苦手なんだけど好き。

私は関心があっても苦手だと感じるものには意図的には近づこうとしないから、
その感情を理解することが出来ない。
理解する努力はしてみるのだけど、理解というところに到達する前に伴う痛みでずたぼろになるから理解しきれないとこで降りちゃうのが原因かもしれない。
「傷負うのがヤなんだね」と指摘する友達もいるのだけれど、特にここ数年必要以上に傷負って歩けるだけの余力が見出せないせいもあって、苦手だと思うものには相当意図的に近づかないようにしてる。

だから、余計に判らないままなんだ。

一生懸命話し掛けてくる人が本当は私のことを苦手だと思ってるってことには気づいてた。
どちらかというと好意よりも苦手意識の方をよくキャッチできる私は常にどうしていいのか判断に惑う。

自分が好意を抱く人が自分の好意を迷惑だと思ってると判れば、そっと背を向ければいい。
そうすれば双方共に不快に思うことが少なくて済む。
悲しい思いも少なくて済む。
好意を持ってくれてる人に対して苦手意識しか持てなかったとしたら、申し訳ないとは思うけれど背を向けてしまえばいい。
好意を持ってくれた人には痛みを与え、自らには痛みを与えてしまったという自責の念だけが残ることをよいことだとは思わないけれど、それはそれで仕方がないと無理矢理飲み込んで進めばいい。
好意の全てを受け入れられるほどに、人の間口は広いと思わないから。

けれど、自分に対する苦手意識と好意が混在してる時はどうしたらいい?
苦手意識に目を瞑ればいいのか、それとも好意そのものに目を瞑ればいいのか。

判らなくなった。

相手の中にある私に対する苦手意識に目を瞑りつづけ、出来る限り好意を寄せてくれてありがとうという気持ちを差し出せたならと思って言葉を紡ぎだしても。
好意と混在する苦手意識が消えていく様が見えない。
その度にどうしていいか判らなくて、対応に窮しながらまた言葉を紡ぐ。
それの繰り返し。
「苦手だけど、好きって気持ちはあるんだよ?」といくら人に言われても、自分が体感できなきゃ知ることは出来ない。
その間に自分の身の回りに起こる様々な出来事の洪水を乗り切る過程の中で、その繰り返しそのものに目を瞑ることが出来なくなって、
自ら背を向ける形になった。

嫌いだというわけじゃない。
決定的に背をむけなきゃならない理由があったわけじゃない。
ただ判らなくなっただけ。
私に向けられる好意の中に間違いなく存在する苦手意識に目を瞑れなくなっただけ。

それを話して理解なんてされるのか?
説明してもしなくても人でなしに変わりないなら、もういいじゃないか。
必要以上の痛みを与えてしまうくらいなら、黙って背を向ければいい。
そう思って背を向けた。
今もまだ心は痛むけれど、それ以上の対処方法は今も私の中には見つからない。

もう互いの想いを語り合うことがないと判ってる状態になった今、こんな形で総括する自分自身を卑怯だなと思うけれど。
好意と苦手意識の狭間で揺れ続けながら私に触れる必要のない世界で、
私に対して意識を割く必要性のない世界で。

ただ幸せでいてくれたらそれでいいなと思う。

好意を寄せてくれてたことはありがとう。
苦手意識を掃ってあげられなくてごめんなさい。
いつか「苦手だけど、好き」っていう気持ちを理解できるようになった時、
そういう想いで私を見つめる誰かにもう少し上手な対応が出来ればと思う。
想いを込め過ぎず、でも腫れ物に触るような扱いでもない。
ただふんわりと苦手意識を払えるような、そんな力を持てたらって思う。

暖かな日差しと轟音巻き上げる強い風とが混在する風景を窓越しに眺めながら、そんなことを思ってた。
時効なんてある訳のない話にそんな注釈挿してみたところで、言い訳でしかないってわかってはいても、考えてしまう、口にしてしまう、そんな想いが私の中にはまだ確かにある。

…とうに終わってしまってることに捕まりつづけるのは、心身ともに万全じゃないからかな?

そう思うと不意に聞きたくなって、手にする携帯。
風強い屋上に出る気にはなれなくて、階段の踊場から竜樹さんに電話。
日差しが暖かな感じがする割に妙に冷えるからきっと調子悪いんだろうなぁと思いながらも、大好きな声は穏やかに聞こえてくる。

「調子は悪いけれど、昨日よりはマシやねん。
 明日も来てくれるんやから、今日はまっすぐ帰ってゆっくり休んでや?
一昨日、昨日と出ずっぱりでしんどいやろ?」

「うん、ちょっとだけね。
今日はちゃあんと休んで、明日は元気に行くよ?」

「元気な状態できてなぁ」

本当に数分だけだったけれど、心は随分落ち着いた。
しんどい息の中から生まれてくる声は、間違いなく私を必要としてるものだったから。
機械越しにでもその温みをきちんと感じられるから。
だから、私は行かなきゃならない場所へ行く。

受けた痛みも与えてしまった痛みも消えることはないなら、その痛みに纏わる幾許かの想いと記憶だけを連れて、一生共にすると決めたたったひとりの人と共に行くべき場所へ向けてまた迷いなく歩き出そう。
目には見えなくてもはっきり感じられるようになった、ある場所へ向けての流れを受けて。
私は私の大切な想いを抱え、大切な人を抱き締めそこに行こう。
あなたはあなたの大切な想いを抱え、大切な人を抱き締め暖かな場所へ向かって。

私が暖かな愛情をずっと手にしていられますように。
そして暖かな場所にきちんと辿り着けますように。

あなたが暖かな愛情をずっと手にしていられますように。
そして暖かな場所にちゃんと辿り着けますように。

心に残る痛みを忘れずに、
でも私は私の行くべき場所へ向かって歩く。
振り返ることなく、私を待つべき場所へと向かう。

Wish me Love,Wish you Love.

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