Heart Line
2004年3月11日寝ても寝ても疲れが取れないのは相変わらずだけど、あと2日頑張れば竜樹さんと一緒に過ごせる週末。
そう思うと重い感じが抜けない瞼や体も幾分軽くなったような気がする。
今日明日とフロアの半分近くの課員さんが東へ西へと飛び立っていて、事務所に居ない課員さんにかかってくる電話がかんかん煩いけれど、雑用が少し減るのはありがたい。
ただいない課員さんの物件でひとつトラブると破竹の勢いで事態が大きくなっていくのは半ばお約束なので、それだけは避けられたらと祈るような思いで午前中きりきりと仕事を片す。
昼休みがきて、いつもよりうんと少ない洗い物とボスティをいれた後、いつものように携帯片手に屋上に避難。
「今日は元気やん?」
「今日はね、少し楽なんですよ」
「こっちもどうにかやってるよ」
ほよんと柔らかな声を聞いていると事務所になんて戻りたくなくなるけれど、あっという間に事務所に戻って第2戦に突入しなければならない時間になる。
「戻りたくはないんだけど、行ってきます」
「うん、あと2日やし、頑張って」
「ありがとう。頑張ってくるね」
「頑張る」って言葉。
塾講時代よりももっと以前からむやみに人様に向けて使ったり使われたりするのを何だかなぁと思っていたけれど、その言葉が時にやさしいものだとも思えるようになったのはここ数年。
少なくとも今の私にとって、竜樹さんのそれは優しいもの。
その言葉ひとつでまだやれるような気になってくる。
青空と魔境の境界にある重いドアをごとりと閉めて、また魔境に戻る。
昼からもそれ相応にいろいろとありはしたけれど、竜樹さんの言葉ひとつでいつもならきっつい4時間半をどうにか気持ちが沈むことなく乗り切ることが出来た。
「携帯っていいな。竜樹さんとお昼休みに話せるっていいな」と思いながら魔境を後にした。
何となく気持ちが沈むことなく魔境を乗り切れたことが嬉しくて、もう一度竜樹さんに電話。
「どうにか頑張れたよー。
あと1日頑張ったら、夜からそっちに行くからねー」
「本当にこっちに来れるようになったん?
どうなったか話してくれへんかったから、気になっててん」
「いや、私、行くと言ったら行きますよ?」
「そっか、そしたらこっちも段取りつけとくなぁ」
愛しい週末の段取りは固まりつつある。
それはまた私を元気にしていくような気がして嬉しくなる。
「竜樹さんと一緒に生活を始める前に魔境を脱出する」
それは数年来というよりも魔境に足を踏み入れた頃から既に決意を固めていたことではあるけれど、多分それは適わないだろう。
よほど劇的に物事を変えられるような風を上手にキャッチでもしない限りは。
それでも、竜樹さんの声や暖かさがすぐ傍で感じられる機会がもっともっと増えるのなら。
生命の一部を背負う重さよりもはるかに共に歩くための力を得ることができる気がする。
竜樹さんと一緒にい始めた頃、竜樹さんに渡された携帯は、機種こそ何度か変わってきたものの、それを渡してくれた主の声をずっと届けつづけてくれる。
時としてそれは文字であり、機械で変換された肉声であり。
ただどんな形であっても、そこには間違いなく彼がいるのだということに違いなくて、少なくともそれさえ自分のいる場所に持ち込むことができれば、私は力を奮い起こして前に進むことができる。
大袈裟だけど、そうしてこれからも魔境を歩いていくんだろう。
ホームに滑り込んでくる電車に乗り込み、そんなことを考えながら手にしてる携帯を触っていると、ふわんとディスプレイが明るくなる。
見ると、友達からメールがひとつ。
それもまた何だか嬉しい気がして、携帯のボタンをこちこち。
想うことを言葉に置き換えて飛ばす。
そのキャッチボールを数回繰り返しながら、自宅まで戻る。
自宅に戻った途端、携帯に着信。
久しぶりに友達と話してると、竜樹さんとやりとりしたそれとはまた違う嬉しさが湧いてくる。
嬉しい気持ちを抱えながら話しつづけてるうちに、嬉しいびっくりがひとつ。
電話を切ってもまだどきどきする自分だけがそこにいる状態が長く続いた。
「携帯持ってると誰かしらに捕まえられるから、自由がなくてなんかヤだ」なんて言ってたこともあったけれど、今の私には携帯は心繋ぐラインみたいになってる。
その携帯を託してくれたのは竜樹さん。
そこから何人もの人と心を通わせてきた。
もちろん、竜樹さんとも。
竜樹さんがくれたHeart Lineは暖かな何かを連れてくる。
それが喜びばかりでなく痛みを伴う時もあるけれど、心を繋ぐ何かを連れてくる。
愛しいHeart Line
そう思うと重い感じが抜けない瞼や体も幾分軽くなったような気がする。
今日明日とフロアの半分近くの課員さんが東へ西へと飛び立っていて、事務所に居ない課員さんにかかってくる電話がかんかん煩いけれど、雑用が少し減るのはありがたい。
ただいない課員さんの物件でひとつトラブると破竹の勢いで事態が大きくなっていくのは半ばお約束なので、それだけは避けられたらと祈るような思いで午前中きりきりと仕事を片す。
昼休みがきて、いつもよりうんと少ない洗い物とボスティをいれた後、いつものように携帯片手に屋上に避難。
「今日は元気やん?」
「今日はね、少し楽なんですよ」
「こっちもどうにかやってるよ」
ほよんと柔らかな声を聞いていると事務所になんて戻りたくなくなるけれど、あっという間に事務所に戻って第2戦に突入しなければならない時間になる。
「戻りたくはないんだけど、行ってきます」
「うん、あと2日やし、頑張って」
「ありがとう。頑張ってくるね」
「頑張る」って言葉。
塾講時代よりももっと以前からむやみに人様に向けて使ったり使われたりするのを何だかなぁと思っていたけれど、その言葉が時にやさしいものだとも思えるようになったのはここ数年。
少なくとも今の私にとって、竜樹さんのそれは優しいもの。
その言葉ひとつでまだやれるような気になってくる。
青空と魔境の境界にある重いドアをごとりと閉めて、また魔境に戻る。
昼からもそれ相応にいろいろとありはしたけれど、竜樹さんの言葉ひとつでいつもならきっつい4時間半をどうにか気持ちが沈むことなく乗り切ることが出来た。
「携帯っていいな。竜樹さんとお昼休みに話せるっていいな」と思いながら魔境を後にした。
何となく気持ちが沈むことなく魔境を乗り切れたことが嬉しくて、もう一度竜樹さんに電話。
「どうにか頑張れたよー。
あと1日頑張ったら、夜からそっちに行くからねー」
「本当にこっちに来れるようになったん?
どうなったか話してくれへんかったから、気になっててん」
「いや、私、行くと言ったら行きますよ?」
「そっか、そしたらこっちも段取りつけとくなぁ」
愛しい週末の段取りは固まりつつある。
それはまた私を元気にしていくような気がして嬉しくなる。
「竜樹さんと一緒に生活を始める前に魔境を脱出する」
それは数年来というよりも魔境に足を踏み入れた頃から既に決意を固めていたことではあるけれど、多分それは適わないだろう。
よほど劇的に物事を変えられるような風を上手にキャッチでもしない限りは。
それでも、竜樹さんの声や暖かさがすぐ傍で感じられる機会がもっともっと増えるのなら。
生命の一部を背負う重さよりもはるかに共に歩くための力を得ることができる気がする。
竜樹さんと一緒にい始めた頃、竜樹さんに渡された携帯は、機種こそ何度か変わってきたものの、それを渡してくれた主の声をずっと届けつづけてくれる。
時としてそれは文字であり、機械で変換された肉声であり。
ただどんな形であっても、そこには間違いなく彼がいるのだということに違いなくて、少なくともそれさえ自分のいる場所に持ち込むことができれば、私は力を奮い起こして前に進むことができる。
大袈裟だけど、そうしてこれからも魔境を歩いていくんだろう。
ホームに滑り込んでくる電車に乗り込み、そんなことを考えながら手にしてる携帯を触っていると、ふわんとディスプレイが明るくなる。
見ると、友達からメールがひとつ。
それもまた何だか嬉しい気がして、携帯のボタンをこちこち。
想うことを言葉に置き換えて飛ばす。
そのキャッチボールを数回繰り返しながら、自宅まで戻る。
自宅に戻った途端、携帯に着信。
久しぶりに友達と話してると、竜樹さんとやりとりしたそれとはまた違う嬉しさが湧いてくる。
嬉しい気持ちを抱えながら話しつづけてるうちに、嬉しいびっくりがひとつ。
電話を切ってもまだどきどきする自分だけがそこにいる状態が長く続いた。
「携帯持ってると誰かしらに捕まえられるから、自由がなくてなんかヤだ」なんて言ってたこともあったけれど、今の私には携帯は心繋ぐラインみたいになってる。
その携帯を託してくれたのは竜樹さん。
そこから何人もの人と心を通わせてきた。
もちろん、竜樹さんとも。
竜樹さんがくれたHeart Lineは暖かな何かを連れてくる。
それが喜びばかりでなく痛みを伴う時もあるけれど、心を繋ぐ何かを連れてくる。
愛しいHeart Line
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