平日のご飯作りが大変だと聞いていたから、

「毎日作りに行こうか?」と言ったけど、

「仕事に障るから、アカンやろ?」って竜樹さんに言われた。

確かに、週末料理の後はがくんと疲れるし、

最近、すぐに眠ってしまう。

けれど、平日の食事作りが大変で、

竜樹さんちに誰かを入れることも検討してると聞いたら、

多少は頑張ってみたくもなる。


平日1日だけ、定時で上がって

竜樹さんちで夕飯を作ろうと決めた。

家では相変わらずすぐに眠ってしまって、

ろくろく準備もできてないし、

職場でもいろいろあったけれど、

定時に上がって竜樹さんちに向かう。


ただ、竜樹さんの柔らかな笑顔に逢いたくて。


平日の間、殆ど消えてなくなっている、


私の笑顔にも逢いたくて…
     
     
     
     
*****************************************************


表に出してしまって申し訳ないのですが。

海之水母さん。

soraさん。

リンク、ありがとうございました。
実は16日のノートでご挨拶を書いてから、お二人の日記にブックを置きにお伺いしたところ、
お気に入り制限の関係でブックは置けませんってエラーが出ました。
つい最近まではちゃんと置き返せていたので安心してたのですが。
どうやら、このところのサーバーの不具合で規制が復活したみたいです。
もしかしたら、この不具合が解消したら相互リンクできるかもしれません。
暫くこの状態で失礼致しますが、宜しくお付き合い頂けましたら幸いです。

日記は必ず読ませて頂きますので。

今後ともよろしくお願い致しますm(__)m

ここのところ、本当に浮き沈み激しかった。

そのくせ、鈍色の感情を「外」に出さないように、

頑張って飲み込む努力を繰り返した。

いろんなことを笑って誤魔化しながら歩いた。

それがよかったのか悪かったのか判らないけれど。

ある一言でぶつんと切れてしまった。


なるべく他人のいいところも自分にとって嫌なところも、

認めようと頑張ったけれど。

どうしてもダメだった。


見た目キツそうに見える私が、

案外いろんなことを笑って聞き入れてることを、

「自分の色に染まる女」だと勘違いされてたこと。

それは他でもない私のせいなのかもしれない。

でも、私の意に染まぬ方向で自分を染め上げられること。

それが私にはこの上ない屈辱だと、あの一言ではっきり判った。


…確かに。


この世の中にお金で買えないものはないのかもしれない。

想いですら、お金で動く時代かもしれない。

「お金で動かないものだってある」なんていうのは、

世迷言だとあなたは言ったけれど。


「私の想いはお金では買えないよ?

 世の中、銭金で片付かないものだってあるって、

 私は信じてる。

 好き勝手にあんたの価値観、押し付けてんじゃありませんよ?」


心の底から湧きあがった言葉を吐き出した時。

ただでさえ低い私の声が更に1トーン下がった。

視線はとてつもなく鋭く冷たいものだったかもしれない。


それは人に対してしてはならないことだったかもしれない。

傍で見てた人たちにはいい印象は与えなかったかもしれない。


でもどうしても我慢ならなかったんだ。


お金で頬っ面叩けば、自分になびくような物言いをされたこと。

その程度で、竜樹さんに対する想いが覆ると勘違いされてること。

竜樹さんがその程度の人間だと暗に言われたこと。

どうしても我慢ならなかったんだ。

誰がどう思おうともうどうでもよかったんだ。


私の心の中に最後まで残ってる大切な人への想い。

その部分に汚い想いで触れられることは、

どうしても許せなかったんだ。


私みたいな人間を好きになってくれること。

「好き」の質がどうであれ、

そのこと自体は嬉しく思うし、

そう想ってくれる人を認めたいと思うけれど。


…でも、


私にとって何よりも大切な竜樹さんに対する想いが、

札びら切って頬っ面叩けば覆るなんて考えること自体、

あまりに人をバカにしてる。

そんな言葉を以って「好意」だなんて言うのなら。


…そんな想いなど、私はいらない。

             
            
          
      
自分の中にある大切なものは、

銭金なんかと引き換えにはできないもの。

少なくとも、銭金引き換えにすれば片がつくと思ってるあなたに、

私からあげるものなんて何もないんだよ?


そう思ったら、ちょっと楽になった。

許せないことだってあっていいんだと、

居直ってしまうことが正しいとは思わないけれど。


心の底にあるたった一つの大切な想い。

それを守るために、「力」を使うことも時には必要なのだと、


そう思ったら少し楽になった。

もう少しだけ、歩けるって思った。
          
          
            
          

…私のことを「大好き」と言ってくれた大切な人たちへ


こんな私でも、まだ好きでいてくれますか?


元気を取り戻すためにこんな手段しか使えない私を、

それでも大切なものとして受け入れてくれますか?


たとえ、誰が受け入れてくれなくなっても。

ごめんなさい。

やっぱり竜樹さんに対する想いを、汚されるのはイヤだったのです。

どうしても我慢ならなかったのです。



矛盾(覚え書き)

2001年9月17日
素直になればなるほど、物分かりが悪くなり、

物分かりがよくなればなるほど、素直でなくなる。

本当はどちらもほどよい状態で、叶えられるといいけれど。

なんだか今はうまくいかない。

目を背け続けて何があるわけじゃないけれど、

時に目を伏せてしまいたくなる。


そんなときもありなのかもしれない。


元気になりたい。

笑顔でいたい。

でも叶わない。

今の私は矛盾だらけ。


嬉しいハプニング

2001年9月16日
何気に初めて聞いたときからずっと引っかかり続けている言葉を思い出した。

「望む答とは違う答を出す明日だってあるはずですよね」

私の大好きな歌手がある歌をリリースした時に受けたインタビューで言っていた言葉。
その当時は何となくでしかその言葉の持つ響きや意味が判らなかったけれど。

けれどこの数年、その言葉を時々思い返しては痛烈に実感することがある。


…私にとっても、そんな「明日」はあるのかもしれない


竜樹さんに対する想いが冷めた訳じゃない。
それどころか、年々想いが深くなってる気すらしてる。
けれど、年々いろんなものに四方八方塞がれてきてる気がする。
首がどんどん絞まっていくような感覚すら覚える時がある。
そんな時、ふとあの言葉が心に蘇ってきて思うんだ。


…やっぱり、無理なのかなぁ?

私が望む答とは違う答を出す明日を選び取らないといけなくなるのかなぁ?


昨日、竜樹さんに会って暖かな時間や気持ちを分け合って過ごしたばかりだというのに、心は沈みそうになる。
しないといけないことは山のようにあるのに、片付ける気すら起こらない。


…ふと窓の外を見ると、さっきまでの青空が鈍色に変わりつつある。
竜樹さんちに傘を忘れてきたことに気付いた。
別に来週竜樹さんちに行ったとき持って帰ってきたらよさそうなものなんだけれど。
私は自分の傘を今年はじめになくしてしまって、ずっと妹の傘を借りっぱなし(爆)

「会社が始まってから雨に降られたら対処できないし、取りに行こうかな?」

それは口実だったのかもしれない。
ただ竜樹さんに逢いたかっただけなのかもしれない。
逢えば何が解決するという訳じゃないけれど。
竜樹さんの笑顔に触れ、身体に触れ、何より心に触れて。

私の望む答に辿り着くために必要なものが、何なのか?

彼女の言葉とは違う未来を手に入れる力が私の中に残ってるかどうか?

確かめてみたくなったんだ。


「来週雨に降られたら困るから、竜樹さんちに傘を取りに行く」と母に言ったら、
「それは会うための口実でしょ?」と半ば呆れたように言われたけれど。
日記に覚え書きをあげ、出かけようとしたときメールの着信音。
「さっき友達がくれたメールに出した返事の返事かな?(*^_^*)」と思って携帯を見ると…

「いま、おきた。昼夜逆転やー」

…竜樹さんだった(*^_^*)
慌てて竜樹さんに電話を入れ、脱兎のごとく家を出る。


本当は昨日の料理大会スペシャルで結構疲れてはいたんだけど。
こんな気持ちのまま週明けを迎えるのは嫌だったから。
前に進むために必要なものは、多少しんどくても手に入れておきたいから。
その気持ちだけで竜樹さんの家に向かったんだ。

途中、「せっかく行くのだから」と晩御飯の食材を少し調達。
夕飯くらいは作って帰りたいと思ったから。
私の我儘としょうもない理由で竜樹さんちに押しかけるのだから、竜樹さんが笑顔でいられるように、できることはしたいと思ったんだ。


竜樹さんちに行くと、竜樹さんはまたもや遅い昼食を取っていた。
竜樹さんに遅い昼食を運んでこられたお母さんと少し話し、竜樹さんが食べ終わった食器を片付ける。
お母さんがおうちに帰られてから、何気にくっつく竜樹さんと私。
自分の気持ちやいろんなものを確かめたくて家を出たけれど、それは竜樹さんに何かを聞くというよりも、一緒にいることで「一緒に歩くために必要な何か」を自分の心で確かめたかったから。
世間話や他愛のない話をしながらくっついているだけで十分だった。

そのうち、くっついてるだけだったのがじゃれあいに変わり、熱を帯びてくる。
そうして二人でいろんなものを分け合う時間は流れていく。
けれど、今日は眠りこけてる場合ではないから。
暫く横になったあと、夕飯を作ることにした。


今日の夕飯は、豚肉とキャベツの重ね煮とじゃがいもとひき肉の甘辛炒めの2品。

豚肉とキャベツの重ね煮
はがしたキャベツ数枚を縦半分、横半分に切り、1/4量をフライパンに敷き、塩コショウした豚肉の薄切りを 重ねる。
何度かキャベツと豚肉を重ね、一番上がキャベツになるように重ねた後、鶏がらスープ(コンソメがあればその方がいいかも)と水を1/3カップ入れ、蓋をして強火で蒸し煮にし、煮立ってきたら中火で更に10分ほどにて完成。

じゃがいもとひき肉の甘辛炒め。
じゃがいもは皮をむき、スライスしてから棒状に切る。
フライパンに油を入れて熱し、みじん切りにしたにんにくを弱火で炒め、ひき肉を投入。
塩と胡椒を振りながら炒め、色が変わってきたら小口切りにした葱とじゃがいもを入れ蓋をして蒸し焼き。
その後へたを取って3〜4cmくらいの長さに切ったいんげんを投入、いんげんも柔らかくなったら砂糖、醤油、オイスターソース(砂糖と醤油だけで十分だとは思う)で味付けして完成。

豚肉とキャベツの重ね煮が出来上がり、じゃがいもの料理に取り掛かってたとき、後ろから竜樹さんに抱き締められる。

「…霄ぁ、落ち着かへんねん」

そう言われて、料理作りは中断。
暫く竜樹さんと触れ合ってる。
それに応える私の耳元で、竜樹さんが言った言葉。

「…ずっと傍にいてくれ」

その言葉一つで「まだ頑張れる」って思えたんだ。
それ一つで十分だったんだ。


暫くして、竜樹さんも落ち着いたのか散歩に行くとのこと。
私も料理を再開。

「ほな、ちょっと行ってくるなぁ」
「いってらっしゃい。気をつけてね?(*^_^*)」

何気ないやりとりにちょっとテレてみたりして(^^ゞ
暫くして戻ってきた竜樹さんを出来上がった料理が待ち構える。
竜樹さんが落ち着いたところで…

「いただきます♪(*^人^*)」


「今日のもうまいわぁ(*^_^*)」

竜樹さんに大好評だったのは、キャベツと豚肉の重ね煮だった。
彼はどうやらロールキャベツ系の料理が好きだったみたい。
ただ、ロールキャベツの手間もよく知ってるみたいだから要求はされてなかったけれど。
意外な発見に、にやりと笑う金岡( ̄ー+ ̄)
そうして今日もまた暖かな時間を共有できた。

今日は昨日よりは状態がマシだったようで、家まで送ってくれることになった。
けれど、その分余裕があるのか(?)また熱を帯びたじゃれあいは繰り広げられたりもしたけれど(^-^;

何気なく後ろ暗い感情に捕まることはあるけれど。
都度こうやって確認しながら歩くのも悪くはないのかもしれない。
忘れ物は嬉しいハプニングに転じてくれた。
これだけで十分だったのかもしれない。

だから

これからも竜樹さんと二人で歩こう。



かわいいなぁ…

2001年9月15日
昨晩早く休んだせいか、朝早い時間に目が覚める。
暫くして竜樹さんちに電話を入れた。
電話越しの竜樹さんはかなり調子悪そうだったので、すべて放り出して出かける。

…外は雨が降っていた(>_<)

今日は昼食と夕食を作ることになったので、買出しの量もいつもより多い。
しかも、夕食用のカンニングペーパーとなる本(笑)を何冊か持って出てる上に、雨足は強くなってきてたので、かなり辛い状態だったけれど。
思ったより早くバスがやってきたのが救いだった。


竜樹さんちに入ると、竜樹さんはばたと倒れている。
竜樹さんにお土産のシュークリームを渡し、着替えて昼食を作りに入ろうとしたけれど。
よぼよぼ竜樹さん(笑)に捕まってしまい、一緒に横になってしまう羽目に(-_-;)
触れていると竜樹さんは安心するようなので、されるままになってる。


「…髪、切ってんなぁ。かわいなったやん(*^_^*)」
「気に入ってもらえて嬉しいよ」

何気ない会話と互いに触れる時間は続いていく。


夕飯作りの段取りが気になったけれど、竜樹さんが安心するならその方がいいから。
そう思ってじっとしてるうちに、じゃれあいは本気に変わってしまう。
冷静な意識はどこかに消えて、ただ互いが互いの何かを受け取り何かを預ける。
そうして、少し眠ってしまったみたいだ。


目が覚めて、時計を見ると、昼食には遅い時間になってしまった。
慌てて飛び起きてご飯を作り始める。


遅い昼食は、「四川ジャージャー麺もどき金岡風」(笑)

「カフェのごはん」たらいう本に書いてあった、「四川ジャージャー麺」がおいしそうで、やってみようと思ったんだけど。
作ってるうちに金岡特有の料理勘に障ったので、本を無視して勝手に作り変えた(笑)

フライパンに油を入れて熱し、しょうがとにんにくのみじん切りを弱火でじっくり炒め、
香りがよくなってきたら、豚挽き肉を100gほど入れてぱらぱらになるように炒める。
そこにオイスターソースと甘味噌、鶏がらスープを入れ味を見ながら、チリソースを少し足し、醤油(本には12gとありました)と砂糖(3g)を足し、沸騰させる。
最後に片栗粉と水を1:1の比率で混ぜたものを加え、肉味噌は完成。

中華麺を茹でてる間に、きゅうりの千切りを作り、中華麺をザルにあげで水洗いし、皿に盛り付ける。
出来上がりを見ると、どうも肉味噌の水分が足りないような気がしたので、お湯に鶏がらスープの素を入れ、そこに醤油と酢、少々のオイスターソースで味を整えたものを作り、ラー油と一緒に食卓へ。


作ってる間、寝たり起きたりを繰り返してた竜樹さん、出来上がる頃にはちゃんと起きていらっしゃった(*^_^*)


待ちに待った、遅い昼食を「いただきます♪(*^人^*)」


「多分水分が足りないから、そのスープで肉味噌ときながら食べた方がいいと思うよ」
「…あ、ホンマや。美味いやん?これ(*^_^*)」

少々疲れているからか、どうも料理勘が悪い気がしてたけれど。
竜樹さんから白星を貰えて、嬉しかった。


食後にお土産のシュークリームを食べ、一休み。
ただ、二人でくっついているだけで機嫌がよかったのだけど。
落ち着きたくて触れる竜樹さんに応えてるうちに、のっぴきならなくなるようで。
安心と衝動の境目がよく判らないまま、互いの持つ何かを受け渡しはじめる。
何度も何度も熱を帯び、安堵を繰り返し、ゆっくりと流れていく。

…あろうことに、また私は眠ってしまっていた


そして時計を見て、またびっくりして飛び起きる。

「時間のことは気にせんでええから。ゆっくり休み」

隣で髪を撫でながら、竜樹さんは私に「かわいいなぁ」と繰り返し言ってくれる。


「最近なぁ、やたら霄がかわいいなぁって思うねん。俺が年齢とったせいかもしれへんけど」
「それやったら、今まではどんな風に見てたんですか?私のこと?」
「俺と対等やと思って見てた」

…あ、それでか

一時、やたら竜樹さんの物言いがきつかったり、要求されることのレベルがとても高いなって思ってたことがあったけれど。
それは、竜樹さんが自分と同じレベルのものとして私を見てたから。


…だとしたら、「かわいい」と言われることって、ホンマにええことなん?


ちょっと考えてしまったけれど、竜樹さんのほにゃっとした笑顔はやっぱり大好き(*^_^*)
気を取り直して、夕飯作りを始める。


今日の夕飯は、冬瓜と鶏の煮物とたたきれんこんのそぼろ、鶏の皮のチリソースかけの3品。

冬瓜と鶏の煮物。
冬瓜は皮をむいて種とわたを取り除き、鶏肉は皮と余分な脂を取り除いてそれぞれ3〜4cm角に切る。
鍋に鶏肉と水2カップ、しょうがひとかけ(本当はお酒大さじ4も入れる)を入れて火にかけ、煮立ってきたら火を弱めてあくを取ったあと冬瓜を入れる。
煮立ったら塩を入れて火を弱めて冬瓜が柔らかくなるまで20分ほど煮て、最後に水と片栗粉を2:1の比率で溶いたものを回し入れて完成。

たたきれんこんのそぼろ。
れんこんの皮をむき、縦半分に切ったあと麺棒のようなもので半割にした内側から叩いて繊維をほぐすように叩き割る。
フライパンに油を入れて熱し、しょうがとにんにくのみじん切りを入れ、香りが出てきたらひき肉を入れてそぼろ状にし、れんこんを入れて炒める。
長さ5cmくらいの小口切りした長ネギを入れ、醤油、砂糖、オイスターソース等で味を調えて完成。

鶏の皮のチリソースかけは、実験的料理(笑)
冬瓜と鶏の煮物の時に切り避けた鶏の皮を食べやすい大きさに切り、片栗粉をまぶして炒める。
熱したフライパンに油を入れ、しょうがとにんにくのみじん切りを炒め、小口切りした長ネギを投入、冬瓜と鶏の煮物でできたあんをまわしいれ、チリソースとケチャップ、鶏がらスープで味を調えたものを、器に盛った鶏の皮にかけて完成。


「いただきます♪(*^人^*)」


笑顔で向き合い、ご飯を食べる。

「美味い(*^_^*)」

冬瓜と鶏の煮物はやや薄味だった気もするけれど、残り2品がちょっと味が強めなのでバランスは取れてたみたい。
絶不調のはずの竜樹さん、結構いいペースで食べてらっしゃる。
それでも少しずつ残してるので、「大丈夫かな?」と思ってると。


「明日の朝ごはんに取っとくねん(*^_^*)」


…か、かわいい(^m^*)エヘヘ

竜樹さんに言ったらおこられそうだからやめておいたけれど。


食事の後も二人で横になる。
ずっと手を繋いでくっついている時間が幸せすぎて、また帰ることを忘れそうになったけれど。
竜樹さんに「かわいい」と言われて嬉しかった気持ち。
竜樹さんを「かわいい」と感じた暖かな時間。
それを抱き締めて、泣く泣く撤収することにした。


こうしてまた私の週末が終わる。

いつかずっと一緒にいられますように。
二人の気持ちがいつまでも、互いをいとおしむものでありますように。



両想い(覚え書き)

2001年9月14日
人に失望を教えるのは、他ならぬ人なのかもしれない。

人に幸せを教えるのもまた、他ならぬ人なのかもしれない。

竜樹さんのことを知ってようが知らなかろうが、

押し寄せてくる面白半分の悪意と、よく判らない他人の感情。

人と関わると見えるものは嫌なものばかりのような気がして、

目を閉じようと躍起になるけれど。

気が付いたら、小さな携帯に想いを託していた。

その携帯に思わぬ気持ちが届いた。

その気持ちが私に大きな元気をくれた。

それはとても嬉しいものだったんだ。


人といると感じることのできる悪意と愛情。

悪意を目に入れないようにするために、愛情も容れないようにするのか。

愛情を受け取りたいと希う代わりに、悪意にも目を閉ざさずにいるのか。

その答はひどく簡単に、でも「特別」をもってやってきた。


好きでいてくれてありがとう。

「心はずっと近くにいるよ」と教えてくれてありがとう。


両想いって、嬉しいものだよね?


本当に嬉しいものだったんだ。


竜樹さんと私がいる。
竜樹さんはこれから仕事に行くという。

「この仕事から戻ったら、ずっと一緒にいようなぁ。もう離れて暮らさんでもええようにするからなぁ」

そう笑って出かけていく竜樹さん。
それを笑顔で送り出す私。


…でも、竜樹さんはそれっきり戻ってくることはなかった


「…え?」


夢だった。
悪趣味なる夢だった。

「…寝覚め悪すぎぃ(-"-;)」

夢に戻る気はなかったけれど、布団の暖かさから抜け出す気になれない。
竜樹さんとくっついてる時と非常に似通った温度だから。
あんな夢のあとに幸せなる温度に包まれたら、抜け出そうなんて思わない。

でも、朝だ。
また「現実」は始まる。

「しゃあない。起きるかぁ」

名残惜しい気持ち一つに蓋をして、布団から抜け出す。
着替えてリビングに降りると、ついてるテレビからは、アメリカ同時テロの続報ばかり。

「…あれは、やっぱり『現実』やってんやぁ」

朝からすんごい重たい気持ちで家を飛び出す。


夢見が悪かったせいもあるけれど、あれだけの凄惨な出来事は現実に起こってしまったのだと思うと、すっきりしない。
空が晴れ渡れば晴れ渡るほど、人間の業の深さを思い知るようで気分が沈む。
大好きな友達に朝メール一つ送って、会社に向かう。


「機嫌を損ねるもの」はここにもたくさん落ちていた。


朝、会社でいろんな人と挨拶を交わすけれど、今日はアメリカ同時テロの話題の多いこと多いこと。

「戦争になったりしたら、日本も巻き添え食らいますよね?やだなぁ…」

そう返したとき、耳に飛び込んだ言葉。

「あらぁ、金岡さんの彼は病気だから、兵隊さんには取られないでしょ?まだいいじゃない」

…何言ってんだ、こいつヽ(`⌒´)ノ

そう思ったけれど、

「あ、そっかぁ。この状態ってそんな情勢に縺れ込んだらラッキーなんですよね?」

適当な笑顔を作ってそう答えておいた。

…「左」が表に出てたら、ひっぱたかれてるぞ?あんた?

私と竜樹さんの置かれてる状況の端っこの方をちょろっと知る、数少ない会社の人に言われた言葉で機嫌はかんなり悪くなる。
事務所に上がって、グレープフルーツジュースを一口。
落ち込む気分は少し浮上。


けれど、また機嫌が悪くなるものが、ごろり。
今度は、先輩。
人の顔を見るなり、「なぁなぁなぁなぁ。昨日のテロ、すごかったよなぁ?やっぱり現実は映画なんかよりもよっぽどおもろいなぁ?」と喜々として喚いてる。

…こんなネタではしゃぐなよ?

そう思ったけれど、適当に受け答えしてるとどんどん図に乗ってくる先輩。

「日本にもどっかの飛行機が突っ込まへんかなぁ?仕事にならん位、おもろいやん?」

…ヽ(`⌒´)ノ

「ごめん。そのネタ、おもろないわ」

そう答えて、事務所に戻る。

…人が死ぬことを笑いものにするなんて、最低やヽ(`⌒´)ノ

グレープフルーツジュースをマグカップになみなみと注いで、一気飲みに近い状態で飲んだ。
気分は少しマシになったけれど、やっぱりすっきりしない。

昼休み、脱兎のごとく事務所を後にして、「産業道路沿いチャリ爆走の旅」を繰り広げた。
身体を動かすと、少しすっきりした。


…ふと思う。


私を取り巻くどれ一つとして、「当たり前」のものなんてないのかもしれない。


毎週末、竜樹さんちに行って料理を作ったり、暖かな時間を過ごすこと。
竜樹さんの暖かな笑顔や気持ちを受け取れること。
友達と毎朝メールを交わすこと。
日記帳やいろんな場所で友達と心で話すこと。
「大好き」と言ってくれる大切な人たちがいてくれてるということ。
「大好き」と思う大切な人たちがいてくれてるということ。
大切だと感じてる人たち皆が、毎日普通に暮らしていること。

そして。

私が生きているということ。


何気なく口にする。「またね」。
そんな言葉が明日覆ることだってある。
それは非常事態が起こる可能性があるからだけじゃなくて。

自分に向けてもらえる想いが「絶対」や「永続性」のあるものではないから。
相手がいつまでも変わることなく、そこにいてくれてるのは当たり前ではないから。
生きてること自体が当たり前なんかではないから。


当たり前のように感じてることは、実は特別なもの。
その特別がたくさんあるってことは幸せなこと。
自分の人生レベルで被ってる荒波なんてものは、本人にとっては大変なことだと感じてるけれど、大きな流れの中では誤差範囲くらいのもので。
心が動くこと自体が幸せなことなのかもしれない。

…生きてること自体が「当たり前」ではないんだから。


そう思うと、とてつもなく竜樹さんに逢いたいと思った。
「連絡がないのは、しんどいから」という暗黙の了解が、そうでなくなることだってあるのだから。
別に逢いに行くのに大層な距離じゃない。
会社帰りに行くのは、ちょっと身体がしんどいだけ。
竜樹さんに逢える方がよっぽど安心。
竜樹さんに触れたらとても安心。

生きてるうちに「特別」を少しでもありがたいものとして受け止めておきたいんだ。


そう思ったけれど。
残業食らって、逢いに行くことは叶わなかった。


当たり前のものじゃないから、無理にでもいろんなことをすればいいというものでもないんだと思うけど。
できることは、なるべくその場でできるようにしたいって思う。
取り返す明日は当たり前のようにやってくるものではないんだから。

そして。

私を取り巻くすべての「特別」をいつもありがたいと思える幸せが、少しでも長く続けばいいなって思う。


少しでも「幸せ」だと感じられることに感謝して、今日も明日も生き延びよう。
何はなくとも、今の私にはそれが大切なんだと思うから…



ただいま

2001年9月11日
9日の日記をあげた時、ノートにこんな言葉を残しました。

「今は少し元気を取り戻してるから。
 大丈夫だから。


 けれど。


 次の日記を更新するまで、少し休ませてください。
 数時間でいいです。
 休ませてください。」


自分から「休ませてください」と言ったことは、へっぽこなる人生の中でも殆どありません。
親しい人の前でも「休ませて」と言ったことは殆どありません。


とりあえず、1日と半分ほど休んでみました。
気持ちの整理のために一大決心つけて人に心配をかけるようなことを書いたあと、
1日の日課である、大好きな友達の日記を読むことも放棄しました。
掲示板のレスを見に行ったのと、ノートを見ることのできない友達に「心配は要らない」と報告しに行った以外、消息不明で過ごしました。
10日に出逢った素敵な出来事をどんな風に書くのかも一切考えませんでした。


…昨晩は。

いつものように、出てもらえないだろう竜樹さんに電話をして。
珍しく出てくれた竜樹さんと互いのことを話したり、今週末どう過ごすかを話したりして、暖かい気持ちと切ない気持ちを共に分け合って。
電話を切ってから、夕方友達から貰ったメールの文面を読み返して。

少しばかり泣いて。

そして泥のように眠りについて。


朝も敢えてパソコンを開くことなく、家を出た。


相変わらず、電車の中から大好きな友達に朝メールを飛ばして、駅ビルでパンを買って、自転車かっ飛ばして会社に入る。
ボスの居ないフロアで午前中静かに仕事をして、昼休み。
脱兎のごとく社屋を飛び出し、産業道路を自転車でかっ飛ばす。
大切なお友達が教えてくれた「落ち込み防止のアイテム」を買いにコンビニへ行く。
外はむせ返るような湿気に取り囲まれてるような感じだったけれど。
それでも身体を動かしてる間は、辛気臭い物思いに捕まらなくて済みそうだったから、
風を切るようにして走った。

「落ち込み防止のアイテム」はグレープフルーツジュース。

100%のものがあったので、2パックゲットしてまた産業道路を折り返す。


昼からはずっとグレープフルーツジュースの世話になった。
そのせいかどうかは判らなかったけれど。
業務上でむかつくことはあっても、悲しい思いに捕まらなくて済んだ気がした。


…それだけじゃなくてね。

時々、朝メールの友達からメールが飛び込んできたのが、すんごい嬉しくて。
思わず、勤務時間中にお返事返した(^^ゞ
大好きなお友達のアドバイスや心遣いで、すんごい救われたんだ。


家に帰ってきても。


友達の声があって、驚いた。
文字として見えない「声」も少しばかり感じ取れた気がする。
(本当はなかったかもしれないけれど。気のせいかもしれないけれど…)


おいしい夕飯を食べ、家族と話したりして過ごして。
それで、心の痛さが「完治」した訳じゃないけれど。


暖かな気持ちを差し出してくれる大切な友達に。
「ありがとう」って言いたくて。
「心配は要らないよ」って言いたくて。


心のリハビリ兼ねて、1日と6時間近くの休暇に終止符を打とうと思います。


「休みます」と予告しない時の方が、ずっと長いこと日記帳から姿を隠してるような気がするけれど(苦笑)、
心配かけるに決まってそうな文章をあげて、「休ませてください」と弱音を吐いて、本気で加療体勢に入って、思った以上に「大丈夫」だと判ったら。


早く大好きな友達に逢いたくなったんだ。


心配かけてごめんなさい。


まだ「ここ」にいてもよいかなぁ?


「Soleil」 Words : Mari Hamada

人と人が痛みを  わかり合えたならば
あの貧しい丘に  吹く風は変わるの?
  いつか誰かがいった  心配はいらない
  太陽はすべてに  ぬくもりをくれる

    翼の生えない心がゆれる
    生き急いだ夢のつづきがすねる

忘れてしまいたいことなど誰にでもある
だから  ふるえる指の理由はまだ尋かない

    誰かを愛して  季節はめぐる
    小鳥のいた大地に花が咲くように

  やがて丘の上にも春がおとづれるだろう
  いつの日か一緒に  またたずねてみよう
                 

        心配はいらない


一日の終わりにとてつもなく悲しいような怒りに満ちたような、
人間そのものに失望しそうな出来事が海の向こうで起こってしまったけれど。
それでも、ずっと心の中に流れていたのはこんな歌だったんだ。


私の痛みを判ろうとしてくれた、大切な友達の痛みをいつの日か私も預かれるような自分になれたらいいなぁと。


生きてる間は人間に失望しないでいられたらいいなぁと願いながら。


またこれからも歩いていこう。


大切に想う人たちのすぐ傍で、一緒に生きて歩いていこうって思ったんだ。


…いろんな形で私を支えてくれてありがとう。


原罪

2001年9月9日
あなたのようになりたくなかったわけじゃなかった。

いろんなことがあったけれども。

私にとってあなたは自慢の人。

それは今も変わらないんだ。

いろんな出来事の中で、解釈の相違も行き違いもあったけれど。

いつかはあなたのようになれればいいなと、

そこに辿り着けたらいいなと。

目的地に向かうルートはいろいろあって、

最終的に辿り着ければいいと思っていたから、

あなたとまったく同じ道を辿ろうとは思わなかったけれど。

それでもあなたのようになれればいいなと思っていたのに。


私の生き様が、あなたの生き様を否定するのだと言うのなら。

あなたを失望させたと言うのなら。

私はどうすればいい?


あなたを失望させてなお、

あなたの人生を否定したと思われるような行動しか取れない私は、

本当はあり続けてはならないんだろうね?


今更竜樹さんと離れてみたところで、

あなたの失望が払拭されるわけでなく、

竜樹さんと一緒に生きようと希う「私」は

あなたの失望を加速させるだけ。


それを知りながら。


それでも。


ごめんなさい。


私は竜樹さんと一緒にいたいと思うのです。


私の生き様が大切なあなたの生き様や想いのすべてを


否定するようなものでしかなかったとしても。


私は竜樹さんと離れて歩くつもりはないのです。


ごめんなさい。


失望させてなお、息をし続ける私を、


あなたはそれでも愛しいものとして、その目に入れてくれるのでしょうか?


それとも。


なかったものとして、二度とその目に入れることはないのでしょうか?


ごめんなさい。


もう少し早くそれを理解することができていたら…


私は今と同じ道を歩いただろうか?


それとも。


今とは違う明日を歩いただろうか?


ごめんなさい。


それでも、あなたは私にとって大切な人なのだということを。


あなたは信じてくれるでしょうか?


それとも信じてくれないのでしょうか?


…いずれにしても、


失望させるためだけに存在してしまったことを。


ごめんなさい…



朝、目が覚めると吐き気がするような頭痛に襲われた。

…今日は竜樹さんちに行く日なのに

暫くして竜樹さんに電話すると、今日は外に出たいと竜樹さんは言った。
そんな風に話す竜樹さんの声は何処となくしんどそうだけれど。
とりあえず、用意をして出かけることにする。


途中、何度か竜樹さんちに電話するけれど、竜樹さんは出てくれない。

…今日は外食で済ませようと言っていたけれど、この調子だと作らないといけないかな?

電車を降りて、いつものスーパーで食材を買い込んでバスに乗る。


食材を買ってる時もかなり絶不調な私。
いつもならさっさと頭の中で作るものの組み立てができて買うべき食材が決まるのに、今日はなかなか決まらない。
バスの中で参考資料に持ってきた本を見返してみると、足りない食材がちらりほらり。

…また、作りながらどうするか考えるかぁ

どことなく投げやりな思考回路のままで、竜樹さんちに向かう。


竜樹さんちに着くと、竜樹さんのお母さんがいらっしゃった。
お母さんと話してると、妙に不機嫌な竜樹さん。
お母さんが帰ってから、横になってる竜樹さんの傍に座り込んで、お話を聞く。


「術後すぐの状態に戻ってもぉた感じがする…」


痛いから動かない、動かないと筋力が落ちて、更に痛みが増す、忌まわしい悪循環。
それを断ち切るためにも、本当は無理やりでも外に出かけないといけないのに、出かけられない。
竜樹さんの言葉の端々に、思うようにならないことへのもどかしさと苛立ちが見え隠れする。


…根本的に、私から竜樹さんにしてあげれることなんて何もないんだ


そう思うと言葉が出なくなる。
どうしていいのか判らなくなる。


そのうち、ゆっくりと竜樹さんが私に手を伸ばす。
竜樹さんが私に触れる時は、落ち着きたい時。
それが判るから、されるままになる。
やりとりにもつれ込むことのない時間は続く。


…私の心の中に宿る、やるせなさも切なさも消えることはないけれど、今は竜樹さんの心を落ち着かせることだけを考えよう。


そんな風に思ってるうちに、竜樹さんの中で「抑え」が効かなくなったらしい(笑)
ゆっくりとそれは始まっていく。
いつもよりも少しばかり熱のある竜樹さんに煽られるように、いろんなものを受け入れ、預けたような気がする。
何度も何度もそんなやりとりを繰り返し、静かな時間を迎える。


竜樹さんの寝顔を見ながら、また泣いてしまいそうになったけれど。
感傷に心を明渡せるほどの余裕なんてある訳もないんだと心に言い聞かせる。
心の中から感傷を追い払うと、私も睡魔に襲われそうになるけれど。
外へ食べに出るならともかく、出ないなら夕飯の準備をしないといけない。
竜樹さんが起きるのを待ちながら、夕食の段取りを考える。


眠りから覚めた竜樹さんは、思考が纏まらずにうにゃうにゃしてるけれど。
彼の様子を見ていると、今日も外食はなしになりそう。
竜樹さんの体調が思わしくない状態で外食すると、大抵ろくでもないことが起こるので(爆)、これはこれでよかったのかもしれない。

…本当に竜樹さんのことを思うなら、少々いろいろあっても、外へ連れ出した方がよかったのかもしれない

迷いに捕まりだしたらきりがないから、じゃれついてくる竜樹さんにご容赦頂いて(笑)、さっさと起き上がり夕飯の支度に取り掛かる。


今日の夕飯は、2種類の鶏のソテーとスモークサーモンとタコのサラダ。

鶏のソテーは、味付けが違うものを2種類作る。
鶏モモ肉を2枚用意。それぞれ一口大に切り、少し多めの塩・コショウ・ガーリックで味付けする。
表面にぱりっと焼き目をつけてから、じっくり焼きこみ皿に移す。
もう1種類は、バルサミコ酢とマヨネーズを1:2の比率で混ぜたものに、鶏がらスープの元を少々、刻んだパセリをいれ、最初のものより少な目の塩・コショウ・ガーリックで焼き目をつけた後、合わせた調味料を少しずつ入れ、味を調節しながら焼きこむ。
(本当は、バルサミコ酢とマヨネーズを混ぜたものを、焼きあがった鶏肉にかけて食べるらしいのだけど、出来上がったソースが余りにすっぱくて急遽、調理法を変えた)

あわせ調味料を入れると、鶏から出る油が心持ち多くなるので、余分な油をペーパータオル等で吸い取りながら焼きこむといいと思う。
マヨネーズが焦げすぎないうちに皿に移し、炒めたタマネギとパプリカを添える。

スモークサーモンとタコのサラダは、殆ど買ったものをそのまま並べたもの(笑)
タマネギをスライスし、水にさらしたものを器に盛り、ざく切りにしたキャベツを柔らかく茹で、冷水に取ったあと水気を切って、タマネギのスライスの上に乗せる。
そこに茹でたタコを一口大に切ったものを添え、その上からスモークサーモンを置く。
最後にイクラで飾り付けをし、回りにプチトマトを添え、フライドオニオンを散らして完成。
和風ドレッシングで食べる。


作り終えて後片付けをしてから、二人で向かい合って。

「いただきま〜す♪(*^人^*)」

さっきまでしんどそうにしていた竜樹さん、食事を取るとなぜか元気(笑)
今日は料理勘がどことなく鈍くて、正直おいしくできたかどうか自信はない。
竜樹さんはおいしいと思えば、「おいしい」と言ってくれるけれど、おいしくないものもはっきり「おいしくない」と言う人だから。

…あ〜ぁ、「黒星」喫するかなぁ(-_-;)

と覚悟していたけれど。


「美味いで、これ(*^_^*)」

苦肉の策で、調理法を変えた「バルサミコソースで焼きこんだ鶏肉」を指してそう言った。

…ほぇ?(゜o゜)

「お世辞、じゃないですよ、ね?」
「うん、食べてみ?美味いから(*^_^*)」

気が付くと、サラダも鶏肉も残り少なくなり、2膳目のご飯をついでる竜樹さん。

…本当に病人なの?竜樹さん?\(◎o◎)/!

そう聞きたくなる勢いだった。


食事の後、竜樹さんの実家からお父さんが登場。
暫く3人で話し込み、楽しい時間を過ごす。

「お前さんは幸せやなぁ。毎週ご飯を作ってもらって、自分は背中が痛いって寝とったらええねんから」

竜樹さんのお父さんがそう仰ったのが、なんだか嬉しかったんだ。
本当は竜樹さんの役に立ってなくても、それがホントならすんごい嬉しいなって思ったんだ。
30分ほど歓談し、竜樹さんのお父さんはおうちに帰っていかれた。
二人で暫く寝転がってじゃれあう。
じゃれあいが本気になってしまって、あとが大変だったけれど(爆)
暫くすると、竜樹さんは起き上がって、私を家まで送ってくれた。


二人でいてる時間は暖かい。
いろいろ問題はあるけれど、いつかは穏やかな風に乗れるのかな?
今の風向きは二人にとって最悪かもしれないけれど、穏やかな風に二人で共に乗れるように。
もう少し、頑張ってみよう。


…二人で頑張ってみたいって思ったんだ。



本当は今日のお昼くらいまでは、別のことが心に留まっていて、
ボスの後にあるパソコンから「覚え書き」をあげるくらい、奇妙にハイだった。
分かれてしまったかに見えた道が、また一つに戻るかもしれないということを、
人様のことなんだけど、嬉しく思ったから。
危険を顧みず(笑)、ボスの後から更新を企てた。


…一度発した言葉を自分の都合で下げるのは性に合わないけれど。


それでも。

家に帰って来てから、もっと思い知ったことがあるから。
差し替えます。ごめんなさいm(__)m


竜樹さんと一緒にいてる時も常に感じ、パソコンを離れてもここにやってきても拭い去ることのできない気持ち。

それは「何もできないことへのやるせなさ」。


私にとって大切な人には、やっぱり笑っていて欲しいんだと、いつでもどこでも願ってはいるけれど。
願う以外に何もできないってことを、いつもいろんな出来事から痛烈に思い知る。


当事者以外に解決できないこともあれば、当事者ですら解決できないことがある。
それは気持ちの問題だったり、現実にある問題だったり様々で。
所詮、蚊帳の外にいるものは何も出来ないんだってこた、これだけ生きてりゃ思い知る機会も多かったから判り切ってることだけれど。


それでも、いつでも。


その無力感を嘆き、力になれないことを心底悔しく思ってる自分は確かにいるんだ。
そんな風に思うことですら、事態の根本解決にはなんら結びつかないということだって十二分に知りながら。
それでも、少しの救いになれればと思いながら、屁の突っ張りにもならない言動を繰り返す。
それが相手の心に届いてるかすら、判ったもんじゃないのに…


無力感を嘆き、それからどうやって歩いていくのか?
そんな毎日を繰り返し、最後は何処へ辿り着くのかは命の灯が消えるまでわからない。
その答はその時がきても見つからないかもしれない。


けれど。


私は心の傍にいるしかできないから。
なけなしの思いと言葉をひねり出して、へっぽこなる記憶と軌跡を切り売りしながら、気持ちを送り出すことしかできない。
それが、本人にとってよいものかどうかまでは判りそうにないけれど。


…「あなた」が寂しい時に、悲しい時に。
すぐに気付いてあげられなくて、ごめんなさい。
気が付いた時にすぐに声をかけてあげられなくて、ごめんなさい。


…一部、私信めいてて申し訳ないんですが。


私と毎日メールを交わしながら、悲しい思いを伝えられずにいた友達へ。

「いいことも嫌なことも、話してくれていいんだからね?
私の辛い思いをそっと抱えてくれた分、
私もあなたの荷物、預かろうと思ってるから」


私の体調を慮って、話すことを躊躇ってる友達に。

「お返事遅れがちだけど、ちゃんと考えてるから。
必要な時は必要だといってくれていいんだよ?」


体調の悪さを私に伝えたくないから、電話に出なかったり、無理して違う話題を探そうとする竜樹さんに。

「しんどい時は、しんどいと言ってくれていいんだよ?
話すことすら体力的に辛いなら、一言『逢いに来い』と言ったらいいんだよ?

あなたの『必要』を最大限叶えるのが私のしたいと思うことなんだよ?」


…そして、


私の大好きな「あなた」に。

私の心から生まれるなけなしの想いを贈ろう。

いらなきゃ、いらないで流してくれてもいいんだ。

ただ伝えたくて、ただ届けたくて。

その想いがあることだけは確かなんだよ?


思うようにやってみ?

自分がどんなでもいいやんか?

力が足りなくても、「持ち物」が不足してたとしても。

こうしたい、こうなりたいと希う気持ちが生み出す何かがあるんだと思うから。


…それがなけりゃ、何も始まらない。きっと何も終わらない。


異論を唱える人はきっとたくさんいると思うけれど、

今回、他の方の意見は無視です(ごめんなさい)


気が済むまで沈めてみないと見えないこともあるからへこむことですら悪いとは思わない。

「行き過ぎ」って思ったら、さり気に止めに入ることもあるかもしんないけれど。

やりたいようにやっとうみ?

「あなた」の後についとうから。

どんな結果が待ち構えてたとしても、

「ようやったやん?」とそのすべてを受け入れるから。

現実問題の解決には何の役にも立たないかもしれないけれど、

精神面の後方支援にはほど遠いかもしれないけれど。

それでも、今まで私の心の後方支援をしてくれた大切な人たちに

私からできることはそれくらいしかないんだと思うから。


後ろに潜むものを気にせずに、進んでいっとうみ?

「あなた」にしか手に入れられない明日を、手に入れるために行っておいで。

ちゃんと見届けるから。

共に歩いていくから。


一緒に頑張ろうぜ?


何処にいても、心だけは傍にいてるから。


安心感には足りないかもしれないだろうけれど…


幸せになろうぜぇ?


夢路は遠くても。


諦めずにいようぜ?


私も諦めずに歩くからさ。


いつかみんなで「機嫌のよい」明日を手に入れようね?


迷いや遠回りがあっても、いつか辿り着けると信じて。


歩いていこうね?


一日の終わりに、ただそう思ったんだ。


…私の大好きな、すべての「あなた」に。

金岡 霄 拝


好きという感情を説明するのは、難しい。

常日頃、こんな私に暖かな気持ちや言葉をさしだしてくれる友達や竜樹さんに、

「…あの、私の何がよいのでしょう?」

そう聞いてみたくなるけれど、

同じことを聞かれたら、きっと相手が納得するような答を提示できない気がする。


人の心にある暖かな感情は、

人の心の中の一番の謎。


その根っこにあるものを知りたいと希うけれど、

判らないことは、判らないままでもいいのかも知れない。


そこにあるのは、きっと、

「ただ、好きなんだよ?」

それひとつなのかも、知れないね?


…そんな風に思って歩いていけたなら、

気持ちの本質が判らないことの辛さや

判り過ぎてる現実に押し潰されそうな辛さを越えられるのかな?


「ただ好きなんだよ?」


それ一つで、すべてを受け入れて歩いていけるのかな?

相手もまた、そうして共に歩いてくれるのかな?

そうして二人で一緒に歩いていけるのかな?

ただ「好き」という気持ちを灯火にして…


瞳に映るもの

2001年9月3日
瞳に映るものが心の瞳を閉ざすことがある。

心の瞳に映るものが瞳を閉ざすことがある。

そうしてできた暗闇の中で、どうしていいか判らない自分がいる。

見えた方がいいものもあれば、見えない方がいいものもある。

見えない方がいいものが見えることで、心が痛むこともあるけれど。


…だけど、もしかしたら。


瞳を閉じたくなっても、心の瞳は閉ざさない方がいいのかもしれない。

心の瞳に飛び込んできた暖かな何かが、

一日の鬱屈した想いを晴らしてくれることもあると。


改めて、判ったから。



待ちに待った週末。

髪を切りに行ってから、もしくはハンズメッセで必要なものを買い揃えてから竜樹さんちに行くつもりだったけれど。
毎週毎週殆ど午前様の状態なので、早く行って早く戻ろうと思い、竜樹さんに電話すると…

「今日はな、家の片付けを手伝って欲しいねん」

…え?片付け……ですか?( ̄○ ̄;)!


最近週末になると「俄か主婦」よろしくな日記を書いてる金岡、実は掃除が大の苦手(>_<)
しかも片付けが大変なら、今日は外に食べに出てもいいと竜樹さんは言う。

「…あのう、掃除より料理の方がいいんですけれど…」

とはとても言える状態ではなかったので、「すぐに用意して行きます」とだけ答えて、出かける用意を始め、いつもよりもうんと早めに家を出た。


電車に乗り、いつもの駅で降り、いつものように竜樹さんちの冷蔵庫の中身を予測しながら、食材を買う。

…今日は何にしようかな?

片付けが長引くなら、あまり手の込んだものは作れない。
竜樹さんちの冷蔵庫に残ってそうな食材と相性のよさそうな献立を考えながら、カゴにぽんぽんと食材を投げ込んで清算を済ませ、やってきたバスに乗る。


バスを降り、竜樹さんの家に行くと、竜樹さんは昼ごはんの最中だった。

「…遠いところをよう来てくれたなぁ(*^_^*)」

そう言って、食べる手を休めてほにゃと笑いかける。

「食べなくていいんですかぁ?」
「…それがなぁ、さっきまで寝とってさぁ、なかなか食が進まへんねん(-_-;)」

竜樹さんの周りをちょろちょろしながら、会話を続けてると…


…竜樹さんに捕まってしまった(-_-;)

「だから、食べなくていいんですか?( ̄○ ̄;)!」
「…こうしてた方が落ち着くやんか?(*^_^*)」

そう言って竜樹さん、座ったままだっこの体制(*-_-*)

もうこうなってしまっては、何を言っても無駄。
竜樹さんが落ち着き払ってご飯を食べるまで、じっとしてる。


暫くすると落ち着いたみたいで、再びご飯を食べ始める竜樹さん。
それを向かい側に座ってじっと眺める。
本当に竜樹さんは食べる時はもくもくと一生懸命食べる。
(決まって口にすると怒られるけれど)すんごいかわいくて、にこにこして見つめる。

ようやっとちょっと遅めの昼食が終わり、竜樹さんは横になる。
その横にちょこんと座ってると、また竜樹さんがちょっかいを出す。
どこまでがじゃれあいでどこからがやりとりなのか、その区別もつかないまま、静かにそれは始まっていく。

それぞれが持つ「何か」を相手に分け与えるような感じが続く。
何度も崩落と安堵を繰り返し、長い安堵の時を迎えて。

気が付くと、私は眠っていたみたいだった。


「霄も疲れてんねんなぁ。無理して来たんちゃうん?」
「それはないけどさ……あ、片付け、せんなんのちゃうのん?」
「今日は俺の調子も悪いし、ええよ?ゆっくりしたら」


結局、片付けの手伝いという大きな仕事をしないまま、また眠りに落ちていく。
次に目を覚ました時、竜樹さんが隣で眠っていた。
ごそごそと起き出して、夕飯の支度をする。


今日の夕飯は、豚肉と野菜の中華風炒め煮(仮称)とカツオと秋野菜のサラダ。

豚肉と野菜の中華風炒め煮は、冷蔵庫掃除料理に近い(爆)
タマネギはくし型、ニンジンはいちょう切り、キャベツはざく切りにし、ピーマンとパプリカはヘタと種を取って縦に4等分し、横に4等分くらいの大きさに切る。
ニンジンとタマネギ、ピーマンを炒め、豚肉のスライスを適当な大きさに切ったものを塩コショウで炒め、色が変わった頃にキャベツを入れる。
少しキャベツが柔らかくなったら、鶏ガラスープの素とオイスターソースで味を調え、
少し水を足して軽く煮る。
最後に水溶き片栗粉(片栗と水の比率が1:2くらい)を入れて、混ぜて完成。

カツオと秋野菜のサラダは、この日のある百貨店の食料品売り場の広告に出てた写真を元に自分なりの勘で再現という、ちょっと物騒な料理(笑)
本当は戻り鰹を使って作ってたみたいだけど、買出しをしたスーパーには置いてなかったのでカツオのたたきで代用(爆)
タマネギときゅうりはスライスして皿に敷き、シメジはさっと茹でて水切りをしたあと、タマネギときゅうりの上に置く。
カツオのたたきの塊を1枚1枚切り分け両面に片栗粉をつけて、オリーブオイルひいたフライパンでさっと焼き目をつける。
焼き目をつけたら野菜の上に並べ、飾りにトマトを添え、和風ドレッシングで食す。


夕飯が出来上がり、後片付けも済んだけれど、竜樹さんは眠ったまま。
何となく起こす気になれずにいた。
その間に携帯にメールが入り、こちこち打ち返してると竜樹さんが目を覚ます。
起きてまだ意識がはっきりしないのか、身体が本調子にならないのか、布団の上に蹲っているところへ、竜樹さんの実家から内線が入る。

…炊き立てのご飯を分けてくださるそうだ(*^_^*)

何とか竜樹さんは立ち上がって、よろよろと貰いに行った。
私は食卓のセッティングをする。


炊き立てのご飯がやってきて、二人仲良く「いただきます(-人-)」


「…今日のも美味いわ(*^_^*)」


今日は作りすぎてしまって、一人が2人前分くらいある。
なのにぱくぱくと食べる竜樹さん。
気が付くと、2膳目ついでる上におかずも殆どなくなってた(゜o゜)

「今、全部食べると動けなくなるのは判ってるんやけどなぁ…」

そう言ってまだ箸を置こうとしない竜樹さんを見てると愛しさがこみ上げてくる。


結局、「腹八分目にしようねぇ」と宥めて、箸を置いてもらう。
隣の部屋でテレビを見ながらじゃれてたら、またやりとりにもつれこんでいく。
大きな波に飲まれながら、離れたくないって思い続けていた。


凪いだ時間がやって来た時、ぼそっと「帰りたくないよう」と呟いた。
「仕方ないやろ?今は帰らなんと」と言う竜樹さん。

「執着ない人が羨ましいよ」って答えたら、
「俺まで一緒になって『帰って欲しくない』って言ったら、霄は帰らへんやろ?
まだそれはあかんやろ?」と返ってきた。

…竜樹さんが言うことは正しいねんけどね

大人な人を相手にして、よかったんだか悪かったんだか。
そう思いながら、竜樹さんをそっと抱き締めた。
竜樹さんもまた、抱きしめ返してくれた。


今日は竜樹さんの調子が悪いのでタクシーにて帰宅。
家に帰るまで一緒にいられないのは辛いけれど、竜樹さんがゆっくり休める方がいい。


またこれから6日間、待ち焦がれるんだ。
竜樹さんと過ごす暖かい時間を。
さっきまで一緒にいたくせに、願うのはいつも同じこと。

「どうか、竜樹さんと過ごす暖かな時間がいつまでも続きますように」

いつかその願いが叶いますように。
何に咎められることなく、二人で一緒にいられますように。


…待ち焦がれる時間に、いつか終止符が打てますように。


気がかりなのは…

2001年8月31日
いよいよ週末。
どことなく重苦しい1週間を過ごしたけれど、その分人の暖かさにも触れられた。
機嫌のよい週末を迎えるために、あと1日頑張ろう。

そう思って、起き上がり出かける用意をする。


いつものように「おはようメール」を交わし、会社に入る。


今日は朝から洗濯当番。
仕事が忙しい時には煩わしいだけのこの仕事も、今では丁度いい気分転換。
これが冬なら、コートを着ながら文句言い言いの作業になるんだけど…(^^ゞ
少し鈍色めいた空の下、洗濯機を回しふと考える。


竜樹さんは先週の日曜日からずっと調子が悪い。
水曜日にようよう連絡が取れたとき、体調が悪くて学校に行けてないという話をしてた。
痛み止めの注射を打てるのは、今日。

…本当に大丈夫なんだろうか?


術後、確かに体調は不安定だったけれど。
去年の夏はもう少し元気だったんだ。
花火大会も2,3回行ったし、同じくらいプールにも行った。
一緒にいられるスペースもなかったから、しょっちゅう出歩いてた気がするのに…
確かに今夏は酷暑に近い暑さだったけれど、ホントにこれで大丈夫なんだろうか?

小さな水泡を立てながらまわる水を眺めて、ため息一つこぼす。


「本当は痛いからと言って、横になってばっかりおったらアカンねん」

竜樹さん自身もそう言ってたけれど。
どれくらいの湿度や温度になると竜樹さんの背中が痛むのかは、肌で判るようになったけれど、
所詮、私は「当事者」じゃないから、どこまで運動させたらいいのかが判らない。
竜樹さん自身が意志の強い人だから、私がそこまで考えなくてもいいのだろうけれど。


父方の祖母が随分昔、ある事故が元で右手を怪我した。
自身の健康管理には意欲的でとても意志の強い祖母だったけれど、その右手のリハビリはかなり酷だったようで、強く嫌がったらしい。
その時の対処が悪かったために、後にとんでもないことを引き起こすのだけど…

竜樹さんの状態がそこまで悪くなるとは思えない。
竜樹さんの意思がそこまで弱いと思いたくない。
目先の「痛み」に負けて、「これから」を捨てるようなマネをするとは思いたくない。

けれど。

「痛み」が判断力や意思を削ぐことだってある。
誰だって、痛い想いをするのは嫌だもの。
痛くないなら痛くない方がいい。
たとえ、「その後」によくなかったとしても…


私には一体何ができるんだろう?
毎週末になると、竜樹さんちに行ってご飯を作り、くっついて過ごす。
それはそれで、竜樹さんの役に立つ部分もあるのかもしれない。
けれど、本質的にいい方向にもっていくための役に立ってるんだろうか?
今、本当に必要なのは「安穏と暖かな時間を過ごす」ことではなくて、「目の前にある壁を越えるために何かをする」時間なんじゃないか?
だとしたら、多少嫌なことでも私から言い出さないとダメなんじゃないか?


…だけど、その加減はどうすればいい?


「当事者」じゃないから判らないことだらけ。
しかも「医療従事者」でもない。
傍にいて、ただ竜樹さんから笑顔を引き出すのがやっと。
そんな取るに足らないことしかできない。


考えども考えども、思考は同道巡りを繰り広げるだけ。
まるで洗濯機の水のよう。
気分転換を兼ねた作業はかえって気持ちを塞いでしまった。


…さて、どうやって気持ちを立て直そうかな?

やる気なくご飯を食べていると、メールの着信音。
見るなり笑っていいのやら悪いのやら困ってしまった。

…やってくれたぜ、お友達(^^ゞ

低空飛行の空気はまた少し持ち上がった。


少し持ち上がったとは言えすっきりしていないのには変わりなくて。
前向きに物を考えたいから、思考は出口を捜し歩く。

…そういや、今、ハンズメッセやってるなぁ


竜樹さんちの料理の道具は本当に最小限しかなくて。
私が使うような道具は皆無に等しい。
卵焼き器、軽量カップ、そして菜切包丁…
特に、「菜切包丁愛好家」の私としては、ノーマルな包丁一つで野菜を切り倒す作業が辛い(笑)
ハンズに行ってしまうと、きっと予定してるよりもはるかに多く買い込んでしまいそうな気がして怖いんだけれど、こんな気分が塞がりがちな時にはいい気分転換になる。

「…よぉし、何が何でも定時に仕事を終えて『ハンズメッセ』に行くぞ!!」

そう決意して仕事をしたけれども。


「悪い!」

そう声をかけながら、次から次へと仕事を持ってくるのは課長(>_<)
それが3時間、ひっきりなしに続くのだ。
はっと気が付くと、ハンズメッセに行くにはちょっとな時間。


…ちっしょーーーーーっ、課長のばかやろぉぉぉぉぉぉぉっヽ(`⌒´)ノ


仕方なくなく家に帰る。
家に帰って何回か竜樹さんに電話したけれど、出てもらえなくてますます気がかりは増えるけれども。
結局、竜樹さんのいないところでぐだぐだ考えても、仕方がない。
「無理にでも運動させないと」と思ったら、竜樹さんの様子を自分なりに判断しながら声をかける。
本人と相談しながら、進めてみる。
結局、私は「当事者」じゃなんだから、竜樹さんの手伝いしかできないんだから。


少し居直らなければ、落ち込む一方だから。
わざと「居直りモード」を入れてみた。

目先の楽しい時間も大切だけど、壁を越えることも必要。
そのために何ができるのかを考える時に、感傷は不要。

…人間がやることだから、どうしても感情は入って仕方ないんだけどね(^^ゞ


私はことのほか感情が入りやすい性質だから、それくらい思ってかからないと沈む一方。
他の人にとって当たり前のように持っているものを、私と竜樹さんは0から手に入れないといけないんだから。

人一倍、前向きに対処しないといけないんだ。
気がかりは気がかりとして持っていてもいいけれど、引きずられてはならないんだ。


たとえこの決意が明日しぼんでも。
常にそう言う意識をもちながら、一歩一歩歩いていかないと仕方がない。
気がかりは歩いていくために必要なレーダーみたいなものであっても、それに振り回されてはならないんだと、自分自身に言い聞かせる。


「…さぁて、明日はどうするかなぁ?」

足りない材料を買いにハンズメッセに寄ってから、竜樹さんちに行こうか?
それとも、早く行ってできるだけ竜樹さんと一緒にいる時間を取ろうか?


悪いこともあれば絶対にいいことだってあるから。
気がかりを頭の隅に押しやって、「よくなれる方法」を探していこう。
竜樹さんと二人で探し出そう。


昨日の晩、友達とメッセで話した。
鏡のような友達なので(笑)、痛さがよく判る。
お互いの痛さについて話しあい、少し浮上した。
寝ようかな?と思ってたときに、別の友達が捕まえてくれた。
話の転がるテンポがよくて、またさらに浮上した。

痛さが和らいでくれ、ちゃんと眠れたはずなのに…


朝起きて、シャワーを浴びて服を着た途端、体中にぶつぶつが出た。

…25日の日と同じ症状だ(>_<)

参ったことに、服を着るとさらに痒みが増すのだ。
仕方がないので、会社に半休の申請の電話を入れ、薬を塗って痒みが治まるのを待つ。

…何時の間にか眠っていた


次に目が覚めたときには痒みが治まっていたので、会社に電話を入れ昼食を食べて出かけようとする。

けれど、また「捕まって」しまった。
心の痛さはなかなか消えることがなくて、困ってしまった。


こんな大人気ない話で何で今更詰まるんだろう?
そもそも昔は人になんて執着せずにいられたから、知ることのなかった痛さを。
何で今頃思い知ったり、心痛めたりするんだろう?

…ばかみたい


そう思いながら、情けない気持ちひとつ抱えて電車に乗る。


会社で仕事をしてても、ずっと引っかかり続ける。
業務に影響が出るほどに引っかからなかったのは幸いだけど。

…辛気臭いのをいつまでも、引っ張るのは嫌だ。


事態について、きちんと対処したいから。
「自分」の中に意識を沈める。


昔は「人に執着がなかった」のは確かだけれど、人を好きにならなかったわけじゃない。
恋愛・友情問わず、「人」は好きだった。
今よりももっと物をはっきり言うヤツだったから、「好きは好き」と割とオープンに宣言してた。
今でも人を好きになる気持ちは残っているのだけど…


何故、意固地なまでに「人に執着」しなくなったのか。
どうして「好意のアンテナ」は壊れたのか?


…気が付いてしまった。


昔はオープンに「○○さんと友達になりたいねん」「○○ちゃん好きやねん」って言ってた。
口にしなくても、見てりゃ判るほどはっきりしてたと思う。
皆それを何食わぬ顔して見たり聞いたりしていた。


けれど、私がそう言ってしまうと決まって、私が「好き」になった人に何かしら「小石」が投げられる。


皆のいる前で、私が好きになった人めがけて「あんたなんて大嫌い」と言う友達。
見えないところで、ちょっとした、だけどすごく棘のある言葉を放ったりする友達。
私に好きになられた人に嫌な思いをさせるようなことが次々と起こる。

いつでもその場面に出くわすと、「何でなんやろ?」と首を捻る。
子供のうちは首を捻りながらも、「私が庇い続けてたら、そのうち終わるだろう。子供のやることだし」と思ってた。
けれど、庇えば庇うほど激化する。
それでも残る友達もいれば、去る友達もいる。
彼氏と言われる人間ですらそうだった。
別れた途端に「最低」呼ばわり。
確かに「最低」なヤツもいたんだけどさ…(-_-;)

けれど、いい年齢になっても、それは続く。
学校が変わり、友達の構成メンバーが代わっても延々と続く。
誰と当たっても変わることのない事態。


…もぉええ、判った。
もう二度と「誰々が好き」なんて言わへん。
その代わり、誰の気持ちも見ない。
誰が自分を好きだろうが嫌いだろうが知ったことか!?
誰にも触らないから、誰も私に触るな。


「好意のアンテナ」は「壊れた」のではなくて、自ら「壊した」んだ。
誰かが判るように「霄が好き」と言ってくれない限り、他人の好意が判らないように。
自分の力でアンテナを壊したんだ。
そして、それにすら目を向けようとせずに、長いこと歩き続けたんだ。


もしかしたら、こんな私のことを「好き」になってくれた人がいたかもしれないのに。
もしかしたら、もっと「好き」になれた人がいたかもしれないのに。


自分の子供返りの根っこの部分が判ったのと引き換えに、どす黒い想いにむせ返る。


けれど。


何時の間にか、そこの部分の意識がすこんと抜け落ちた状態で、また人を好きになれるところまで回復してたっていうのも確かな事実だったんだ。
でなきゃ、友情の「片想い」にへこむようなことはなかっただろうから。


根っこが判れば、対処のしようもある。
人に迷惑をかけ過ぎない程度の「子供返り」なら許されるかもしれない。
痛さを知っているなら、その痛さを人には味合わせないで済むのかもしれない。
自分が見て見ない振りした「記憶の闇」から手に入れた何かを以って、そこからよりよい生き方を手に入れられたなら。

これはこれで無駄ではないのかもしれない。


そう思った。


そう思って仕事をすると、面白いくらい仕事が片付いて、定時に出ることができた。
家に帰りながら、昨日メッセで話した友達にメールを送る。
メールのやりとりを続け、ふとしたことから「解決」の糸口を見つける。
それが正しいのかどうか、わからないけれど。


いい年齢して「子供返り」してる私に、変わることのない暖かな気持ちをくれる友達がいてくれてることを知って、嬉しく思う。
いくつになっても忘れたくはない「嬉しい」の瞬間は確かにあるんだ。
竜樹さんに愛されるだけが、私の「嬉しい」じゃなかったんだ。
いろんなことに「嬉しい」と感じて、そこから生まれる暖かな気持ちを以って、自分の大切だと思う人たちみんなに何かを渡せたら。
今よりももっと機嫌のいい明日があるのかもしれない。
そういうのもまた、私には必要だったのかもしれない。


「子供返り」って、それが定着するとなんだか大人気なくて嫌なんだけれど。
子供時代に忘れてきたことを、一瞬取り返す時間があっても悪くはないね?
気が付いたところで、自体の根本解決に役立つかどうかはまた別問題だけど。

人を好きでいること、心が揺れること。
痛みは伴っても、それを持ち続けることで人間的な深さを身につけられるなら。

こんな痛さもたまには悪くないのかもしれない。
つかの間の「子供返り」に、教えられた気がして妙に晴れやかな気持ちになった。


たくさんの好意をくれたお友達に、いつか私の気持ちが還っていきますように。
長い間培った「気質」はそうそう簡単に改善されないかもしれないけれど、
いつかさりげない「想い」にも気がつきますように。
そんな「想い」にもまた、笑顔で向き合えますように。



片想い

2001年8月29日
「片想いがあるのは、恋愛だけじゃない。友情の片想いだって辛いんだよ」

もう逢うことのなくなった友達がかつてそう言っていた。
その時は、人に執着をするということを知らなかったから、
ただ「そうなのね?」と聞き流していたけれど…


朝起きて気が付いた。


…何で気が付いたんだろう?


友情の片想いだって辛いんだという現実は突然やってきた。


恋愛にしろ友情にせよ、「片想い」って辛かったんだ。

とても辛いことだったんだ。


ここまで、気が付かなかったのは幸せだったのか、不幸せだったのか判らないけれど、うす曇の少し心地いい温度のある朝に、突然気がついてしまったんだ。


たかだか、「友達」のことなのに、
なんだって今頃、気が付いちゃったんかなぁ…?


竜樹さんの声が聞きたくなった。
ただ、竜樹さんの声が聞けたらそれでよかった。


誰かの声が聞きたかった。
「たとえ片想いでも、お前は一人じゃない」と、
そう言ってもらいたかった。


なんでなんだろうね?
一体、何に捕まってるんだろうね?


ある朝突然襲った、情緒不安定。
飼いならすのは一苦労だ。


…本当に一苦労だ。


ありがとう

2001年8月28日
朝、家を出る前に何気ないことで心をぶつけてしまった。
竜樹さんともめたわけじゃない。
両親とケンカしたわけでもない。

理由は本当に大人気ないこと。


大切な友達とまたお別れすることになってしまったこと。


ずっとの別れじゃないかもしれない。
またいつか逢えるかも知れない。
こんな私を拾いに来てくれるかも知れない。
こんなことは別にこれがはじめてじゃない。
「今更、何をバカなことを」と思った。

けれど。

心をぶつけた痛みが消えない。


会社のある日には殆ど使わない、竜樹さんの大好きな香りをまとってみた。
今使ってるシャンプーと相性がいいのはBABY DOLLなんだけど。
「霄ぁ、いい匂いやなぁ」って言っては抱き締めてくれる、その香りの力を借りることにした。


電車に乗って、竜樹さんの笑顔を思い返しながらも、痛みが消えることがなくて。
何となく友達にメールをひとつ。
最近何かと心の近くに暖かな言葉をくれる友達に、思ってることを少し溢してみた。
今までなら、自分で飲み込んで済ませてきたのに、この弱さは何?と少し自己嫌悪を覚えたけれど。
とりあえず、午前中頑張ろうと思った。


会社では、相変わらずボス節が炸裂。
ここんところ何かにつけてへこみがちの私にはありがたいことで。
意味もなくけらけらと笑った気がする。
けれど、階段の踊場から見える小さな空を見てるうちに、何となくこの場に留まってたくなくなってきて。
小さなため息と意味のない笑いを繰り返す。


昼休みになって、携帯と鞄を持って脱兎のごとく事務所をあとにした。
自転車に乗って、ちょっと遠出する。
産業道路沿いに走ると、車の排気と照り返しで暑かったけれど、吹いてくる風が気持ちよくて自転車を飛ばす。
コンビニに寄って夕方に食べるおやつを買って、店の外で何気に携帯を見ると。
朝メールを送った友達から返事がきてた。


…その返事が暖かくて、ちょっと泣いてしまった。
泣いてしまう以上に嬉しい気持ちが先にたって、景気よく自転車をかっとばした。


人は出逢った時からもう既に別れの道を歩いているのだってことはよく知ってる。
見た目も言動も「強気」がウリの私は、本当は別れや拒絶に弱い。
でも、そんな弱さを見せたくなくて、そんな場面ではいつも視線は外し気味。
ちょっと笑ってみたりもする。
そんな風に本音を見せなければ、やがてこんな痛みとは適当に折り合いつけて生きてけるようになる。
そうなれないなら、そうなれるまで、ごまかしごまかし生きてやるさ。

そう思ってた。

けれど。


「寂しさを感じることに慣れることは、できないんでしょうね」


そう友達に声をかけてもらって、やっと思えたんだ。


…慣れなくても、いいんだ。
          無理して笑わなくてもいいんだ。


「ついてたるから、やりたいようにやってみろ!」って人の背中を叩くことには慣れてるけれど。
迷惑にならない程度に甘えることを知らない私は、つい甘えすぎるか頼らなさ過ぎるかのどちらかしかとりようがなくて。
甘えたの部分を出しすぎてしまったために、去っていった友達を知ってるから。
なるべく、自分の心が痛いと感じてることは口にしないようにしてたつもりだけど。

判ってくれる人がいるってこと。

…それがとても嬉しかったんだ。


日々、「闘う」ことに手一杯で。
生傷が絶えない自分を加療することや、弱ってる時に友達に頼る術がぱっと思いつかなくて。
一人で沈みきるまでじっと待って、あとは上がるだけの力にいろんなものを預けてきたけれど。

私の「弱さ」を預かってくれる人もいるんだ。


そう思うと、気持ちが楽になった気がしたんだ。


いつか、きっと。
いろんなことで傷ついても。
痛みも喜びもすべて誤魔化さずに受け入れようと願う気持ちをもってはじめて、
本当に「誰か」を預かれるようになるのかな?


「心に重くのしかかってることを話したからと言って、事態が何も変わるわけじゃないから。
話して気が休まるわけじゃないから」

そう言って何も言わない竜樹さん。
そのくせ、私の些細なことはよく見つけてしまって。
私の隠し遂せられなかったいくつかの「弱さ」をそっと預かってくれる竜樹さん。
何処まで行っても、思考の果てには竜樹さんがいて。
彼の役にもまた、立ててないことに気が付いて落ち込んだけれど。


私の「弱さ」を預かってくれる、友達に出逢って。
いろんな友達から毎日、いろんな言葉や暖かな気持ちを貰って。
私の中でいろんなものが生まれている、今日この頃。

いつの日か、大切な人たちの「弱さ」をちゃんと預かれるようになって。
やがて、自分の中で大切な人たちと上手に向かい合えるようになったとき。
「言っても仕方ないんだ」と言ってすべてを飲み込んでしまう竜樹さんの「弱さ」もまた預かれるようになるんだろうか?


青い空を吹き抜ける風は、迷いや不安を飛ばしてくれるけれど、また新しい迷いや不安も連れてくるんだろう。
けれど。
それと同じ分だけ、暖かな何かもまた連れてきてくれるんだろう。


別れにへこむ気持ちと自分の中に潜む小さな枷を取ってくれた暖かな気持ち。


風は同時に連れてきてくれた。
毎日、いいことも悪いこともいろいろあるけど。
歩いていく先にいつでも暖かな気持ちが待っていることを。
信じながら、「今」を歩こうか?


そうして身に付けていく小さな力が、いつか私の大切な人たちに還っていきますように。
竜樹さんの心にもまた還っていきますように。


暖かな気持ちをくれる大切な人たちに「ありがとう」

弱さを受け止めてくれた友達に「ありがとう」


しなやかな強さ

2001年8月27日
今日からまた会社が始まる。

先週は1日働く日が少なかったから、今日から5日間まともに働くのは堪えるだろうけれど。
竜樹さんも今日は学校に行くらしいし、私もめげてはいられないから…

…仕方ない、頑張るかぁ

ひとつ気を吐き、家を出る。


電車に乗っていてもいつもみたいに眠気が来ないから。
「おはようリレー」ができなかった友達にメールをひとつ、飛ばしてみた。

…そしたら。

お返事がきた(*^_^*)


そのお返事を見てると、距離はあっても空は繋がっているのだなと感じて、それだけで機嫌がよくなった。

…さぁて、今日も頑張るか

何気ない出来事でそう思ったんだ。


事務所に入ると、ボスは相変わらず絶口調で朝からハイテンション。
午前中、仕事がそれほど立て込まなかったせいもあって、つられてしまう(笑)
お寒いギャグから、まじめな話まで。
よくもまぁそれだけぽんぽんぽんぽん話題が飛び出すなぁと感心しきり。


…そんな中で、とても興味深い話があって。

「勝負事ってなぁ勝ってもそんなに嬉しもんやないけど、負けるとめっちゃ悔しい思わんか?」っていうボスの言葉。

「負けるよか勝つ方がいいじゃないですか?勝って嬉しくないんですか?」って返す私に、
「勝ってもなぁ『あ、っそ』ってことが多いんや。
負けたときの悔しさったらないねんや。『次は絶対、勝ったる』って思うんや」とボス。

…なるほどねぇ

妙に納得してしまった。


何気なく、いつでも。
自分自身にそのつもりがなくても、誰かしらと何かしらと比べて負けてるような気がしてへこんでる私だけれど。

いつまでも「負けっぱなし」でいるつもりはないんだよ?

「いつまでも負けっぱなしでなんていない!次はぜってぇ勝つ」って気持ちが、前に進む推進力になることもあるんだろうって気がする。
あんまり物事を「勝った」「負けた」で判断したくないんだけれど、強いて言うなら自分の中にある、そして外にもある「壁」に勝ちたいなって今は思うんだ。


…自分の中の弱さ。

自分の頭の中で予見しうることにめげて、いろんなものを投げ出したくなる意志の弱さ。
何気に自分自身を縛るものに押し潰されそうな自分自身。

そして、周りの人との軋轢。

そんなもののすべてを力技で捻じ伏せるんじゃなくて、折り合いつけながら上手に越えられたなら。
その力はきっと本当の意味で竜樹さんの役に立つんじゃないかって気がするんだ。


大きな力技には傷みが付き纏うから。
本当に必要になるまでは使わない方がいい。


周りに痛みを伴うということは、竜樹さんにも痛みを伴わせる可能性があるから。
大切な人を傷つけるような力なら必要ない。


大切な人を守りながら、欲しいと希うものを手に入れる力。

それはともすれば、綺麗事じみた日和見的な力だという声もあるだろうけれど。
外野はどうあれ、私が今欲しいと望むのはそんな力。
しなやかに目の前にある問題を時にはすり抜け、越えていく強さ。
生きていろんな現実にぶつかりながら、そんな力を手に入れたい。
竜樹さんと手に入れたい。
ボスと話してるうちに、何故だかそう思えたんだ。


自分の中で欲しいものと希うものはたくさんあるけれど。
きっと一番欲しいと思っているものを手に入れるために必要なのは、こんな力。
物事を成し得るために力を揮って、大切な人まで傷つけたんじゃ意味がない。

それじゃ「昔」と同じだから。

同じことの繰り返しこそ、私にとっては一番の「負け」だから。
それはやがて、大切な人を傷つけることを知っているから。


…まだもうちょっとだけ、頑張らないとね?


階段の踊場の小さな窓から見えた青空を見つめてそう思った。


ほんの少し居残りをして、会社を出る。
何気ない出来事から嬉しい気持ちや前向きな気持ちをもらえたせいか、すんごい気分がよかった。


…あと4日会社に行ったら、竜樹さんに逢える


次に逢う時は、いつもよりも2,3時間早く家を出て、昼食も作ろう。
体調が悪いと片付けがおろそかになると言ってたから、竜樹さんの邪魔にならない程度に片付けものもしよう。
「おいしい」と言ってもらえるような夕飯を作ろう。
私がいない間に不足した栄養分が少しでも補えるようなものを作ろう。
「月1の試練」で心配をかけたから、その分まとめて目一杯抱き締めてあげよう。
元気な笑顔で抱き締めてあげよう。


驚くくらい自発的な言葉が心を飛び交うのに煽られたように、思考自体がどんどん前向きになってくるのが判る。


…遮二無二自体の切り崩し図るばかりが能じゃないぜ?

「確かにね?」

自分の中の小さな声に、小さく、でも少し力をこめてそう返す。


あらゆるものを必要以上に折り曲げることなく、そして自分が曲がって折れることのないだけのしなやかなる力を以って、いろんなものを手に入れていこう。


…どれだけの不安材料があるのかを把握することは必要だけど、それに怯むなら降りるしかないんだよ?


竜樹さんの隣にいるということから。

大切なものを守るに足りるだけの力は、きっと力技だけじゃないはずだから。


これからゆっくり、身に付けよう。
私と竜樹さんが一緒にいるために必要な、しなやかなる強さを、いろんなものと向き合うことから手に入れよう。


衝動

2001年8月26日
昨日、またもや午前様だったから、めちゃめちゃ怒られた。
私が一方的に怒られるのは仕方がないけれど、竜樹さんまで悪く言うのだけは許せなくて、こぶしグーの状態のままでずっと黙って聞いていた。

反論すれば、きっとのっぴきならないことを言い出しただろうことは判りきってる。
心の中で言わずに溜めてある言葉、すべてぶちまける用意はあるから。
今それをやれば、間違いなく二度とこの家の敷居をまたぐことはなくなるだろう。
それはそれでいいような気もするけれど、この家にいてる以上はこの家のルールに従うのは当たり前だから。
最終兵器となりえる言葉たちを飲み込んで、ただやり過ごした。


そんな不機嫌な一日の終わりだったからだろうか?
夢に出てきたのは、竜樹さんと一緒にいてる暖かな時間のかけらばかりだった。


昨日、触れ合いながら、ずっと「霄はかわいいなぁ」と言い続けてくれた竜樹さん。
いつも以上に何度も何度もキスを重ねる竜樹さん。
瞼にも頬にも首筋にもキスをくれた竜樹さん。
家を出る前に互いを抱き締めあった時間。

まるで欲求不満なんじゃないだろうかとも思ったけれど、夢の中でだけは嫌なことを忘れていられた気がしたんだ。


そんな夢から醒めた時、漏らした一言は…


「…ずっと傍にいたいよぉ。一緒の家に帰りたいよぉ」


起き上がって、頭をかきむしってしまった。
竜樹さんに言いたいけれど、言えない一言だから。


…「今は言わない」と決めた言葉だから


竜樹さんが闘病生活に入ってから?
それとも、術後の経過が思わしくない状態が始まってから?
今はまだはっきりと思い出せないけれど。
二人の「未来」の話。ずっと一緒にいたいという想い。
私から口にするのをやめてしまった。

それは竜樹さん自身を追い込むことにしかならないと、判っていたから。
私の立場を慮って、早く何とかしようと焦る竜樹さんを見ていて辛かったから。


「もう、竜樹さんを焦らせてしまうような言葉は出さない」


そう決めたのは私だから。


それまではそれでもよかったのかもしれない。
竜樹さんの体調も悪かったし、いろんな面で外でゆっくりしていられなかった。
そんな余裕のなさから心無い言葉が飛び出しても、別々の家に逃げ帰ることができる環境のままの方が、今はよいだろうと思っていたから、こんなことを願う必要も、言えば竜樹さんを焦らせるだけの言葉も口にする必要がなかったんだ。


けれど。


ご飯を作れば、竜樹さんは喜んでたくさん食べてくれる。
二人で暖かな気持ちになれる時間も空間もある。
私がいなくなることを、竜樹さんが寂しく思うようだってことが少し見えてきて。
心の中に小さな衝動が生まれそうになってるんだ。


「もう、別々の家に帰るのはイヤだよ。ずっと一緒にいたいよ」


生活するということは、生半可じゃないことは判ってる。
週末にご飯を作って、ちょろっと竜樹さんの世話を焼く程度のことで、できるつもりになるのがおこがましいことも判ってる。
それを「今」口にしたって、即実現できる環境ではないことも、それを望むことが竜樹さんの心に大きな負担を強いることも判ってる。


…なんで今になって、判りきってることを飲み込めずにいるんやろ?


もう一度頭をかきむしって、部屋を出た。


リビングでは両親が、2週間経っても我が家にやってこないプードルさんのことを話し合ってる。
もしも、治療しても治らないなら、もうプードルさんを引き取るのはやめよう。
そんな話をしていた。


…また、「病気」がネックになるのか!?


竜樹さんと私の前に立ちはだかるのも「病気」
プードルさんがうちに来れなくなるかもしれない最大の理由もまた「病気」


別に竜樹さんとプードルさんのことは全然関係ないのに、なんだか妙にムッとしたんだ。
だから意見を求められても、「自分らで決めたらいいやんか?」と投げやりに返してしまった。
大人気ない態度だったと自己嫌悪に陥りはしたけれど、竜樹さんのことを話すと両親の口から飛び出すフレーズが心を掠める。


「そんな病気を抱えてるような人、とっとと見切りつけなさいよね?」


気持ちがどんどん沈んでいく気がする。


昨日逢ったとこだというのに、無性に竜樹さんに逢いたかった。
昨日の夜のように、ただ抱き締めてもらえればよかった。
ただ、竜樹さんの傍で彼の役に立てることをしたかった。
我儘でも何でも、ただ竜樹さんの傍にいて、彼の笑顔に触れたかった。


そのうち両親はペットショップに出かけていった。
私は家で一人、落ち着かない心のままパソコンを触ったり、本を読んだりした。
時々、竜樹さんに電話をしてみたけれど、話せないまま。
きっととてもしんどかったんだろう。


「…昨日、無理をさせなかったらよかったな」


写真の中の小さな笑顔を見つめてそう思った。
写真の中の竜樹さんはただ優しく笑っていた。
その笑顔だけで、私の中の小さな衝動が私自身を食い破って出てくるのを防いでくれた気がした。


「順序を踏まないと、次にはいけないから。めげずに『今』を乗り越えよ?」


暫くすると、自分の中で小さな衝動はそんな前向きな気持ちに変わっていた。
特別な何かがあって抑えられた訳じゃなく、ただ写真の中の小さな笑顔に救われた。


…ありがとうね、竜樹さん


心の中でそう呟いた。


そのうち両親が戻ってきた。
結局、もう1週間だけ様子を見るということで決着がついたみたい。
行き先が決まらずに、やがては命の行方もわからなくなることだけは避けられたプードルさん。


…病気の壁もいつかは越えられるのかな?


根拠レスだけど、そう思ったんだ。
そう思うことで、小さな衝動をまだ抑えていられそうな気がしたんだ。


常に小さな衝動は、胸のうちに巣食い、私自身をそして竜樹さんをも食い破ろうとするけれど。
いつかは越えられると自分が信じなくてどうするんだって思う。
越えられる、越えてみせるっていう気持ちから生まれる何かがある。
それがどんな力を持つのか、この目で確かめるまで。
衝動に身を任せるわけにはいかないんだ。


あともう少しだけ、気力を繋ごう。
いつか竜樹さんと笑顔溢れる毎日が過ごせるようになる日まで。


小さな衝動に封印をしよう。


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