2人で手に入れたような…
2002年12月17日昨晩、何となく寝付けなくて、この日先輩から貰ったちっさいプラモデルを作ってみた。
ずっと以前からあるプラモデルを作ってみたかったのだけど、先に作ってしまってた先輩が「生半可じゃ出来ないから」と言って、練習用に簡単なものをくれたものをニッパー片手に黙々と組む。
本当なら日記の追っかけ更新を進めるはずだったのだけど、あまりに集中してしまい作り終えたらすっかり追っかけ更新をする気力がなくなっていた。
プラモデルを組むのは面白い。
自他共に認める三次元音痴の私がこんなものに手をつけるとは夢にも思わなかったけれど、先輩からプラモデルを貰う前から関心はあった。
このところ竜樹さんの体調が不安定で、横になって何時の間にか眠ってしまわれることが増えた。
その間竜樹邸の掃除をしたり、料理の下拵えを始めたりとすることはあったのだけど、竜樹さんがしんどい時に竜樹邸でできるものを見つけておくといいとは前から言われていた。
「プラモデル作るのなんてどうなん?そらは絵を描いたり物を作ったりするのは好きやろ?」
「パソコンで遊ぶのもいいけど、ディスプレイから離れて何かすることも見つけておくといいよ」と時々竜樹さんは仰ってたのだけど、具体的に何をするといいなんていう例をあげること自体は珍しくて、「なんでかな?」とは思ったけれど。
ちょうど自分自身に固着してる「三次元音痴」という名の苦手意識が何気ないことで払拭できるならそれはそれでいいと思ったから、先輩と話す機会があった時何気なく話したのだけど…
…面白いのはいいけれど。
ただでさえ遅れがちな日記はますます遅れるだろうし,会社にでは再び先輩の足止め攻撃が激化するのも目に見えている。
まぁ、足止め食らっても短くまとめて後は全力で仕事を片付ければいいだけの話なんだろう。
先輩云々がプラモデルを組むという作業より自分の中で重くのしかかってこないのは、プラモデル組むことを勧めてくれたのが他ならぬ竜樹さんだったから。
竜樹邸でパソコンを使うと確実に竜樹さんの見えないところで作業する羽目になるけれど、プラモデルなら竜樹さんが眠る姿を目に入れられる範囲の場所で作ることだってできる。
作り終えたちっさなプラモデルを机に置いて、少しだけパソコンで作業してから寝ようと作業してあと少しでおしまいというところで、データがすべて壊れてしまった。
意地にならずに眠ればいいものを意地になって復旧して、終わったら4時前。
時計の針に終われるように横になった。
数時間後の空は薄曇、けれど日差しは暖かい。
よろよろと起き出していつものようにばたばたと家を出る。
身体にどこか鈍さを感じながら事務所に入って仕事を始める。
暫くして階下に書類を取りに降りると、案の定先輩に呼び止められる。
「どやったどやったどやった?o(^-^o)o(^-^)o(o^-^)o 」
「…や、案外面白いですね。2時間ほどぎちっと集中して取り組めましたよ」
「今まで全く作ったことなくて2時間で終わったんやったら、早い方やでぇ」
予想してたより面白がって取り組めたことが判って気をよくされたのか、あんなのもあるでこんなものもあるでといろいろ教えてくれる。
それをふむふむと聞き、キリのいいところで事務所に戻った。
午前中の仕事はそれほど多くはなく、割と余裕を持って片付けることが出来た。
比較的穏やかなペースで仕事を片付け、お昼休みを迎える。
ゆっくらことごはんを食べ、のんびりボスティーと後片付けを済ませ、少しお昼寝。
ぼんやりと顔を上げ、昼からの仕事を立ち上げようとすると。
「ねぇやん、ねぇやん。買ってきたでぇ」
…………………(゜o゜)
先輩は、昨日作ったものよりもはるかに大きな箱を持ってやってきた。
どうやらこれがまともに作れたなら、私が作りたいけど出来そうにないだろうと諦めたものは作れるらしい。
昨日貰ったものよりもはるかに値がはったので、代金を納めておっきな箱を受け取った。
ぼんやりと箱を見てると、「こうすんねんで、あぁすんねんで、判らなかったらちゃんと聞きや」と先輩のアドバイスが飛んでくる。
そのポイントだけを抑えて箱を片付け、仕事を始める。
昼からは午前中とはうって変わって、妙に忙しい。
次から次へとやってくる仕事を投げ飛ばすように片付けながら、ふと思う。
…早く帰って組みたいなぁ
子供じみた心の動き方が随分久しぶりのような気がして、我に返ると笑えたけれど。
ひとまずなるべく早く家に帰れるようにと、意識を切り替えてやってくる仕事を片付けていった。
事務所を飛び出して、大きな箱を抱えて家路を急ぐ。
その急ぎ方が竜樹邸に行く時のような感じがして、何だかおかしな感じ。
ただ単に自分で見つけてきた新しい楽しみなら、よっぽどのものじゃなければ心は躍らない。
絵を描くことに匹敵するくらいの楽しみなんて、そんなにあるもんじゃないから。
楽しいと感じたのは他ならぬ自分だけど、そのきっかけをくれたのは間違いなく竜樹さんだから。
新しい楽しみを竜樹さんと2人で手に入れたような感じが嬉しかった。
「お加減いかがですか?
こんばんわ。
今日は奇妙に忙しかったです。
昨日の夜、簡単なプラモデルを作って遊びにました。
2時間かちっと集中して楽しめました。
今度はもちっとおっきいのに挑戦しようかな?(*^_^*)」
そう夜空に飛ばして、またおっきな箱を抱えて移動の旅を続けた。
家に帰ってから、購入したプラモデルの箱を開ける。
昨日作ったものと比べたら、格段にパーツの数が多い。
ちょっとやそっとじゃ出来上がらないだろうのは目に見えていたけれど。
そのパーツの多さにどきどきわくわくしてる自分がいるのが、何だかおかしくて。
…まぁた暫く日記は止まるなぁ
それはそれでもいいかもしれない。
竜樹さんがくれた種を人の手を借りはしたけれど自分で育てて実を成したことが、今はとても嬉しいから。
ずっと以前からあるプラモデルを作ってみたかったのだけど、先に作ってしまってた先輩が「生半可じゃ出来ないから」と言って、練習用に簡単なものをくれたものをニッパー片手に黙々と組む。
本当なら日記の追っかけ更新を進めるはずだったのだけど、あまりに集中してしまい作り終えたらすっかり追っかけ更新をする気力がなくなっていた。
プラモデルを組むのは面白い。
自他共に認める三次元音痴の私がこんなものに手をつけるとは夢にも思わなかったけれど、先輩からプラモデルを貰う前から関心はあった。
このところ竜樹さんの体調が不安定で、横になって何時の間にか眠ってしまわれることが増えた。
その間竜樹邸の掃除をしたり、料理の下拵えを始めたりとすることはあったのだけど、竜樹さんがしんどい時に竜樹邸でできるものを見つけておくといいとは前から言われていた。
「プラモデル作るのなんてどうなん?そらは絵を描いたり物を作ったりするのは好きやろ?」
「パソコンで遊ぶのもいいけど、ディスプレイから離れて何かすることも見つけておくといいよ」と時々竜樹さんは仰ってたのだけど、具体的に何をするといいなんていう例をあげること自体は珍しくて、「なんでかな?」とは思ったけれど。
ちょうど自分自身に固着してる「三次元音痴」という名の苦手意識が何気ないことで払拭できるならそれはそれでいいと思ったから、先輩と話す機会があった時何気なく話したのだけど…
…面白いのはいいけれど。
ただでさえ遅れがちな日記はますます遅れるだろうし,会社にでは再び先輩の足止め攻撃が激化するのも目に見えている。
まぁ、足止め食らっても短くまとめて後は全力で仕事を片付ければいいだけの話なんだろう。
先輩云々がプラモデルを組むという作業より自分の中で重くのしかかってこないのは、プラモデル組むことを勧めてくれたのが他ならぬ竜樹さんだったから。
竜樹邸でパソコンを使うと確実に竜樹さんの見えないところで作業する羽目になるけれど、プラモデルなら竜樹さんが眠る姿を目に入れられる範囲の場所で作ることだってできる。
作り終えたちっさなプラモデルを机に置いて、少しだけパソコンで作業してから寝ようと作業してあと少しでおしまいというところで、データがすべて壊れてしまった。
意地にならずに眠ればいいものを意地になって復旧して、終わったら4時前。
時計の針に終われるように横になった。
数時間後の空は薄曇、けれど日差しは暖かい。
よろよろと起き出していつものようにばたばたと家を出る。
身体にどこか鈍さを感じながら事務所に入って仕事を始める。
暫くして階下に書類を取りに降りると、案の定先輩に呼び止められる。
「どやったどやったどやった?o(^-^o)o(^-^)o(o^-^)o 」
「…や、案外面白いですね。2時間ほどぎちっと集中して取り組めましたよ」
「今まで全く作ったことなくて2時間で終わったんやったら、早い方やでぇ」
予想してたより面白がって取り組めたことが判って気をよくされたのか、あんなのもあるでこんなものもあるでといろいろ教えてくれる。
それをふむふむと聞き、キリのいいところで事務所に戻った。
午前中の仕事はそれほど多くはなく、割と余裕を持って片付けることが出来た。
比較的穏やかなペースで仕事を片付け、お昼休みを迎える。
ゆっくらことごはんを食べ、のんびりボスティーと後片付けを済ませ、少しお昼寝。
ぼんやりと顔を上げ、昼からの仕事を立ち上げようとすると。
「ねぇやん、ねぇやん。買ってきたでぇ」
…………………(゜o゜)
先輩は、昨日作ったものよりもはるかに大きな箱を持ってやってきた。
どうやらこれがまともに作れたなら、私が作りたいけど出来そうにないだろうと諦めたものは作れるらしい。
昨日貰ったものよりもはるかに値がはったので、代金を納めておっきな箱を受け取った。
ぼんやりと箱を見てると、「こうすんねんで、あぁすんねんで、判らなかったらちゃんと聞きや」と先輩のアドバイスが飛んでくる。
そのポイントだけを抑えて箱を片付け、仕事を始める。
昼からは午前中とはうって変わって、妙に忙しい。
次から次へとやってくる仕事を投げ飛ばすように片付けながら、ふと思う。
…早く帰って組みたいなぁ
子供じみた心の動き方が随分久しぶりのような気がして、我に返ると笑えたけれど。
ひとまずなるべく早く家に帰れるようにと、意識を切り替えてやってくる仕事を片付けていった。
事務所を飛び出して、大きな箱を抱えて家路を急ぐ。
その急ぎ方が竜樹邸に行く時のような感じがして、何だかおかしな感じ。
ただ単に自分で見つけてきた新しい楽しみなら、よっぽどのものじゃなければ心は躍らない。
絵を描くことに匹敵するくらいの楽しみなんて、そんなにあるもんじゃないから。
楽しいと感じたのは他ならぬ自分だけど、そのきっかけをくれたのは間違いなく竜樹さんだから。
新しい楽しみを竜樹さんと2人で手に入れたような感じが嬉しかった。
「お加減いかがですか?
こんばんわ。
今日は奇妙に忙しかったです。
昨日の夜、簡単なプラモデルを作って遊びにました。
2時間かちっと集中して楽しめました。
今度はもちっとおっきいのに挑戦しようかな?(*^_^*)」
そう夜空に飛ばして、またおっきな箱を抱えて移動の旅を続けた。
家に帰ってから、購入したプラモデルの箱を開ける。
昨日作ったものと比べたら、格段にパーツの数が多い。
ちょっとやそっとじゃ出来上がらないだろうのは目に見えていたけれど。
そのパーツの多さにどきどきわくわくしてる自分がいるのが、何だかおかしくて。
…まぁた暫く日記は止まるなぁ
それはそれでもいいかもしれない。
竜樹さんがくれた種を人の手を借りはしたけれど自分で育てて実を成したことが、今はとても嬉しいから。
自分が帰るべき場所
2002年12月16日昨日あれだけ晴れていたのに、今朝の空は鈍色だった。
いつ雨が降り始めてもおかしくないような空模様にちょっとうんざりしながら。
竜樹さんが具合が悪くなるかもしれない危険性をおいてもなお神戸に連れて行ってくれたのだから、今週は頑張らなきゃならない。
…4連休明けの会社は人外魔境以外の何物でもないのだけど(-_-;)
ともするとずるずる休んでしまいたくなるような衝動に駆られそうになるけれど、ひとまず気力を起こして家を出る。
今日から3日間、同僚さんがいない。
あと数週間もすれば同僚さんがいない仕事場が当たり前になる。
後任の係長さまと一緒に組むこと自体にはまだまだ抵抗があるのだけれど…
事務所に入って書類だらけの机の上を見てため息ひとつ。
けれど、整理していくうちに同僚さんがそのいくつかに手をつけていてくれたことが判った。
そのおかげで思ったよりも早く仕事が片付きそうな感じ。
事務所にいない同僚さんに心の中で小さく頭を下げ、またきりきりと残務処理と今日の仕事を片付けていく。
残務処理の大方が片付いた状態で昼休みを向かえることが出来た。
ふと階段の踊場に出てみると、鈍色の空から雨が落ちてきていた。
おまけに妙に冷え込んできている。
昨日竜樹さんが著しく体調を崩したのは、昨日の夜の寒さの影響だけじゃなかったのかもしれない。
さらに悪いことに。
昨日神戸に行く前に竜樹さんに「持って出て」と頼まれていた風邪薬を竜樹さんと別れる時返し損ねて持って帰ってきてしまった。
大風邪から風邪気味程度まで回復していたのに、また大風邪に戻っていたら薬なしでは具合が悪い。
「ご飯食べれてますか?
食べれてないなら、薬届けて夕飯作りましょうか?
思ったより、仕事が軽くて済みそうなので。」
もこもことお昼ごはんを口にしながら、そう打ってそっと飛ばす。
尤も、返事がなくても風邪薬だけは返しに行くつもりではいてるけれど…
昼からもそれほど仕事は立て込まず、残務処理も今日の仕事もすべて時間内に片付けることが出来た。
係長さまの動向も意識して事務所を出るべきかなとは思ったけれど、今日は早く竜樹さんのところに行かねばならないという気持ちが先に立って、脱兎の如く事務所を後にした。
ロッカーに片付けてあった傘を掴んで、大慌てで自転車かっ飛ばして駅を目指す。
「仕事が早く終わったので、薬と食料届けに行きます」
ホームに上がって電車に乗るまでの間にそう打って飛ばすと、程なくお返事が届く。
「りょうかい!」
あとは最短時間で移動できるように乗り換えの度にホームを走り回り、ホームに滑り込んでくる電車に飛び乗る。
バスに乗る前にスーパーに寄り、食材を買い込みバスに乗る。
雨脚は依然として弱まってなかったので、傘を差しながらよたよたと重い荷物を提げて竜樹邸に行く。
竜樹邸に着くと、案の定しんどそうに横になってる竜樹さん。
話を聞くと夕方に少し食べたというので、持ってきた風邪薬を飲んでもらってまた寝てもらう。
その間、盛大に散らかってる台所の荒いものを片付け、料理を作る。
今日は鶏大根(by遊上炯さん)と牛スジ煮込み。
鶏モモ肉は一口大、大根は1.5〜2cmほどの厚さに切る。
鶏肉は表面の色が変わる程度に焼いてから、ダシを足してその上から大根を入れ、醤油、酒、みりんで味を調える。
(遊上さんのレシピとは少し作り方が違うかもしれないけれど…)
牛スジ煮込みは、一口大に切った牛スジをかぶる程度のお湯で茹でてアクを取り、一度お湯を捨てる。
鍋に茹でた牛スジを入れ、かぶる程度の水を入れて茹で、いちょう切りにした大根と小さな短冊切りにしたコンニャクを投入。
味噌で味付けして2時間ほど煮る。
(竜樹邸には八丁味噌しかなかったので、少なめの八丁味噌に少しみりんを足した)
「霄ぁ、仕事した後に来てるんやから、ゆっくりしぃ」
弱い声で竜樹さんは仰ったのだけど、ここに来てる以上できることはして帰りたいからと、鶏大根と牛スジ煮込みの目鼻が着くまでは鍋の番をして、あとは竜樹さんの傍でテレビを見ていた。
そのうち「寒い、寒い」と仰る竜樹さんに引っ張り込まれて、くっついて横になったのだけど…
暫くくっついていると内線が鳴ったので、出ると竜樹母さんからだった。
昨日もやってきて今日もまた来てたので驚いておられたけれど、丁度渡したいものが届いたとのことで、竜樹邸におみえになった。
「まぁ、霄ちゃん。仕事の後にこんなことしなくていいのに…」
あがってこられた竜樹母さんがぱっきり片付いた台所と鍋一杯の鶏大根と牛スジ煮込みを見てびっくりされていた。
「沢山作ってたら、料理作るのがしんどくても食べることはできると思うので…」
そう話すと、何故か竜樹母さんにお礼を言われたのできょとんとしてしまった。
暫く竜樹母さんとリビングで話しこんで、ご実家に戻られる時に包みを貰った。
「今日頼んでいたカステラが届いたから」
そう言って、長崎直送のカステラを1本丸まま貰ってしまった。
私が竜樹邸に行って竜樹母さんに会うと何かしら頂いてしまうので、こちらが申し訳ないくらい。
頂いたカステラにきゃっきゃと喜んでいるのを、柔らかな表情で見てた竜樹さん。
時計を見ると、帰らなきゃならない時間になっていた。
柔らかな表情を見せていてもどこかちょっと弱ってそうな感じがするので、そのまま彼と別れて帰るのが嫌だったのだけれど…
「あと4回会社に行ったらまた会えるやん?今日はもう帰り?
大変やったのに、来てくれてありがとうなぁ」
そう言って手を差し伸べてくれる竜樹さんをぎゅっと抱き締めて、竜樹邸をあとにする。
降り続く雨は地表からも大気からも熱を奪っていくような感じがする。
あまりの冷え込みに自宅に戻る気力が萎えそうだったけれど、帰らない訳にも行かないので雨の中今度は自宅を目指した。
電車の移動を繰り返し何とか最終バスに乗り込んで、自宅へ戻る。
竜樹母さんにお礼の電話を入れて、竜樹さんにはメールを飛ばす。
それからリビングに降りて遅い夕飯をとって、後片付けをするために台所に立ってふと思う。
もしも帰る場所がここではなくて竜樹さんのいる場所になったなら。
帰ってからまず最初にするのは夕飯作り。
それから後片付けをして、ちょっと休んでお風呂を沸かして翌日までにしないとならない作業をする。
竜樹邸に行って台所に立つと、決まってキッチンスタジアム状態で料理を展開するのだけど、果たしてそれで毎日続くかなぁと思ったり。
毎日続いたとしても自分の時間はうんとこ少なくなるんだろうなぁと思ったり。
ぱっと思いつくのは、何となく明るい気分になれそうにないことだったりするのが恨めしいけれど。
それでも、竜樹さんがすぐ傍にいてばたばたしてる自分の状態が決して落ち着かない状態ではないというのは、毎度竜樹邸に行って作業をしてて判ること。
竜樹さんが傍にいるという状態が何をするにしても安定した精神状態を齎してくれるなら、きっと忙しくても穏やかな表情で暮らしていけるんじゃないかって気がする。
…たまにやる時の精神状態ですべてがそうなると思うのは、楽観しすぎてるかもしれないけれど。
それでも、何かをする傍に竜樹さんがいて、何かをする目的の中に竜樹さんの存在があるのなら、きっとそれをこなしていくことが苦になることはないような気がする。
元気でも元気でなくても。
暖かく晴れた日であっても、冷たい雨が降る日であっても。
大切な人が傍にいることで心が暖かくなる場所があるのなら、そこは間違いなく自分が帰るべき場所なのだと思う。
その帰るべき場所に本当に帰ることのできる日が来ることを。
冷たい雨が降り注ぐ漆黒の空がいつか青く晴れ渡る朝を迎えるようなそんな日が来ることを。
ずっとずっと待っている。
その日を目指しながら、今日も明日もずっとずっと歩いてく。
いつ雨が降り始めてもおかしくないような空模様にちょっとうんざりしながら。
竜樹さんが具合が悪くなるかもしれない危険性をおいてもなお神戸に連れて行ってくれたのだから、今週は頑張らなきゃならない。
…4連休明けの会社は人外魔境以外の何物でもないのだけど(-_-;)
ともするとずるずる休んでしまいたくなるような衝動に駆られそうになるけれど、ひとまず気力を起こして家を出る。
今日から3日間、同僚さんがいない。
あと数週間もすれば同僚さんがいない仕事場が当たり前になる。
後任の係長さまと一緒に組むこと自体にはまだまだ抵抗があるのだけれど…
事務所に入って書類だらけの机の上を見てため息ひとつ。
けれど、整理していくうちに同僚さんがそのいくつかに手をつけていてくれたことが判った。
そのおかげで思ったよりも早く仕事が片付きそうな感じ。
事務所にいない同僚さんに心の中で小さく頭を下げ、またきりきりと残務処理と今日の仕事を片付けていく。
残務処理の大方が片付いた状態で昼休みを向かえることが出来た。
ふと階段の踊場に出てみると、鈍色の空から雨が落ちてきていた。
おまけに妙に冷え込んできている。
昨日竜樹さんが著しく体調を崩したのは、昨日の夜の寒さの影響だけじゃなかったのかもしれない。
さらに悪いことに。
昨日神戸に行く前に竜樹さんに「持って出て」と頼まれていた風邪薬を竜樹さんと別れる時返し損ねて持って帰ってきてしまった。
大風邪から風邪気味程度まで回復していたのに、また大風邪に戻っていたら薬なしでは具合が悪い。
「ご飯食べれてますか?
食べれてないなら、薬届けて夕飯作りましょうか?
思ったより、仕事が軽くて済みそうなので。」
もこもことお昼ごはんを口にしながら、そう打ってそっと飛ばす。
尤も、返事がなくても風邪薬だけは返しに行くつもりではいてるけれど…
昼からもそれほど仕事は立て込まず、残務処理も今日の仕事もすべて時間内に片付けることが出来た。
係長さまの動向も意識して事務所を出るべきかなとは思ったけれど、今日は早く竜樹さんのところに行かねばならないという気持ちが先に立って、脱兎の如く事務所を後にした。
ロッカーに片付けてあった傘を掴んで、大慌てで自転車かっ飛ばして駅を目指す。
「仕事が早く終わったので、薬と食料届けに行きます」
ホームに上がって電車に乗るまでの間にそう打って飛ばすと、程なくお返事が届く。
「りょうかい!」
あとは最短時間で移動できるように乗り換えの度にホームを走り回り、ホームに滑り込んでくる電車に飛び乗る。
バスに乗る前にスーパーに寄り、食材を買い込みバスに乗る。
雨脚は依然として弱まってなかったので、傘を差しながらよたよたと重い荷物を提げて竜樹邸に行く。
竜樹邸に着くと、案の定しんどそうに横になってる竜樹さん。
話を聞くと夕方に少し食べたというので、持ってきた風邪薬を飲んでもらってまた寝てもらう。
その間、盛大に散らかってる台所の荒いものを片付け、料理を作る。
今日は鶏大根(by遊上炯さん)と牛スジ煮込み。
鶏モモ肉は一口大、大根は1.5〜2cmほどの厚さに切る。
鶏肉は表面の色が変わる程度に焼いてから、ダシを足してその上から大根を入れ、醤油、酒、みりんで味を調える。
(遊上さんのレシピとは少し作り方が違うかもしれないけれど…)
牛スジ煮込みは、一口大に切った牛スジをかぶる程度のお湯で茹でてアクを取り、一度お湯を捨てる。
鍋に茹でた牛スジを入れ、かぶる程度の水を入れて茹で、いちょう切りにした大根と小さな短冊切りにしたコンニャクを投入。
味噌で味付けして2時間ほど煮る。
(竜樹邸には八丁味噌しかなかったので、少なめの八丁味噌に少しみりんを足した)
「霄ぁ、仕事した後に来てるんやから、ゆっくりしぃ」
弱い声で竜樹さんは仰ったのだけど、ここに来てる以上できることはして帰りたいからと、鶏大根と牛スジ煮込みの目鼻が着くまでは鍋の番をして、あとは竜樹さんの傍でテレビを見ていた。
そのうち「寒い、寒い」と仰る竜樹さんに引っ張り込まれて、くっついて横になったのだけど…
暫くくっついていると内線が鳴ったので、出ると竜樹母さんからだった。
昨日もやってきて今日もまた来てたので驚いておられたけれど、丁度渡したいものが届いたとのことで、竜樹邸におみえになった。
「まぁ、霄ちゃん。仕事の後にこんなことしなくていいのに…」
あがってこられた竜樹母さんがぱっきり片付いた台所と鍋一杯の鶏大根と牛スジ煮込みを見てびっくりされていた。
「沢山作ってたら、料理作るのがしんどくても食べることはできると思うので…」
そう話すと、何故か竜樹母さんにお礼を言われたのできょとんとしてしまった。
暫く竜樹母さんとリビングで話しこんで、ご実家に戻られる時に包みを貰った。
「今日頼んでいたカステラが届いたから」
そう言って、長崎直送のカステラを1本丸まま貰ってしまった。
私が竜樹邸に行って竜樹母さんに会うと何かしら頂いてしまうので、こちらが申し訳ないくらい。
頂いたカステラにきゃっきゃと喜んでいるのを、柔らかな表情で見てた竜樹さん。
時計を見ると、帰らなきゃならない時間になっていた。
柔らかな表情を見せていてもどこかちょっと弱ってそうな感じがするので、そのまま彼と別れて帰るのが嫌だったのだけれど…
「あと4回会社に行ったらまた会えるやん?今日はもう帰り?
大変やったのに、来てくれてありがとうなぁ」
そう言って手を差し伸べてくれる竜樹さんをぎゅっと抱き締めて、竜樹邸をあとにする。
降り続く雨は地表からも大気からも熱を奪っていくような感じがする。
あまりの冷え込みに自宅に戻る気力が萎えそうだったけれど、帰らない訳にも行かないので雨の中今度は自宅を目指した。
電車の移動を繰り返し何とか最終バスに乗り込んで、自宅へ戻る。
竜樹母さんにお礼の電話を入れて、竜樹さんにはメールを飛ばす。
それからリビングに降りて遅い夕飯をとって、後片付けをするために台所に立ってふと思う。
もしも帰る場所がここではなくて竜樹さんのいる場所になったなら。
帰ってからまず最初にするのは夕飯作り。
それから後片付けをして、ちょっと休んでお風呂を沸かして翌日までにしないとならない作業をする。
竜樹邸に行って台所に立つと、決まってキッチンスタジアム状態で料理を展開するのだけど、果たしてそれで毎日続くかなぁと思ったり。
毎日続いたとしても自分の時間はうんとこ少なくなるんだろうなぁと思ったり。
ぱっと思いつくのは、何となく明るい気分になれそうにないことだったりするのが恨めしいけれど。
それでも、竜樹さんがすぐ傍にいてばたばたしてる自分の状態が決して落ち着かない状態ではないというのは、毎度竜樹邸に行って作業をしてて判ること。
竜樹さんが傍にいるという状態が何をするにしても安定した精神状態を齎してくれるなら、きっと忙しくても穏やかな表情で暮らしていけるんじゃないかって気がする。
…たまにやる時の精神状態ですべてがそうなると思うのは、楽観しすぎてるかもしれないけれど。
それでも、何かをする傍に竜樹さんがいて、何かをする目的の中に竜樹さんの存在があるのなら、きっとそれをこなしていくことが苦になることはないような気がする。
元気でも元気でなくても。
暖かく晴れた日であっても、冷たい雨が降る日であっても。
大切な人が傍にいることで心が暖かくなる場所があるのなら、そこは間違いなく自分が帰るべき場所なのだと思う。
その帰るべき場所に本当に帰ることのできる日が来ることを。
冷たい雨が降り注ぐ漆黒の空がいつか青く晴れ渡る朝を迎えるようなそんな日が来ることを。
ずっとずっと待っている。
その日を目指しながら、今日も明日もずっとずっと歩いてく。
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今年の光から貰ったぬくもり
2002年12月15日昨夜、竜樹さんに電話した。
竜樹さんの体調が気になったのが一番だったけれど、連絡をすることでそれほど落ち込んではないって思ってもらえたらありがたいなとも思ったから。
なのに。
「…明日は暖かくなりそうやし、明日やったらルミナリエ見に行けると思うねんけど」
そう切り出されてびっくりした。
「…や、もういいんですよ。日帰りやと大変やし、無理なんてしなくてもいいもの」
「霄の頑張りに応えたいって思うからさぁ(*^_^*)」
竜樹さんは忘れてなんていなかった。
私がどうして毎年あの行事を楽しみにしていたのかを…
それだけで十分だった。
ある程度事前に段取りを決めておきたい竜樹さんと一緒に、どんな方法で神戸まで行くかをあぁだこうだと言いながら相談する。
ふと私が思いつきで言った方法が竜樹さんには名案に思えたらしく、その場で即決。
そこから時間を逆算して竜樹邸に入る時間を決める。
竜樹さんが私の願いを忘れていなかったことを喜びながら、明日が暖かくなることを祈った。
竜樹さんの身体がしんどくならないまま、無事にこの行事を終えることが出来るようにと祈りながら眠った。
目覚めると、いつもよりも部屋の温度は高い気がする。
ぼんやりと起き上がって外に出てみると、外も暖かかった。
…この天気なら大丈夫かもしれない
張り切って用意をしてうちを出た。
これだけ暖かいと坂道を転がり落ちるように駆け下りると汗が出る。
いつもなら汗をかいても電車に乗ると自然と引くのだけど、今日はハンドタオルで拭わない限りは汗が引かなさそうなくらいの陽気。
あとは竜樹さんが元気でいてくれてることを願いながら、移動を繰り返した。
車の中で食べれるようにとおにぎりを買うため、途中下車。
そこから何駅分か歩いて竜樹邸に向かった。
「今日はあったかいなぁ」
竜樹邸に迎え入れてくれた竜樹さんはいつもよりも表情が柔らかい。
途中で買い忘れてしまったものがあったので、荷物だけを置いて自転車に乗って近くのスーパーまで走る。
そこで竜樹さんが必要としてる食材を買ってまた自転車をかっ飛ばす。
竜樹邸に戻ると、私のお昼ごはんができていた。
竜樹さんが焼いてくれたお好み焼きを食べ、ちょっと休んだ後用意をして出かける。
師走の日曜日の道路はやや混み気味。
あまり運転が長時間にならないことを祈るけれど、そう簡単にはいかないのかもしれないと随分気を揉んだけれど、渋滞は高速に乗るまでで済んでくれたので助かった。
ただ、いつもとルートが微妙に違うので、降りる場所で注意しなければならなかったけれど…
それほど大きな渋滞に引っかかることなく車を置いておこうと決めた場所に着いた。
車を駐車場に止めて駅に向かって歩き出す。
ルミナリエの点灯の時間まで2時間以上あったので、ひとまず神戸に出てお茶デモしながら歩く鋭気を養おうとホームに滑り込んできた電車に乗り込む。
電車の中は早くもルミナリエを見るために出向いてきてるのだろう人達でいっぱいだった。
目的地に電車が到着して、ところてん状態で電車の外に押し出される。
2人で立つ、久しぶりの神戸。
旅行が中止になって、正直もう竜樹さんと神戸に来ることはないだろうなぁって思ってたけれど。
竜樹さんが好きな街に2人でまた来れたことが嬉しい。
ひとまず運転疲れを癒すため、喫茶店に飛び込んだ。
手術後迎える最初の冬は体の具合が不安定になるのはお約束。
会場までのルート図を見ながら、黙々とコーヒーとケーキを食べてる私たちはいちゃいちゃべたべたしてる周りのカップルから見たら随分冷めた人達のように見えたろうけれど、ただ「霄をルミナリエに連れて行こう」と思ってくれたその気持ちがあっただけで十分。
周りのあまあまな空気をよそに、冷え込むであろう神戸の街を歩くための気力を蓄える。
ゆっくり会場に向かうべく、店を出る。
途中宝くじ売り場に寄って竜樹さんの分の宝くじを購入。
「3等くらい当たるといいね」
「ホンマやなぁ」
そこでやっと少し柔らかな笑顔が出た。
そこからまた会場に向かう人に押されながら、ルミナリエの入り口に向かう。
会場前に着いたのは、点灯の1時間ほど前。
6年目にして初めて点灯前にフロントーネの見える場所に立った。
そこから1時間も姿勢を変えることなく点灯を待つ形をとることが竜樹さんの身体にいいわけはないのだけれど、日帰りでやってきてる以上他に方法がない。
本当に強行しても大丈夫なのかとこの場に来てもまだそんなことを考える。
竜樹さんの表情は俄かに硬くなってきてる気がするけれど、声をかけると「大丈夫やから」と返って来る。
周りの人が携帯のカメラでまだ灯りのついていないフロントーネを撮っているのを見て、「撮ろ?」と言って私のデジカメを片手にあぁでもないこうでもないと言いながら、骨組みだけのフロントーネを撮っておられる。
時折子供を肩車する親父さんやばかでっかいおっさんがちょろちょろ動くのに、いらいらいらっときたけれど…
竜樹さんが何とか無事でいてくれることだけを祈りながら、点灯の時間を待つ。
18時前になって、歌が聞こえてくる。
フロントーネの辺りで点灯前のセレモニーをやってるのだろう。
コーラスが終わった後、夕闇の中フロントーネとガレリアに灯りが灯る。
6年目にして初めて点灯の瞬間にお目にかかった。
点灯した途端歓声が上がったのだけど、そこから少しも動く様子がない。
歓声は「何で進めへんねん」って声に変わる。
竜樹さんの様子を伺いながら、フロントーネに辿り着くまでの間にある建物のデコレーションをフレームに収めたりしながらのたのたと歩く。
今年のテーマは光のぬくもり。
歓喜の広場(La Piazza della Gioia)と名づけられたフロントーネは去年と比べるとそれほど大きなものでなくて、私も竜樹さんもフロントーネがちょっと大きくなったくらいのものとしてしか認識できずにいたけれど、ちゃんと傍まで行くとガレリアとは違うのだと認識は出来た。
「こういう風に撮ったら、きれいに撮れるで」
写真の撮り方にうるさい竜樹さんの本領発揮。
竜樹さんの指示に従って写真を撮っては前へ進んでいく。
ガレリア(光の回廊と呼ばれる通路)は「宇宙のリズム」(Uniberso)と名づけられ、一番奥のガレリアには大きな星型の電飾が下がっている。
ちょっと背中が痛んできた竜樹さんにお薬を飲んでもらおうと、途中のコンビニで飲み物を調達。
ちょっと光の中を歩くことを楽しむことよりも、早くここを抜け出して帰ることを考えた方がよさそうな感じになってくる。
のたのたとガレリアを後にして、東遊園地にあるスパッリエーラ(光の壁掛)へ。
「生命の円」(Il Cerchio della vita)と名づけられたそれは、フラッシュなしでも写真が取れそうなくらい明るい。
実際円形のガレリアの中に入ると、そこだけ暖かい感じがする。
けれどあまりのんびりもしていられない。
早く帰ろうとたったと写真を撮って、買い物をして帰ろうといそいそしていると、「ベンチで休んでるから、ゆっくり見ておいで」と竜樹さん。
遠慮がちに「帰りましょう?」というと、「いいから」と言う竜樹さんの言葉に甘えて、CDとルミナリエくじだけ買って戻ってくる。
1000円分だけ買った宝くじのうち、600円が払い戻されたのに少しだけ気をよくしたけれど、それ以上に辛そうな竜樹さんを見てると胸が痛んでくる。
駅に向かってそのまま歩いていたけれど、途中でどうにもしようのないような状態になってしまって、タクシーを呼んで車を止めてる駐車場付近まで送り届けてもらった。
車に乗ってからも、時々休んでは運転し、休んでは運転しを繰り返して。
休む度に辛そうにしてる竜樹さんを見てて、運転免許を持っていないことを心底後悔した。
私のつまらない執着のために竜樹さんにここまでしんどい思いをさせてよかったんだろうか?
何となく、神戸小旅行は今年で最後になるかもなぁなんて根拠レスな予感はあったけれど、私が運転免許を取得しない限り今年で最後にした方がいいのかもしれない。
宿泊先をおさえた状態なら続けられるとしても、その当日になって体調不良が著しい状態になるならそれもできない。
それはこないだのことでよく判ったから。
私の小さな願いを守り通そうとしてくれた竜樹さんの気持ちを純粋に嬉しいと思いながらも、その所為で竜樹さんに辛い思いをさせてしまうなら意味のないことだとも思うから。
今年の光は竜樹さんの心にぬくもりは届けてくれただろうか?
今年の光が竜樹さんの辛さを何時の日か和らげてくれる素になればいいのにと願いながら、竜樹さんを支えながら歩くこと、竜樹さんに支えられながら歩くこと。
それを守り続けたいと願う気持ちに小さな力を維持しつづけたい。
どこまでそれが通せるか判らないけれど、私の小さな願いのために今年の光に出会わせてくれるために頑張ってくれた竜樹さんにできる精一杯のことだって思うから…
今年の光から貰ったぬくもりを精一杯の願いを叶えるための灯火にしていきたいって思う。
竜樹さんの体調が気になったのが一番だったけれど、連絡をすることでそれほど落ち込んではないって思ってもらえたらありがたいなとも思ったから。
なのに。
「…明日は暖かくなりそうやし、明日やったらルミナリエ見に行けると思うねんけど」
そう切り出されてびっくりした。
「…や、もういいんですよ。日帰りやと大変やし、無理なんてしなくてもいいもの」
「霄の頑張りに応えたいって思うからさぁ(*^_^*)」
竜樹さんは忘れてなんていなかった。
私がどうして毎年あの行事を楽しみにしていたのかを…
それだけで十分だった。
ある程度事前に段取りを決めておきたい竜樹さんと一緒に、どんな方法で神戸まで行くかをあぁだこうだと言いながら相談する。
ふと私が思いつきで言った方法が竜樹さんには名案に思えたらしく、その場で即決。
そこから時間を逆算して竜樹邸に入る時間を決める。
竜樹さんが私の願いを忘れていなかったことを喜びながら、明日が暖かくなることを祈った。
竜樹さんの身体がしんどくならないまま、無事にこの行事を終えることが出来るようにと祈りながら眠った。
目覚めると、いつもよりも部屋の温度は高い気がする。
ぼんやりと起き上がって外に出てみると、外も暖かかった。
…この天気なら大丈夫かもしれない
張り切って用意をしてうちを出た。
これだけ暖かいと坂道を転がり落ちるように駆け下りると汗が出る。
いつもなら汗をかいても電車に乗ると自然と引くのだけど、今日はハンドタオルで拭わない限りは汗が引かなさそうなくらいの陽気。
あとは竜樹さんが元気でいてくれてることを願いながら、移動を繰り返した。
車の中で食べれるようにとおにぎりを買うため、途中下車。
そこから何駅分か歩いて竜樹邸に向かった。
「今日はあったかいなぁ」
竜樹邸に迎え入れてくれた竜樹さんはいつもよりも表情が柔らかい。
途中で買い忘れてしまったものがあったので、荷物だけを置いて自転車に乗って近くのスーパーまで走る。
そこで竜樹さんが必要としてる食材を買ってまた自転車をかっ飛ばす。
竜樹邸に戻ると、私のお昼ごはんができていた。
竜樹さんが焼いてくれたお好み焼きを食べ、ちょっと休んだ後用意をして出かける。
師走の日曜日の道路はやや混み気味。
あまり運転が長時間にならないことを祈るけれど、そう簡単にはいかないのかもしれないと随分気を揉んだけれど、渋滞は高速に乗るまでで済んでくれたので助かった。
ただ、いつもとルートが微妙に違うので、降りる場所で注意しなければならなかったけれど…
それほど大きな渋滞に引っかかることなく車を置いておこうと決めた場所に着いた。
車を駐車場に止めて駅に向かって歩き出す。
ルミナリエの点灯の時間まで2時間以上あったので、ひとまず神戸に出てお茶デモしながら歩く鋭気を養おうとホームに滑り込んできた電車に乗り込む。
電車の中は早くもルミナリエを見るために出向いてきてるのだろう人達でいっぱいだった。
目的地に電車が到着して、ところてん状態で電車の外に押し出される。
2人で立つ、久しぶりの神戸。
旅行が中止になって、正直もう竜樹さんと神戸に来ることはないだろうなぁって思ってたけれど。
竜樹さんが好きな街に2人でまた来れたことが嬉しい。
ひとまず運転疲れを癒すため、喫茶店に飛び込んだ。
手術後迎える最初の冬は体の具合が不安定になるのはお約束。
会場までのルート図を見ながら、黙々とコーヒーとケーキを食べてる私たちはいちゃいちゃべたべたしてる周りのカップルから見たら随分冷めた人達のように見えたろうけれど、ただ「霄をルミナリエに連れて行こう」と思ってくれたその気持ちがあっただけで十分。
周りのあまあまな空気をよそに、冷え込むであろう神戸の街を歩くための気力を蓄える。
ゆっくり会場に向かうべく、店を出る。
途中宝くじ売り場に寄って竜樹さんの分の宝くじを購入。
「3等くらい当たるといいね」
「ホンマやなぁ」
そこでやっと少し柔らかな笑顔が出た。
そこからまた会場に向かう人に押されながら、ルミナリエの入り口に向かう。
会場前に着いたのは、点灯の1時間ほど前。
6年目にして初めて点灯前にフロントーネの見える場所に立った。
そこから1時間も姿勢を変えることなく点灯を待つ形をとることが竜樹さんの身体にいいわけはないのだけれど、日帰りでやってきてる以上他に方法がない。
本当に強行しても大丈夫なのかとこの場に来てもまだそんなことを考える。
竜樹さんの表情は俄かに硬くなってきてる気がするけれど、声をかけると「大丈夫やから」と返って来る。
周りの人が携帯のカメラでまだ灯りのついていないフロントーネを撮っているのを見て、「撮ろ?」と言って私のデジカメを片手にあぁでもないこうでもないと言いながら、骨組みだけのフロントーネを撮っておられる。
時折子供を肩車する親父さんやばかでっかいおっさんがちょろちょろ動くのに、いらいらいらっときたけれど…
竜樹さんが何とか無事でいてくれることだけを祈りながら、点灯の時間を待つ。
18時前になって、歌が聞こえてくる。
フロントーネの辺りで点灯前のセレモニーをやってるのだろう。
コーラスが終わった後、夕闇の中フロントーネとガレリアに灯りが灯る。
6年目にして初めて点灯の瞬間にお目にかかった。
点灯した途端歓声が上がったのだけど、そこから少しも動く様子がない。
歓声は「何で進めへんねん」って声に変わる。
竜樹さんの様子を伺いながら、フロントーネに辿り着くまでの間にある建物のデコレーションをフレームに収めたりしながらのたのたと歩く。
今年のテーマは光のぬくもり。
歓喜の広場(La Piazza della Gioia)と名づけられたフロントーネは去年と比べるとそれほど大きなものでなくて、私も竜樹さんもフロントーネがちょっと大きくなったくらいのものとしてしか認識できずにいたけれど、ちゃんと傍まで行くとガレリアとは違うのだと認識は出来た。
「こういう風に撮ったら、きれいに撮れるで」
写真の撮り方にうるさい竜樹さんの本領発揮。
竜樹さんの指示に従って写真を撮っては前へ進んでいく。
ガレリア(光の回廊と呼ばれる通路)は「宇宙のリズム」(Uniberso)と名づけられ、一番奥のガレリアには大きな星型の電飾が下がっている。
ちょっと背中が痛んできた竜樹さんにお薬を飲んでもらおうと、途中のコンビニで飲み物を調達。
ちょっと光の中を歩くことを楽しむことよりも、早くここを抜け出して帰ることを考えた方がよさそうな感じになってくる。
のたのたとガレリアを後にして、東遊園地にあるスパッリエーラ(光の壁掛)へ。
「生命の円」(Il Cerchio della vita)と名づけられたそれは、フラッシュなしでも写真が取れそうなくらい明るい。
実際円形のガレリアの中に入ると、そこだけ暖かい感じがする。
けれどあまりのんびりもしていられない。
早く帰ろうとたったと写真を撮って、買い物をして帰ろうといそいそしていると、「ベンチで休んでるから、ゆっくり見ておいで」と竜樹さん。
遠慮がちに「帰りましょう?」というと、「いいから」と言う竜樹さんの言葉に甘えて、CDとルミナリエくじだけ買って戻ってくる。
1000円分だけ買った宝くじのうち、600円が払い戻されたのに少しだけ気をよくしたけれど、それ以上に辛そうな竜樹さんを見てると胸が痛んでくる。
駅に向かってそのまま歩いていたけれど、途中でどうにもしようのないような状態になってしまって、タクシーを呼んで車を止めてる駐車場付近まで送り届けてもらった。
車に乗ってからも、時々休んでは運転し、休んでは運転しを繰り返して。
休む度に辛そうにしてる竜樹さんを見てて、運転免許を持っていないことを心底後悔した。
私のつまらない執着のために竜樹さんにここまでしんどい思いをさせてよかったんだろうか?
何となく、神戸小旅行は今年で最後になるかもなぁなんて根拠レスな予感はあったけれど、私が運転免許を取得しない限り今年で最後にした方がいいのかもしれない。
宿泊先をおさえた状態なら続けられるとしても、その当日になって体調不良が著しい状態になるならそれもできない。
それはこないだのことでよく判ったから。
私の小さな願いを守り通そうとしてくれた竜樹さんの気持ちを純粋に嬉しいと思いながらも、その所為で竜樹さんに辛い思いをさせてしまうなら意味のないことだとも思うから。
今年の光は竜樹さんの心にぬくもりは届けてくれただろうか?
今年の光が竜樹さんの辛さを何時の日か和らげてくれる素になればいいのにと願いながら、竜樹さんを支えながら歩くこと、竜樹さんに支えられながら歩くこと。
それを守り続けたいと願う気持ちに小さな力を維持しつづけたい。
どこまでそれが通せるか判らないけれど、私の小さな願いのために今年の光に出会わせてくれるために頑張ってくれた竜樹さんにできる精一杯のことだって思うから…
今年の光から貰ったぬくもりを精一杯の願いを叶えるための灯火にしていきたいって思う。
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楽しめることがあるのなら…
2002年12月14日暖かなことと悲しいことが一挙にやってきた2日間が終わった。
そしてやってきた次の朝の私は、まだどちらかというと心の中にある小さな悲しみが暖かな何かよりも少しばかり勝ってる状態。
「こんなことで蹴躓いてる場合じゃないんだけどなぁ」と思う自分も確かにいるのだけれど、過剰な期待が覆ったことによるダメージが大きかったのも事実。
ここにきて、自分自身の中で甘えの部分が目立ってきたので、一度そのあたりを締めなきゃならないだろう。
そのために、よき想い出にすら蓋をしなきゃならないのならそれですら仕方がないのかもしれない。
竜樹さんが何度か仰ってた「会期中に日帰りでも行こう」という言葉の根っこにある気持ちは間違いなく嬉しいものだけれど、履行しなきゃならないと竜樹さんにプレッシャーをかけるものとなるのなら、はなからないものとして取り扱った方が互いに気楽になれるんじゃなかろうか。
何年も続いてきた小さいけれど暖かな冬のイベントに自ら終止符を打つ方向でぼんやりと思考を漂わせる。
そのうち、金岡母と出かける時間になってしまい、慌てて用意をして出かける。
今日は金岡母とミュージカル観劇。
演目は、ずっと以前から「連れてって、連れてって」とせっつかれてた宮本亜門の「アイガットマーマン」。
初演からメンバーが変わってしまってるのと、正直ミュージカルを楽しめる心境じゃなかったから、出かけるということ自体が煩わしいのだけど。
約束してたのだから仕方がない。
やる気なく家を出て、愛想なく移動を繰り返す。
金岡母には申し訳ないことをしてるって思うけれど、外に出て大きな街に出かけていくと、そこここで神戸の広告を目にすることになってまたべこり。
…往生際悪いぜ、自分?
自分で自分に毒づいて、また落ち込む。
周りが賑やかになればなるほど、そこにいてること自体が嫌で仕方なかった。
ぼんやりと劇場に向かう途中で食事をとろうということになって、珍しく「ピザを食べたい」と言う金岡母のリクエストにお応えしてイタリアンの店に飛び込む。
そこで、前菜、パスタ、ピザとドリンクデザートがついて2人分4200円のコースがあったので、それを注文しようとしてがっくり。
…本日のパスタがカキのクリームソースだった。
随分昔にカキにあたって以来、どんなに煮詰まって小さくなったカキでも食べると確実にもどしまくる。
仕方なく、単品でピザとパスタを一品ずつ取る。
母が選んだのは、生ハムと野菜のピザ。
私は、地鶏のマリネハーブソースのパスタ。
やってきたピザを見てびっくり。
生地が見えないくらいにてんこ盛りの野菜と生ハムで、どこから切っていいのやらさっぱり判らない。
適当にピザカッターで切ってドレッシングをかけて食べ始めるけれど、生地がめちゃめちゃ薄くて野菜の乗ったピザを食べてるのか、サラダを食べてるのか判らない。
パスタは塩加減も丁度よかったのだけど、ハーブソースの殆どがネギでハーブソースというよりネギソースという感じ。
決して美味しくないわけじゃないけれど、思ったのと少し違った感じの料理に2人ともぼそぼそぶつぶつ…
いつか金岡父が「めちゃめちゃ美味しいという訳でない料理を食べるっていうのも、そこから会話が生まれるからそれはそれでええねんで」と話していたことを何気に思い出した。
仕切りなおしにコーヒーを飲んで、劇場へ向かう。
開場前から劇場前には列が出来ている。
ハコが小さいから、それほど沢山の人が来てると言っても知れてはいるのだろうけど、劇場前に来ると妙にどきどきするのは毎度のこと。
ここへ来るまでは「出かけなければよかった」なんて思ってたくせに、そんな思いはどこへ行ったか。
自分の席について、会場内を見回しながら金岡母と話し込んでいた。
会場には外国籍と思しき方も結構いらっしゃる。
この公演がブロードウェイで成功したのの凱旋公演だというのもあるからかもしれない。
舞台に乗り乗りになれる人たちだといいのだけれどと思いながら開演を待っていた。
開演のブザーが鳴って、始まるともう余計な思考の入り込む余地なんてなかった。
これがエセル・マーマンの一生を描いた話だとか彼女がどうとかいうことすら思考の中には入ってこない。
ただただ、楽しい。
いい演出とそれと対を張れるほどの役者さんの演技や歌の技量や想いがあれば、能書きは要らないし講釈たれる余地もない。
久しぶりにそんな感じのミュージカルを観てる。
宝塚を観に行って相棒とわいわい言ってるのは会話の一貫でもあり、一番いいと二人が想ってた時代を知ってる状態での不満だったりするのだけど。
隣に座ってる金岡母とこのミュージカルが終わってからどんな話をするのだろう?
もしかしたら、たった一言で終わってしまうかもしれないなぁと思ったのは、怒涛の勢いで駆け抜けていった前半が終わった時だった。
金岡母は中島啓江さんが出てるのを見たかったらしくて最初はがっかりしてたのだけど、ものの見事に今回の舞台に引き込まれた模様。
ただただ楽しいのだというのは、私も金岡母も一致してたらしい。
インターミッションが会話の時間になるのはいつものことだけれど、そのインターミッションが早く終わればいいのにと思ったのも随分久しぶりのような気がする。
後半になっても、舞台のテンションは下がることなく、寧ろ上がっていく一方。
観客席の通路を走り回っていったり、お客さんの膝の上にぼすんとおすわりになったり。
誰かを舞台の上に引きずり上げたり。
私は膝の上に座られたわけでも舞台の上に引きずり揚げられたりもしなかったけれど、自分もそこにいて参加してるような気分には確かになれる気がする。
幸い、外国籍のお客さんも異常に盛り上がっておられて、それがまた他のお客さんの盛り上がりを誘う。
新感線☆を3回に渡って観続けた時も「楽しいなぁ」って思ったけれど、今回はそれ以上。
あっという間に舞台は終わりを迎え、カーテンコール。
「大阪のお客さんはしつこく役者さんを引きずり出す」
相棒と劇を観に行くたびにそんな話をするのだけれど、今回のお客さんも相当にしつこかった。
結局、4回ほどカーテンコールを繰り返し、劇場の係員に殆ど無理矢理追い出される形で劇場を後にした。
「前の方にいたお客さん、リピーターだよね?
妙にいろんなリアクションの間を知ってたりしてたもんね?」
「初演から微妙に演出が変わったりしてきてるんだろうから、また次の公演があったら来てみたいね」
同じ公演をまた見たいなんて金岡母が言うこと自体が珍しいから、びっくりしたけれど。
ちょっとした意外な金岡母の言葉に出逢えたことや純粋に楽しめた演目に出逢えたこと。
来るまで鬱々といろんなことを思っていたけれど、今日はこれでよかったんだと思える。
悲しいことを忘れるのに、敢えて自分の中で底を打つまで沈んでいこうとする自分がいる。
それは底を打てば必ずあがってくる自分を知っているから。
今までそうやってきたから。
だから、そのやり方に敢えて乗ろうとするのだけど。
楽しめることがあるのなら、ただそれを楽しめばいいのかもしれない。
それが今の自分にそぐわなくても、「なんだかな?」って思っても。
楽しめることにかちんと乗っかることが出来たら儲けもの。
そんな何かに出逢えたなら、底を打つまで沈むことなくゆっくり優しく越えることが出来るのかもしれない。
そんな側面も確かにあるんだなって思う。
120分ほどの純粋な熱にそんな確信もまた得た気がした。
そしてやってきた次の朝の私は、まだどちらかというと心の中にある小さな悲しみが暖かな何かよりも少しばかり勝ってる状態。
「こんなことで蹴躓いてる場合じゃないんだけどなぁ」と思う自分も確かにいるのだけれど、過剰な期待が覆ったことによるダメージが大きかったのも事実。
ここにきて、自分自身の中で甘えの部分が目立ってきたので、一度そのあたりを締めなきゃならないだろう。
そのために、よき想い出にすら蓋をしなきゃならないのならそれですら仕方がないのかもしれない。
竜樹さんが何度か仰ってた「会期中に日帰りでも行こう」という言葉の根っこにある気持ちは間違いなく嬉しいものだけれど、履行しなきゃならないと竜樹さんにプレッシャーをかけるものとなるのなら、はなからないものとして取り扱った方が互いに気楽になれるんじゃなかろうか。
何年も続いてきた小さいけれど暖かな冬のイベントに自ら終止符を打つ方向でぼんやりと思考を漂わせる。
そのうち、金岡母と出かける時間になってしまい、慌てて用意をして出かける。
今日は金岡母とミュージカル観劇。
演目は、ずっと以前から「連れてって、連れてって」とせっつかれてた宮本亜門の「アイガットマーマン」。
初演からメンバーが変わってしまってるのと、正直ミュージカルを楽しめる心境じゃなかったから、出かけるということ自体が煩わしいのだけど。
約束してたのだから仕方がない。
やる気なく家を出て、愛想なく移動を繰り返す。
金岡母には申し訳ないことをしてるって思うけれど、外に出て大きな街に出かけていくと、そこここで神戸の広告を目にすることになってまたべこり。
…往生際悪いぜ、自分?
自分で自分に毒づいて、また落ち込む。
周りが賑やかになればなるほど、そこにいてること自体が嫌で仕方なかった。
ぼんやりと劇場に向かう途中で食事をとろうということになって、珍しく「ピザを食べたい」と言う金岡母のリクエストにお応えしてイタリアンの店に飛び込む。
そこで、前菜、パスタ、ピザとドリンクデザートがついて2人分4200円のコースがあったので、それを注文しようとしてがっくり。
…本日のパスタがカキのクリームソースだった。
随分昔にカキにあたって以来、どんなに煮詰まって小さくなったカキでも食べると確実にもどしまくる。
仕方なく、単品でピザとパスタを一品ずつ取る。
母が選んだのは、生ハムと野菜のピザ。
私は、地鶏のマリネハーブソースのパスタ。
やってきたピザを見てびっくり。
生地が見えないくらいにてんこ盛りの野菜と生ハムで、どこから切っていいのやらさっぱり判らない。
適当にピザカッターで切ってドレッシングをかけて食べ始めるけれど、生地がめちゃめちゃ薄くて野菜の乗ったピザを食べてるのか、サラダを食べてるのか判らない。
パスタは塩加減も丁度よかったのだけど、ハーブソースの殆どがネギでハーブソースというよりネギソースという感じ。
決して美味しくないわけじゃないけれど、思ったのと少し違った感じの料理に2人ともぼそぼそぶつぶつ…
いつか金岡父が「めちゃめちゃ美味しいという訳でない料理を食べるっていうのも、そこから会話が生まれるからそれはそれでええねんで」と話していたことを何気に思い出した。
仕切りなおしにコーヒーを飲んで、劇場へ向かう。
開場前から劇場前には列が出来ている。
ハコが小さいから、それほど沢山の人が来てると言っても知れてはいるのだろうけど、劇場前に来ると妙にどきどきするのは毎度のこと。
ここへ来るまでは「出かけなければよかった」なんて思ってたくせに、そんな思いはどこへ行ったか。
自分の席について、会場内を見回しながら金岡母と話し込んでいた。
会場には外国籍と思しき方も結構いらっしゃる。
この公演がブロードウェイで成功したのの凱旋公演だというのもあるからかもしれない。
舞台に乗り乗りになれる人たちだといいのだけれどと思いながら開演を待っていた。
開演のブザーが鳴って、始まるともう余計な思考の入り込む余地なんてなかった。
これがエセル・マーマンの一生を描いた話だとか彼女がどうとかいうことすら思考の中には入ってこない。
ただただ、楽しい。
いい演出とそれと対を張れるほどの役者さんの演技や歌の技量や想いがあれば、能書きは要らないし講釈たれる余地もない。
久しぶりにそんな感じのミュージカルを観てる。
宝塚を観に行って相棒とわいわい言ってるのは会話の一貫でもあり、一番いいと二人が想ってた時代を知ってる状態での不満だったりするのだけど。
隣に座ってる金岡母とこのミュージカルが終わってからどんな話をするのだろう?
もしかしたら、たった一言で終わってしまうかもしれないなぁと思ったのは、怒涛の勢いで駆け抜けていった前半が終わった時だった。
金岡母は中島啓江さんが出てるのを見たかったらしくて最初はがっかりしてたのだけど、ものの見事に今回の舞台に引き込まれた模様。
ただただ楽しいのだというのは、私も金岡母も一致してたらしい。
インターミッションが会話の時間になるのはいつものことだけれど、そのインターミッションが早く終わればいいのにと思ったのも随分久しぶりのような気がする。
後半になっても、舞台のテンションは下がることなく、寧ろ上がっていく一方。
観客席の通路を走り回っていったり、お客さんの膝の上にぼすんとおすわりになったり。
誰かを舞台の上に引きずり上げたり。
私は膝の上に座られたわけでも舞台の上に引きずり揚げられたりもしなかったけれど、自分もそこにいて参加してるような気分には確かになれる気がする。
幸い、外国籍のお客さんも異常に盛り上がっておられて、それがまた他のお客さんの盛り上がりを誘う。
新感線☆を3回に渡って観続けた時も「楽しいなぁ」って思ったけれど、今回はそれ以上。
あっという間に舞台は終わりを迎え、カーテンコール。
「大阪のお客さんはしつこく役者さんを引きずり出す」
相棒と劇を観に行くたびにそんな話をするのだけれど、今回のお客さんも相当にしつこかった。
結局、4回ほどカーテンコールを繰り返し、劇場の係員に殆ど無理矢理追い出される形で劇場を後にした。
「前の方にいたお客さん、リピーターだよね?
妙にいろんなリアクションの間を知ってたりしてたもんね?」
「初演から微妙に演出が変わったりしてきてるんだろうから、また次の公演があったら来てみたいね」
同じ公演をまた見たいなんて金岡母が言うこと自体が珍しいから、びっくりしたけれど。
ちょっとした意外な金岡母の言葉に出逢えたことや純粋に楽しめた演目に出逢えたこと。
来るまで鬱々といろんなことを思っていたけれど、今日はこれでよかったんだと思える。
悲しいことを忘れるのに、敢えて自分の中で底を打つまで沈んでいこうとする自分がいる。
それは底を打てば必ずあがってくる自分を知っているから。
今までそうやってきたから。
だから、そのやり方に敢えて乗ろうとするのだけど。
楽しめることがあるのなら、ただそれを楽しめばいいのかもしれない。
それが今の自分にそぐわなくても、「なんだかな?」って思っても。
楽しめることにかちんと乗っかることが出来たら儲けもの。
そんな何かに出逢えたなら、底を打つまで沈むことなくゆっくり優しく越えることが出来るのかもしれない。
そんな側面も確かにあるんだなって思う。
120分ほどの純粋な熱にそんな確信もまた得た気がした。
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想いの果てのその向こう
2002年12月13日キャンセルの電話を入れた後、竜樹さんの体調不良の峠は過ぎたようだった。
「ひどく寒気がする」と仰っては抱き枕兼湯たんぽ代わりに私を抱っこされていたけれど、その抱っこが普通の(?)抱っこに移行しつつあった。
そんな竜樹さんの様子にほっとするうちに、どうしようもない落胆もまた峠を越したようだった。
お風呂を沸かしに降りて、竜樹さんに先に入ってもらってる間ぼんやりとテレビを見てる。
「霄ぁ、いいお湯やったで。入っておいで(*^_^*)」
いつもは私が入ってる間にしんどくなったら、容赦なく先に2階に上がって横になってしまうのだけど。
今日は何度もお風呂場まで様子を見に来てくれる。
そんな様子に徐々に心のつっかえは取れていく。
…結局、竜樹さんは私がお風呂からあがってひと段落つくまで、ずっとリビングにいた。
2人で2階にあがって、またくっついて横になる。
珍しくくっつきたがりな竜樹さんの熱に絆されて何時の間にか眠っていた。
…随分長く眠った気がする。
「あぁ、起きたかぁ」
隣の部屋から水の入ったコップを持ってこちらへやってくる竜樹さん。
水を貰って暫くするとまたぎゅー。
暫くじゃれあって、階下に降りるとご飯の用意をしてた途中だったみたい。
「あとは目玉焼きとパンを焼いたら終わりやねん♪(o^−^o)」
明るい日差しが差し込む台所で、2人で朝ごはんを作る。
竜樹さんが餅焼き器でテーブルロールを焼きながらフライパンで目玉焼きを焼いておられる。
私はツナ缶の残りに玉ねぎのみじん切りとマヨネーズを合わせてパンの付けあわせを作る。
いつもは竜樹さんが朝ごはんを作ってから起こしてくれるのだけど、今日はどういう訳か私が起きるまで待っていてくれたらしい。
2人で作ったごはんはシンプルだけど、とても美味しかった。
時計を見ると、まだ昼まで時間が沢山ある。
これまた珍しい話。
後片付けを終えて2階に戻って雨戸を開けて、暫くストレッチを何パターンかしてまたごろり。
朝早く起きて出かけるならまだしも、ちょろんと運動してまたごろりじゃどっしょうもないだろうと思いながらも、竜樹さんに背中から抱っこされるような形でまたくっついて横になる。
…結局、二度寝してしまった(-_-;)
次に目が覚めたら昼を少し過ぎていた。
ぼんやりしてると、竜樹さんが首のあたりをさすってくれる。
「どしたんですか…?」
「寝言で『首が痛ぁい』って言ってたんやで、霄。
覚えてへんの?」
「…や、そんなこと言ってたんですか?」
「霄が寝言言うなんて珍しいから、よっぽど痛かったんやろうなぁって思って…」
身体を起こしてびっくり、本当に首が痛い。
首を抑えて「てて…」とやってると、竜樹さんが身体を起こして湿布を貼ってくれる。
そうしてまた抱っこされて眠る。
次に目が覚めた時には小一時間経っていた。
竜樹さんのお薬の時間が迫っているので、そっとお布団を抜け出して台所でごそごそ。
鶏がらスープで冷ご飯を煮て、ホタテ缶を汁ごと投入して薄口醤油で少し味を調えた中華粥を作って竜樹さんが起きるのを待つ。
竜樹さんが起きてから仲良く中華粥を食べて、薬を飲んで横になってもらう。
その間私は台所で後片付けをし、竜樹さんが寝てる間友達にメールを飛ばした。
「…霄ぁ、どこにおるん?」
いつもしんどい時は一人になりたがる竜樹さんが珍しく私を探すので、2階に戻ってまたくっついて横になる。
BGM代わりにつけてるテレビで神戸からの映像が出た時、また心にちくんと痛みが走る。
竜樹さんに対する思いやりよりも突出しがちなある種の感情があることを思い知ると、また気持ちが沈んでいくような感じがしてならないけれど。
それでも間違いなく竜樹さんとくっついていられることが嬉しいと思う自分はここにいる。
その両方の気持ちがあるからこそ心が痛んでならないんだけれど、ただ竜樹さんといられることを嬉しいと感じる自分をもっと強くしておきたかった。
多分、それが行き場のない感情が連れ去ってしまった思いやりを取り戻す鍵になるような気がしてたから、竜樹さんの腕が私の身体を抱きしめてるうちは、何もせずただじっとしていた。
そうして時折熱を帯びたり、眠ったりを繰り返しながらずっとずっと2人でいた。
ふと目を開けると、部屋の中に夕闇が迫ってる。
明日は土曜だけど、今日はもう金岡家に戻らなければならない。
竜樹さんとくっついてると、本当に離れがたくてならないけれど、今日の晩には戻ると家の者には伝えてあるから。
竜樹邸に持ってきた荷物はなるべく開かないようにしてたから、片付けに手間取ることはない。
だからぎりぎりまで、竜樹さんとくっついていられるけれど…
…竜樹さんの晩ごはんを作らなきゃ
そう思ってそっとお布団を抜け出そうとすると、「今日の夕飯は宅配のん取ったらええよ」と竜樹さん。
結局、宅配のチキンセットとちっさなピザを注文。
竜樹さんが好きな時に食べられるようにと、注文したものが届くまでの間にオムライスを作った。
暫くして注文したものが届き、「先に食べてて…」という竜樹さんから少し離れたところでチキンとピザをかじっていた。
それでも姿が完全に見えなくなると心配されるので、姿が見える程度の距離のところでごはんを食べていたのだけれど(^^ゞ
本当に今回の件で、竜樹さんにはいらない気遣いばかりさせてしまったかもしれない。
ご飯を食べ終わり、本当に帰り支度を始めなきゃならない時間になる。
どことなくまだ体調が不安定な竜樹さんを置いて帰るのはしのびないけれど、
「帰らなあかんやろ?」
竜樹さんに背中を押される形になる。
「…この2日間、おってくれて助かった。ありがとうなぁ」
「いいえ、こちらこそありがとうねぇ(*^-^*)」
「会期はまだ残ってるから、俺の体調さえ折り合いついたら泊まりなしでも行こうな」
「無理はしないでいいですよ?気持ちだけで…」
取り留めなく話を続けているけれど。
手配したタクシーが来てしまったために、本当にお別れ。
ぎゅーと抱きしめて、竜樹邸を後にする。
タクシーは金岡史上最安値で金岡家に私を送り届けてくれた。
そんな些細なことでも竜樹さんが一日の終わりに笑ってくれたらいいなと思ってメールにして飛ばした。
「おつかれさま。いろいろありがとう。疲れがでないよう、休養をとってください」
シンプルで優しいメールに、この2日間の自分のことを思うと頭が上がらない思いで一杯になる。
何をおいても竜樹さんの事情を優先したいといつも思っているけれど。
不意に予定が潰えた時、行き場のない心が思い遣りを吹き飛ばした。
病気という、ある種最悪にして最強の聖域の前では、勝ち目はない。
そんなことは最初から判ってたことなのにね。
もしかしたら、これが私自身の想いの限界だったのかもしれない。
…それでも、
竜樹さんに抱きしめられると嬉しくて、竜樹さんを抱きしめていたくて。
取り立てて何かをするわけでもなくくっついていられた時間を愛しく思う自分はまだ死んではいないから。
神戸の旅は潰えたけれど。
想いの果てが見えてから、どう歩いていくのか。
竜樹さんと一緒に歩くために必要なものをもう一度装備しなおそう。
二人でいた時間に見えたものは、想いの果てのその向こうにある、新たな始まりの場所。
そこからまた、歩き出す。
2人でまた歩き出す。
「ひどく寒気がする」と仰っては抱き枕兼湯たんぽ代わりに私を抱っこされていたけれど、その抱っこが普通の(?)抱っこに移行しつつあった。
そんな竜樹さんの様子にほっとするうちに、どうしようもない落胆もまた峠を越したようだった。
お風呂を沸かしに降りて、竜樹さんに先に入ってもらってる間ぼんやりとテレビを見てる。
「霄ぁ、いいお湯やったで。入っておいで(*^_^*)」
いつもは私が入ってる間にしんどくなったら、容赦なく先に2階に上がって横になってしまうのだけど。
今日は何度もお風呂場まで様子を見に来てくれる。
そんな様子に徐々に心のつっかえは取れていく。
…結局、竜樹さんは私がお風呂からあがってひと段落つくまで、ずっとリビングにいた。
2人で2階にあがって、またくっついて横になる。
珍しくくっつきたがりな竜樹さんの熱に絆されて何時の間にか眠っていた。
…随分長く眠った気がする。
「あぁ、起きたかぁ」
隣の部屋から水の入ったコップを持ってこちらへやってくる竜樹さん。
水を貰って暫くするとまたぎゅー。
暫くじゃれあって、階下に降りるとご飯の用意をしてた途中だったみたい。
「あとは目玉焼きとパンを焼いたら終わりやねん♪(o^−^o)」
明るい日差しが差し込む台所で、2人で朝ごはんを作る。
竜樹さんが餅焼き器でテーブルロールを焼きながらフライパンで目玉焼きを焼いておられる。
私はツナ缶の残りに玉ねぎのみじん切りとマヨネーズを合わせてパンの付けあわせを作る。
いつもは竜樹さんが朝ごはんを作ってから起こしてくれるのだけど、今日はどういう訳か私が起きるまで待っていてくれたらしい。
2人で作ったごはんはシンプルだけど、とても美味しかった。
時計を見ると、まだ昼まで時間が沢山ある。
これまた珍しい話。
後片付けを終えて2階に戻って雨戸を開けて、暫くストレッチを何パターンかしてまたごろり。
朝早く起きて出かけるならまだしも、ちょろんと運動してまたごろりじゃどっしょうもないだろうと思いながらも、竜樹さんに背中から抱っこされるような形でまたくっついて横になる。
…結局、二度寝してしまった(-_-;)
次に目が覚めたら昼を少し過ぎていた。
ぼんやりしてると、竜樹さんが首のあたりをさすってくれる。
「どしたんですか…?」
「寝言で『首が痛ぁい』って言ってたんやで、霄。
覚えてへんの?」
「…や、そんなこと言ってたんですか?」
「霄が寝言言うなんて珍しいから、よっぽど痛かったんやろうなぁって思って…」
身体を起こしてびっくり、本当に首が痛い。
首を抑えて「てて…」とやってると、竜樹さんが身体を起こして湿布を貼ってくれる。
そうしてまた抱っこされて眠る。
次に目が覚めた時には小一時間経っていた。
竜樹さんのお薬の時間が迫っているので、そっとお布団を抜け出して台所でごそごそ。
鶏がらスープで冷ご飯を煮て、ホタテ缶を汁ごと投入して薄口醤油で少し味を調えた中華粥を作って竜樹さんが起きるのを待つ。
竜樹さんが起きてから仲良く中華粥を食べて、薬を飲んで横になってもらう。
その間私は台所で後片付けをし、竜樹さんが寝てる間友達にメールを飛ばした。
「…霄ぁ、どこにおるん?」
いつもしんどい時は一人になりたがる竜樹さんが珍しく私を探すので、2階に戻ってまたくっついて横になる。
BGM代わりにつけてるテレビで神戸からの映像が出た時、また心にちくんと痛みが走る。
竜樹さんに対する思いやりよりも突出しがちなある種の感情があることを思い知ると、また気持ちが沈んでいくような感じがしてならないけれど。
それでも間違いなく竜樹さんとくっついていられることが嬉しいと思う自分はここにいる。
その両方の気持ちがあるからこそ心が痛んでならないんだけれど、ただ竜樹さんといられることを嬉しいと感じる自分をもっと強くしておきたかった。
多分、それが行き場のない感情が連れ去ってしまった思いやりを取り戻す鍵になるような気がしてたから、竜樹さんの腕が私の身体を抱きしめてるうちは、何もせずただじっとしていた。
そうして時折熱を帯びたり、眠ったりを繰り返しながらずっとずっと2人でいた。
ふと目を開けると、部屋の中に夕闇が迫ってる。
明日は土曜だけど、今日はもう金岡家に戻らなければならない。
竜樹さんとくっついてると、本当に離れがたくてならないけれど、今日の晩には戻ると家の者には伝えてあるから。
竜樹邸に持ってきた荷物はなるべく開かないようにしてたから、片付けに手間取ることはない。
だからぎりぎりまで、竜樹さんとくっついていられるけれど…
…竜樹さんの晩ごはんを作らなきゃ
そう思ってそっとお布団を抜け出そうとすると、「今日の夕飯は宅配のん取ったらええよ」と竜樹さん。
結局、宅配のチキンセットとちっさなピザを注文。
竜樹さんが好きな時に食べられるようにと、注文したものが届くまでの間にオムライスを作った。
暫くして注文したものが届き、「先に食べてて…」という竜樹さんから少し離れたところでチキンとピザをかじっていた。
それでも姿が完全に見えなくなると心配されるので、姿が見える程度の距離のところでごはんを食べていたのだけれど(^^ゞ
本当に今回の件で、竜樹さんにはいらない気遣いばかりさせてしまったかもしれない。
ご飯を食べ終わり、本当に帰り支度を始めなきゃならない時間になる。
どことなくまだ体調が不安定な竜樹さんを置いて帰るのはしのびないけれど、
「帰らなあかんやろ?」
竜樹さんに背中を押される形になる。
「…この2日間、おってくれて助かった。ありがとうなぁ」
「いいえ、こちらこそありがとうねぇ(*^-^*)」
「会期はまだ残ってるから、俺の体調さえ折り合いついたら泊まりなしでも行こうな」
「無理はしないでいいですよ?気持ちだけで…」
取り留めなく話を続けているけれど。
手配したタクシーが来てしまったために、本当にお別れ。
ぎゅーと抱きしめて、竜樹邸を後にする。
タクシーは金岡史上最安値で金岡家に私を送り届けてくれた。
そんな些細なことでも竜樹さんが一日の終わりに笑ってくれたらいいなと思ってメールにして飛ばした。
「おつかれさま。いろいろありがとう。疲れがでないよう、休養をとってください」
シンプルで優しいメールに、この2日間の自分のことを思うと頭が上がらない思いで一杯になる。
何をおいても竜樹さんの事情を優先したいといつも思っているけれど。
不意に予定が潰えた時、行き場のない心が思い遣りを吹き飛ばした。
病気という、ある種最悪にして最強の聖域の前では、勝ち目はない。
そんなことは最初から判ってたことなのにね。
もしかしたら、これが私自身の想いの限界だったのかもしれない。
…それでも、
竜樹さんに抱きしめられると嬉しくて、竜樹さんを抱きしめていたくて。
取り立てて何かをするわけでもなくくっついていられた時間を愛しく思う自分はまだ死んではいないから。
神戸の旅は潰えたけれど。
想いの果てが見えてから、どう歩いていくのか。
竜樹さんと一緒に歩くために必要なものをもう一度装備しなおそう。
二人でいた時間に見えたものは、想いの果てのその向こうにある、新たな始まりの場所。
そこからまた、歩き出す。
2人でまた歩き出す。
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心を繋ぐもの
2002年12月12日神戸小旅行に向かった二人。
ところが現地に入った途端、雨がざざ降りでルミナリエ自体が中止。
竜樹さんは体調を崩されるし、ホテルから一歩も外に出られない状態。
…嘘っ!これってマジ?/( ̄□ ̄)\ !
がばっと起き上がったら、そこは自室。
…あぁ、夢やったんかぁ。
雨戸を開けると、朝日が昇り始めたキレイな空。
あまりにキレイな空で思わず見とれてしまったけれど、あまりに嫌な夢を見たせいか、「もしかして…」という不安は拭えぬまま。
昨日準備したもののチェックをしながら、出かける用意を進める。
外は晴れているけれど、少々冷え込んでいる。
昨晩竜樹さんと連絡が取れなかったので、どんな段取りで進めるのかは判らないけれど、竜樹さんと会う前に片付けないとならないことがある。
ひとまず片付けなきゃならないことのために、出かけるには早い気もしたけれど家を出た。
一昨日ちょっとした判断ミスで抱えた不安を解消するため、その解決法の具体的な相談のために関係各署に資料一式持って出向く。
最初に相談した時は随分つっけんどんな応対だったけれど、出向いてみるとかなり親切にいろいろと教えてくれた。
無事解決の後、電車で移動しながら竜樹さんにメールを送ったのだけど、一向に連絡がない。
結局、竜樹さんからの連絡もないまま竜樹邸に着いてしまった。
竜樹邸の鍵を開け、「こんにちはー」と声をかけても、返事がない。
2階に上がってみてびっくり。
竜樹さんは辛そうにして横になっておられた。
「…霄ぁ、ごめんなぁ。なんか調子悪いねん。
昨日の晩からずっと寒気がしてしゃあないねん」
身体に触れると、少し熱っぽい気がする。
あまり「寒い寒い」と仰るので、コートを脱いでそのままお布団に入る。
そうするとぎゅーっと抱きしめてくる竜樹さん。
暫く抱き枕兼湯たんぽ代わりになってじっとしてる。
暫くすると、「薬を飲む」と仰るので、階下に降りて簡単なご飯を作り二人で食べる。
竜樹さんは薬を飲み、暫く状態が落ち着くまでお話したりじゃれじゃれしたりする。
けれど、そんな柔らかな時間もそれほど長くは続かず、あまり調子はよくならない。
「…霄ぁ、今、何時?」
「もう15時まわりましたよ」
「そろそろ出ぇへんと、交通規制かかってまうなぁ」
宿泊先まで車で入れないとなると、余計に厄介だ。
せめてあと1,2時間のうちに状態がマシにならなければ、旅行そのものを中止にすることを考えなければならない。
ひとまず宿泊先に事情を説明した上で、チェックインの時間に間に合わない旨を説明する。
宿泊先の人は具合の悪くなった竜樹さんのことを心配し、何時でもいいですよとまで言ってくれた。
点灯式に間に合わなくてもいいから、早く竜樹さんの状態がよくなって神戸に入れたらいいなってずっと願い続けていた。
リビングに簡易ベッドを出して二人でくっついて横になっていたけれど、どうも竜樹さんがこのベッドと相性が悪いらしくてまた2階に移動。
また暫く抱っこ枕兼湯たんぽ代わり状態でくっついて横になっていた。
いつの間にか、少しばかり眠ってしまってた。
竜樹さんの指が身体に触れる感覚で目を覚ます。
ぼんやりとした頭で携帯を見てびっくり。
18時まであとそれほど時間がなかった。
「…今、何時なん?」
「…もうすぐ18時です」
神戸市内の一部では交通規制も通行止めもかかってる。
交通規制のかかってる状態で今から出かけていって間に合うはずもない。
元気な状態なら、何時間かかったって神戸に辿り着くことを最重要課題として2人とも動けるけれど、車を運転できるたった一人の人が今すこぶる体調を損ねて苦しんでおられる。
とてもじゃないけれど、この状態で強行することは無理だ。
「…中止にするしかないですね」
竜樹さんに背中を向けた状態で、ぽつりとそう呟いた。
背中から抱きしめる竜樹さんの腕に力が入るけれど、それにどう答えることもできなくて。
ただ涙が落ちるのを堪えるので精一杯だった。
どんな風に竜樹さんが抱きしめても、ただただ脱力感しか残ってなくて。
堪えてるはずの涙は竜樹さんから見えないところで流れ落ちてしまっていた。
「…泣いてるんか?」
弱い声で確認する竜樹さんに、少し強めで「泣いてませんよ」とだけ答える。
さすがに竜樹さんの方に向き直って答えられるほどに居直れてはいなかったけれど。
泣いてるのを誤魔化したくて、携帯を片手に友達にメールを飛ばす。
それは現状報告であったり指示書であったり。
友達のいくつかのフォローに感謝しながらも、やっぱり脱力感だけは拭えなかった。
そうしてるうちにもどんどん時間は過ぎていく。
そろそろ夕飯の支度をしなければならない。
「中止になるかもしれない」とは思っていたけれど、中止になることを前提に動いていた訳じゃないので、食材の買出しもおぼつかなくて。
さりとて自転車に乗って閉店間際のスーパーまで走る気力もないから、冷蔵庫の中のものだけで料理をすることにした。
「…これから、夕飯作りますね」
暖を取るような形で抱き締めつづけていた竜樹さんの腕が眠りに入ると緩んできたから。
そう一言声をかけて、布団から抜け出す。
冷蔵庫を整理しながら作ったのは、豚汁もどきと蓮根餅、ニンジン、ピーマン、玉ねぎと豚肉のスープ煮。
落胆してる割には、いや落胆しててそれに纏わることを一切考えたくなかったからなのか、食材が乏しい割にはそれなりにご飯を作れてたのには我ながら驚いたけれど。
料理してる時に竜樹さんが起き出してこなくてよかったなぁって思った。
さすがに泣きながら料理してるのは見られたくはなかったから。
当日になってキャンセルかけたらキャンセル費は宿泊費全額取られることも相当痛かったけれど。
そんなことよりも何より。
毎年の神戸小旅行は滅多に我儘を言わないようにしてる私にとっては年に一度のご褒美のようなもの。
いろいろあっても、「12月にはいいことあるから」と自分に言い聞かせて頑張ってきたのに、それすら叶わないのかということ。
勿論、体調を崩した竜樹さんが悪い訳じゃない。
誰が悪い訳でも何が悪い訳でもない。
ただ行き先を失った感情が何をやっても自分には得られるものなどないのだという落胆に変わる。
その様を見つづけるのが、辛かった。
きっと冷静になれば些細なことなんだろう。
きっと冷静になれれば、「大したことないさ」って思えるようなことなんだろうけれど。
正直、楽しみの仕方が違ったために、一気に谷底に落ちた気分。
鍋の中で料理がくたくた煮えるのを見ながら、整理などつくはずのない気持ちの整理に躍起になっていた。
そうしてるうちに竜樹さんが降りてこられて、遅い夕食を取る。
会話は殆どない。
元々食事中はあまり会話の多い2人ではないけれど、会話を切り出す人間が塞いでいるのだから否が応でも静かになる。
ただ、竜樹さんが気を遣ってかけたつもりの言葉に、感情が逆巻いた。
「…あのね、竜樹さん」
私がしょげているのは、キャンセル費を取られることじゃない。
誰かを責めるべきことじゃないことは百も承知だし、責めるつもりもないんだけれど。
年に一度のご褒美のつもりで、その日を目指して1年間頑張ってきたのに、結局我慢しても頑張っても何も得られないのだと思い知ったことをがっかりしてるんだよ、と。
今は自分の中にある欠乏感を埋め合わせるものが何かすらわからない。
そう溢してしまった。
食事が終わって私は台所で片付けを、竜樹さんはリビングのベッドで横になってる。
リビングに戻ってくると、おいでおいでする。
そのままおいでおいでされて抱き締められて気がついたこと。
…竜樹さんもまた、中止にせざるを得なかったことを辛いと思っていたこと。
それを慮ることが出来なくなるほどに、私の想いが弱くなってしまってること。
それは旅行が潰えてしまったことよりももっと私を落胆させた。
互いが互いの想いを握り締めながら、そのまま暫く2人でくっついていた。
それで互いの心に重くのしかかったものがなくなる訳でないと知りながら。
ただ互いが互いに伝える熱で相手の心に刺さった何かを溶かしたいというだけの気持ちで。
徐に時計を見る。
宿泊先に正式なキャンセルの連絡を入れられる限界の時間。
竜樹さんからそっと離れて宿泊先に連絡をすると、電話に出た係の人はキャンセル費はいりませんよと言ってくれた。
ありがたいのかありがたくないのかよく判らないけれど。
こうして、神戸小旅行は本当に中止になった。
神戸小旅行に出るということそのものよりも大切なものは確かにあるはずなのに。
それでも、落胆の色を払拭させられない自分がそこにいる。
竜樹さんとだから行きたかった旅行なのに、それが履行されなかったことで竜樹さんに嫌な思いをさせた。
心を繋ぐものは、きっとその旅だけではなかった筈なのに。
それでも、その日の私はそんな風にはまだ思えなかった。
ところが現地に入った途端、雨がざざ降りでルミナリエ自体が中止。
竜樹さんは体調を崩されるし、ホテルから一歩も外に出られない状態。
…嘘っ!これってマジ?/( ̄□ ̄)\ !
がばっと起き上がったら、そこは自室。
…あぁ、夢やったんかぁ。
雨戸を開けると、朝日が昇り始めたキレイな空。
あまりにキレイな空で思わず見とれてしまったけれど、あまりに嫌な夢を見たせいか、「もしかして…」という不安は拭えぬまま。
昨日準備したもののチェックをしながら、出かける用意を進める。
外は晴れているけれど、少々冷え込んでいる。
昨晩竜樹さんと連絡が取れなかったので、どんな段取りで進めるのかは判らないけれど、竜樹さんと会う前に片付けないとならないことがある。
ひとまず片付けなきゃならないことのために、出かけるには早い気もしたけれど家を出た。
一昨日ちょっとした判断ミスで抱えた不安を解消するため、その解決法の具体的な相談のために関係各署に資料一式持って出向く。
最初に相談した時は随分つっけんどんな応対だったけれど、出向いてみるとかなり親切にいろいろと教えてくれた。
無事解決の後、電車で移動しながら竜樹さんにメールを送ったのだけど、一向に連絡がない。
結局、竜樹さんからの連絡もないまま竜樹邸に着いてしまった。
竜樹邸の鍵を開け、「こんにちはー」と声をかけても、返事がない。
2階に上がってみてびっくり。
竜樹さんは辛そうにして横になっておられた。
「…霄ぁ、ごめんなぁ。なんか調子悪いねん。
昨日の晩からずっと寒気がしてしゃあないねん」
身体に触れると、少し熱っぽい気がする。
あまり「寒い寒い」と仰るので、コートを脱いでそのままお布団に入る。
そうするとぎゅーっと抱きしめてくる竜樹さん。
暫く抱き枕兼湯たんぽ代わりになってじっとしてる。
暫くすると、「薬を飲む」と仰るので、階下に降りて簡単なご飯を作り二人で食べる。
竜樹さんは薬を飲み、暫く状態が落ち着くまでお話したりじゃれじゃれしたりする。
けれど、そんな柔らかな時間もそれほど長くは続かず、あまり調子はよくならない。
「…霄ぁ、今、何時?」
「もう15時まわりましたよ」
「そろそろ出ぇへんと、交通規制かかってまうなぁ」
宿泊先まで車で入れないとなると、余計に厄介だ。
せめてあと1,2時間のうちに状態がマシにならなければ、旅行そのものを中止にすることを考えなければならない。
ひとまず宿泊先に事情を説明した上で、チェックインの時間に間に合わない旨を説明する。
宿泊先の人は具合の悪くなった竜樹さんのことを心配し、何時でもいいですよとまで言ってくれた。
点灯式に間に合わなくてもいいから、早く竜樹さんの状態がよくなって神戸に入れたらいいなってずっと願い続けていた。
リビングに簡易ベッドを出して二人でくっついて横になっていたけれど、どうも竜樹さんがこのベッドと相性が悪いらしくてまた2階に移動。
また暫く抱っこ枕兼湯たんぽ代わり状態でくっついて横になっていた。
いつの間にか、少しばかり眠ってしまってた。
竜樹さんの指が身体に触れる感覚で目を覚ます。
ぼんやりとした頭で携帯を見てびっくり。
18時まであとそれほど時間がなかった。
「…今、何時なん?」
「…もうすぐ18時です」
神戸市内の一部では交通規制も通行止めもかかってる。
交通規制のかかってる状態で今から出かけていって間に合うはずもない。
元気な状態なら、何時間かかったって神戸に辿り着くことを最重要課題として2人とも動けるけれど、車を運転できるたった一人の人が今すこぶる体調を損ねて苦しんでおられる。
とてもじゃないけれど、この状態で強行することは無理だ。
「…中止にするしかないですね」
竜樹さんに背中を向けた状態で、ぽつりとそう呟いた。
背中から抱きしめる竜樹さんの腕に力が入るけれど、それにどう答えることもできなくて。
ただ涙が落ちるのを堪えるので精一杯だった。
どんな風に竜樹さんが抱きしめても、ただただ脱力感しか残ってなくて。
堪えてるはずの涙は竜樹さんから見えないところで流れ落ちてしまっていた。
「…泣いてるんか?」
弱い声で確認する竜樹さんに、少し強めで「泣いてませんよ」とだけ答える。
さすがに竜樹さんの方に向き直って答えられるほどに居直れてはいなかったけれど。
泣いてるのを誤魔化したくて、携帯を片手に友達にメールを飛ばす。
それは現状報告であったり指示書であったり。
友達のいくつかのフォローに感謝しながらも、やっぱり脱力感だけは拭えなかった。
そうしてるうちにもどんどん時間は過ぎていく。
そろそろ夕飯の支度をしなければならない。
「中止になるかもしれない」とは思っていたけれど、中止になることを前提に動いていた訳じゃないので、食材の買出しもおぼつかなくて。
さりとて自転車に乗って閉店間際のスーパーまで走る気力もないから、冷蔵庫の中のものだけで料理をすることにした。
「…これから、夕飯作りますね」
暖を取るような形で抱き締めつづけていた竜樹さんの腕が眠りに入ると緩んできたから。
そう一言声をかけて、布団から抜け出す。
冷蔵庫を整理しながら作ったのは、豚汁もどきと蓮根餅、ニンジン、ピーマン、玉ねぎと豚肉のスープ煮。
落胆してる割には、いや落胆しててそれに纏わることを一切考えたくなかったからなのか、食材が乏しい割にはそれなりにご飯を作れてたのには我ながら驚いたけれど。
料理してる時に竜樹さんが起き出してこなくてよかったなぁって思った。
さすがに泣きながら料理してるのは見られたくはなかったから。
当日になってキャンセルかけたらキャンセル費は宿泊費全額取られることも相当痛かったけれど。
そんなことよりも何より。
毎年の神戸小旅行は滅多に我儘を言わないようにしてる私にとっては年に一度のご褒美のようなもの。
いろいろあっても、「12月にはいいことあるから」と自分に言い聞かせて頑張ってきたのに、それすら叶わないのかということ。
勿論、体調を崩した竜樹さんが悪い訳じゃない。
誰が悪い訳でも何が悪い訳でもない。
ただ行き先を失った感情が何をやっても自分には得られるものなどないのだという落胆に変わる。
その様を見つづけるのが、辛かった。
きっと冷静になれば些細なことなんだろう。
きっと冷静になれれば、「大したことないさ」って思えるようなことなんだろうけれど。
正直、楽しみの仕方が違ったために、一気に谷底に落ちた気分。
鍋の中で料理がくたくた煮えるのを見ながら、整理などつくはずのない気持ちの整理に躍起になっていた。
そうしてるうちに竜樹さんが降りてこられて、遅い夕食を取る。
会話は殆どない。
元々食事中はあまり会話の多い2人ではないけれど、会話を切り出す人間が塞いでいるのだから否が応でも静かになる。
ただ、竜樹さんが気を遣ってかけたつもりの言葉に、感情が逆巻いた。
「…あのね、竜樹さん」
私がしょげているのは、キャンセル費を取られることじゃない。
誰かを責めるべきことじゃないことは百も承知だし、責めるつもりもないんだけれど。
年に一度のご褒美のつもりで、その日を目指して1年間頑張ってきたのに、結局我慢しても頑張っても何も得られないのだと思い知ったことをがっかりしてるんだよ、と。
今は自分の中にある欠乏感を埋め合わせるものが何かすらわからない。
そう溢してしまった。
食事が終わって私は台所で片付けを、竜樹さんはリビングのベッドで横になってる。
リビングに戻ってくると、おいでおいでする。
そのままおいでおいでされて抱き締められて気がついたこと。
…竜樹さんもまた、中止にせざるを得なかったことを辛いと思っていたこと。
それを慮ることが出来なくなるほどに、私の想いが弱くなってしまってること。
それは旅行が潰えてしまったことよりももっと私を落胆させた。
互いが互いの想いを握り締めながら、そのまま暫く2人でくっついていた。
それで互いの心に重くのしかかったものがなくなる訳でないと知りながら。
ただ互いが互いに伝える熱で相手の心に刺さった何かを溶かしたいというだけの気持ちで。
徐に時計を見る。
宿泊先に正式なキャンセルの連絡を入れられる限界の時間。
竜樹さんからそっと離れて宿泊先に連絡をすると、電話に出た係の人はキャンセル費はいりませんよと言ってくれた。
ありがたいのかありがたくないのかよく判らないけれど。
こうして、神戸小旅行は本当に中止になった。
神戸小旅行に出るということそのものよりも大切なものは確かにあるはずなのに。
それでも、落胆の色を払拭させられない自分がそこにいる。
竜樹さんとだから行きたかった旅行なのに、それが履行されなかったことで竜樹さんに嫌な思いをさせた。
心を繋ぐものは、きっとその旅だけではなかった筈なのに。
それでも、その日の私はそんな風にはまだ思えなかった。
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大丈夫だといいな。
2002年12月11日今日も異常に寒い。
窓を開けると風がびゅーっと入り込む。
がらぴしゃっと窓を閉めて、そのまま布団に逆戻りしたい感情に駆られる。
でも、一昨日、昨日と気持ち悪いくらい仕事が暇だったから、絶対今日は立て込むに違いない。
連休中に来るだろう仕事の準備も最終段階から完成の形に持っていかなければならない。
「楽しい連休のためには、完璧に近い準備品作りから!」
それはこの会社に入ってから身を持って感じたことだから。
今日の頑張りが休み明けの仕事を絶望的な状態にしない絶対条件だから。
そう言い聞かせて家を出た。
会社に着くと、今日はそこそこの仕事量。
それでも、月曜日から徐々に準備品を揃えていたおかげで、慌てふためくことはなかった。
正直、今日は楽を出来なかったことを嘆くよりも、それがありがたかった。
最後に手順書を残し、事務所をあとにする。
外に出ても相変わらず寒い。
漏れ聞こえるニュースでは、昨日からの冷え込みが今週いっぱい続くとのこと。
今の竜樹さんの身体は寒さに異常に弱いから、本当に明日から決行して大丈夫なのか心配でならない。
家に戻ってメールチェックすると、宿泊先から明日の確認事項のメールが入っている。
竜樹さんの状況がどうであれ、この旅行のお膳立てだけはどんどん進んでいるのは確か。
…本当に大丈夫かな?
何度か竜樹さんの携帯や部屋電に電話を入れてみるけれど、竜樹さんは出られない。
…明日、本当に大丈夫かなぁ?
嫌な予感だけが頭を掠めていくけれど。
ひとまず、明日の朝一番にか足さなきゃならない用事があるから、それまでに連絡が取れたらいい。
用事が済んで竜樹邸に行ってからでも、神戸に迎えるならそれでいい。
小旅行前日になっても連絡が取れないなんて年はこれが初めてだけど…
…大丈夫だといいな。
そう思いながら、荷造りを済ませて横になる。
明日元気な2人で神戸にいけるといいな。
窓を開けると風がびゅーっと入り込む。
がらぴしゃっと窓を閉めて、そのまま布団に逆戻りしたい感情に駆られる。
でも、一昨日、昨日と気持ち悪いくらい仕事が暇だったから、絶対今日は立て込むに違いない。
連休中に来るだろう仕事の準備も最終段階から完成の形に持っていかなければならない。
「楽しい連休のためには、完璧に近い準備品作りから!」
それはこの会社に入ってから身を持って感じたことだから。
今日の頑張りが休み明けの仕事を絶望的な状態にしない絶対条件だから。
そう言い聞かせて家を出た。
会社に着くと、今日はそこそこの仕事量。
それでも、月曜日から徐々に準備品を揃えていたおかげで、慌てふためくことはなかった。
正直、今日は楽を出来なかったことを嘆くよりも、それがありがたかった。
最後に手順書を残し、事務所をあとにする。
外に出ても相変わらず寒い。
漏れ聞こえるニュースでは、昨日からの冷え込みが今週いっぱい続くとのこと。
今の竜樹さんの身体は寒さに異常に弱いから、本当に明日から決行して大丈夫なのか心配でならない。
家に戻ってメールチェックすると、宿泊先から明日の確認事項のメールが入っている。
竜樹さんの状況がどうであれ、この旅行のお膳立てだけはどんどん進んでいるのは確か。
…本当に大丈夫かな?
何度か竜樹さんの携帯や部屋電に電話を入れてみるけれど、竜樹さんは出られない。
…明日、本当に大丈夫かなぁ?
嫌な予感だけが頭を掠めていくけれど。
ひとまず、明日の朝一番にか足さなきゃならない用事があるから、それまでに連絡が取れたらいい。
用事が済んで竜樹邸に行ってからでも、神戸に迎えるならそれでいい。
小旅行前日になっても連絡が取れないなんて年はこれが初めてだけど…
…大丈夫だといいな。
そう思いながら、荷造りを済ませて横になる。
明日元気な2人で神戸にいけるといいな。
目隠しをされたような…
2002年12月10日最近、明け方にぱらぱらと雨が降るのか、窓から見える路面は少しだけ濡れている。
今日は道路が所々白い。
どうやら昨夜降ったのは雨ではなく、雪だったらしい。
幸い路面はあまり凍り付かず雪も残っているものの歩くのに支障はなさそう。
昨日よりも寒さは増したように感じる。
ほんの数日前までは吐く息がかすかに白く見える程度だったのが、今朝は吐く息が目に見えて真っ白い。
冬の雨は上がると冷え込みがきつくなるように感じるけれど、出勤時やけと冷え込むのは眠ってる間に降る雨のせいなんだろうか?
いずれにしても、神戸に行く日に暖かくなってくれたらいい。
竜樹さんがゆっくり休んで、元気を取り戻してくれたらそれでいい。
ついでに、昨日の暇の反動が今日やってこなければなどとずうずうしいことを考えながら、事務所に向かう。
冷え込みがきつすぎるからなのか、それとも私自身が何かに疲れているのか。
どうも判断がワンテンポ遅れがちだ。
仕事上のフローで判断が少々遅れても、どうにか立ち回るだけの知恵も経験則もあるけれど…
よりにもよって、大嫌いな電話対応でしくじった。
顧客からの電話ではなかったのだから、律儀に応対する必要なんてなかった。
前の会社では「仕事で一番大切なのは時間を無駄にしないことだ」と徹底的に教え込まれた。
だから、仕事と直接的にも間接的にも関わらないものについては、遠慮会釈なくばっさり切っても叱責を受けることはなかった。
寧ろ律儀に応対してると、「何を無駄なことに時間を使ってる」と容赦なく叱責が飛んだ。
今の会社でもその考えの基本的な部分は変わらないものの、(たとえ顧客以外でも)過剰に無碍にすると、上司から「対応が悪い」と叱責食らうからちょっと甘めに対応したのが仇になった。
仕事の時間を無駄にした上に、解決するまで必要以上の不安を抱えて過ごす羽目になってしまった。
誰がどう言おうが、時間を無駄にすることが私自身にとっても会社にとっても一番の損害であるに違いないのに。
その判断がちょっと狂っただけで、過剰な不安を抱える羽目になった。
「やっぱり、電話なんて取るのは嫌だ」と思うけれど、基本的に電話を取らなくていい会社なんてよほど職種を選ばなければないだろうから、次から気をつけようと固く誓う。
ただ不安要素について、冷静に解決法を考え出したり問い合わせたりするだけの知恵は残ってただけマシとしようか?
昼休みになって少々パニくって竜樹さんに思わず電話したけれど、捕まらなかったことで却って冷静になったのかもしれない。
私よりも知恵も経験則もはるかに沢山持っておられる竜樹さんだけど、いつまでも竜樹さんに甘えてばかりでもいられないから、何とか自力で解決の目鼻はつけたけれど。
ただただ、がっくり疲れてしまった。
午前中も午後からも昨日と同様に異常に暇だったにもかかわらず、事務所を出る頃にはぐったりしてしまってた。
よろよろと事務所を後にして、そのまま家に戻った。
家に帰ると、竜樹さんからお昼の電話したことを心配して連絡をくれた。
自力で対処法やら相談先やらを考え出して、ある程度解決の目鼻を立てたことを報告すると、安心しておられた。
「誰がなんと言おうと、業務に関係ないものは仕事の妨げにしかならないねんから、適当に切ったらええねんって。
まぁ、ちゃんと冷静になって後の対処も出来てるみたいやから、安心したけどな」
今日も調子が悪かったって言ってたのに、無駄に心配かけて申し訳ないことをしたなって思う。
「金岡は世渡り下手や」とよく言われるけれど。
今回はものの見事にそれが露呈した感じだった。
どうしたら小器用に生きられるのか未だに判らないけれど、もっとばっさり必要なものとそうでないものをちゃっちゃと認識して対応できるようにはなる必要はあるなって思う。
「あいつは根性悪や」と罵られるような生き方はしたくないけれど、あちらこちらにある落とし穴でぼかぼか蹴躓かずに生きられたらとは思う。
判断力に目隠しされるような状態は今後も時々あるだろうけど、それが元で自ら災厄を招かないように、それが大切な人に悪しきものとして襲い掛からないように、ひとつひとつ注意して歩いていきたいと強く思った。
判断力に原因不明の目隠しをされたような状態の中をどうにか手探りで過ごしたような日だった。
今日は道路が所々白い。
どうやら昨夜降ったのは雨ではなく、雪だったらしい。
幸い路面はあまり凍り付かず雪も残っているものの歩くのに支障はなさそう。
昨日よりも寒さは増したように感じる。
ほんの数日前までは吐く息がかすかに白く見える程度だったのが、今朝は吐く息が目に見えて真っ白い。
冬の雨は上がると冷え込みがきつくなるように感じるけれど、出勤時やけと冷え込むのは眠ってる間に降る雨のせいなんだろうか?
いずれにしても、神戸に行く日に暖かくなってくれたらいい。
竜樹さんがゆっくり休んで、元気を取り戻してくれたらそれでいい。
ついでに、昨日の暇の反動が今日やってこなければなどとずうずうしいことを考えながら、事務所に向かう。
冷え込みがきつすぎるからなのか、それとも私自身が何かに疲れているのか。
どうも判断がワンテンポ遅れがちだ。
仕事上のフローで判断が少々遅れても、どうにか立ち回るだけの知恵も経験則もあるけれど…
よりにもよって、大嫌いな電話対応でしくじった。
顧客からの電話ではなかったのだから、律儀に応対する必要なんてなかった。
前の会社では「仕事で一番大切なのは時間を無駄にしないことだ」と徹底的に教え込まれた。
だから、仕事と直接的にも間接的にも関わらないものについては、遠慮会釈なくばっさり切っても叱責を受けることはなかった。
寧ろ律儀に応対してると、「何を無駄なことに時間を使ってる」と容赦なく叱責が飛んだ。
今の会社でもその考えの基本的な部分は変わらないものの、(たとえ顧客以外でも)過剰に無碍にすると、上司から「対応が悪い」と叱責食らうからちょっと甘めに対応したのが仇になった。
仕事の時間を無駄にした上に、解決するまで必要以上の不安を抱えて過ごす羽目になってしまった。
誰がどう言おうが、時間を無駄にすることが私自身にとっても会社にとっても一番の損害であるに違いないのに。
その判断がちょっと狂っただけで、過剰な不安を抱える羽目になった。
「やっぱり、電話なんて取るのは嫌だ」と思うけれど、基本的に電話を取らなくていい会社なんてよほど職種を選ばなければないだろうから、次から気をつけようと固く誓う。
ただ不安要素について、冷静に解決法を考え出したり問い合わせたりするだけの知恵は残ってただけマシとしようか?
昼休みになって少々パニくって竜樹さんに思わず電話したけれど、捕まらなかったことで却って冷静になったのかもしれない。
私よりも知恵も経験則もはるかに沢山持っておられる竜樹さんだけど、いつまでも竜樹さんに甘えてばかりでもいられないから、何とか自力で解決の目鼻はつけたけれど。
ただただ、がっくり疲れてしまった。
午前中も午後からも昨日と同様に異常に暇だったにもかかわらず、事務所を出る頃にはぐったりしてしまってた。
よろよろと事務所を後にして、そのまま家に戻った。
家に帰ると、竜樹さんからお昼の電話したことを心配して連絡をくれた。
自力で対処法やら相談先やらを考え出して、ある程度解決の目鼻を立てたことを報告すると、安心しておられた。
「誰がなんと言おうと、業務に関係ないものは仕事の妨げにしかならないねんから、適当に切ったらええねんって。
まぁ、ちゃんと冷静になって後の対処も出来てるみたいやから、安心したけどな」
今日も調子が悪かったって言ってたのに、無駄に心配かけて申し訳ないことをしたなって思う。
「金岡は世渡り下手や」とよく言われるけれど。
今回はものの見事にそれが露呈した感じだった。
どうしたら小器用に生きられるのか未だに判らないけれど、もっとばっさり必要なものとそうでないものをちゃっちゃと認識して対応できるようにはなる必要はあるなって思う。
「あいつは根性悪や」と罵られるような生き方はしたくないけれど、あちらこちらにある落とし穴でぼかぼか蹴躓かずに生きられたらとは思う。
判断力に目隠しされるような状態は今後も時々あるだろうけど、それが元で自ら災厄を招かないように、それが大切な人に悪しきものとして襲い掛からないように、ひとつひとつ注意して歩いていきたいと強く思った。
判断力に原因不明の目隠しをされたような状態の中をどうにか手探りで過ごしたような日だった。
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最初で最後の光
2002年12月9日週末からの寒さがずるずる引きずられた感じの朝。
ここまで寒いのが続くと、いい加減嫌になってくる。
けれど、これからの3日間はちょっとやそっとじゃ仕事を投げられない。
すべては今週後半の神戸小旅行のため。
なけなしの気力を振り絞って、家を出る。
先週から休む日にどんな手の仕事が来そうか大体の見通しは立てていたから、あとは通常フローにどう載せていけばいいか考えながら片付ければいい。
11日までは余力のない状態になることを覚悟して事務所に入ったけれど…
どういう訳か、週明けの癖に人外魔境は異常に暇。
当たりをつけてた仕事もトラブルにまみれることなく、順調に進んでいく。
正直言って、かなり不安が残る。
厄介な仕事は来ないに越したことはないけれど、今日がこれほど暇なら残りの2日間がどんなことになるか、先が思い遣られる。
少しでも残りの2日間で悲鳴をあげずに済むよう、片付けられるものは片っ端から片付けていった。
終始、ゆったりめのペースのまま仕事は進む。
ただちょっとした事務所の雰囲気がどうにも私に馴染まないもので、かくりと疲れる。
まだまだ割り切り方が足りないからなんだろうけれど、この程度の仕事量でがっくりきてるようだと、明日明後日と始末に負えなくなりそう。
とにかく残りの2日間はひたすら現状の仕事を積み残さず、いない間に必要になるだろう仕事の準備品だけはちゃんと拵えておこうと心に決めて、今日はひとまず事務所を出た。
そのまままっすぐ帰るつもりだったけれど、ふっと思い立っていつもとは反対方向の電車に乗る。
特に何がしたいという訳ではなかったけれど、なんとなく寄り道してみたくなった。
ごとごとと電車に揺られながら、ぼけっと車窓を流れる景色を眺める。
眺めてるうちにうつらうつら…
何時の間にか、降りる駅にさしかかっていた。
取り立てて用があって来た訳ではないので、たらりたらりと気の向くまま歩いてみる。
ふと行列が目に飛び込んだので、目をやると宝くじ売り場。
…あ、そっか。
年末ジャンボを買い求める人が列を成していた。
毎年「どうせ当たれへんし…」って思って、宝くじには手を出さないようにしてる。
竜樹さんは細々とバラで3000円分だけ買うという話は聞いていたけれど、竜樹さんのように3000円を10000円にする小さな運は持ち合わせてなさそうなので、毎年竜樹さんを横目に不参加決め込んでいたけれど。
…何となく買ってしまった(^^ゞ
買ったからといって、大金手にする人々の一人になれるとは思わないけれど、竜樹さんが毎年「当たるかな、当たるかな♪」と言ってる傍でしれっと見てるのが面白くないなって思ってたから。
竜樹さんと小さな夢にどきどきするのもいいなと思った。
…確かに3等くらいが当たれば、人外魔境とはおさらばするつもりだけどさ(^^ゞ
家に帰るための電車に乗る前、竜樹さんにメールを飛ばす。
「こんばんは♪
今日は奇妙なくらい仕事が楽だったので、ふらりと寄り道しました。
宝くじのバラを1束買いました。
当たって憑き物落ちるといいな♪」
帰宅ラッシュの電車の中で、派手にメールの着信音が鳴る。
「宝くじ買いたいなぁ!
そらちゃんは、馬券を買ってないから、今回は当たるぞぉー(’v’)/ (^^)/。そんな気がするなぁ!
俺も買いに行きたいけど、なにぶん寒すぎて、とても外に出る気がしましぇーん。風邪、はよ治さんとルミナリエが悲惨なことに(T T) (@-@)。」
…あれま(>_<)
依然として、竜樹さんの体調はよろしくないらしい。
宝くじの発売期間はまだまだあるとはいえ、つまらないじゃないか。
私が買ったのに(勝手者)
「宝くじ代は進呈するので、まずは風邪を治すことに専念しましょう。
有馬記念も今年は不参加予定ですし、小さく人生が変わる当たりがくればいいな♪(*^_^*)
あったかくして、ゆっくり休むんだよヾ(^○^)」
そう飛ばして、うちに帰った。
夕飯を食べて、そのまま自室に戻らず暫くリビングでテレビを見ながら金岡母と話していると、テレビのニュースの映像が目に飛び込む。
障害者の人達を招待して、一足先にルミナリエを点灯したというニュースだった。
会期中は混雑してて会場に足を運びにくいからというちょっとした神戸市からのプレゼントらしい。
初日の前日か前々日に招待してルミナリエを点灯するというのは毎年の恒例行事なので、敢えてその時期が近づくと意図的にニュースを見ないようにしていたけれど…
一瞬で終わってしまった映像のルミナリエは残像として残るには足りなくて、正直そのことにほっとしはしたけれど…
…今年は最初に見るんだもんね
カレンダーや仕事の都合上、初日にしか行けそうになくて12日に行くことになったけれど。
6回目にして初めての初日参加。
誰よりも早くその光を見ることなんて出来はしないだろうけれど、始まりの日に2人で光の国を歩けるなら、それはとても嬉しいこと。
…あと2日だよ、早くよくなるといいね
どうか竜樹さんの風邪が早く治りますように。
どうか初日は冷え込みませんように。
今年最初で最後の光の中を2人で歩けますように…
ここまで寒いのが続くと、いい加減嫌になってくる。
けれど、これからの3日間はちょっとやそっとじゃ仕事を投げられない。
すべては今週後半の神戸小旅行のため。
なけなしの気力を振り絞って、家を出る。
先週から休む日にどんな手の仕事が来そうか大体の見通しは立てていたから、あとは通常フローにどう載せていけばいいか考えながら片付ければいい。
11日までは余力のない状態になることを覚悟して事務所に入ったけれど…
どういう訳か、週明けの癖に人外魔境は異常に暇。
当たりをつけてた仕事もトラブルにまみれることなく、順調に進んでいく。
正直言って、かなり不安が残る。
厄介な仕事は来ないに越したことはないけれど、今日がこれほど暇なら残りの2日間がどんなことになるか、先が思い遣られる。
少しでも残りの2日間で悲鳴をあげずに済むよう、片付けられるものは片っ端から片付けていった。
終始、ゆったりめのペースのまま仕事は進む。
ただちょっとした事務所の雰囲気がどうにも私に馴染まないもので、かくりと疲れる。
まだまだ割り切り方が足りないからなんだろうけれど、この程度の仕事量でがっくりきてるようだと、明日明後日と始末に負えなくなりそう。
とにかく残りの2日間はひたすら現状の仕事を積み残さず、いない間に必要になるだろう仕事の準備品だけはちゃんと拵えておこうと心に決めて、今日はひとまず事務所を出た。
そのまままっすぐ帰るつもりだったけれど、ふっと思い立っていつもとは反対方向の電車に乗る。
特に何がしたいという訳ではなかったけれど、なんとなく寄り道してみたくなった。
ごとごとと電車に揺られながら、ぼけっと車窓を流れる景色を眺める。
眺めてるうちにうつらうつら…
何時の間にか、降りる駅にさしかかっていた。
取り立てて用があって来た訳ではないので、たらりたらりと気の向くまま歩いてみる。
ふと行列が目に飛び込んだので、目をやると宝くじ売り場。
…あ、そっか。
年末ジャンボを買い求める人が列を成していた。
毎年「どうせ当たれへんし…」って思って、宝くじには手を出さないようにしてる。
竜樹さんは細々とバラで3000円分だけ買うという話は聞いていたけれど、竜樹さんのように3000円を10000円にする小さな運は持ち合わせてなさそうなので、毎年竜樹さんを横目に不参加決め込んでいたけれど。
…何となく買ってしまった(^^ゞ
買ったからといって、大金手にする人々の一人になれるとは思わないけれど、竜樹さんが毎年「当たるかな、当たるかな♪」と言ってる傍でしれっと見てるのが面白くないなって思ってたから。
竜樹さんと小さな夢にどきどきするのもいいなと思った。
…確かに3等くらいが当たれば、人外魔境とはおさらばするつもりだけどさ(^^ゞ
家に帰るための電車に乗る前、竜樹さんにメールを飛ばす。
「こんばんは♪
今日は奇妙なくらい仕事が楽だったので、ふらりと寄り道しました。
宝くじのバラを1束買いました。
当たって憑き物落ちるといいな♪」
帰宅ラッシュの電車の中で、派手にメールの着信音が鳴る。
「宝くじ買いたいなぁ!
そらちゃんは、馬券を買ってないから、今回は当たるぞぉー(’v’)/ (^^)/。そんな気がするなぁ!
俺も買いに行きたいけど、なにぶん寒すぎて、とても外に出る気がしましぇーん。風邪、はよ治さんとルミナリエが悲惨なことに(T T) (@-@)。」
…あれま(>_<)
依然として、竜樹さんの体調はよろしくないらしい。
宝くじの発売期間はまだまだあるとはいえ、つまらないじゃないか。
私が買ったのに(勝手者)
「宝くじ代は進呈するので、まずは風邪を治すことに専念しましょう。
有馬記念も今年は不参加予定ですし、小さく人生が変わる当たりがくればいいな♪(*^_^*)
あったかくして、ゆっくり休むんだよヾ(^○^)」
そう飛ばして、うちに帰った。
夕飯を食べて、そのまま自室に戻らず暫くリビングでテレビを見ながら金岡母と話していると、テレビのニュースの映像が目に飛び込む。
障害者の人達を招待して、一足先にルミナリエを点灯したというニュースだった。
会期中は混雑してて会場に足を運びにくいからというちょっとした神戸市からのプレゼントらしい。
初日の前日か前々日に招待してルミナリエを点灯するというのは毎年の恒例行事なので、敢えてその時期が近づくと意図的にニュースを見ないようにしていたけれど…
一瞬で終わってしまった映像のルミナリエは残像として残るには足りなくて、正直そのことにほっとしはしたけれど…
…今年は最初に見るんだもんね
カレンダーや仕事の都合上、初日にしか行けそうになくて12日に行くことになったけれど。
6回目にして初めての初日参加。
誰よりも早くその光を見ることなんて出来はしないだろうけれど、始まりの日に2人で光の国を歩けるなら、それはとても嬉しいこと。
…あと2日だよ、早くよくなるといいね
どうか竜樹さんの風邪が早く治りますように。
どうか初日は冷え込みませんように。
今年最初で最後の光の中を2人で歩けますように…
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会えない間も…
2002年12月8日今日は金岡本家にて法事の日。
今回は親レベルでこじんまりとやるので、私は留守番組。
ただ、姉さまに貰ったセールの招待状を無駄にしたくなくて、昼過ぎには戻ることを条件に行くことにした。
外は鈍色の空。
小雨が降ってきてたので、邪魔になるだろうと思いながらも傘を持って出かける。
休みの日の午前中なのに、電車はどことなく込み合っている。
そこそこ混んだ電車に揺られては乗り換え、また揺られては乗り換え…
何度も何度も移動の旅を繰り返してセール会場に向かう。
会場に着くまでに携帯から移動時間を調べ、何時に会場を出たらいいかの計算をする。
会場にいられるのは1時間半。
結構広い会場だから、本当に1時間半で必要なものを見つけて会場を出れるかどうかは判らないけれど。
迷い出したらキリがない私には、短期決戦型の買い方はちょうどいい。
長い長い移動の旅でへろへろになりながらも、会場に着くと俄かに戦闘モードにシフトしていく自分がいるから不思議。
まず人の波に押されるようにエレベーターに乗り、ところてんのように押し出される。
レディースのフロア。
姉さまが「アルマーニが出てたよ」と言うので、ひとまずアルマーニのコーナーに行く。
予算とサイズとデザインに折り合いのつくものを一生懸命探してみたけれど。
予算とデザインがいいなぁと思うと、サイズがない。
サイズがいいとデザインがもひとつか予算のはるか上を行く価格。
いつかのセールの時はアルマーニのスーツを上手に破格値で手に入れたけれど、今回はサイズと予算に折り合いがつかずに断念。
お隣のrenomaで物色してると、サイズとデザインと予算に折り合いがつくパンツとスプリングコートにもなりそうなジャケットが出てくる。
…決定!(o^−^o)
会場を出る時間の40分ほど前には自分の買い物は終わっていた。
後は会計のフロアに行くだけなんだけれど…
レディースの階を降りてメンズのフロアに行く。
竜樹さんのプレゼントを探そうと思ったから。
…どうせ、服を贈っても喜ばないんだけどなぁ、竜樹さん。
今までに何度か服を贈ったことはあるけれど、服というアイテムそのものは自分で選びたい人なのであまり喜んでもらえた試しはない。
そのくせ、贈ったものはちゃんと着てはくれてるし、長く着れるよう手入れもしてくれてるようなので、その点は喜べるのだけれど…
さて、どうしたものか?
仕立てのいいジャケットやパンツは沢山ある。
ところが、ちゃんとしたサイズが判らない(>_<)
再手術前のサイズは判るけれど、手術後痩せたとか何とか仰ってて正確なサイズは把握していない。
電話して聞いてみてもいいけれど、それでは何を贈ろうとしてるかバレてしまう。
「プレゼントはいいから、貯金しときやぁ」
決まってそう仰るので、聞くに聞けない。
あまり迷ってる時間はないので、多少曖昧でも大丈夫なセーターを探すことに。
またしても、サイズとデザインと予算に折り合うものを探す。
本当はカシミア100%のセーターを贈りたかったけれど、デザインが乏しかったのと予算に折り合いがつかずに断念。
軽くて暖かそうで色味もいいセーターをいくつか手に取り、考える。
竜樹さんが着る姿を頭に思い描いて考える。
贈るなら本当に喜ばれるものがいいなって思うけれど、本当に喜ぶものが判らない。
別にここで買わなくてもまたいずれでもいいかもしれない。
でも神戸小旅行の時にそっと渡せたらって思う。
毎年竜樹さんが小旅行の時にそっとプレゼントを渡してくれるように、私もそっと渡したいなぁって思うから…
自分の服を買うより迷って迷って。
結局、渋めの赤っぽい臙脂のセーターを手にして、会計フロアに下りる。
小雨の中、紙袋を提げて家に戻るためにまた移動大会。
紙袋から見える竜樹さんのセーターを眺めてぶつぶつ考える。
どうせ渡したら、言うのだ。彼は。
「俺のん買わんと、自分の買えばよかったのに」って。
…いーんだもんねー。本人が気に食わなきゃ、私が着るんだもんねー( ̄ー+ ̄)
根拠レスな居直りの口上ひとつ心の内に吐いて、ようやく家に戻る。
すっかりしょげ返ったプードルさんがよたよたと出迎えてくれた。
買った物を片付けて、リビングでプードルさんとくっついて金岡父のパソコンを叩いていると、携帯にメールがひとつ。
沙希ちゃんからだった。
クリスマス用のイルミネーションがついてるのを見て、ルミナリエのことを思い出してメールをくれたそう。
「寒くなると、傷が痛むでしょ? 竜樹せんせは出かけられそうなの?」
竜樹さんのことまで気遣ってくれるのが、とても嬉しい。
きっとそう言えば、沙希ちゃんは以前と変わらずに「竜樹せんせが元気なら、霄さんも元気でしょ?」って笑うんだろうけど。
「一進一退です。
メールありがとう(*^_^*)
ホントにもうすぐ今年も終わるんよね。
やっぱりこのところの冷え込みで竜樹さんの具合は思わしくないみたいです。
一応来週の後半にルミナリエに行く予定なのだけど、どうなることやら、です。
先月末頃に父方の祖母が亡くなって、少し落ち着きなかったのですが、今はだいぶマシです。
沙希ちゃんはいかがですか?」
そのお返事がなかったので、多分あまりよい状態じゃないんだろうなぁって思う。
一度、ちゃんと連絡しなきゃならない。
ただまだ沙希ちゃんちに彼がいるなら、迂闊に電話も出来ない。
彼氏と同居してる友達に連絡するのは、彼が縛らない人でも気を遣う。
よりにもよって、沙希ちゃんの彼は異常に縛りのきつい人だから、連絡することによっていらない諍いの元は作りたくない。
そう思うとずるずると、ちゃんと話すことも出来ないのだけれど…
そんなことをぼんやりと考えてるうちに、ふと眠くなってきたので自室から布団を下ろしてきてリビングで少し横になる。
カーペットが引いてあるとはいえ、フローリングの上で寝るのは身体が冷えてよろしくない。
何時間かはストーブつけて睡魔に任せて眠ったけれど、底冷えに我慢できずに体を起こす。
夕飯を作ろうと思ったけれど、ふと金岡母がピザが食べたいと話していたことを思い出し、金岡両親が戻ってから注文することにして、ぼんやりしながらプードルさんと遊びまわって過ごした。
金岡両親も戻り、金岡母のご意向通りピザを注文。
以前から食べたいものがあったらしく、届いたピザに満足そう。
外食系の食事が嫌いな金岡父のブーイングが飛ぶかと思ったけれど、金岡父の口にも合ったらしく楽しい食事の時間になった。
今日の法事の話を聞き、そこからまた他愛もない話をして自室に戻る。
ふと、竜樹さんにメールを飛ばしてみたくなった。
会えなかったのは仕方なかったとはいえ、休み中一度も連絡をしないのもどうかなって思ったから。
「いかがお過ごしですか?
寒い1日でしたね。
お加減、いかがですか?」
それほど時間をおかずにお返事が届く。
「寒く、辛い日でした(T T)」
なかなか体を起こせなかった辛さは後に続くちょっと面白い表現を交えてても見て取れる。
「辛かったね。
竜樹さんいじめる寒さは嫌いです。
私は朝早くから出かけ、昼過ぎからはずっとお留守番でした。
リビングで布団かぶって寝たらまぁ、寒いこと寒いこと(>_<)
今日はね、竜樹さんを思って過ごしました(^^ゞ
…なんで?って?
今は内緒です(笑)」
まさか「セーター贈って喜ばれるかどうか、1日考えてました」とは書けないから、私らしくないかわいらしげな言い方をしてみたけれど…
竜樹さんに会えなかった週末が終わる。
どこにいてても何をしてても、結局は竜樹さんのことを考えていた。
会えない間も竜樹さんは自分の中には確かにいたんだと。
臙脂色のセーターを見て、そう思った。
今回は親レベルでこじんまりとやるので、私は留守番組。
ただ、姉さまに貰ったセールの招待状を無駄にしたくなくて、昼過ぎには戻ることを条件に行くことにした。
外は鈍色の空。
小雨が降ってきてたので、邪魔になるだろうと思いながらも傘を持って出かける。
休みの日の午前中なのに、電車はどことなく込み合っている。
そこそこ混んだ電車に揺られては乗り換え、また揺られては乗り換え…
何度も何度も移動の旅を繰り返してセール会場に向かう。
会場に着くまでに携帯から移動時間を調べ、何時に会場を出たらいいかの計算をする。
会場にいられるのは1時間半。
結構広い会場だから、本当に1時間半で必要なものを見つけて会場を出れるかどうかは判らないけれど。
迷い出したらキリがない私には、短期決戦型の買い方はちょうどいい。
長い長い移動の旅でへろへろになりながらも、会場に着くと俄かに戦闘モードにシフトしていく自分がいるから不思議。
まず人の波に押されるようにエレベーターに乗り、ところてんのように押し出される。
レディースのフロア。
姉さまが「アルマーニが出てたよ」と言うので、ひとまずアルマーニのコーナーに行く。
予算とサイズとデザインに折り合いのつくものを一生懸命探してみたけれど。
予算とデザインがいいなぁと思うと、サイズがない。
サイズがいいとデザインがもひとつか予算のはるか上を行く価格。
いつかのセールの時はアルマーニのスーツを上手に破格値で手に入れたけれど、今回はサイズと予算に折り合いがつかずに断念。
お隣のrenomaで物色してると、サイズとデザインと予算に折り合いがつくパンツとスプリングコートにもなりそうなジャケットが出てくる。
…決定!(o^−^o)
会場を出る時間の40分ほど前には自分の買い物は終わっていた。
後は会計のフロアに行くだけなんだけれど…
レディースの階を降りてメンズのフロアに行く。
竜樹さんのプレゼントを探そうと思ったから。
…どうせ、服を贈っても喜ばないんだけどなぁ、竜樹さん。
今までに何度か服を贈ったことはあるけれど、服というアイテムそのものは自分で選びたい人なのであまり喜んでもらえた試しはない。
そのくせ、贈ったものはちゃんと着てはくれてるし、長く着れるよう手入れもしてくれてるようなので、その点は喜べるのだけれど…
さて、どうしたものか?
仕立てのいいジャケットやパンツは沢山ある。
ところが、ちゃんとしたサイズが判らない(>_<)
再手術前のサイズは判るけれど、手術後痩せたとか何とか仰ってて正確なサイズは把握していない。
電話して聞いてみてもいいけれど、それでは何を贈ろうとしてるかバレてしまう。
「プレゼントはいいから、貯金しときやぁ」
決まってそう仰るので、聞くに聞けない。
あまり迷ってる時間はないので、多少曖昧でも大丈夫なセーターを探すことに。
またしても、サイズとデザインと予算に折り合うものを探す。
本当はカシミア100%のセーターを贈りたかったけれど、デザインが乏しかったのと予算に折り合いがつかずに断念。
軽くて暖かそうで色味もいいセーターをいくつか手に取り、考える。
竜樹さんが着る姿を頭に思い描いて考える。
贈るなら本当に喜ばれるものがいいなって思うけれど、本当に喜ぶものが判らない。
別にここで買わなくてもまたいずれでもいいかもしれない。
でも神戸小旅行の時にそっと渡せたらって思う。
毎年竜樹さんが小旅行の時にそっとプレゼントを渡してくれるように、私もそっと渡したいなぁって思うから…
自分の服を買うより迷って迷って。
結局、渋めの赤っぽい臙脂のセーターを手にして、会計フロアに下りる。
小雨の中、紙袋を提げて家に戻るためにまた移動大会。
紙袋から見える竜樹さんのセーターを眺めてぶつぶつ考える。
どうせ渡したら、言うのだ。彼は。
「俺のん買わんと、自分の買えばよかったのに」って。
…いーんだもんねー。本人が気に食わなきゃ、私が着るんだもんねー( ̄ー+ ̄)
根拠レスな居直りの口上ひとつ心の内に吐いて、ようやく家に戻る。
すっかりしょげ返ったプードルさんがよたよたと出迎えてくれた。
買った物を片付けて、リビングでプードルさんとくっついて金岡父のパソコンを叩いていると、携帯にメールがひとつ。
沙希ちゃんからだった。
クリスマス用のイルミネーションがついてるのを見て、ルミナリエのことを思い出してメールをくれたそう。
「寒くなると、傷が痛むでしょ? 竜樹せんせは出かけられそうなの?」
竜樹さんのことまで気遣ってくれるのが、とても嬉しい。
きっとそう言えば、沙希ちゃんは以前と変わらずに「竜樹せんせが元気なら、霄さんも元気でしょ?」って笑うんだろうけど。
「一進一退です。
メールありがとう(*^_^*)
ホントにもうすぐ今年も終わるんよね。
やっぱりこのところの冷え込みで竜樹さんの具合は思わしくないみたいです。
一応来週の後半にルミナリエに行く予定なのだけど、どうなることやら、です。
先月末頃に父方の祖母が亡くなって、少し落ち着きなかったのですが、今はだいぶマシです。
沙希ちゃんはいかがですか?」
そのお返事がなかったので、多分あまりよい状態じゃないんだろうなぁって思う。
一度、ちゃんと連絡しなきゃならない。
ただまだ沙希ちゃんちに彼がいるなら、迂闊に電話も出来ない。
彼氏と同居してる友達に連絡するのは、彼が縛らない人でも気を遣う。
よりにもよって、沙希ちゃんの彼は異常に縛りのきつい人だから、連絡することによっていらない諍いの元は作りたくない。
そう思うとずるずると、ちゃんと話すことも出来ないのだけれど…
そんなことをぼんやりと考えてるうちに、ふと眠くなってきたので自室から布団を下ろしてきてリビングで少し横になる。
カーペットが引いてあるとはいえ、フローリングの上で寝るのは身体が冷えてよろしくない。
何時間かはストーブつけて睡魔に任せて眠ったけれど、底冷えに我慢できずに体を起こす。
夕飯を作ろうと思ったけれど、ふと金岡母がピザが食べたいと話していたことを思い出し、金岡両親が戻ってから注文することにして、ぼんやりしながらプードルさんと遊びまわって過ごした。
金岡両親も戻り、金岡母のご意向通りピザを注文。
以前から食べたいものがあったらしく、届いたピザに満足そう。
外食系の食事が嫌いな金岡父のブーイングが飛ぶかと思ったけれど、金岡父の口にも合ったらしく楽しい食事の時間になった。
今日の法事の話を聞き、そこからまた他愛もない話をして自室に戻る。
ふと、竜樹さんにメールを飛ばしてみたくなった。
会えなかったのは仕方なかったとはいえ、休み中一度も連絡をしないのもどうかなって思ったから。
「いかがお過ごしですか?
寒い1日でしたね。
お加減、いかがですか?」
それほど時間をおかずにお返事が届く。
「寒く、辛い日でした(T T)」
なかなか体を起こせなかった辛さは後に続くちょっと面白い表現を交えてても見て取れる。
「辛かったね。
竜樹さんいじめる寒さは嫌いです。
私は朝早くから出かけ、昼過ぎからはずっとお留守番でした。
リビングで布団かぶって寝たらまぁ、寒いこと寒いこと(>_<)
今日はね、竜樹さんを思って過ごしました(^^ゞ
…なんで?って?
今は内緒です(笑)」
まさか「セーター贈って喜ばれるかどうか、1日考えてました」とは書けないから、私らしくないかわいらしげな言い方をしてみたけれど…
竜樹さんに会えなかった週末が終わる。
どこにいてても何をしてても、結局は竜樹さんのことを考えていた。
会えない間も竜樹さんは自分の中には確かにいたんだと。
臙脂色のセーターを見て、そう思った。
暖かく優しいものを拾えたら…
2002年12月7日竜樹邸に行かない土曜日。
取り立てていくべき場所も予定もない時はだらだらさ加減にいっそう磨きがかかってくる。
何をするでもなく、寝たくれていた。
思い出したようにぼんやりと階下に降り、賄いを作ると金岡母から封筒を貰う。
姉さまはわざわざ速達でセールの招待状を送ってくれた。
貰ったのだから行くつもりで用意をしてみたものの、ちょっとぐずぐずしていると閉場の時間にぎりぎり間に合うか間に合わないかという時間になってしまって結局今日は行くのを見合わせた。
家にいてるから何もしなくていい訳でもなければ、することがない訳でもないけれど。
何となく本当なら行くべきところがあったのにと思うと気力が2、3割ダウンする感じがする。
喪中はがきも出さなきゃならないし、大掛かりな部屋の片づけだってしたいと思っていたけれど、何となくだらだらしてしまう。
このまま何もしないのは非常に勿体無い気がして、溜まりに溜まった日記の追っかけ更新の作業をぼそぼそと始める。
竜樹さんに纏わる話を綴っていると、今週会えないことがやっぱり心に少しばかり影を落とすような感じがして、ふと手を止める。
四六時中竜樹さんと会える時は「たまには自分の時間もあればいいのになぁ」なんて不遜なことを思うことだってあるというのに、会えなくなればなったでがっかりしてる自分がいる。
結局そんな気持ちを秤にかけてみたら、やっぱり「会えなくて残念」が勝つ。
竜樹さんといる前の自分の中にはなかった感情だから、随分変わったなぁと感心しきり。
自分の心の移り変わりを眺めながら、ぼそぼそとその日の出来事と想いを綴る作業を続ける。
突然、部屋電が鳴った。
ディスプレイを見ずに慌てて飛び出すと、絵のお師匠さまだった。
「週末は留守番」と書いて歩いていたのを見て、電話してみようと思ってくださったらしい。
沈み込みな気分は一気に浮上する。
お師匠さまは声もそうなんだけれど、空気がまぁるい感じがして話しててほっとする。
過剰な警戒心や心に引っかかってる何かがすこんと落ちる感じがするのが嬉しくて、ついつい無駄に喋ってしまう。
それにお付き合い頂いた結果、最後は慌てて電話を切るという状態に陥るのだけれど…
慌しい別れ方でも、心にいつも暖かさが残る。
それは今日も変わらなかった。
もしもいつものように竜樹さんに会いに行ってたら、お師匠さまと話すことはきっと叶わなかった。
姉さまから貰ったセールに出かけてても、きっと話すことは叶わなかっただろう。
そう思うと今日家にいててよかったなぁって思う。
どこにいても、自分の心に暖かく優しいものを拾えたなら。
きっとその日はいい日なんだと思う。
取り立てていくべき場所も予定もない時はだらだらさ加減にいっそう磨きがかかってくる。
何をするでもなく、寝たくれていた。
思い出したようにぼんやりと階下に降り、賄いを作ると金岡母から封筒を貰う。
姉さまはわざわざ速達でセールの招待状を送ってくれた。
貰ったのだから行くつもりで用意をしてみたものの、ちょっとぐずぐずしていると閉場の時間にぎりぎり間に合うか間に合わないかという時間になってしまって結局今日は行くのを見合わせた。
家にいてるから何もしなくていい訳でもなければ、することがない訳でもないけれど。
何となく本当なら行くべきところがあったのにと思うと気力が2、3割ダウンする感じがする。
喪中はがきも出さなきゃならないし、大掛かりな部屋の片づけだってしたいと思っていたけれど、何となくだらだらしてしまう。
このまま何もしないのは非常に勿体無い気がして、溜まりに溜まった日記の追っかけ更新の作業をぼそぼそと始める。
竜樹さんに纏わる話を綴っていると、今週会えないことがやっぱり心に少しばかり影を落とすような感じがして、ふと手を止める。
四六時中竜樹さんと会える時は「たまには自分の時間もあればいいのになぁ」なんて不遜なことを思うことだってあるというのに、会えなくなればなったでがっかりしてる自分がいる。
結局そんな気持ちを秤にかけてみたら、やっぱり「会えなくて残念」が勝つ。
竜樹さんといる前の自分の中にはなかった感情だから、随分変わったなぁと感心しきり。
自分の心の移り変わりを眺めながら、ぼそぼそとその日の出来事と想いを綴る作業を続ける。
突然、部屋電が鳴った。
ディスプレイを見ずに慌てて飛び出すと、絵のお師匠さまだった。
「週末は留守番」と書いて歩いていたのを見て、電話してみようと思ってくださったらしい。
沈み込みな気分は一気に浮上する。
お師匠さまは声もそうなんだけれど、空気がまぁるい感じがして話しててほっとする。
過剰な警戒心や心に引っかかってる何かがすこんと落ちる感じがするのが嬉しくて、ついつい無駄に喋ってしまう。
それにお付き合い頂いた結果、最後は慌てて電話を切るという状態に陥るのだけれど…
慌しい別れ方でも、心にいつも暖かさが残る。
それは今日も変わらなかった。
もしもいつものように竜樹さんに会いに行ってたら、お師匠さまと話すことはきっと叶わなかった。
姉さまから貰ったセールに出かけてても、きっと話すことは叶わなかっただろう。
そう思うと今日家にいててよかったなぁって思う。
どこにいても、自分の心に暖かく優しいものを拾えたなら。
きっとその日はいい日なんだと思う。
ナチュラルな状態で…
2002年12月6日12月にしては暖かい朝。
来週後半に神戸小旅行が控えてるので、今週末の竜樹邸訪問はお休み。
最近竜樹邸訪問についてはいろいろあったので、ここらへんでで休憩を取るのは悪くないかも知れない。
実際、家でしなきゃならないことを殆ど放り投げてた状態だから、久しぶりに自分の時間の時間をゆっくり過ごそう。
そう思いながらも、どこか寂しい部分がないとは言わないけれど…
早ければ今日から、遅くとも来週の月曜から仕事は忙しくなるだろう。
同僚さんがまだいてるとはいえ、2日連続で休むとなると他の部署に絡む仕事で読みの利くものは予め準備しておかなきゃならない。
準備しないまま出れば、現場の人々も意味もなく混乱するだろうし、再来週出社したらとてつもなくしんどいことになるのが目に見えてるから…
連休を取るのは楽じゃないなと思いながらも、取らせてもらえるだけありがたいのだろうと思って、ちょっと気を入れて臨む。
朝からそこそこに波乱含みな立ち上がりできりきりしてしまう部分はあっただろうけれど、午前中に片付けようと思っていたことは予定してた時間よりは少し速いペースで片付いてはいるからよしとしようか。
親会社から届いた書類を各部署に届けてまわり、ふと階段の踊り場の小さな窓から見える空を見て思う。
昨日病院に行く予定だと言っていた竜樹さんから連絡はなかった。
病院に行けないほどしんどかったか、行けてたとしても相当疲れてしまったのか。
連絡がないのはそのいずれかだということは、長い付き合いの中で判ってることなのだけど…
…本当にこの時期に遠出してもいいのかな?
私自身が「やめよう」と切り出せば、竜樹さんも「やめよう」と言い易いかもしれない。
いや、本当に行けないのなら遠慮会釈なく「今回は見合わせよう」という人だから、行くつもりではいてくれてるのだと思う。
けれど、本当にいいのかなとも思う。
その気になれば日帰りでもやってやれない距離ではないのだけれど。
別にどうしてもこの時期に神戸でなきゃならない理由なんて、本当は多分ない。
私自身の中にある大切な部分に触れること以外においては…
…他にも考えたりしたりしなきゃならないことは、沢山ある。
竜樹さんに贈るクリスマスプレゼントも買ってないし、私の髪も刈ってないし、小旅行明けのクリスマスディナーのレシピも考えてない(-_-;)
しなきゃならないことに考えなきゃならないことも満載で、サメのように動き回るしか能のない思考回路は少々パンク気味。
それが尾を引いて仕事でぽかをやらないように気をつけないとと思いながら、また事務所に戻る。
それからまた暫く波乱含みの仕事を片して、昼休みを迎える。」
お弁当をもこもこと食べる手を止めて、竜樹さんにメールを飛ばす。
「お元気ですか?
今日は少し冷えますね。
お日様から力は貰えましたか?」
どうかダウンしてませんようにと祈るような想いでメールを飛ばし、後片付けをしてると、机の上で携帯が踊っている。
「今日は、だいぶ楽です(’v’)/ (^^)/。注射のおかげかな?」
その返事を見て、ほっと息をつく。
絶好調でなくても、身体がしんどくないならそれでいい。
「それはよかった♪
外は暖かそうだけど、社内は冷えます。
お腹こわさないように、風邪をひかないように気を付けます。
ゆっくり休んでねヾ(*^_^*)」
そうメールを飛ばして、昼からの仕事に挑む。
昼からは仕事にこてんぱんにされてしまったけれど…(-_-;)
よろよろしながら事務所を出て、ふらふらと自転車をかっ飛ばし駅へ向かう。
竜樹さんのいない週末のことを思うと、素直に家に変える気になれずにそのまま寄り道コース。
気が向いたら携帯の機種変更でもしようかなと思いながら、電車を乗り継ぎ移動する。
あちらこちらをうろちょろするけれど、「欲しいなぁ」と思うものは見つからなくて。
携帯電話も欲しいなぁと思ったものはまだ発売されてなくて、予約も出来ない状態。
何が悪いという訳でもないけれど、何となくがっくりこっくりくる。
携帯電話を替えたいなら、いっそ電話会社ごと変えてもいいのだけれど、今使ってる電話は竜樹さんから頂いたものをずっと引き継いで使ってきてるから、そうおいそれと変える気にはなれず、しょうもないストレスだけを感じてまた電車を乗り継ぎ今度は自宅を目指す。
その移動の間、ずっと友達と短いメールで会話し続けていたから、いつの間にかしょうもないストレスはどこかへ消えてなくなったのだけれど(*^-^*)
自宅に戻ってぼけっと夕飯を食べ、自室へ戻るとメールがひとつ。
「電話、できる (’’)?」
折り返し電話をすると、幾分柔らかな声の竜樹さんがいる。
一瞬明日は会えるんじゃないかって気もしたけれど、今週はゆっくり休んでもらおうって決めたから。
「来週は頑張らんなんしなぁ、霄もゆっくり休むんやで?」
「竜樹さんもね、何かあったらいつでも連絡くださいね」
「そうする」
取り立てて何か印象に残るようなやり取りではなかったかも知れない。
でも柔らかな竜樹さんからは柔らかな心がちょうどいい状態で届く。
過剰なまでも気遣いでも、体の辛さゆえの鋭さが突出した状態でもない。
極めてナチュラルな感じ。
もしも、竜樹さんの身体から痛みが完全に消えることがなかったとしても。
いつかは鋭さや過剰な気遣いが抜けたナチュラルな状態の竜樹さんでいられるように。
その竜樹さんと向き合う私がナチュラルな状態でいられるように。
2人がナチュラルな状態で向き合えるようになって初めて、竜樹さんと私が立ち向かうものの壁はひとつ崩せるのかもしれない。
来週後半に神戸小旅行が控えてるので、今週末の竜樹邸訪問はお休み。
最近竜樹邸訪問についてはいろいろあったので、ここらへんでで休憩を取るのは悪くないかも知れない。
実際、家でしなきゃならないことを殆ど放り投げてた状態だから、久しぶりに自分の時間の時間をゆっくり過ごそう。
そう思いながらも、どこか寂しい部分がないとは言わないけれど…
早ければ今日から、遅くとも来週の月曜から仕事は忙しくなるだろう。
同僚さんがまだいてるとはいえ、2日連続で休むとなると他の部署に絡む仕事で読みの利くものは予め準備しておかなきゃならない。
準備しないまま出れば、現場の人々も意味もなく混乱するだろうし、再来週出社したらとてつもなくしんどいことになるのが目に見えてるから…
連休を取るのは楽じゃないなと思いながらも、取らせてもらえるだけありがたいのだろうと思って、ちょっと気を入れて臨む。
朝からそこそこに波乱含みな立ち上がりできりきりしてしまう部分はあっただろうけれど、午前中に片付けようと思っていたことは予定してた時間よりは少し速いペースで片付いてはいるからよしとしようか。
親会社から届いた書類を各部署に届けてまわり、ふと階段の踊り場の小さな窓から見える空を見て思う。
昨日病院に行く予定だと言っていた竜樹さんから連絡はなかった。
病院に行けないほどしんどかったか、行けてたとしても相当疲れてしまったのか。
連絡がないのはそのいずれかだということは、長い付き合いの中で判ってることなのだけど…
…本当にこの時期に遠出してもいいのかな?
私自身が「やめよう」と切り出せば、竜樹さんも「やめよう」と言い易いかもしれない。
いや、本当に行けないのなら遠慮会釈なく「今回は見合わせよう」という人だから、行くつもりではいてくれてるのだと思う。
けれど、本当にいいのかなとも思う。
その気になれば日帰りでもやってやれない距離ではないのだけれど。
別にどうしてもこの時期に神戸でなきゃならない理由なんて、本当は多分ない。
私自身の中にある大切な部分に触れること以外においては…
…他にも考えたりしたりしなきゃならないことは、沢山ある。
竜樹さんに贈るクリスマスプレゼントも買ってないし、私の髪も刈ってないし、小旅行明けのクリスマスディナーのレシピも考えてない(-_-;)
しなきゃならないことに考えなきゃならないことも満載で、サメのように動き回るしか能のない思考回路は少々パンク気味。
それが尾を引いて仕事でぽかをやらないように気をつけないとと思いながら、また事務所に戻る。
それからまた暫く波乱含みの仕事を片して、昼休みを迎える。」
お弁当をもこもこと食べる手を止めて、竜樹さんにメールを飛ばす。
「お元気ですか?
今日は少し冷えますね。
お日様から力は貰えましたか?」
どうかダウンしてませんようにと祈るような想いでメールを飛ばし、後片付けをしてると、机の上で携帯が踊っている。
「今日は、だいぶ楽です(’v’)/ (^^)/。注射のおかげかな?」
その返事を見て、ほっと息をつく。
絶好調でなくても、身体がしんどくないならそれでいい。
「それはよかった♪
外は暖かそうだけど、社内は冷えます。
お腹こわさないように、風邪をひかないように気を付けます。
ゆっくり休んでねヾ(*^_^*)」
そうメールを飛ばして、昼からの仕事に挑む。
昼からは仕事にこてんぱんにされてしまったけれど…(-_-;)
よろよろしながら事務所を出て、ふらふらと自転車をかっ飛ばし駅へ向かう。
竜樹さんのいない週末のことを思うと、素直に家に変える気になれずにそのまま寄り道コース。
気が向いたら携帯の機種変更でもしようかなと思いながら、電車を乗り継ぎ移動する。
あちらこちらをうろちょろするけれど、「欲しいなぁ」と思うものは見つからなくて。
携帯電話も欲しいなぁと思ったものはまだ発売されてなくて、予約も出来ない状態。
何が悪いという訳でもないけれど、何となくがっくりこっくりくる。
携帯電話を替えたいなら、いっそ電話会社ごと変えてもいいのだけれど、今使ってる電話は竜樹さんから頂いたものをずっと引き継いで使ってきてるから、そうおいそれと変える気にはなれず、しょうもないストレスだけを感じてまた電車を乗り継ぎ今度は自宅を目指す。
その移動の間、ずっと友達と短いメールで会話し続けていたから、いつの間にかしょうもないストレスはどこかへ消えてなくなったのだけれど(*^-^*)
自宅に戻ってぼけっと夕飯を食べ、自室へ戻るとメールがひとつ。
「電話、できる (’’)?」
折り返し電話をすると、幾分柔らかな声の竜樹さんがいる。
一瞬明日は会えるんじゃないかって気もしたけれど、今週はゆっくり休んでもらおうって決めたから。
「来週は頑張らんなんしなぁ、霄もゆっくり休むんやで?」
「竜樹さんもね、何かあったらいつでも連絡くださいね」
「そうする」
取り立てて何か印象に残るようなやり取りではなかったかも知れない。
でも柔らかな竜樹さんからは柔らかな心がちょうどいい状態で届く。
過剰なまでも気遣いでも、体の辛さゆえの鋭さが突出した状態でもない。
極めてナチュラルな感じ。
もしも、竜樹さんの身体から痛みが完全に消えることがなかったとしても。
いつかは鋭さや過剰な気遣いが抜けたナチュラルな状態の竜樹さんでいられるように。
その竜樹さんと向き合う私がナチュラルな状態でいられるように。
2人がナチュラルな状態で向き合えるようになって初めて、竜樹さんと私が立ち向かうものの壁はひとつ崩せるのかもしれない。
確かなるもの
2002年12月5日最近は夜中に雨が降っているのか、朝窓を開けると屋根が濡れている。
知らない間に雨は降り、何時の間にかやんでいる。
夜中に雨が降ってたことに竜樹さんが気がつかないくらいにきちんと眠れていたらいいのだけれど。
もし昨夜眠れてなかったとしても、せめて行く予定だと言っていた病院には行けますようにと願いながら家を出る。
12月に入る少し前くらいから、にわかに竜樹さんの体調が不安定な気がする。
神戸小旅行に出る前にも病院に寄っていくという話はされていた。
再手術が終われば、すべて終わるんじゃなかったのか?
いや、終わる訳ではないのだと手術が済んだ時にはそう思ってはいたけれど、術後の経過が目覚ましくよかっただけについ勘違いしそうになる。
一体、いつになればこんな状態に別れが告げられるのか、それすら見えてこない現状が歯がゆい。
本当に辛いのは私じゃなくて竜樹さん自身で、辛そうにしてる竜樹さんを見てるしか出来ないことが何よりも辛いのだけれど…
手術を終えて迎える最初の冬は、決して身体に思わしい状態を齎さないことは彼も私も承知している。
だから、今すぐになんて言わない。
来年の今頃、寒い風が吹いても笑っていられるならそれでいい。
そんな風に思いながら、いくつかの朝メールを飛ばして社屋に入る。
今日の仕事の立ち上がりは割と穏やかな方だと思う。
周りの課員さん達が慌しくしてるのはいつものことだけれど、特筆して言うならばボスが係長のぽかから引き起こした大クレームの処理にばたばたしておられたことくらいだろうか。
ばたばたばたとクレーム対応に追われながらも、ツンドラギャグをにこにこ笑って吐きまわるあたりがボスがボスである所以かもしれないなぁとヘンに感心しながら、時折資料を揃えを手伝ったりして過ごした。
昼から仕事の前倒しが一段楽した頃、鞄が揺れた。
竜樹さんからだと思って覗き込んでみると、姉さまからだった。
何でも、会社を休んでセールに来ているのだそう。
今年の販売物品の傾向と休みの日に行くなら招待状を送ったげるよっていう内容だった。
…セールかぁ
11月の初めに(私にしては)大きな買い物をしてしまってるから、ちょっと首を捻ったけれど、ここのセールはいつもいいものが破格値で出てくるから行くととても楽しかったりする。
…行きます行きます行きます行きます♪o(^-^o)o(^-^)o(o^-^)o
心の中では一人浮かれているけれど、さすがに1日の中で一番忙しくなる時間帯に堂々とでもこっそりとでも携帯からお返事を打つわけには行かない。
ぐっと堪えて鞄を目に入らないように机の中にしまい込み、きりきりと大一番の仕事に取り掛かる。
14時頃までの作業の貯金が効いたのか、かなり楽な状態で会社を後にした。
駅のホームに辿り着いてから、慌てて姉さまにメールを飛ばす。
「お疲れ様ですm(__)m
いい買い物はできた?
今週は竜樹さんとは会わないから、招待状分けて頂けるならありがたいです♪
…久しぶりにスカート穿きたいのだ、スカート(笑)
…こないだ海衣が帰省した時にもスカート貰ったけど(^^ゞ」
自転車をかっとばして通勤する都合上、ここ数年めっきりスカートはご無沙汰だった。
別にそれで竜樹さんががっかりする訳でもなかったし、かえって活動的でよいと言われてたから余計に穿かないでいたけれど。
何故だか、今年はスカート穿きたい心境だったりする。
どうしてそうしたいのか、私自身よく判らないのだけれど…
何度か電車を乗り換えして、今度は竜樹さんにメールを飛ばす。
「お加減いかがですか?
今日は暖かかったね。診察お疲れ様でした。
明日で仕事は終わりだから、頑張ります」
そのお返事はなかったから、もしかしたら病院に行ってそのまま眠ってしまってるのかもしれないけれど。
そのまま部屋でぼけっとしながら、ふと思う。
降る気配もなく突然闇夜の空から降る雨のように、突然現れる想いも出来事もある。
逆に知らぬ間にそっとどこかへ行ってしまう想いも出来事もある。
そのどちらにも毎日出逢いながら、1日という時間を歩きつづける。
何気なく生まれる欲求がどうして生まれるのかを知りたいと思い、何気なく起こってしまったことをどうしてそれが起こるのか知りたい自分がいる。
それを知ることが必ずしも自分にとっていいことばかりとは限らなくても、お構いなしに知ってみたい衝動に駆られるときもあるのかもしれない。
そんな自分は一生自分の中に住みつづけるのかもしれない。
何故、雨が降る前に竜樹さんの身体が痛み、どうしてこんなに長くその痛みが続くのか。
どうして今までそんな欲求がなかったにもかかわらず、突然スカート穿いてみたくなる私がいるのか。
次元の違ういくつもの疑問が自分の中で同時に生まれてはまた流れていったりそのまま自分の中に根付いてしまったり。
その答が出るものもあれば出ないまま終わるものもあるけれど。
いくつもの突然が齎す何かから、いつかひとつでもいいから確かなものを手にしたいって思う。
たったひとつでいいから確かな何かを手にしてみたいって思う。
もしも、それが竜樹さんとの想いについての何かであるのならば、それは何より嬉しいもの。
何気ない生活の中で突如降って湧くいくつもの事象に対して、思考を錯綜させた結果に残ったものは、それらの要素とは全然関係のない答であっても今の私には確かなるもの。
ただひとつ欲しいと希う確かなるもの。
知らない間に雨は降り、何時の間にかやんでいる。
夜中に雨が降ってたことに竜樹さんが気がつかないくらいにきちんと眠れていたらいいのだけれど。
もし昨夜眠れてなかったとしても、せめて行く予定だと言っていた病院には行けますようにと願いながら家を出る。
12月に入る少し前くらいから、にわかに竜樹さんの体調が不安定な気がする。
神戸小旅行に出る前にも病院に寄っていくという話はされていた。
再手術が終われば、すべて終わるんじゃなかったのか?
いや、終わる訳ではないのだと手術が済んだ時にはそう思ってはいたけれど、術後の経過が目覚ましくよかっただけについ勘違いしそうになる。
一体、いつになればこんな状態に別れが告げられるのか、それすら見えてこない現状が歯がゆい。
本当に辛いのは私じゃなくて竜樹さん自身で、辛そうにしてる竜樹さんを見てるしか出来ないことが何よりも辛いのだけれど…
手術を終えて迎える最初の冬は、決して身体に思わしい状態を齎さないことは彼も私も承知している。
だから、今すぐになんて言わない。
来年の今頃、寒い風が吹いても笑っていられるならそれでいい。
そんな風に思いながら、いくつかの朝メールを飛ばして社屋に入る。
今日の仕事の立ち上がりは割と穏やかな方だと思う。
周りの課員さん達が慌しくしてるのはいつものことだけれど、特筆して言うならばボスが係長のぽかから引き起こした大クレームの処理にばたばたしておられたことくらいだろうか。
ばたばたばたとクレーム対応に追われながらも、ツンドラギャグをにこにこ笑って吐きまわるあたりがボスがボスである所以かもしれないなぁとヘンに感心しながら、時折資料を揃えを手伝ったりして過ごした。
昼から仕事の前倒しが一段楽した頃、鞄が揺れた。
竜樹さんからだと思って覗き込んでみると、姉さまからだった。
何でも、会社を休んでセールに来ているのだそう。
今年の販売物品の傾向と休みの日に行くなら招待状を送ったげるよっていう内容だった。
…セールかぁ
11月の初めに(私にしては)大きな買い物をしてしまってるから、ちょっと首を捻ったけれど、ここのセールはいつもいいものが破格値で出てくるから行くととても楽しかったりする。
…行きます行きます行きます行きます♪o(^-^o)o(^-^)o(o^-^)o
心の中では一人浮かれているけれど、さすがに1日の中で一番忙しくなる時間帯に堂々とでもこっそりとでも携帯からお返事を打つわけには行かない。
ぐっと堪えて鞄を目に入らないように机の中にしまい込み、きりきりと大一番の仕事に取り掛かる。
14時頃までの作業の貯金が効いたのか、かなり楽な状態で会社を後にした。
駅のホームに辿り着いてから、慌てて姉さまにメールを飛ばす。
「お疲れ様ですm(__)m
いい買い物はできた?
今週は竜樹さんとは会わないから、招待状分けて頂けるならありがたいです♪
…久しぶりにスカート穿きたいのだ、スカート(笑)
…こないだ海衣が帰省した時にもスカート貰ったけど(^^ゞ」
自転車をかっとばして通勤する都合上、ここ数年めっきりスカートはご無沙汰だった。
別にそれで竜樹さんががっかりする訳でもなかったし、かえって活動的でよいと言われてたから余計に穿かないでいたけれど。
何故だか、今年はスカート穿きたい心境だったりする。
どうしてそうしたいのか、私自身よく判らないのだけれど…
何度か電車を乗り換えして、今度は竜樹さんにメールを飛ばす。
「お加減いかがですか?
今日は暖かかったね。診察お疲れ様でした。
明日で仕事は終わりだから、頑張ります」
そのお返事はなかったから、もしかしたら病院に行ってそのまま眠ってしまってるのかもしれないけれど。
そのまま部屋でぼけっとしながら、ふと思う。
降る気配もなく突然闇夜の空から降る雨のように、突然現れる想いも出来事もある。
逆に知らぬ間にそっとどこかへ行ってしまう想いも出来事もある。
そのどちらにも毎日出逢いながら、1日という時間を歩きつづける。
何気なく生まれる欲求がどうして生まれるのかを知りたいと思い、何気なく起こってしまったことをどうしてそれが起こるのか知りたい自分がいる。
それを知ることが必ずしも自分にとっていいことばかりとは限らなくても、お構いなしに知ってみたい衝動に駆られるときもあるのかもしれない。
そんな自分は一生自分の中に住みつづけるのかもしれない。
何故、雨が降る前に竜樹さんの身体が痛み、どうしてこんなに長くその痛みが続くのか。
どうして今までそんな欲求がなかったにもかかわらず、突然スカート穿いてみたくなる私がいるのか。
次元の違ういくつもの疑問が自分の中で同時に生まれてはまた流れていったりそのまま自分の中に根付いてしまったり。
その答が出るものもあれば出ないまま終わるものもあるけれど。
いくつもの突然が齎す何かから、いつかひとつでもいいから確かなものを手にしたいって思う。
たったひとつでいいから確かな何かを手にしてみたいって思う。
もしも、それが竜樹さんとの想いについての何かであるのならば、それは何より嬉しいもの。
何気ない生活の中で突如降って湧くいくつもの事象に対して、思考を錯綜させた結果に残ったものは、それらの要素とは全然関係のない答であっても今の私には確かなるもの。
ただひとつ欲しいと希う確かなるもの。
元気になれる種
2002年12月4日昨夜遅くから降っていた雨は、朝になったらあがっていた。
雨降り前は竜樹さんの身体に痛みが走るから、昨日はちゃんと眠れたんだろうかと考えてしまったけれど、ひとまず晴れて冷え込みさえしなければきっと竜樹さんの体調も上向きになるのだろうと思う。
願いとも思い込みともつかないもので、ひとかけらの安心を手にして、家を出る。
電車での移動タイムは専ら姉さまと昨日のトヨタカップ談義。
互いに視点も注目してた選手も違うけれど、巧い人達の試合はいいねということとやっぱりいい試合は生で観たいよねっていうことで決着。
ちょっとした笑い話も姉さまから提供され、楽しい移動時間になった。
会社に着くと、通常フローの合間を縫って、課員の年賀状作成。
今年は年賀葉書の予約の頃に課員から調査票を回収してるので、作成の前段階で蹴躓くことはないのだけれど、通常フローがそれほど緩やかなものでない日に挟み込むとちとキツイ。
ボスの後ろのパソコンで年賀状の印刷をしては、また自分の席で通常業務にあたり、また他所の階に書類を配りに行ったり…
ばたばたしてやっとひと段落かな?と思ってると、今度は発生したトラブルの応急処置。
この会社だけではきっとないのだろうけれど、必ず出張なんかでいない人の物件でトラブルは発生する。
そして、担当者が携帯を持って出ていなかったりするのも、ちょっとしたお約束。
いらいらしたって仕方がないとはいえ、トラブルを解決できる人は行方不明。
そして、そのトラブルの口火を切った人からは矢継ぎ早に回答の督促。
これでいらいらせずにいられたら仏だよなと、自分の苛地を棚に上げていらいらしながらでも出来るところまでは片付けた。
…そう言えば。
いつだったか、ふらりとネット散歩してる時、「常にイライラしてる人からは毒素が出てる」みたいな話が書いてあったのを見かけたことがある。
少なくとも、この会社にいてる間の私は毒素ばら撒きっぱなしってことなんだろうか?
それは非常にはた迷惑ではあるけれど、この環境下にあるうちは仕方がないのだろうか。
けれど、その毒素が元で竜樹さんの体調が悪くなったり、私自身が疲れっぽいのはよろしくないなと軽く反省してみたり。
そんな風に思いを巡らせながら、ボスの後ろのパソコンと私のデスクとをちょろちょろ往復して1日が終わる。
事務所を出て、途中金岡母に頼まれたものを購入してよろよろとホームに上がる。
ふと携帯を見ると、姉さまからメールがひとつ。
トヨタカップ談義の続きだった。
どうも金岡母がレアルのグティがちょっとお気に入りっぽいって話を書いたことについて、笑えるような笑えないようなお話が綴られていた。
…ちなみに、姉さまのお母様は「素行や性格が悪かろうが観賞用だからそれでいい」というコメント(^-^;
きっと金岡母は、見てくれだけじゃなくて性格も素行も煩いんだろうけれど…
「周りがどうあれ、私の一番は相変わらずカーン様♪
ゴルフで熱くなっても、ディスコで踊り明かして罰金取られても、投げ込まれたバナナを拾い食いしても好き♪(爆)」
…あれ?
気がつくと果てしなく論点ずれの、おバカなメールをひとつ飛ばしていた。
帰りの電車の旅はいつでも眠気との格闘だから、姉さまとメールのやり取りをしていたおかげで随分楽しい帰りの旅になる。
何回目かの乗り換えの駅で、ふと思い立って途中下車。
…竜樹さんと約束してた合鍵を作りに行った。
ちょうどお客さんがいない時間帯だったせいか、それほど待たされることもなく鍵は出来上がる。
別に自分の家の合鍵を作るくらいどうってことのない話なのに、何となく竜樹さんにメールを飛ばす。
「こんばんは♪
合い鍵作ったよん(*^_^*)
あっというまに出来たんで、びっくりだわさー。
よかったー♪
…ところで、竜樹さまは元気ですか?」
そうメールを飛ばして電車に乗る。
「オッケー、オウケイ(^.^)」
出だしが明るいので、ほっとしながら読み進めると、「大変しんどいでぇす。明日病院に行く予定です(T T)」と続く。
元気でないという事実は変わらなくても、なるべく明るくしようとしてる竜樹さんは間違いなく元気になれる種を沢山持っているんだと思うから。
そんな小さな種を大切にしたいって思うから。
「暖かくして栄養のあるものを食べて、早く休むですよヾ(^_^*)
少しでもよくなるように、太陽にも月にもお祈りしとくから(-人-)
お大事に、ね」
祈るように願うように言葉を紡いでそっと夜空に飛ばした。
家に帰ると、玄関にでっかいダンボール箱がひとつ。
ずるずると自室まで持ち帰って、開けてみると大きなものから小さなものまで箱中ピングーがいっぱい。
嬉しくなって、すぐにお礼のメールを姉さまに飛ばした。
「家に帰ったら玄関に箱があって、開けてみたらピングーがいっぱい♪
めっちゃ幸せ気分です。
ありがとうね♪(*^_^*)」
そこいらじゅうに元気になれる種がある。
それは何気なく飛んできたり、人からそっと届けられたり。
そして私自身も何気なく飛ばしたり、誰かにそっと託したりしてるのかも知れない。
元気の種を受け取ってまた誰かに返す。
そんな繰り返しが毎日を織り成すのかもしれない。
雨降り前は竜樹さんの身体に痛みが走るから、昨日はちゃんと眠れたんだろうかと考えてしまったけれど、ひとまず晴れて冷え込みさえしなければきっと竜樹さんの体調も上向きになるのだろうと思う。
願いとも思い込みともつかないもので、ひとかけらの安心を手にして、家を出る。
電車での移動タイムは専ら姉さまと昨日のトヨタカップ談義。
互いに視点も注目してた選手も違うけれど、巧い人達の試合はいいねということとやっぱりいい試合は生で観たいよねっていうことで決着。
ちょっとした笑い話も姉さまから提供され、楽しい移動時間になった。
会社に着くと、通常フローの合間を縫って、課員の年賀状作成。
今年は年賀葉書の予約の頃に課員から調査票を回収してるので、作成の前段階で蹴躓くことはないのだけれど、通常フローがそれほど緩やかなものでない日に挟み込むとちとキツイ。
ボスの後ろのパソコンで年賀状の印刷をしては、また自分の席で通常業務にあたり、また他所の階に書類を配りに行ったり…
ばたばたしてやっとひと段落かな?と思ってると、今度は発生したトラブルの応急処置。
この会社だけではきっとないのだろうけれど、必ず出張なんかでいない人の物件でトラブルは発生する。
そして、担当者が携帯を持って出ていなかったりするのも、ちょっとしたお約束。
いらいらしたって仕方がないとはいえ、トラブルを解決できる人は行方不明。
そして、そのトラブルの口火を切った人からは矢継ぎ早に回答の督促。
これでいらいらせずにいられたら仏だよなと、自分の苛地を棚に上げていらいらしながらでも出来るところまでは片付けた。
…そう言えば。
いつだったか、ふらりとネット散歩してる時、「常にイライラしてる人からは毒素が出てる」みたいな話が書いてあったのを見かけたことがある。
少なくとも、この会社にいてる間の私は毒素ばら撒きっぱなしってことなんだろうか?
それは非常にはた迷惑ではあるけれど、この環境下にあるうちは仕方がないのだろうか。
けれど、その毒素が元で竜樹さんの体調が悪くなったり、私自身が疲れっぽいのはよろしくないなと軽く反省してみたり。
そんな風に思いを巡らせながら、ボスの後ろのパソコンと私のデスクとをちょろちょろ往復して1日が終わる。
事務所を出て、途中金岡母に頼まれたものを購入してよろよろとホームに上がる。
ふと携帯を見ると、姉さまからメールがひとつ。
トヨタカップ談義の続きだった。
どうも金岡母がレアルのグティがちょっとお気に入りっぽいって話を書いたことについて、笑えるような笑えないようなお話が綴られていた。
…ちなみに、姉さまのお母様は「素行や性格が悪かろうが観賞用だからそれでいい」というコメント(^-^;
きっと金岡母は、見てくれだけじゃなくて性格も素行も煩いんだろうけれど…
「周りがどうあれ、私の一番は相変わらずカーン様♪
ゴルフで熱くなっても、ディスコで踊り明かして罰金取られても、投げ込まれたバナナを拾い食いしても好き♪(爆)」
…あれ?
気がつくと果てしなく論点ずれの、おバカなメールをひとつ飛ばしていた。
帰りの電車の旅はいつでも眠気との格闘だから、姉さまとメールのやり取りをしていたおかげで随分楽しい帰りの旅になる。
何回目かの乗り換えの駅で、ふと思い立って途中下車。
…竜樹さんと約束してた合鍵を作りに行った。
ちょうどお客さんがいない時間帯だったせいか、それほど待たされることもなく鍵は出来上がる。
別に自分の家の合鍵を作るくらいどうってことのない話なのに、何となく竜樹さんにメールを飛ばす。
「こんばんは♪
合い鍵作ったよん(*^_^*)
あっというまに出来たんで、びっくりだわさー。
よかったー♪
…ところで、竜樹さまは元気ですか?」
そうメールを飛ばして電車に乗る。
「オッケー、オウケイ(^.^)」
出だしが明るいので、ほっとしながら読み進めると、「大変しんどいでぇす。明日病院に行く予定です(T T)」と続く。
元気でないという事実は変わらなくても、なるべく明るくしようとしてる竜樹さんは間違いなく元気になれる種を沢山持っているんだと思うから。
そんな小さな種を大切にしたいって思うから。
「暖かくして栄養のあるものを食べて、早く休むですよヾ(^_^*)
少しでもよくなるように、太陽にも月にもお祈りしとくから(-人-)
お大事に、ね」
祈るように願うように言葉を紡いでそっと夜空に飛ばした。
家に帰ると、玄関にでっかいダンボール箱がひとつ。
ずるずると自室まで持ち帰って、開けてみると大きなものから小さなものまで箱中ピングーがいっぱい。
嬉しくなって、すぐにお礼のメールを姉さまに飛ばした。
「家に帰ったら玄関に箱があって、開けてみたらピングーがいっぱい♪
めっちゃ幸せ気分です。
ありがとうね♪(*^_^*)」
そこいらじゅうに元気になれる種がある。
それは何気なく飛んできたり、人からそっと届けられたり。
そして私自身も何気なく飛ばしたり、誰かにそっと託したりしてるのかも知れない。
元気の種を受け取ってまた誰かに返す。
そんな繰り返しが毎日を織り成すのかもしれない。
絆されて笑えるうちは…
2002年12月3日朝から体中がピリピリ痛む。
風邪の引き始めの頃から出てくるあの嫌な感じの痛さ。
身体に嫌な感じな痛みが走る上に、これから会社に行かなきゃならないから余計に気持ちは後ろ向きになるけれど。
ひとまず給料を貰ってるうちはちゃんとせんなんからと、無理矢理自分を追い立てて家を出る。
気持ちが後ろ向きな時の思考回路はずっとひとところで堂々巡りをしてる感じが否めない。
あれやこれやいろいろ理由付けしても、結局その根拠が薄かったり思いつきが走ったりするだけのことだから、シンプルに片付くはずのものも片付かなくなる。
頭ひとつ振って、取り敢えず目の前にある仕事と派生して片付けざるを得なさそうなものを予測して作業を続ける。
そうしてるうちに、ふと気付いた。
祖母の葬儀の後にした作業でいくつかぽかをかましてた。
幸いそれは大きなトラブルを引き起こすには至らなかったけれど、今まできちんと出来てたことが落っこちてしまってたことに自己嫌悪を覚える。
ただ、自己嫌悪を引きずって新たなミスを連鎖して生み出すわけにも行かないから、ある程度のところでまた自己嫌悪の念は脇へ除けざるを得なかったのだけど…
つくづく、ここの空気もここにいる人もこの仕事の内容も。
馴染まなきゃならないと思いながらも、馴染めない、いや馴染みたくないって気持ちの方が前に出がちになる。
そのくせ「はい、さよーなら」とばかりに飛び出せないのは、状況が許さないということもあるだろうけど、飛び出して次の岸に辿り着くだけの力が今の自分にはないのかもしれないということを暗に知ってるからなのかなぁとも思う。
この会社で十分に自分の力が足りているから、他所に行っても万事オッケーにはならないだろうと思うと、勉強が足りない気がしてならない。
現状に満足する気はさらさらないけれど、自分に何が足りないかを具体的に考える機会に出くわしたということはありがたいことかもしれない。
ひとまず鬱屈した自分を押さえ込むだけの口上を考えて、今日1日はそう思って乗り切ろうと思った。
それでも疲労感を強く感じる自分がいることに変わりはなかったけれど…
よれよれな状態ですっかり寄り道する気も失せた状態で、だらだらと電車を乗り継ぐ。
その途中、携帯にメールが飛び込む。
「おつかれーぃ(’v’)/ (^^)/。
頑張って合い鍵を作れよ。合い鍵をしまう袋も用意してあるからなぁ!」
そういった内容のことをすっとぼけた表現を交えて綴ってある。
…確か、冷戦状態ちゃいませんでしたか?竜樹さん?
時々、竜樹さんのおやりになることがよく判らなくなる。
私は白黒はっきりつけたい性質なので、きっちり自分の中で納得できない限りは擦り寄らない。
だから話すのは、事態を解決するための直接手段以外に意味を持たなかったりするけれど。竜樹さんはそういう人ではないらしく、冷戦気味の状態でもくだけたメールが届いたり、何にもなかったように明るい声で電話が入ったり。
後で本人に聞くと、互いが抱えてる事態について決して忘れてる訳でもないがしろにしてる訳でもないらしいのだけど。
こうやってかわいらしいところを見せては、私も傍の人も誤魔化されていくんだよ。
…ちっしょー、ずりぃぞーヽ(`⌒´)ノ
そういうところが、竜樹さんらしいっちゃあらしいのだけど。
「こんばんは♪
今日は原因不明のへろへろで、寄り道もせずに真っ直ぐ帰ってきました。
明日所用で寄り道するので、早速作ってきますね(*^_^*)
ありがとう♪」
こちらも何食わぬ顔してメールを飛ばし、再び移動を繰り返す。
傍目には結構嬉しそうだったに違いないなぁと思うと、やっぱりまだ悔しいなと思う部分もあったのだけど…
家に帰ると、金岡母はテレビの前にプードルさんと2人鎮座していた。
「どうかしたの?」と聞くと、「これからトヨタカップがあるのよ」とのこと。
レアル対世界選抜がそのうちあるなぁとは思っていたけれど、トヨタカップは正直眼中になかった。
「あれ?今日だったの?」
「え?トヨタカップ見るために早く帰ってきたんじゃなかったの?」
「いーや、全然知らなかったよ。今日やなんて。
レアルって正直、あんまり興味なかったからさぁ…」
これがバイエルンミュンヘンだとかユベントスあたりだと、もう少し違った対応だったかもしれないけれど。
それでも、レアルの試合なんてそうそう見れる環境下にはないから、慌てて自室に戻って着替えて降りてくる。
時折、友達や姉さまからメールが飛んでくるのに返事をしながら、トヨタカップ観戦。
レアル圧勝かと言われてたけれど、そこそこオリンピアも頑張ってたような気がする。
それでも、レアルのひとり舞台っていえばひとり舞台だったのだろうか?
ぼんやりとトヨタカップを見ながら、メールの返事を打ち、途中から帰宅した金岡父を加え、三人三様の視点で試合を観戦。
「…なぁなぁなぁなぁ、あのおっさん誰や?あのおっさん?」
「はぁ?おっさんって誰よ?( -_-)」
「ほら、あのおっさん」
…おっさんてあんた、失礼な(-"-;)
金岡父はいたくフィーゴのプレーがお気に入りだったらしい。
「おっさん上手や♪」って連呼しながら、フィーゴのプレーを見てる。
私はキーパー好きなので、カシージャス。
金岡母はロベルト・カルロスのプレーと途中出場のグティの見てくれに注目(爆)
三人が好き放題なことを言いながら、サッカー観戦を終えた。
「来年は無理でも再来年あたりにバイエルンミュンヘンきたらいいなぁ」
「…トヨタカップって今年で最後とか言うてなかったか?」
「…確かにそういう噂は聞いたことあるねんけどさぁ(>へ<)」
それでも、カーン様率いるバイエルンがトヨタカップにでようものなら。
私はきっと行くだろうなぁって思う。
その時の私にいろんな意味で余裕があるかどうかは判らないけれど…
トヨタカップからまた自分自身に目を戻す。
携帯の中の竜樹さんの言葉を眺めて、また少し笑みを漏らす自分がいる。
「いつまでも誤魔化され続けるだなんて思うなよぉ(-"-#)」
「気持ちが許せるなら、もうそれでええやん(o^−^o)」
正反対向いた二人の私の攻防戦。
悔しいけれど、絆されて笑えるうちはそう悲惨な状態じゃないのかもしれない。
絆されて笑えるならそれもよしかもしれない。
白黒つけなきゃすっきりしない私のはずが、既にもう誤魔化されてる。
それですら、惚れた弱みだと言うのなら。
敢えて負けてもいいのかな?
風邪の引き始めの頃から出てくるあの嫌な感じの痛さ。
身体に嫌な感じな痛みが走る上に、これから会社に行かなきゃならないから余計に気持ちは後ろ向きになるけれど。
ひとまず給料を貰ってるうちはちゃんとせんなんからと、無理矢理自分を追い立てて家を出る。
気持ちが後ろ向きな時の思考回路はずっとひとところで堂々巡りをしてる感じが否めない。
あれやこれやいろいろ理由付けしても、結局その根拠が薄かったり思いつきが走ったりするだけのことだから、シンプルに片付くはずのものも片付かなくなる。
頭ひとつ振って、取り敢えず目の前にある仕事と派生して片付けざるを得なさそうなものを予測して作業を続ける。
そうしてるうちに、ふと気付いた。
祖母の葬儀の後にした作業でいくつかぽかをかましてた。
幸いそれは大きなトラブルを引き起こすには至らなかったけれど、今まできちんと出来てたことが落っこちてしまってたことに自己嫌悪を覚える。
ただ、自己嫌悪を引きずって新たなミスを連鎖して生み出すわけにも行かないから、ある程度のところでまた自己嫌悪の念は脇へ除けざるを得なかったのだけど…
つくづく、ここの空気もここにいる人もこの仕事の内容も。
馴染まなきゃならないと思いながらも、馴染めない、いや馴染みたくないって気持ちの方が前に出がちになる。
そのくせ「はい、さよーなら」とばかりに飛び出せないのは、状況が許さないということもあるだろうけど、飛び出して次の岸に辿り着くだけの力が今の自分にはないのかもしれないということを暗に知ってるからなのかなぁとも思う。
この会社で十分に自分の力が足りているから、他所に行っても万事オッケーにはならないだろうと思うと、勉強が足りない気がしてならない。
現状に満足する気はさらさらないけれど、自分に何が足りないかを具体的に考える機会に出くわしたということはありがたいことかもしれない。
ひとまず鬱屈した自分を押さえ込むだけの口上を考えて、今日1日はそう思って乗り切ろうと思った。
それでも疲労感を強く感じる自分がいることに変わりはなかったけれど…
よれよれな状態ですっかり寄り道する気も失せた状態で、だらだらと電車を乗り継ぐ。
その途中、携帯にメールが飛び込む。
「おつかれーぃ(’v’)/ (^^)/。
頑張って合い鍵を作れよ。合い鍵をしまう袋も用意してあるからなぁ!」
そういった内容のことをすっとぼけた表現を交えて綴ってある。
…確か、冷戦状態ちゃいませんでしたか?竜樹さん?
時々、竜樹さんのおやりになることがよく判らなくなる。
私は白黒はっきりつけたい性質なので、きっちり自分の中で納得できない限りは擦り寄らない。
だから話すのは、事態を解決するための直接手段以外に意味を持たなかったりするけれど。竜樹さんはそういう人ではないらしく、冷戦気味の状態でもくだけたメールが届いたり、何にもなかったように明るい声で電話が入ったり。
後で本人に聞くと、互いが抱えてる事態について決して忘れてる訳でもないがしろにしてる訳でもないらしいのだけど。
こうやってかわいらしいところを見せては、私も傍の人も誤魔化されていくんだよ。
…ちっしょー、ずりぃぞーヽ(`⌒´)ノ
そういうところが、竜樹さんらしいっちゃあらしいのだけど。
「こんばんは♪
今日は原因不明のへろへろで、寄り道もせずに真っ直ぐ帰ってきました。
明日所用で寄り道するので、早速作ってきますね(*^_^*)
ありがとう♪」
こちらも何食わぬ顔してメールを飛ばし、再び移動を繰り返す。
傍目には結構嬉しそうだったに違いないなぁと思うと、やっぱりまだ悔しいなと思う部分もあったのだけど…
家に帰ると、金岡母はテレビの前にプードルさんと2人鎮座していた。
「どうかしたの?」と聞くと、「これからトヨタカップがあるのよ」とのこと。
レアル対世界選抜がそのうちあるなぁとは思っていたけれど、トヨタカップは正直眼中になかった。
「あれ?今日だったの?」
「え?トヨタカップ見るために早く帰ってきたんじゃなかったの?」
「いーや、全然知らなかったよ。今日やなんて。
レアルって正直、あんまり興味なかったからさぁ…」
これがバイエルンミュンヘンだとかユベントスあたりだと、もう少し違った対応だったかもしれないけれど。
それでも、レアルの試合なんてそうそう見れる環境下にはないから、慌てて自室に戻って着替えて降りてくる。
時折、友達や姉さまからメールが飛んでくるのに返事をしながら、トヨタカップ観戦。
レアル圧勝かと言われてたけれど、そこそこオリンピアも頑張ってたような気がする。
それでも、レアルのひとり舞台っていえばひとり舞台だったのだろうか?
ぼんやりとトヨタカップを見ながら、メールの返事を打ち、途中から帰宅した金岡父を加え、三人三様の視点で試合を観戦。
「…なぁなぁなぁなぁ、あのおっさん誰や?あのおっさん?」
「はぁ?おっさんって誰よ?( -_-)」
「ほら、あのおっさん」
…おっさんてあんた、失礼な(-"-;)
金岡父はいたくフィーゴのプレーがお気に入りだったらしい。
「おっさん上手や♪」って連呼しながら、フィーゴのプレーを見てる。
私はキーパー好きなので、カシージャス。
金岡母はロベルト・カルロスのプレーと途中出場のグティの見てくれに注目(爆)
三人が好き放題なことを言いながら、サッカー観戦を終えた。
「来年は無理でも再来年あたりにバイエルンミュンヘンきたらいいなぁ」
「…トヨタカップって今年で最後とか言うてなかったか?」
「…確かにそういう噂は聞いたことあるねんけどさぁ(>へ<)」
それでも、カーン様率いるバイエルンがトヨタカップにでようものなら。
私はきっと行くだろうなぁって思う。
その時の私にいろんな意味で余裕があるかどうかは判らないけれど…
トヨタカップからまた自分自身に目を戻す。
携帯の中の竜樹さんの言葉を眺めて、また少し笑みを漏らす自分がいる。
「いつまでも誤魔化され続けるだなんて思うなよぉ(-"-#)」
「気持ちが許せるなら、もうそれでええやん(o^−^o)」
正反対向いた二人の私の攻防戦。
悔しいけれど、絆されて笑えるうちはそう悲惨な状態じゃないのかもしれない。
絆されて笑えるならそれもよしかもしれない。
白黒つけなきゃすっきりしない私のはずが、既にもう誤魔化されてる。
それですら、惚れた弱みだと言うのなら。
敢えて負けてもいいのかな?
ひとりの週末を過ごすなら
2002年12月2日どういう訳かいつもの時間より目が覚めるのが遅かった。
のんびりしてると遅刻は免れないので、慌てて用意をして家を飛び出す。
駅に着いて、青くなった。
家に財布と定期入れを入れた小さな鞄を一式忘れてきてしまった。
朝からまるで放映遅れのサザエさんのようだ。
幸い、お弁当を入れてる鞄に入れてた通帳ケースに1000円札の小さな束が入ってたので、そこからお金を出して出勤。
定期を持っていても「行きたくないなぁ」と思うのに、なけなしのお金を払ってまで会社に行きたいかと言われたら、もっと行きたくないって思う。
一昨日は鍵を忘れて、竜樹さんと金岡両親を巻き込んでの大騒動を引き起こし、今度は財布と定期入れまで忘れる体たらく。
「忘れ物をしないように気をつけよう」なんて、まるで小学生の月間目標みたい。
慌てると何かを忘れるというのだけは直しておきたいと思いながら、ホームに滑り込んできた電車に乗る。
ただ財布と定期入れを同時に忘れることなんてまずないから、報告と自戒を込めて姉さまに報告した。
すると姉さま、体調不良で会社を休んでおられるとのこと。
姉さまに報告したら、姉さま不調で休み。
姉さまもストレス過多な仕事をしてるので、ダウンしても無理はない気がする。
「ゆっくり休むんだよー」とメールを飛ばし、電車を降りる。
胃が重くて吐きそうだけど、取り敢えず頑張ろう。
会社に入ると、なけなしの気力がどんどん吸い取られる感じがする。
…この会社、なんかおるんちゃうか?(-_-;)
どうせいるなら座敷童子だったらいいのに。
そしたら少なくともいてくれてる間は会社は儲かるのに…なんてばかみたいなことを考えながら、何とか仕事を続けはするけれど。
身体がしんどいから憂鬱なのか、もともと憂鬱な気分だから身体がしんどいのか。
よく判らないまま仕事を捌かすだけで1日が終わってしまった。
ぐったりと疲れてしまった状態で、よろよろと電車を乗り継ぎ家を目指す。
電車の窓に映る自分の表情がどこか疲れてっぽくて、我ながら嫌になる。
本当に早く辞めないと、胃か精神潰しそう。
…って、5年もあの会社にいて胃はともかく精神はまだ潰してないから、あと何年いたって精神的にぶっ潰れることはありえないとは思うけど…
でも、常に機嫌悪く過ごせる環境っていうのにいつまでも身を置いてていいことはないから。
辞めるタイミングを見計らい、辞表を出す勇気を奮うことを本腰入れてやってかなきゃならないなぁと、毎度のことながら思う。
自宅に戻ってから、竜樹さんと少し電話で話したけれど。
今日もよく冷えたから、体調が悪かったみたいで言葉が尖っていらっしゃる。
器用に人に自分の想いを伝えられない人だから、ある程度のことは仕方ないって思ってる。
ましてや、体調が悪い時は半端じゃない状態だから、本当に辛いのだってことも承知してる。
尖る言葉が常に出るわけでないことも、それを発動させてしまったことをとても後悔する人だということも。
元気な時に懸命に傷つけたことのフォローをしようとすることも。
判ってる、判ってるんだよ。
だけど、自分のことばっかり言われるのが辛い時だってあるんだよ。
それは私自身にも言えたことかも知れないから、強くは言わないけれど。
少しだけでいい、少しだけでいいんだ。
自分がしんどい状態の中にあって、ほんの少しだけでも自分以外の人のことも片隅には置いてて欲しいって思う。
それすら我儘なのかもしれないけれど…
今日1日頭の中で無限ループのようにぐるぐるぐるぐる結論出ぬまま巡りつづけたこと。
自分の意志や状態だけを慮れば簡単に済むことが、視野を広げていく度に身動きが取れなくなるような状況の中で、身動きが取れなくて自分的には辛くても現状を守らなきゃならないと思うことの根幹にあるのは、いつでも大切な人の存在。
「すべてを放棄して楽になりたい」って気持ちと「放り出しちゃだめなんだよ」って気持ちが綱引きしてる。
その状態を抱えてることが何だかひどく薄汚れてる感じがして、自分で自分が嫌になるというのに…
口にしないことを分かれなんて言うのが無茶だから、理解されなくても仕方ないとは思うけれど。
のべつまくなく自分のことばかり言わないでって思う時もたまにはあるんだよ。
本当は、いつでもあなたのしんどさを軽くしたいって思うよ。
自分が多少しんどくても、あなたが言いたいことを言いさえしたら少しでも楽に慣れるなら、その労を厭うような真似はしないよ。
でも、あなたが抱えてるように、私にも抱えてるものがあって。
あなたに抱えてるものの持つ尖った部分が届かないように、自分の心の部分でその刃を寸止めさせてる状態なんだよ。
心が柔らかくてしなやかであればその刃はそこから先にはいかないし、持ち堪えられもする。
けど、あなたがいつも元気でないように、私の心に柔軟性がなくなることだって確かにあるんだよ。
竜樹さんの話を聞きながら、口を突きかけて必死になって飲み込んだ言葉がいくつもある。
けれど、身体が辛くて辛くてならない状態の竜樹さんにそれがどれほどの抑止になるっていうのだろう。
その抑止のために余計に身体が辛くなるなら?
…言える訳がないじゃないか。
「今週末は会うのをやめよう。少し休みたいねん」
「少しの時間でもいいから会おう」よりも「休みたい」が勝つなら、休むことを優先させるのも悪くはないのかもしれない。
竜樹さんも疲れてるように、私も少し疲れてるみたい。
今の2人は自分のことばかり見て欲しいって思いが強いもの。
それがぶつかり続けて、また疲れる。
竜樹邸からの戻りが遅いというだけで金岡両親から過剰なまでに悪し様に言われるのにも疲れてる。
自分のことだけじゃなくて、竜樹さんのことまで悪し様に言うのだから。
その言葉を甘んじて受け流すことにも、許せなくて歯向かうことにも疲労感は付き纏う。
少なくとも私が竜樹邸に行かない日は、彼らの感情が竜樹さんの方に流れることは少ない。
自分のことだけごちゃごちゃ言われるなら、適当にやりすごせるもの。
どちらからも挟まれた時、逆ギレできなくて不完全燃焼な気分を抱え込んでしまうのが癖になってるらしい。
それが疲れの元凶になってるのは間違いないけれど…
どちらも大事な人だから、どちらも大事にしたいだけのにね。
抱え込むだけ抱え込んで、最後に両親も竜樹さんのことも大嫌いになりそうで怖い。
ここんとこの私は愛し方が足りないのかもしれない。
ついでに愛され方も足りないのかもしれない。
そんなお寒い思考回路の癖に、今週末竜樹さんに会えないことを寂しいと思う自分もいる。
…それを友達に話したら「惚れた弱みですね」って言われたけどさ(-_-;)
ひとりの時間を過ごすことで、もう一度見つめ直せたらいいなって思う。
8年目にしてちょこちょこと綻びが出てきてる部分も見受けられるけれど、その綻びを上手に直したり新たなものに仕立て直したりする方法を見つけるのは、必ずしも疲れたもの同士が塞がった思考回路で考えればいいってもんじゃない。
下手をすると、神戸小旅行のあたりまでずっとひとりの時間を過ごすかもしれない。
寂しいのには違いないけど、共に閉塞した思考回路のままでぶつかり合うことが建設的だとは思わないから。
久しぶりにひとりの週末になるのなら。
自分自身とこれからを見つめ直すのも悪くはない。
私と竜樹さんが2人で歩くための道を迷わず進める糸口になるのなら…
のんびりしてると遅刻は免れないので、慌てて用意をして家を飛び出す。
駅に着いて、青くなった。
家に財布と定期入れを入れた小さな鞄を一式忘れてきてしまった。
朝からまるで放映遅れのサザエさんのようだ。
幸い、お弁当を入れてる鞄に入れてた通帳ケースに1000円札の小さな束が入ってたので、そこからお金を出して出勤。
定期を持っていても「行きたくないなぁ」と思うのに、なけなしのお金を払ってまで会社に行きたいかと言われたら、もっと行きたくないって思う。
一昨日は鍵を忘れて、竜樹さんと金岡両親を巻き込んでの大騒動を引き起こし、今度は財布と定期入れまで忘れる体たらく。
「忘れ物をしないように気をつけよう」なんて、まるで小学生の月間目標みたい。
慌てると何かを忘れるというのだけは直しておきたいと思いながら、ホームに滑り込んできた電車に乗る。
ただ財布と定期入れを同時に忘れることなんてまずないから、報告と自戒を込めて姉さまに報告した。
すると姉さま、体調不良で会社を休んでおられるとのこと。
姉さまに報告したら、姉さま不調で休み。
姉さまもストレス過多な仕事をしてるので、ダウンしても無理はない気がする。
「ゆっくり休むんだよー」とメールを飛ばし、電車を降りる。
胃が重くて吐きそうだけど、取り敢えず頑張ろう。
会社に入ると、なけなしの気力がどんどん吸い取られる感じがする。
…この会社、なんかおるんちゃうか?(-_-;)
どうせいるなら座敷童子だったらいいのに。
そしたら少なくともいてくれてる間は会社は儲かるのに…なんてばかみたいなことを考えながら、何とか仕事を続けはするけれど。
身体がしんどいから憂鬱なのか、もともと憂鬱な気分だから身体がしんどいのか。
よく判らないまま仕事を捌かすだけで1日が終わってしまった。
ぐったりと疲れてしまった状態で、よろよろと電車を乗り継ぎ家を目指す。
電車の窓に映る自分の表情がどこか疲れてっぽくて、我ながら嫌になる。
本当に早く辞めないと、胃か精神潰しそう。
…って、5年もあの会社にいて胃はともかく精神はまだ潰してないから、あと何年いたって精神的にぶっ潰れることはありえないとは思うけど…
でも、常に機嫌悪く過ごせる環境っていうのにいつまでも身を置いてていいことはないから。
辞めるタイミングを見計らい、辞表を出す勇気を奮うことを本腰入れてやってかなきゃならないなぁと、毎度のことながら思う。
自宅に戻ってから、竜樹さんと少し電話で話したけれど。
今日もよく冷えたから、体調が悪かったみたいで言葉が尖っていらっしゃる。
器用に人に自分の想いを伝えられない人だから、ある程度のことは仕方ないって思ってる。
ましてや、体調が悪い時は半端じゃない状態だから、本当に辛いのだってことも承知してる。
尖る言葉が常に出るわけでないことも、それを発動させてしまったことをとても後悔する人だということも。
元気な時に懸命に傷つけたことのフォローをしようとすることも。
判ってる、判ってるんだよ。
だけど、自分のことばっかり言われるのが辛い時だってあるんだよ。
それは私自身にも言えたことかも知れないから、強くは言わないけれど。
少しだけでいい、少しだけでいいんだ。
自分がしんどい状態の中にあって、ほんの少しだけでも自分以外の人のことも片隅には置いてて欲しいって思う。
それすら我儘なのかもしれないけれど…
今日1日頭の中で無限ループのようにぐるぐるぐるぐる結論出ぬまま巡りつづけたこと。
自分の意志や状態だけを慮れば簡単に済むことが、視野を広げていく度に身動きが取れなくなるような状況の中で、身動きが取れなくて自分的には辛くても現状を守らなきゃならないと思うことの根幹にあるのは、いつでも大切な人の存在。
「すべてを放棄して楽になりたい」って気持ちと「放り出しちゃだめなんだよ」って気持ちが綱引きしてる。
その状態を抱えてることが何だかひどく薄汚れてる感じがして、自分で自分が嫌になるというのに…
口にしないことを分かれなんて言うのが無茶だから、理解されなくても仕方ないとは思うけれど。
のべつまくなく自分のことばかり言わないでって思う時もたまにはあるんだよ。
本当は、いつでもあなたのしんどさを軽くしたいって思うよ。
自分が多少しんどくても、あなたが言いたいことを言いさえしたら少しでも楽に慣れるなら、その労を厭うような真似はしないよ。
でも、あなたが抱えてるように、私にも抱えてるものがあって。
あなたに抱えてるものの持つ尖った部分が届かないように、自分の心の部分でその刃を寸止めさせてる状態なんだよ。
心が柔らかくてしなやかであればその刃はそこから先にはいかないし、持ち堪えられもする。
けど、あなたがいつも元気でないように、私の心に柔軟性がなくなることだって確かにあるんだよ。
竜樹さんの話を聞きながら、口を突きかけて必死になって飲み込んだ言葉がいくつもある。
けれど、身体が辛くて辛くてならない状態の竜樹さんにそれがどれほどの抑止になるっていうのだろう。
その抑止のために余計に身体が辛くなるなら?
…言える訳がないじゃないか。
「今週末は会うのをやめよう。少し休みたいねん」
「少しの時間でもいいから会おう」よりも「休みたい」が勝つなら、休むことを優先させるのも悪くはないのかもしれない。
竜樹さんも疲れてるように、私も少し疲れてるみたい。
今の2人は自分のことばかり見て欲しいって思いが強いもの。
それがぶつかり続けて、また疲れる。
竜樹邸からの戻りが遅いというだけで金岡両親から過剰なまでに悪し様に言われるのにも疲れてる。
自分のことだけじゃなくて、竜樹さんのことまで悪し様に言うのだから。
その言葉を甘んじて受け流すことにも、許せなくて歯向かうことにも疲労感は付き纏う。
少なくとも私が竜樹邸に行かない日は、彼らの感情が竜樹さんの方に流れることは少ない。
自分のことだけごちゃごちゃ言われるなら、適当にやりすごせるもの。
どちらからも挟まれた時、逆ギレできなくて不完全燃焼な気分を抱え込んでしまうのが癖になってるらしい。
それが疲れの元凶になってるのは間違いないけれど…
どちらも大事な人だから、どちらも大事にしたいだけのにね。
抱え込むだけ抱え込んで、最後に両親も竜樹さんのことも大嫌いになりそうで怖い。
ここんとこの私は愛し方が足りないのかもしれない。
ついでに愛され方も足りないのかもしれない。
そんなお寒い思考回路の癖に、今週末竜樹さんに会えないことを寂しいと思う自分もいる。
…それを友達に話したら「惚れた弱みですね」って言われたけどさ(-_-;)
ひとりの時間を過ごすことで、もう一度見つめ直せたらいいなって思う。
8年目にしてちょこちょこと綻びが出てきてる部分も見受けられるけれど、その綻びを上手に直したり新たなものに仕立て直したりする方法を見つけるのは、必ずしも疲れたもの同士が塞がった思考回路で考えればいいってもんじゃない。
下手をすると、神戸小旅行のあたりまでずっとひとりの時間を過ごすかもしれない。
寂しいのには違いないけど、共に閉塞した思考回路のままでぶつかり合うことが建設的だとは思わないから。
久しぶりにひとりの週末になるのなら。
自分自身とこれからを見つめ直すのも悪くはない。
私と竜樹さんが2人で歩くための道を迷わず進める糸口になるのなら…
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いつか晴れた気持ちで…
2002年12月1日竜樹さんとくっついてるうちに何時の間にか眠ってしまっていた。
気がついて時計を見てびっくり。
とうの昔に午前様だった。
慌てて着替えて用意をしてると、竜樹さんが送ってくれるという。
今からタクシーを呼ぶよりかは早く帰れるだろうと、ありがたくその申し出を受けた。
車の中でもどことなく空気が柔らかい感じがして、とても居心地がよかった。
ところが何気なく鞄を探って気がついた。
よりにもよって、自宅の鍵を持って出るのを忘れていた。
この時間なら金岡両親は眠ってるだろうけれど、雷が落ちるのさえ恐れなければ鍵は開けてもらえるだろう。
万が一起きてこなくても、どこからか入れるだろう。
雷が落ちることだけを覚悟して、そのまま車は自宅へ向かう。
竜樹さんは少し心配しておられたけれど、多分大丈夫とにへっと笑って車を降りる。
竜樹さんと別れ、玄関を上がりドアの呼び鈴を鳴らしたけれど、誰も起きてくる様子がない。
何度か鳴らしたけれど、もの音一つしない。
…そう言えば。
以前から鍵が開いてることの多かった出窓がひとつあった。
尤も最後に確認したのは数年前だから、さすがに数年間開きっぱなしなんてことはないだろうと思ったけれど。
さすがに開いてなかった。
脚立を使って自室から入ることも考えたけれど、実際脚立を組んでみたら結構な音はするし高さはあるし。
その音で気づいてくれよとも思ったけれど、一向に家の中からは物音ひとつ聞こえない。
…困ってしまった。
朝まで玄関前にいるには今日は妙に冷え込んでる。
こんなことは今までなかったので、油断してた。
竜樹さんが車中で仰ってたように、自宅のスペアキーを竜樹邸に置いといた方がよかったのだろうか?
いずれにしても、今更どうしようもない。
友達にメールを入れたりしながら1時間近く外で過ごした。
暫くして竜樹さんから「ちゃんと家の中に入れたか」と連絡を貰ったので、正直に事情を話した。
時折呼び鈴を鳴らしてたから、そのままめげずに続けてたらそのうち開けて貰えるとは思うよと答えて電話を切ろうとしたら、「迎えに戻る」とのこと。
いくらなんでも自宅までそう遠くないところまで戻ってる人にもう一度こちらに来てもらうのは気が引けた。
けれど、結局竜樹さんはもう一度金岡家まで来てくれた。
「鍵を忘れた上に、何度か呼び鈴を押したけれど鍵を開けてもらえなかったので、今夜は竜樹邸にいさせてもらいます」と郵便受けに書置きを残して、また竜樹邸に引き返す。
ぐっと冷え込んできた上に、長時間の運転は竜樹さんの身体には辛いもの。
ちょっと自分が気をつけてさえいれば、竜樹さんに迷惑をかけなくても済んだだろうし、翌日家に帰ってからのことを思って頭を痛めることもなかっただろう。
私が家でどうこう言われるのは私のことだからいいとして、竜樹さんに辛い思いをさせてしまったことがどうにも悔やまれてならない。
竜樹邸に入ってから、お風呂を沸かして竜樹さんに入ってもらってる間に2階にあがってお布団を敷いておく。
お風呂から上がって汗が引いたらすぐに休んでもらえるようにして、またリビングに降りて竜樹さんを待つ間テレビを見ていた。
竜樹さんが上がった後、お風呂に入る。
湯船の中に浸かりながら、自分の不手際を恨んだ。
今後どうしたらもう少しマシに行動できるものか考えながら入っていると、思ってたよりも長くお風呂場にいてしまったらしい。
「先に上がってる」という竜樹さんの声を聞いて、慌ててあがる。
ちょっとしんどそうな竜樹さんは、私のぽかに少々呆れながらもそれを責めることはなかった。
竜樹さんが差し出す腕を抱き締めるようにして、私も休んだ。
翌朝目が覚めると、やけに身体が重かった。
コートを着てたとはいえ、中はそう厚着してなかったので外にいてる間に風邪を悪化させたらしい。
竜樹さんにしんどい思いをさせた挙句に、風邪までうつしたらどうしようもない。
早く起きてできるだけ早く竜樹邸を後にした方がよさそう。
そう思って起き上がると、隣にいたはずの竜樹さんはいない。
階下に降りると、餅焼き器でテーブルロールを焼いておられた。
「…起きてはったんですか?」
「うん。目が覚めるのは早いからなぁ」
昨日大量に作ったポテトツナサラダとミネストローネとテーブルロール。
フライパンの中には目玉焼き。
立派な朝ごはんに驚きながら、竜樹さんの作業を手伝い朝ごはん。
朝食をとる竜樹さんは笑顔で元気そう。
昨日無理をさせてしまった影響は小さくて済んだのかなと安心したけれど。
時間が経つにつれ、昨日よりも冷えがきつくなってくる。
それが徐々に堪えてきたみたいで、竜樹さんの身体にはまた重い痛みが付き纏う。
薬を飲んで横になられても、まだ辛そうにしておられる。
本当は元気になるまで竜樹邸にいて様子を見たいけれど、今日は帰らないとならない。
必ずしもここにいれば、竜樹さんにとってすべてによい作用を齎すとは限らない。
彼自身もここに留まりつづけてますます私が家に帰りづらくなることを望みもしないだろう。
竜樹さんが横になってる間に、部屋の片づけをして。
それでもまだ時間はあるので、次の薬を飲む前に簡単に食べられるよう雑炊を作った。
雑炊も作り終えて、まだ竜樹邸でできることを探すけれど。
いい加減、自宅に帰った方がよさそうな時間。
一晩竜樹邸で過ごし、ここまで一度も連絡も入れないまま竜樹邸に居座りつづけるわけには行かない。
竜樹さんにコンロの上の鍋に雑炊があることを告げて、家を出る。
家に帰ると、ぼろかす怒られたのは言うまでもない。
黙って聞いていたら聞き捨てならないことを何度も言われ、「一体、いつまでこんなにがちがちに縛られんなんねやろ」と正直思ったけれど、この家にいてる間は金岡両親の言うことは聞かなきゃならないらしい。
金岡両親のことも考慮にあって未だこの家を出ずにいるけれど、どうもあの方たちは私がそれを視野に入れてるなんてことは夢にも思ってないらしい。
聞き捨てならないことを1グロス近く食らって、「家を出たら見てろよ?」って思いながらも、この家にいてる間だけはあまり帰宅が遅くならないよう気をつけておこうと思った。
大説教大会が終わり、へとへとになりながら自室に戻った。
…竜樹さん、ちゃんとごはん食べれたかな?
「雑炊食べれた?
昨日、今日とありがとうね♪」
そうメールを飛ばして、横になる。
この家にいてる間はこの家のルールには従わなければならない。
親にとってはいつまでも子供は子供のままなんだろう。
それも判ってはいるけれど。
…いい加減、やめてくれへんかなぁ
悪いのは自分だけど、手足を縮めてまで留まらなきゃならない理由なんてあるんだろうか?
この家を出ることでしか、過干渉を振りほどくことは出来ない。
だけど、この家を出たらもうここに戻るつもりはない。
ここを出るまでにしなきゃならないことは山のようにある。
一体どれだけ片付けられるか判らないけれど、取り敢えず片付けられるものはすべて片付けてから出て行こう。
光を遮る厚い雲を越えていけば、いつか青空のような気持ちに出会えるだろうか?
そこへ辿り着けたら、いつかわだかまりは少しでも小さくできるだろうか?
わだかまりなく、いつか晴れた気持ちで大切に思う人達と向き合えるように。
もう少しだけ、踏ん張ってみなきゃならない気がする。
気がついて時計を見てびっくり。
とうの昔に午前様だった。
慌てて着替えて用意をしてると、竜樹さんが送ってくれるという。
今からタクシーを呼ぶよりかは早く帰れるだろうと、ありがたくその申し出を受けた。
車の中でもどことなく空気が柔らかい感じがして、とても居心地がよかった。
ところが何気なく鞄を探って気がついた。
よりにもよって、自宅の鍵を持って出るのを忘れていた。
この時間なら金岡両親は眠ってるだろうけれど、雷が落ちるのさえ恐れなければ鍵は開けてもらえるだろう。
万が一起きてこなくても、どこからか入れるだろう。
雷が落ちることだけを覚悟して、そのまま車は自宅へ向かう。
竜樹さんは少し心配しておられたけれど、多分大丈夫とにへっと笑って車を降りる。
竜樹さんと別れ、玄関を上がりドアの呼び鈴を鳴らしたけれど、誰も起きてくる様子がない。
何度か鳴らしたけれど、もの音一つしない。
…そう言えば。
以前から鍵が開いてることの多かった出窓がひとつあった。
尤も最後に確認したのは数年前だから、さすがに数年間開きっぱなしなんてことはないだろうと思ったけれど。
さすがに開いてなかった。
脚立を使って自室から入ることも考えたけれど、実際脚立を組んでみたら結構な音はするし高さはあるし。
その音で気づいてくれよとも思ったけれど、一向に家の中からは物音ひとつ聞こえない。
…困ってしまった。
朝まで玄関前にいるには今日は妙に冷え込んでる。
こんなことは今までなかったので、油断してた。
竜樹さんが車中で仰ってたように、自宅のスペアキーを竜樹邸に置いといた方がよかったのだろうか?
いずれにしても、今更どうしようもない。
友達にメールを入れたりしながら1時間近く外で過ごした。
暫くして竜樹さんから「ちゃんと家の中に入れたか」と連絡を貰ったので、正直に事情を話した。
時折呼び鈴を鳴らしてたから、そのままめげずに続けてたらそのうち開けて貰えるとは思うよと答えて電話を切ろうとしたら、「迎えに戻る」とのこと。
いくらなんでも自宅までそう遠くないところまで戻ってる人にもう一度こちらに来てもらうのは気が引けた。
けれど、結局竜樹さんはもう一度金岡家まで来てくれた。
「鍵を忘れた上に、何度か呼び鈴を押したけれど鍵を開けてもらえなかったので、今夜は竜樹邸にいさせてもらいます」と郵便受けに書置きを残して、また竜樹邸に引き返す。
ぐっと冷え込んできた上に、長時間の運転は竜樹さんの身体には辛いもの。
ちょっと自分が気をつけてさえいれば、竜樹さんに迷惑をかけなくても済んだだろうし、翌日家に帰ってからのことを思って頭を痛めることもなかっただろう。
私が家でどうこう言われるのは私のことだからいいとして、竜樹さんに辛い思いをさせてしまったことがどうにも悔やまれてならない。
竜樹邸に入ってから、お風呂を沸かして竜樹さんに入ってもらってる間に2階にあがってお布団を敷いておく。
お風呂から上がって汗が引いたらすぐに休んでもらえるようにして、またリビングに降りて竜樹さんを待つ間テレビを見ていた。
竜樹さんが上がった後、お風呂に入る。
湯船の中に浸かりながら、自分の不手際を恨んだ。
今後どうしたらもう少しマシに行動できるものか考えながら入っていると、思ってたよりも長くお風呂場にいてしまったらしい。
「先に上がってる」という竜樹さんの声を聞いて、慌ててあがる。
ちょっとしんどそうな竜樹さんは、私のぽかに少々呆れながらもそれを責めることはなかった。
竜樹さんが差し出す腕を抱き締めるようにして、私も休んだ。
翌朝目が覚めると、やけに身体が重かった。
コートを着てたとはいえ、中はそう厚着してなかったので外にいてる間に風邪を悪化させたらしい。
竜樹さんにしんどい思いをさせた挙句に、風邪までうつしたらどうしようもない。
早く起きてできるだけ早く竜樹邸を後にした方がよさそう。
そう思って起き上がると、隣にいたはずの竜樹さんはいない。
階下に降りると、餅焼き器でテーブルロールを焼いておられた。
「…起きてはったんですか?」
「うん。目が覚めるのは早いからなぁ」
昨日大量に作ったポテトツナサラダとミネストローネとテーブルロール。
フライパンの中には目玉焼き。
立派な朝ごはんに驚きながら、竜樹さんの作業を手伝い朝ごはん。
朝食をとる竜樹さんは笑顔で元気そう。
昨日無理をさせてしまった影響は小さくて済んだのかなと安心したけれど。
時間が経つにつれ、昨日よりも冷えがきつくなってくる。
それが徐々に堪えてきたみたいで、竜樹さんの身体にはまた重い痛みが付き纏う。
薬を飲んで横になられても、まだ辛そうにしておられる。
本当は元気になるまで竜樹邸にいて様子を見たいけれど、今日は帰らないとならない。
必ずしもここにいれば、竜樹さんにとってすべてによい作用を齎すとは限らない。
彼自身もここに留まりつづけてますます私が家に帰りづらくなることを望みもしないだろう。
竜樹さんが横になってる間に、部屋の片づけをして。
それでもまだ時間はあるので、次の薬を飲む前に簡単に食べられるよう雑炊を作った。
雑炊も作り終えて、まだ竜樹邸でできることを探すけれど。
いい加減、自宅に帰った方がよさそうな時間。
一晩竜樹邸で過ごし、ここまで一度も連絡も入れないまま竜樹邸に居座りつづけるわけには行かない。
竜樹さんにコンロの上の鍋に雑炊があることを告げて、家を出る。
家に帰ると、ぼろかす怒られたのは言うまでもない。
黙って聞いていたら聞き捨てならないことを何度も言われ、「一体、いつまでこんなにがちがちに縛られんなんねやろ」と正直思ったけれど、この家にいてる間は金岡両親の言うことは聞かなきゃならないらしい。
金岡両親のことも考慮にあって未だこの家を出ずにいるけれど、どうもあの方たちは私がそれを視野に入れてるなんてことは夢にも思ってないらしい。
聞き捨てならないことを1グロス近く食らって、「家を出たら見てろよ?」って思いながらも、この家にいてる間だけはあまり帰宅が遅くならないよう気をつけておこうと思った。
大説教大会が終わり、へとへとになりながら自室に戻った。
…竜樹さん、ちゃんとごはん食べれたかな?
「雑炊食べれた?
昨日、今日とありがとうね♪」
そうメールを飛ばして、横になる。
この家にいてる間はこの家のルールには従わなければならない。
親にとってはいつまでも子供は子供のままなんだろう。
それも判ってはいるけれど。
…いい加減、やめてくれへんかなぁ
悪いのは自分だけど、手足を縮めてまで留まらなきゃならない理由なんてあるんだろうか?
この家を出ることでしか、過干渉を振りほどくことは出来ない。
だけど、この家を出たらもうここに戻るつもりはない。
ここを出るまでにしなきゃならないことは山のようにある。
一体どれだけ片付けられるか判らないけれど、取り敢えず片付けられるものはすべて片付けてから出て行こう。
光を遮る厚い雲を越えていけば、いつか青空のような気持ちに出会えるだろうか?
そこへ辿り着けたら、いつかわだかまりは少しでも小さくできるだろうか?
わだかまりなく、いつか晴れた気持ちで大切に思う人達と向き合えるように。
もう少しだけ、踏ん張ってみなきゃならない気がする。
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ふたりで作り上げる時間
2002年11月30日今日もまた朝から寒い。
以前に比べたら格段に元気になられたとはいえ、寒い日が長く続くとかつてのように竜樹さんの身体に痛みが走るかもしれない。
冬だから寒いのは当たり前だとはいえ、あまり寒い日が続かないに越したことはない。
暖かい布団からそっと抜け出し、出かける用意をする。
出かける前に竜樹さんに電話をするのはお約束なんだけれど、寒いからかしんどいからかなかなか出られない。
さりとてあまり遅く家を出るのも具合が悪いので、メールをひとつ飛ばして家を出た。
竜樹邸に向かう途中でふとお歳暮の手配をし忘れていたことに気づいて寄り道。
竜樹邸からは遠い場所にあるので竜樹邸到着がかなり遅れそう。
おまけに百貨店につくと長蛇の列。
ここにいるのはみんなただのうっかりさんなのかもしれないと思うと、世の中にはうっかりさんが多いのかもしれないと一瞬安心したけれど。
毎度のことながら、ぎりぎりにならないと動けないのは直さなきゃならないなって思う。
幸い思ったよりも列が捌けるのが早かった上に、交通費まで貰ってしまった。
そんなささやかなことにほくほくして、今度こそ竜樹邸を目指す。
バスの乗り場に来てみてがっくり。
竜樹邸の近くに行くバスは出たところだった。
竜樹邸到着予定時間を連絡すると、迎えに来てくれるとのこと。
竜樹さんが来るのを待つ間に買い忘れた食材を買い足しに行く。
大急ぎで食材をかごにぼこぼこと投げ込み、精算を済ませて竜樹さんと約束した場所で待っている。
暫くしてやってきた竜樹さんと一緒に竜樹邸を目指す。
ちょっとした渋滞とけったいな運転をするドライバーに遭遇したのに疲れてしまった二人。
コーヒーを入れて、暫くぼけっと休む。
竜樹さんが薬を飲んで横になってる間に、マジックステーキの付け合せを作る。
メインは竜樹さんが担当されるので、あくまで付け合せ(笑)
鍋でお湯を沸かしてコンソメキューブを入れ、ベーコンとミックスベジタブル、ホールトマトの缶詰を投入。
ホールトマトを木杓文字で潰しながら暖めつづけてミネストローネが完成。
皮をむいて幅1cmほどにスライスしたジャガイモを茹でてザルに上げた後木杓文字でつぶし、そこに油を切ったツナ缶と少しばかりのドレッシングをあわせ、マヨネーズ・塩・こしょうで味を調えてツナポテトサラダが完成。
あとは竜樹さんが起きるまで、竜樹さんの傍で新聞を読んだり音声の殆どない状態のテレビを見たりしていると、ミネストローネの匂いで目を覚まされた。
「…いい匂いしてるやん?寝てる間に作ったん?」
「そうですよ、ステーキには手はつけてませんから、ね♪」
ぼんにゃりした竜樹さんは洗面所で顔を洗い、ようやく本格的にお目覚め。
いよいよ、「マジックステーキ」の登場。
竜樹さん曰く、肉を焼く時に細かく刻んだラードを乗せて焼くと、安い肉でも柔らかな状態で食べられるとのこと。
「まさか、そんなー」と思ってる私を他所にステーキを焼く準備を始めている。
「竜樹さんがメインなら私は参加しなくてもよいのかな」とたかを括っていると、「ちゃんと見とけよー」と竜樹さん。
…どうやら段取りを覚えさせるという目的も存在してたらしい
竜樹さんが一生懸命説明しながらフライパンを眺めている。
竜樹さんの手つきと説明を合わせながら、覚える作業に一生懸命の私。
説明しながらどこか楽しげにマジックステーキを焼いておられる竜樹さん。
どことなく師弟関係にも似た感じの雰囲気の中で、マジックステーキが焼きあがる。
ステーキソースは私の担当。
ステーキを焼いた後のフライパンにケチャップとバルサミコを流し込んで煮詰めておしまい。
ちょっと酸味のあるソースなので、竜樹さんの口に合うかどうかはちょっと疑問。
どきどきしながらマジックステーキの横にソースを添え、サラダとスープと一緒に食卓へ運ぶ。
二人揃ったところで、「いただきます♪」
いつも買う肉の半値くらいの肉だったにもかかわらず、竜樹マジックは見事功を奏している。
「サラダもスープも美味い♪(*^-^*)
このソース、すごいあってる♪どないして作ったん?」
嬉々として聞いてこられる竜樹さんに作り方を説明しながら、楽しい夕飯の時間は流れていく。
2人ともキレイに食べ尽くして、後片付け。
後片付けが済むと、待ってましたとばかりに手を広げる竜樹さん。
抱っこ抱っこな状態から、暖かくて甘い時間を分け合う。
ふたりで作り上げる時間は暖かくて優しい。
一緒にいることで心が凍るように悲しい時だってあることは確かだけれど。
ふたりでいれば、暖かく優しい場所に出会えることも確か。
いろんなことがあっても、暖かく優しい時間を重ねていけたらって思う。
以前に比べたら格段に元気になられたとはいえ、寒い日が長く続くとかつてのように竜樹さんの身体に痛みが走るかもしれない。
冬だから寒いのは当たり前だとはいえ、あまり寒い日が続かないに越したことはない。
暖かい布団からそっと抜け出し、出かける用意をする。
出かける前に竜樹さんに電話をするのはお約束なんだけれど、寒いからかしんどいからかなかなか出られない。
さりとてあまり遅く家を出るのも具合が悪いので、メールをひとつ飛ばして家を出た。
竜樹邸に向かう途中でふとお歳暮の手配をし忘れていたことに気づいて寄り道。
竜樹邸からは遠い場所にあるので竜樹邸到着がかなり遅れそう。
おまけに百貨店につくと長蛇の列。
ここにいるのはみんなただのうっかりさんなのかもしれないと思うと、世の中にはうっかりさんが多いのかもしれないと一瞬安心したけれど。
毎度のことながら、ぎりぎりにならないと動けないのは直さなきゃならないなって思う。
幸い思ったよりも列が捌けるのが早かった上に、交通費まで貰ってしまった。
そんなささやかなことにほくほくして、今度こそ竜樹邸を目指す。
バスの乗り場に来てみてがっくり。
竜樹邸の近くに行くバスは出たところだった。
竜樹邸到着予定時間を連絡すると、迎えに来てくれるとのこと。
竜樹さんが来るのを待つ間に買い忘れた食材を買い足しに行く。
大急ぎで食材をかごにぼこぼこと投げ込み、精算を済ませて竜樹さんと約束した場所で待っている。
暫くしてやってきた竜樹さんと一緒に竜樹邸を目指す。
ちょっとした渋滞とけったいな運転をするドライバーに遭遇したのに疲れてしまった二人。
コーヒーを入れて、暫くぼけっと休む。
竜樹さんが薬を飲んで横になってる間に、マジックステーキの付け合せを作る。
メインは竜樹さんが担当されるので、あくまで付け合せ(笑)
鍋でお湯を沸かしてコンソメキューブを入れ、ベーコンとミックスベジタブル、ホールトマトの缶詰を投入。
ホールトマトを木杓文字で潰しながら暖めつづけてミネストローネが完成。
皮をむいて幅1cmほどにスライスしたジャガイモを茹でてザルに上げた後木杓文字でつぶし、そこに油を切ったツナ缶と少しばかりのドレッシングをあわせ、マヨネーズ・塩・こしょうで味を調えてツナポテトサラダが完成。
あとは竜樹さんが起きるまで、竜樹さんの傍で新聞を読んだり音声の殆どない状態のテレビを見たりしていると、ミネストローネの匂いで目を覚まされた。
「…いい匂いしてるやん?寝てる間に作ったん?」
「そうですよ、ステーキには手はつけてませんから、ね♪」
ぼんにゃりした竜樹さんは洗面所で顔を洗い、ようやく本格的にお目覚め。
いよいよ、「マジックステーキ」の登場。
竜樹さん曰く、肉を焼く時に細かく刻んだラードを乗せて焼くと、安い肉でも柔らかな状態で食べられるとのこと。
「まさか、そんなー」と思ってる私を他所にステーキを焼く準備を始めている。
「竜樹さんがメインなら私は参加しなくてもよいのかな」とたかを括っていると、「ちゃんと見とけよー」と竜樹さん。
…どうやら段取りを覚えさせるという目的も存在してたらしい
竜樹さんが一生懸命説明しながらフライパンを眺めている。
竜樹さんの手つきと説明を合わせながら、覚える作業に一生懸命の私。
説明しながらどこか楽しげにマジックステーキを焼いておられる竜樹さん。
どことなく師弟関係にも似た感じの雰囲気の中で、マジックステーキが焼きあがる。
ステーキソースは私の担当。
ステーキを焼いた後のフライパンにケチャップとバルサミコを流し込んで煮詰めておしまい。
ちょっと酸味のあるソースなので、竜樹さんの口に合うかどうかはちょっと疑問。
どきどきしながらマジックステーキの横にソースを添え、サラダとスープと一緒に食卓へ運ぶ。
二人揃ったところで、「いただきます♪」
いつも買う肉の半値くらいの肉だったにもかかわらず、竜樹マジックは見事功を奏している。
「サラダもスープも美味い♪(*^-^*)
このソース、すごいあってる♪どないして作ったん?」
嬉々として聞いてこられる竜樹さんに作り方を説明しながら、楽しい夕飯の時間は流れていく。
2人ともキレイに食べ尽くして、後片付け。
後片付けが済むと、待ってましたとばかりに手を広げる竜樹さん。
抱っこ抱っこな状態から、暖かくて甘い時間を分け合う。
ふたりで作り上げる時間は暖かくて優しい。
一緒にいることで心が凍るように悲しい時だってあることは確かだけれど。
ふたりでいれば、暖かく優しい場所に出会えることも確か。
いろんなことがあっても、暖かく優しい時間を重ねていけたらって思う。
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暖かな何かは…
2002年11月29日祖母の葬儀の件や竜樹さんとの一連のことがひと段落して気が緩んだんだろうか。
一旦は治まりつつあった風邪が悪化してきた気がする。
胃の痛みに加え、頭も痛ければ鼻水も出る。
一難去ってまた一難。
ひとつ気を吐いて、身体を起こす。
それでも、鬱屈とした思いとは別れを告げられたので、気持ちは幾分楽になった。
取り敢えず昨日の貯金で頑張ろう。
そう思いながら、社屋に入る。
ところが昨日の貯金が底をつきかけるほどに、人外魔境はアクシデントの見本市状態。
おまけに突発の仕事が重なってくる。
体調が悪くなくても鬱モード発祥させそうなのに、体調がすこぶる悪いので午前中に早くも鬱モードにとっ捕まってしまった(-_-;)
昼休みはボスティーを煎れた後、ただひたすらのびていた。
昼から、親会社の事務員さんが辞める挨拶に来られた。
別室でボスや他の課員さんが混じっていろいろ話をしておられた。
事務員さんが帰られた後、ボスが感心したようにその人の話をする。
…どうも、これからしたいことのために学校に通うべく退職するとのこと
学校に戻るとか留学するとかいうのは退職する時のいい理由だと誰かが言ってたので、それを本当に鵜呑みにしていいものかどうかは判らないけれど。
…私、こんなところで何をやってるんだろうって思った。
この仕事を後何年続けたって身にはならないことは、入社した時から判ってたこと。
竜樹さんが元気になるまでの繋ぎとしてしか考えてなかったし、時間が自由に使えることだけを最優先に考えた結果のことだったんだけど。
ここであと何年不毛な生活繰り返すんだろうって思うと、気分が滅入ってくる。
それを変えるのは自分しか出来ないけれど、いろんなことを考えれば考えるほど動くことを躊躇う自分もいる。
それが自己嫌悪の無限ループの元凶になりそうな感じ。
終始鬱モードを抱えたまま人外魔境のどたばたに振り回されてぐったりしながら社屋を出る。
会社を出ると力が戻るはずが、帰る時まで何だかよろよろ。
何とか駅まで辿り着いて、携帯からメールを飛ばす。
「こんばんは。
疲労感だけ引き連れて帰宅中です(+_+)
明日は何が食べたいですか?」
竜樹さんとの食事のことを考えると少しだけ元気が戻りそうな感じがした。
いつもはあまり返事は待たないようにしてるけれど、珍しく竜樹さんの返事を待つ自分がいる。
ほどなく携帯にメールが飛び込む。
「ステーキがあるじゃない(’v’)/ (^^)/。俺にまかせなさいって(^.^)
竜樹マジックをご賞味いただきましょう!
週末だし、スターバックスなんかでゆっくりしたら(’’)?
なんとかバーガーでも、いいやん!
ぷーしゃんが寂しいって、さッm(-_-)m。元気だしなよって!」
ぷーしゃんというのは、竜樹邸に鎮座するタオル地の大きなプーさんのぬいぐるみのこと。
竜樹さんがゲーセンで獲得してきたもので、私がいたく気に入ってる子。
昨日の今日で泣きつきたくはなかったけれど、竜樹さんの言葉が温かかった。
「ありがとう♪
もう家が近いので、どこかでいいお茶を買うか、本屋さんに行ってみます。
ステーキ、食べずに待っててくれたのね?
ありがとう♪(*^_^*)
明日ぷーしゃんに会えるのを楽しみにしていますヾ(*^_^*)」
そう打って寒い夜空にそっと飛ばした。
結局寄り道はあまりせず、パソコンの本と勉強の本を買って自宅に戻る。
家に戻ってから友達から大変なメールが届き、暫く電話で友達と話した。
その友達の電話を切ってからも、また別の友達から電話が入り、竜樹さんからも電話が入り。
気がつくと、明石屋さんまになるんじゃなかろうかというほど、よく喋った。
気がつくと、鬱モードも何時の間にか飛んでいた。
今やってることがどれほど身にならなかったとしても。
身になる何かを見つけられるまでは、自分ができるところまでやるしかない。
鬱モードはいつまでも続かない。
暖かな何かはいつでもすぐ傍にあるのだから。
そう言い聞かせながら、明日の夕飯を楽しみにしながら今日を終えよう。
一旦は治まりつつあった風邪が悪化してきた気がする。
胃の痛みに加え、頭も痛ければ鼻水も出る。
一難去ってまた一難。
ひとつ気を吐いて、身体を起こす。
それでも、鬱屈とした思いとは別れを告げられたので、気持ちは幾分楽になった。
取り敢えず昨日の貯金で頑張ろう。
そう思いながら、社屋に入る。
ところが昨日の貯金が底をつきかけるほどに、人外魔境はアクシデントの見本市状態。
おまけに突発の仕事が重なってくる。
体調が悪くなくても鬱モード発祥させそうなのに、体調がすこぶる悪いので午前中に早くも鬱モードにとっ捕まってしまった(-_-;)
昼休みはボスティーを煎れた後、ただひたすらのびていた。
昼から、親会社の事務員さんが辞める挨拶に来られた。
別室でボスや他の課員さんが混じっていろいろ話をしておられた。
事務員さんが帰られた後、ボスが感心したようにその人の話をする。
…どうも、これからしたいことのために学校に通うべく退職するとのこと
学校に戻るとか留学するとかいうのは退職する時のいい理由だと誰かが言ってたので、それを本当に鵜呑みにしていいものかどうかは判らないけれど。
…私、こんなところで何をやってるんだろうって思った。
この仕事を後何年続けたって身にはならないことは、入社した時から判ってたこと。
竜樹さんが元気になるまでの繋ぎとしてしか考えてなかったし、時間が自由に使えることだけを最優先に考えた結果のことだったんだけど。
ここであと何年不毛な生活繰り返すんだろうって思うと、気分が滅入ってくる。
それを変えるのは自分しか出来ないけれど、いろんなことを考えれば考えるほど動くことを躊躇う自分もいる。
それが自己嫌悪の無限ループの元凶になりそうな感じ。
終始鬱モードを抱えたまま人外魔境のどたばたに振り回されてぐったりしながら社屋を出る。
会社を出ると力が戻るはずが、帰る時まで何だかよろよろ。
何とか駅まで辿り着いて、携帯からメールを飛ばす。
「こんばんは。
疲労感だけ引き連れて帰宅中です(+_+)
明日は何が食べたいですか?」
竜樹さんとの食事のことを考えると少しだけ元気が戻りそうな感じがした。
いつもはあまり返事は待たないようにしてるけれど、珍しく竜樹さんの返事を待つ自分がいる。
ほどなく携帯にメールが飛び込む。
「ステーキがあるじゃない(’v’)/ (^^)/。俺にまかせなさいって(^.^)
竜樹マジックをご賞味いただきましょう!
週末だし、スターバックスなんかでゆっくりしたら(’’)?
なんとかバーガーでも、いいやん!
ぷーしゃんが寂しいって、さッm(-_-)m。元気だしなよって!」
ぷーしゃんというのは、竜樹邸に鎮座するタオル地の大きなプーさんのぬいぐるみのこと。
竜樹さんがゲーセンで獲得してきたもので、私がいたく気に入ってる子。
昨日の今日で泣きつきたくはなかったけれど、竜樹さんの言葉が温かかった。
「ありがとう♪
もう家が近いので、どこかでいいお茶を買うか、本屋さんに行ってみます。
ステーキ、食べずに待っててくれたのね?
ありがとう♪(*^_^*)
明日ぷーしゃんに会えるのを楽しみにしていますヾ(*^_^*)」
そう打って寒い夜空にそっと飛ばした。
結局寄り道はあまりせず、パソコンの本と勉強の本を買って自宅に戻る。
家に戻ってから友達から大変なメールが届き、暫く電話で友達と話した。
その友達の電話を切ってからも、また別の友達から電話が入り、竜樹さんからも電話が入り。
気がつくと、明石屋さんまになるんじゃなかろうかというほど、よく喋った。
気がつくと、鬱モードも何時の間にか飛んでいた。
今やってることがどれほど身にならなかったとしても。
身になる何かを見つけられるまでは、自分ができるところまでやるしかない。
鬱モードはいつまでも続かない。
暖かな何かはいつでもすぐ傍にあるのだから。
そう言い聞かせながら、明日の夕飯を楽しみにしながら今日を終えよう。
まだ大丈夫。
2002年11月28日今朝も寒い。
おまけに今週は洗濯当番。
雨の日に洗濯の仕事をするのも嫌だけれど、寒い日に洗濯の作業をするのも何だかなぁと思う。
身体が縮こまるように心も縮こまっていきそうだけど、無理矢理身体を起こして家を出る。
取り敢えずごきげんような結果にはならなかったけれど、さりとて何かが改善された兆しもない。
強いて言うなら、拒絶の空気よりも親和の空気の方が強かったかなとは思ったけれど、本当にこれで解決したとも思えない部分は間違いなくある。
…それでも、すぐに結論を出す必要もないかもしれない
心の中にある根幹の部分が僅かでも死んでないなら、まだ維持していくことが不可能な訳ではない。
それはあくまで私の中においては、だけど。
社屋に入り、仕事と洗濯機の相手とを並行する作業に入る。
案の定、洗濯機のあるフロアは寒い。
風除けを下ろしてもいいのだけど小さな青空が見えないのは辛いから、風除けを下ろすことなく寒風吹きすさぶ中洗濯の作業を続ける。
幸い、通常業務の方がそれほど立てこまなかったので、幾分いつもよりは楽な立ち上がり。
運がよければ、仕事が立て込みそうな日に巡ってくるだろう仕事の下準備にも取り掛かれそう。
ここで頑張っても何の意味もないと知りながらも、黙々と仕事を続ける。
多少むっとくることはあっても割と穏やかなまま昼休みを迎え、ボスティー、ボスショーと移行してまた昼からの作業に入る。
昼からは立て込むような立て込まないような奇妙な立ち上がりで進行。
終業1時間前に大騒ぎしないで済むように、戦闘モード全開で臨む。
ちょうど魔の1時間前に差し掛かった頃、鞄が小さく揺れた。
そっと覗き込むと、メールがひとつ。
「迎えに行くわ、最寄の駅まで」
竜樹さんからだった。
昨日会ったのに一体何の用なんだろう?と首を捻ってしまったけれど、わざわざ出向いてくれるのに「来なくていいです」なんて言う必要はないから。
こそっと「わかりました」とだけ打ってそっと飛ばし、また戦闘モードに戻す。
終業30分前に状況が一変して、定時からは少し遅れて事務所を出る羽目になってしまった。
ひとまず予定の時間より少し遅れそうですとだけ連絡すると、竜樹さんも渋滞にかかかってしまった模様。
「もし店が近くにあるなら、卵を買ってきて」と言われたので、駅からそれほど遠くないところになる食料品店で卵を買う。
割らないように気をつけながら、自転車に乗って待ち合わせの場所に向かう。
…結局、もっと遅くに事務所を出てもいいくらいの時間に竜樹さんは待ち合わせ場所に来られた。
「ごめんなぁ、待たせて」
「いや、仕事がぼかんとやってきたんで、こっちも出るの遅れたし…」
昨日にもまして穏やかな笑顔の竜樹さんにまた首を捻る。
…一体、どしたのだろう?
運転に集中したい竜樹さんは運転中はあまり口を利かないのだけど、今日は妙におしゃべり。
これまたどうしたことだろうかと思いながら、受け答えしてるうちに竜樹邸に到着。
竜樹邸に入ると、いい匂いがする。
「今日はごちそうをしようと思って♪(*^-^*)」
見ると、ガスレンジにはフライパンと鍋がひとつ。
フライパンの中にはイカ焼き、鍋の中には湯豆腐。
イカ焼きと湯豆腐を温めなおしながら、料理の説明をしてくれる。
「これだけやないねんで♪(*^▽^*)」
温まったイカ焼きを皿に移して差し出してくれた後、今度は別の鍋を火にかける。
すき焼きだった。
リビングでもこもことイカ焼きをほうばっていると、机の上に湯豆腐一式、すき焼き一式。
もうあとは食べるだけの状態にして運んで来てくれた。
竜樹さんは何もしない人ではないけれど、ここまでいくとサービス過剰な気がする。
「……あの、どうしはったんですか?」
嫌味でもなんでもなく、それがシンプルな疑問だった。
「…いや、結構無理言ったのに頑張ってくれたから、申し訳ないなぁって思って。
そんなんええから、早く食べぇや」
一連のことを言い過ぎたとは言わないまでもそれに対してやれるだけのことをやったことは認めてもらえたらしい。
冷めないうちに湯豆腐とすき焼きを食べ始める。
湯豆腐は昆布のだしがよく利いてて、シンプルながらも美味しい。
七味入のポン酢も相性がよく、いつまでも食べつづけたいって思うほど。
すき焼きも多からず少なからず、甘すぎず辛すぎず。
一生懸命頑張ったんだなぁっていう努力の跡が見えすぎるくらいに見えている。
それでも竜樹さんはまだキッチンでがさがさしていらっしゃる。
いつもよりはうんとゆっくり食事をして、後片付けをしようと台所に移動したら、今度は小さな箱からいくつもプラスチックの入れ物を取り出す。
「霄ぁ、どれ食べる?」
小さなテーブルの上にはコーヒーゼリーとグレープフルーツゼリー、プリンが並んでいた。
「どれを食べてもいいよ♪(*^-^*)」と仰るので、竜樹さんの好きなプリンを残してグレープフルーツゼリーを貰った。
ケーキ屋さんのゼリーみたいで、とても美味しかった。
リビングに戻ってゆっくりしてると、甘えたモードの竜樹さん。
竜樹さん的に気まずい時に甘えたモードに移行されるのは、暗に「ごめんなさい」な気分の時。
…それでもちゃんと「ごめんなさい言えよーヽ(`⌒´)ノ 」と突っ込まないのは甘いのか?
かわいそうなくらいよく働き、甘えたモードで寄ってくる竜樹さんを無碍に出来ないのは当たり前のこと。
そのままぎゅっと抱き締めた。
暖かな時間と暖かな食事に絆された上に、お見送り付。
小さな燻りよりも暖かさが勝った状態のまま家に帰れたのは嬉しい限り。
気がついたら、オール敬語で話していたのが元通りの喋りに戻っていた。
滅多なことがなければ私は態度は硬化させないけれど、態度を硬化させたら徹底的に相手のことを視界にも意識にも入れないようにするから。
私の態度の硬化が少なからず、竜樹さんに何か思わせてしまったのだろう。
…食べ物と心づくしで誤魔化されたかな?
誤魔化されちゃならないことも間違いなくあるのだけれど。
逆に竜樹さんの心づくしで固まった心が柔らかくなるなら、まだ大丈夫。
諍うことがあっても、それをどうにか改善したいと思ってるうちは。
多分、まだ大丈夫。
おまけに今週は洗濯当番。
雨の日に洗濯の仕事をするのも嫌だけれど、寒い日に洗濯の作業をするのも何だかなぁと思う。
身体が縮こまるように心も縮こまっていきそうだけど、無理矢理身体を起こして家を出る。
取り敢えずごきげんような結果にはならなかったけれど、さりとて何かが改善された兆しもない。
強いて言うなら、拒絶の空気よりも親和の空気の方が強かったかなとは思ったけれど、本当にこれで解決したとも思えない部分は間違いなくある。
…それでも、すぐに結論を出す必要もないかもしれない
心の中にある根幹の部分が僅かでも死んでないなら、まだ維持していくことが不可能な訳ではない。
それはあくまで私の中においては、だけど。
社屋に入り、仕事と洗濯機の相手とを並行する作業に入る。
案の定、洗濯機のあるフロアは寒い。
風除けを下ろしてもいいのだけど小さな青空が見えないのは辛いから、風除けを下ろすことなく寒風吹きすさぶ中洗濯の作業を続ける。
幸い、通常業務の方がそれほど立てこまなかったので、幾分いつもよりは楽な立ち上がり。
運がよければ、仕事が立て込みそうな日に巡ってくるだろう仕事の下準備にも取り掛かれそう。
ここで頑張っても何の意味もないと知りながらも、黙々と仕事を続ける。
多少むっとくることはあっても割と穏やかなまま昼休みを迎え、ボスティー、ボスショーと移行してまた昼からの作業に入る。
昼からは立て込むような立て込まないような奇妙な立ち上がりで進行。
終業1時間前に大騒ぎしないで済むように、戦闘モード全開で臨む。
ちょうど魔の1時間前に差し掛かった頃、鞄が小さく揺れた。
そっと覗き込むと、メールがひとつ。
「迎えに行くわ、最寄の駅まで」
竜樹さんからだった。
昨日会ったのに一体何の用なんだろう?と首を捻ってしまったけれど、わざわざ出向いてくれるのに「来なくていいです」なんて言う必要はないから。
こそっと「わかりました」とだけ打ってそっと飛ばし、また戦闘モードに戻す。
終業30分前に状況が一変して、定時からは少し遅れて事務所を出る羽目になってしまった。
ひとまず予定の時間より少し遅れそうですとだけ連絡すると、竜樹さんも渋滞にかかかってしまった模様。
「もし店が近くにあるなら、卵を買ってきて」と言われたので、駅からそれほど遠くないところになる食料品店で卵を買う。
割らないように気をつけながら、自転車に乗って待ち合わせの場所に向かう。
…結局、もっと遅くに事務所を出てもいいくらいの時間に竜樹さんは待ち合わせ場所に来られた。
「ごめんなぁ、待たせて」
「いや、仕事がぼかんとやってきたんで、こっちも出るの遅れたし…」
昨日にもまして穏やかな笑顔の竜樹さんにまた首を捻る。
…一体、どしたのだろう?
運転に集中したい竜樹さんは運転中はあまり口を利かないのだけど、今日は妙におしゃべり。
これまたどうしたことだろうかと思いながら、受け答えしてるうちに竜樹邸に到着。
竜樹邸に入ると、いい匂いがする。
「今日はごちそうをしようと思って♪(*^-^*)」
見ると、ガスレンジにはフライパンと鍋がひとつ。
フライパンの中にはイカ焼き、鍋の中には湯豆腐。
イカ焼きと湯豆腐を温めなおしながら、料理の説明をしてくれる。
「これだけやないねんで♪(*^▽^*)」
温まったイカ焼きを皿に移して差し出してくれた後、今度は別の鍋を火にかける。
すき焼きだった。
リビングでもこもことイカ焼きをほうばっていると、机の上に湯豆腐一式、すき焼き一式。
もうあとは食べるだけの状態にして運んで来てくれた。
竜樹さんは何もしない人ではないけれど、ここまでいくとサービス過剰な気がする。
「……あの、どうしはったんですか?」
嫌味でもなんでもなく、それがシンプルな疑問だった。
「…いや、結構無理言ったのに頑張ってくれたから、申し訳ないなぁって思って。
そんなんええから、早く食べぇや」
一連のことを言い過ぎたとは言わないまでもそれに対してやれるだけのことをやったことは認めてもらえたらしい。
冷めないうちに湯豆腐とすき焼きを食べ始める。
湯豆腐は昆布のだしがよく利いてて、シンプルながらも美味しい。
七味入のポン酢も相性がよく、いつまでも食べつづけたいって思うほど。
すき焼きも多からず少なからず、甘すぎず辛すぎず。
一生懸命頑張ったんだなぁっていう努力の跡が見えすぎるくらいに見えている。
それでも竜樹さんはまだキッチンでがさがさしていらっしゃる。
いつもよりはうんとゆっくり食事をして、後片付けをしようと台所に移動したら、今度は小さな箱からいくつもプラスチックの入れ物を取り出す。
「霄ぁ、どれ食べる?」
小さなテーブルの上にはコーヒーゼリーとグレープフルーツゼリー、プリンが並んでいた。
「どれを食べてもいいよ♪(*^-^*)」と仰るので、竜樹さんの好きなプリンを残してグレープフルーツゼリーを貰った。
ケーキ屋さんのゼリーみたいで、とても美味しかった。
リビングに戻ってゆっくりしてると、甘えたモードの竜樹さん。
竜樹さん的に気まずい時に甘えたモードに移行されるのは、暗に「ごめんなさい」な気分の時。
…それでもちゃんと「ごめんなさい言えよーヽ(`⌒´)ノ 」と突っ込まないのは甘いのか?
かわいそうなくらいよく働き、甘えたモードで寄ってくる竜樹さんを無碍に出来ないのは当たり前のこと。
そのままぎゅっと抱き締めた。
暖かな時間と暖かな食事に絆された上に、お見送り付。
小さな燻りよりも暖かさが勝った状態のまま家に帰れたのは嬉しい限り。
気がついたら、オール敬語で話していたのが元通りの喋りに戻っていた。
滅多なことがなければ私は態度は硬化させないけれど、態度を硬化させたら徹底的に相手のことを視界にも意識にも入れないようにするから。
私の態度の硬化が少なからず、竜樹さんに何か思わせてしまったのだろう。
…食べ物と心づくしで誤魔化されたかな?
誤魔化されちゃならないことも間違いなくあるのだけれど。
逆に竜樹さんの心づくしで固まった心が柔らかくなるなら、まだ大丈夫。
諍うことがあっても、それをどうにか改善したいと思ってるうちは。
多分、まだ大丈夫。
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