まで手を繋いで歩く。
改札を通り、何となく離れがたくて竜樹さんが帰る方のホームにそのまま居残る。
向かい側のホームに滑り込んでくる電車を見て、「あれに乗らなくて大丈夫なん?」と竜樹さん。
「いや、途中まで送りますよ。ちゃんと帰れるか心配やし」
そう言ってそのまま竜樹さんと同じ電車に乗り込む。
乗り換える前にペットボトルに入ったスポーツドリンクを買って竜樹さんに渡し、また一緒に乗り換える。
「楽しかったねぇ(o^−^o)」
「ホンマに楽しかったわぁ。ありがとうなぁ(*^-^*)」
電車に乗ってからもずっと並んで座っていろいろと話をしてるけれど、今度こそ本当に別れないとならなくなってしまった。
手を繋いだまま、改札に向かって階段を降りていく。
改札へ向かうエスカレーターの陰で暫く立ちつくしてしまった。
「…じゃあ、手術までの間に何かあったらいつでも呼んでね」
「そうする。けど、無理はせんときや?
本当に霄の手が必要になるのは、術後の方やと思うから…」
ひとしきり別れの挨拶をして、少し沈黙が流れて。
「そのまま行ってしまうのかな?」と思ってると、竜樹さんはそっとキスをひとつくれた。
激しくも雄弁でもない、ただ優しいキス。
「…そしたら、行ってくるなぁ」
そう言って手をあげて改札の向こうへ行ってしまった。
7年間一緒にいて、誰が見てるか判らない外でキスをしたことなどなかった。
それは竜樹さんの性格的なものだから、不満に思ったことも疑問に思ったこともなかったけれど。
そのキスに込められたものが、ぼんやりとだけど自分の心の中で花を開いてく感じがする。
…竜樹さんが勇気奮った最初のキスが最後のキスになりませんように
そう思いながら、階段を駆け上がり電車に飛び込んだ。
車窓を流れる夜景を見つめながら、竜樹さんと一緒にいた時間を振り返る。
「本当にこれが来週手術せんなん人のすることなんだろうか?」と思うくらいにいろんなことをした。
楽しいことも暖かいことも愛しいこともみんな分け合って、本当に満たされた気がしたんだ。
…私が満たされたように、竜樹さんも満たされててくれてたらいいけど
まだ唇にわずかに残る竜樹さんの熱を愛しく思いながら、これが最後でないことを祈りながら。
油断すると落ちそうになる涙を一生懸命堪えながら家に帰った。
家にたどり着いて自室に戻り、携帯を見ると姉さまからメールが何通も届いていたので慌ててお返事。
竜樹さんとのデートの余韻を抱きしめて眠ったのは14通ものメールのやり取りが済んでからだった。
翌日は昨日はしゃぎすぎた反動なのかなかなか起きることが出来ず、気がつくと昼近かった。
昼ごはんを食べにリビングに降り、後片付けをして部屋に戻ると部屋電に着信がある。
…竜樹さんからだった(T^T)
何か用があったに違いないので、折り返しメールを飛ばす。
「電話ありがとう。ご飯食べてて出れなかったのm(__)m
どしたの?」
それに対するお返事はなかった。
連絡を待ってるうちに少し転寝して、次に起きたら激しい頭痛。
携帯にも部屋電にも着信はなく、メールも届いていなかった。
意地でも出て行って竜樹さんに直接聞きたいとも思ったけれど、頭痛がなかなか治まらない。
鎮痛剤を飲むと薬疹が出たり、果ては胃の中のものを吐き尽くすまで吐いてしまうから、うかつに鎮痛剤に手が出せない。
仕方なく横になりながら、頭痛が引くのを待つ。
やっとこ頭痛が引いたのは、夕方の6時を回っていた。
この時間から出て行っても、竜樹さんのお手伝いは殆ど出来ない。
…火急の用事なら、どんなことがあっても呼んでくれるはず
…メールを打つのも辛いほど、具合が悪いのかもしれない
いろいろ考えてると、また頭痛がぶり返す。
…何で、いつもこうなんだろうね?
昨日あれだけ楽しい時間を作ってもらったのに、肝心な時には役に立てなくて。
私が出て行けば何が変わるとも思わないけれど、そこにいれば役に立つことだってある。
…私自身も竜樹さんの傍で何か出来る方が精神的にも安定するのに…
肝心なところで足を引っ張り続ける自分の身体とそれを振り払えない自分の弱さにいらだたしさを覚えてならないけれど、術後に備えての休暇だと自分に言い聞かせようか?
それでも本当は逢いたかった。
この先少しでも長く竜樹さんといられるように、この先不調を来さぬよう注意しよう。
「逢いたかったのに…」と嘆かずに済むように、頑丈な自分を育てよう。
最後のデート
2002年9月7日手術前最後の週末。
結局、竜樹さんは外泊ではなく外出を選ばれた。
竜樹邸に戻ることで、病院で掴んだ生活リズムを壊したくないというのがその理由なんだけど。
…竜樹邸に戻らないなら、あまり長い時間一緒にはいられないかな?
最後の週末だからこそ長く一緒にいたかったんだけど、竜樹さんが一番よい方向で動かれるのがベストなんだからと思うとこれでいいのかもしれない。
「13時に駅で待ち合わせな」
私の家と病院との中間点に当たる駅で待ち合わせ。
久しぶりの外での待ち合わせにドキドキしながら用意をするけれど、どういう訳か待ち合わせ時間から少し遅れそうな雲行き。
洗った髪も半乾きのまま家を飛び出し、坂道を駆け下りる。
息を切らしながらホームに滑り込んできた電車に飛び乗り、待ち合わせの駅に向かう。
待ち合わせてる駅に着く頃、携帯にメールがひとつ。
…待ち合わせ場所の変更だった。
電車に乗り換えて、竜樹さんが休んでおられるという駅に向かう。
9月に入ったというのに、夏色の空。
きっとこの暑さで竜樹さんはちょっと消耗したかなという気がした。
正直、私もちょっとだけ消耗感は否めないから。
ぼんやりと窓の外の夏色の空を眺めてるうちに電車は竜樹さんの待つ駅に着いた。
ホームに降り立ちきょろきょろと探していると、竜樹さんの方から見つけてもらえた。
「今日もあっついなぁ」
「お加減、大丈夫ですか?」
「ちょっと暑さが堪えたかもなぁ…」
そう言って、ほにゃと笑う竜樹さんと暫く待合室で涼んで、改札を出る。
取り敢えず自販機で飲み物を買い、これからの予定を決めようと話しながら歩き出す。
竜樹さんが耳元で、そっと囁く。
……………(/-\*)……………
昼日中から、お風呂付部屋に行くことになった。
部屋に入ると、竜樹さんが少ししょげておられる。
内装がお気に召さなかったらしい。
「今日は一緒にゆっくり過ごせたらいいじゃないですか?
場所がどうあれ、私は竜樹さんといられたら、それでいいんですよ」
ベッドに座り込んで少しお嘆き気味の竜樹さんをそっと抱きしめる。
もしかしたら、これが最後になるのかもしれない。
この時間が2人が向き合える最後の時間かもしれない。
なら、そこにいる互いを自分の内で確かめ合えたらそれでいい。
ただそれだけでいいんだ。
互いに火をつけるのはそんな想いだけで十分だったのかもしれない。
優しかったり激しかったり、苦しいくらいに熱を帯びていたり。
会話を重ねるようにいろんなものを重ね合わせる。
私がうつらうつらしてても、竜樹さんは竜樹さんで思うところがあったようで、時折意識を揺り起こすように、そっと抱きしめ熱を与える。
その表情がどこか切なそうなので、どきりとしたけれど。
寝たり起きたり、会話をするようにキスをしたり互いの熱を受け渡ししたり、ただぼそぼそと話して笑ったり。
竜樹邸にいる時ですら、そんな甘くて暖かな時間はなかったかもしれない。
それを最後にしたくなくて、どちらともなく語りかける。
「霄がおらんようになったら、いややぁ」
「どこにも行かないから、ちゃんと戻ってきてね」
見詰め合って笑い合って、抱きしめあって受け留めあって。
どれ位の時間が過ぎたか判らない。
そっと窓を閉ざしてるブラインドを上げて磨りガラス越しの空の色を眺めると、日が翳ってきたことが見て取れる。
「これから、どうします?」
病院で夕食を摂るならここでお別れになってしまう。
切り出したくはないけれどしんみりと別れたくはなくて、無理して笑ってみたり。
「…いや?外で食べようと思うねんけど」
……………(*^-^*)♪
無理やり笑顔は心からの笑顔に変わる。
何処で食べるのが妥当なのか考えているうちに、病院からも私の家からもそれほど遠くないところに美味しい中華料理のレストランがあることを思い出して、そこを提案。
竜樹さんはちょっと遠出がしたかったみたいだけど、食べた後に具合が悪くなっても病院がそれほど遠くなければ戻るのに苦労はしないから。
2人でお風呂付部屋を後にして、駅の方まで手を繋いで歩く。
こんな風に歩くのすら久しぶりのような気がして、自然とにこにこしながら電車に乗る。
移動を何度か繰り返し、中華レストランの最寄駅に着く。
週末の食事時なので待ちを覚悟していたけれど、生簀が見えるカウンターが空いていたので躊躇うことなくそこに座り、メニューを眺める。
どれもこれも美味しそうで、何を頼むか迷う二人。
ところが、ちょっとした問題が発生。
…単品メニューに炒飯がない"(ノ_・、)"
ご飯大好き竜樹さんには痛い事態が発生。
とにかくご飯粒が食べれないかとメニューを繰ってると、コースものになら炒飯がついてくる。
「…あの、コース取らないとご飯もの食べられないんですけど」
コースを取ると高くつくから避けたかったんだけど、竜樹さん一言。
「じゃあ、それにしよう♪(*^-^*)」
……………(゜o゜)
「一人分の食べる量が多いですよ?」
「食べ切れんかったら、霄に回すし」
最後になるかもしれないディナーは中華料理のコースになった。
前菜の盛り合わせ4品、カニ身入りフカヒレスープ、野菜と魚介の炒め物、カニ爪の揚げ物、海老のチリソース、豚バラ肉のトロトロ煮、まながつおの甘酢煮、たかなチャーハン、ゴマ団子、抹茶アイスの10品。
(デジカメを持ってきてなかったのが、悔やまれてならないけれど…)
どれもこれもが美味しくて、二人ともご機嫌。
「この席に座ってよかったわ。魚が見えるから」
竜樹さんはお魚好きだから、さらにご機嫌だった模様。
このレストランに来ようと言ってみてよかった。
「また来ようなぁ♪」
「うん、今度はお父さんやお母さんも一緒に来れたらいいね」
「そやなぁ(*^-^*)」
そんな風に話しながら、手を繋いで駅に向かう。
…今度こそ、お別れかな?
レストランが駅のすぐ傍だということが恨めしい。
いろいろ考えてると顔が下を向いてくるから困り者。
手術前最後のデートの終わりは近づいてきていることだけが間違いのない事実なんだけど、それに目を向けたくなくてただ手から伝わる竜樹さんの熱にだけ意識を向けていた。
(字数オーバーしそうなので、翌日に続きます。)
結局、竜樹さんは外泊ではなく外出を選ばれた。
竜樹邸に戻ることで、病院で掴んだ生活リズムを壊したくないというのがその理由なんだけど。
…竜樹邸に戻らないなら、あまり長い時間一緒にはいられないかな?
最後の週末だからこそ長く一緒にいたかったんだけど、竜樹さんが一番よい方向で動かれるのがベストなんだからと思うとこれでいいのかもしれない。
「13時に駅で待ち合わせな」
私の家と病院との中間点に当たる駅で待ち合わせ。
久しぶりの外での待ち合わせにドキドキしながら用意をするけれど、どういう訳か待ち合わせ時間から少し遅れそうな雲行き。
洗った髪も半乾きのまま家を飛び出し、坂道を駆け下りる。
息を切らしながらホームに滑り込んできた電車に飛び乗り、待ち合わせの駅に向かう。
待ち合わせてる駅に着く頃、携帯にメールがひとつ。
…待ち合わせ場所の変更だった。
電車に乗り換えて、竜樹さんが休んでおられるという駅に向かう。
9月に入ったというのに、夏色の空。
きっとこの暑さで竜樹さんはちょっと消耗したかなという気がした。
正直、私もちょっとだけ消耗感は否めないから。
ぼんやりと窓の外の夏色の空を眺めてるうちに電車は竜樹さんの待つ駅に着いた。
ホームに降り立ちきょろきょろと探していると、竜樹さんの方から見つけてもらえた。
「今日もあっついなぁ」
「お加減、大丈夫ですか?」
「ちょっと暑さが堪えたかもなぁ…」
そう言って、ほにゃと笑う竜樹さんと暫く待合室で涼んで、改札を出る。
取り敢えず自販機で飲み物を買い、これからの予定を決めようと話しながら歩き出す。
竜樹さんが耳元で、そっと囁く。
……………(/-\*)……………
昼日中から、お風呂付部屋に行くことになった。
部屋に入ると、竜樹さんが少ししょげておられる。
内装がお気に召さなかったらしい。
「今日は一緒にゆっくり過ごせたらいいじゃないですか?
場所がどうあれ、私は竜樹さんといられたら、それでいいんですよ」
ベッドに座り込んで少しお嘆き気味の竜樹さんをそっと抱きしめる。
もしかしたら、これが最後になるのかもしれない。
この時間が2人が向き合える最後の時間かもしれない。
なら、そこにいる互いを自分の内で確かめ合えたらそれでいい。
ただそれだけでいいんだ。
互いに火をつけるのはそんな想いだけで十分だったのかもしれない。
優しかったり激しかったり、苦しいくらいに熱を帯びていたり。
会話を重ねるようにいろんなものを重ね合わせる。
私がうつらうつらしてても、竜樹さんは竜樹さんで思うところがあったようで、時折意識を揺り起こすように、そっと抱きしめ熱を与える。
その表情がどこか切なそうなので、どきりとしたけれど。
寝たり起きたり、会話をするようにキスをしたり互いの熱を受け渡ししたり、ただぼそぼそと話して笑ったり。
竜樹邸にいる時ですら、そんな甘くて暖かな時間はなかったかもしれない。
それを最後にしたくなくて、どちらともなく語りかける。
「霄がおらんようになったら、いややぁ」
「どこにも行かないから、ちゃんと戻ってきてね」
見詰め合って笑い合って、抱きしめあって受け留めあって。
どれ位の時間が過ぎたか判らない。
そっと窓を閉ざしてるブラインドを上げて磨りガラス越しの空の色を眺めると、日が翳ってきたことが見て取れる。
「これから、どうします?」
病院で夕食を摂るならここでお別れになってしまう。
切り出したくはないけれどしんみりと別れたくはなくて、無理して笑ってみたり。
「…いや?外で食べようと思うねんけど」
……………(*^-^*)♪
無理やり笑顔は心からの笑顔に変わる。
何処で食べるのが妥当なのか考えているうちに、病院からも私の家からもそれほど遠くないところに美味しい中華料理のレストランがあることを思い出して、そこを提案。
竜樹さんはちょっと遠出がしたかったみたいだけど、食べた後に具合が悪くなっても病院がそれほど遠くなければ戻るのに苦労はしないから。
2人でお風呂付部屋を後にして、駅の方まで手を繋いで歩く。
こんな風に歩くのすら久しぶりのような気がして、自然とにこにこしながら電車に乗る。
移動を何度か繰り返し、中華レストランの最寄駅に着く。
週末の食事時なので待ちを覚悟していたけれど、生簀が見えるカウンターが空いていたので躊躇うことなくそこに座り、メニューを眺める。
どれもこれも美味しそうで、何を頼むか迷う二人。
ところが、ちょっとした問題が発生。
…単品メニューに炒飯がない"(ノ_・、)"
ご飯大好き竜樹さんには痛い事態が発生。
とにかくご飯粒が食べれないかとメニューを繰ってると、コースものになら炒飯がついてくる。
「…あの、コース取らないとご飯もの食べられないんですけど」
コースを取ると高くつくから避けたかったんだけど、竜樹さん一言。
「じゃあ、それにしよう♪(*^-^*)」
……………(゜o゜)
「一人分の食べる量が多いですよ?」
「食べ切れんかったら、霄に回すし」
最後になるかもしれないディナーは中華料理のコースになった。
前菜の盛り合わせ4品、カニ身入りフカヒレスープ、野菜と魚介の炒め物、カニ爪の揚げ物、海老のチリソース、豚バラ肉のトロトロ煮、まながつおの甘酢煮、たかなチャーハン、ゴマ団子、抹茶アイスの10品。
(デジカメを持ってきてなかったのが、悔やまれてならないけれど…)
どれもこれもが美味しくて、二人ともご機嫌。
「この席に座ってよかったわ。魚が見えるから」
竜樹さんはお魚好きだから、さらにご機嫌だった模様。
このレストランに来ようと言ってみてよかった。
「また来ようなぁ♪」
「うん、今度はお父さんやお母さんも一緒に来れたらいいね」
「そやなぁ(*^-^*)」
そんな風に話しながら、手を繋いで駅に向かう。
…今度こそ、お別れかな?
レストランが駅のすぐ傍だということが恨めしい。
いろいろ考えてると顔が下を向いてくるから困り者。
手術前最後のデートの終わりは近づいてきていることだけが間違いのない事実なんだけど、それに目を向けたくなくてただ手から伝わる竜樹さんの熱にだけ意識を向けていた。
(字数オーバーしそうなので、翌日に続きます。)
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