歩幅をあわせて…
2003年4月28日2人でお布団を敷く準備をしてて、ふと床を少し掃除したい気分に駆られた。
それは竜樹さんも同じだったようで、簡単に掃除しようということになるけれど、時計を見ると深夜の時間帯。
さすがにこんな時間帯から掃除機をかけるなんてことはできるはずがない。
どうせなら掃除機をかけられる時間帯に気付けよって自分でも思ったのだけど、掃除機をかけれる時間帯は別の片づけをしたりごはんを作ったりしてたからできなくて。
「それでもやっぱり掃除したいんだよね(-_- )」って気持ちは双方にあったので、どこからともなく小さな箒を持って来て、ちょこちょとこと床を掃いてみる。
我ながらすごいレトロな掃除の仕方だよなと思いつつ、結構このちび箒が捨てたものでなくある程度納得いく線まではきれいになる。
そうしてようやっと安心して、また横になる。
明日は有給を取ってるから、朝になったらまた会社だと嘆くこともない。
何らかの用事のために休んでるわけでもないから、ふたりでのんびり過ごせる。
そう思うとさらにまたなかなか寝付くことができずにぽつぽつと言葉を溢す。
竜樹さんもなかなか寝付けないらしく、私の言葉に返事をしながらテレビをつける。
「…あれ?この時間帯ってこんな映像流してるんですね?」
「そやねん。眠れへん時はテレビつけてぼーっと眺めてることあるんや」
「私はこの時間帯はビデオ見る以外でテレビを使うことないから知らなかったです」
画面を流れるアジアのどこかの川の映像を眺めながら、だんだん言葉の数が減ってくる。
竜樹さんの寝息が聞こえてきたので、そっとテレビを消して私もまた眠りにつく。
友達の朝メールの着信音で目を覚ます。
それにすぐさま返事をしようかと思うけれど、眠った時間が時間なだけに頭がどうもしゃんとしない。
どうお返事しようか考えてるうちに、またうとうととしてしまった。
暫くして目が覚めると、窓の外は青空が広がり、眩しいほどの日光が部屋に差し込んでる。
中途半端な寝方をしたせいなのか頭に鈍い痛みが走るけれど、もそっと起き上がり着替えて台所に立ち、昨日の料理の残りを暖めなおし、冷蔵庫の中のトマトを切る。
「…そらぁ、起きてたんかぁ(p_-) ...」
「さっき起きたとこですよ。珍しいですね、いつもは竜樹さんのが早いのに」
「寝た時間遅かったからなぁ…(p_-) ...」
「そうでしたね(^-^; 」
竜樹さんも起きてきて、コンロでちっさな目玉焼きを作り始める。
ごはんもある、おかずも十分ある、取り合わせはちょっとヘンだけれど、品数だけは豊富なブランチ。
「いただきます♪(*^人^*)」
普段の日なら考えられないほど、ゆったりとした暖かな時間。
会社に行ってれば昼食を摂るという作業そのものが煩わしくてならないと感じるのに、一緒に食べる人が違うだけで気分的にこんなに満たされるものなのか。
毎度毎度竜樹さんと食事する度にそれは感じていることだけれど、そんな風に思えること自体ありがたいことなんだろうなって思う。
いつもの日の昼食にしては沢山食べ、後片付けをする。
ひといきつこうかなと思っていると、目が真っ赤になって涙が止まらない。
よい天気だったから、ヒノキの花粉がまいまいしてたのかもしれない。
よりにもよって抗菌目薬も手元になく、目を擦ってはいけないと思いながらもつい擦ってしまう。
竜樹さんの方もあまり調子はよくないらしく、2人してぐずぐずしてしまう。
部屋の中にいても日の光に当たっているとそれだけで随分気分はよくなるけれど、どうせならどこかに出かけたいなぁっていう気もする。
特に竜樹さんはその思いが強いようで、何とかして出かけたいといろいろ工夫しては見るけれど、どうも日差し以外の部分で竜樹さんの身体に思わしくない何かがあるのか、結局部屋でひなたぼっこ状態。
日が翳るまで、何をするでもなくひなたぼっこして過ごした。
日が少し傾いてきて、窓の外の空が少し赤くなってきた頃。
「霄、ちょっと外へ出よ?」
「身体の方は大丈夫ですか?」
「あんまり思わしくないけれど、1日家の中にいてる方が身体に悪そうや」
「…ですね(-_-; 」
そうして、ふたり並んで散歩に出る。
普段どちらかといえば足早に歩く私だけど、竜樹さんと歩く時は努めてゆっくり歩くようにしてる。
それは竜樹さんの身体に負担にならない程度のペースを保ちたいというのもあるけれど、ゆっくり歩くことで見える景色も同じ道を歩いてる時間も楽しみたいと思うから。
「いつもそらちゃんが買い物に行く店とは別の店も教えたるなぁ。
もしかしたら、そっちのが近いかも知れへんから」
そうして今まで殆ど歩いたことのない方向に向かって歩き始める。
竜樹邸の近所は既に探索済みのように思ってた感があって、大体行き着ける場所は決まっていたけれど。
竜樹さんがゆっくりと知らない場所への道を拓いてくれる感じがする。
ゆっくりゆっくりと歩いたので結構歩いた気になったけれど、竜樹邸からそれほど遠くない場所に私の知らないお店はあった
そこで冷凍して保存の利きそうな食材と竜樹さんが足りてないなと思う食材をいくつか買い足して、並んで竜樹邸まで戻る。
竜樹邸に戻って、食材を片付けてると、また竜樹さんが立ち上がる。
「もう少し歩きたいねんけど、そらちゃんも来る?しんどくなかったらやけど…」
「行きます♪」
歩くことは十分リハビリに結びつく。
能動的にそれをしようと思って動いていられる時は徹底的にお付き合いしたいと思うので、またジャケットを羽織って竜樹邸を出る。
竜樹さんはまた私が歩いたことのない道をゆっくりとしたペースで歩いていく。
時折外灯に照らし出される木々の翠に変に驚いたり、竜樹邸の近辺とは少し違う風景をのんびりと感じ取りながら歩く。
私が知らずにいた道はやがてよく走り回る道と合流する。
「一人で歩くのが不安な時は、いつも通ってる道を歩いたらええねんで。
一緒に歩くから、たまには違う道もええかと思って歩いてみただけやから」
まだまだ歩けそうな感じの竜樹さんに驚きながらも、あまり飛ばしすぎると後が大変だからと、また来た道を引き返す。
明るかった空は真っ暗になり、外灯がぽつぽつ点く道をまたゆっくりしたペースで引き返す。
ゆったりとした散歩の間は、目のアレルギー症状も幾分治まってた感じがして、不思議だった。
竜樹邸に帰り、やっと「何か食べたい」と仰った竜樹さん。
お待たせしないことだけを最優先に考えた結果、買出しの時に購入した牛肉を焼いて、何種類かのたれにつけて食べるという、これまたシンプルな夕食。
後片付けをして甘えたがる竜樹さんとくっついて過ごしてるうちに、今度こそ本当に帰らないとならない時間になる。
居心地のいい時間から離れて、またいつもの生活に戻る。
これもまた今に始まったことじゃないけれど、何度やってきても慣れることはない。
それは竜樹さんも同じなんだろうか?
何とか送っていこうと身体が痛むのに無理をしようとする。
「ゆっくり休んでてください。この時間帯ならちゃんと自分で帰れますから」
「あともう1日ここにいます」と言えない自分が嫌でならないけれど、それを言い出したらキリがないから。
重い腰を上げて、柔らかな時間に別れを告げる。
竜樹邸を出て、バスに乗って、電車に乗って…
寂しいという名の痛みは癒えることはないのだけど、竜樹さんと歩幅をあわせて歩いたようにゆっくりとその日を手に入れるためにまた歩こう。
竜樹さんと一緒にいられなくて寂しいという痛みに別れを告げるその日を手に入れるために。
それは竜樹さんも同じだったようで、簡単に掃除しようということになるけれど、時計を見ると深夜の時間帯。
さすがにこんな時間帯から掃除機をかけるなんてことはできるはずがない。
どうせなら掃除機をかけられる時間帯に気付けよって自分でも思ったのだけど、掃除機をかけれる時間帯は別の片づけをしたりごはんを作ったりしてたからできなくて。
「それでもやっぱり掃除したいんだよね(-_- )」って気持ちは双方にあったので、どこからともなく小さな箒を持って来て、ちょこちょとこと床を掃いてみる。
我ながらすごいレトロな掃除の仕方だよなと思いつつ、結構このちび箒が捨てたものでなくある程度納得いく線まではきれいになる。
そうしてようやっと安心して、また横になる。
明日は有給を取ってるから、朝になったらまた会社だと嘆くこともない。
何らかの用事のために休んでるわけでもないから、ふたりでのんびり過ごせる。
そう思うとさらにまたなかなか寝付くことができずにぽつぽつと言葉を溢す。
竜樹さんもなかなか寝付けないらしく、私の言葉に返事をしながらテレビをつける。
「…あれ?この時間帯ってこんな映像流してるんですね?」
「そやねん。眠れへん時はテレビつけてぼーっと眺めてることあるんや」
「私はこの時間帯はビデオ見る以外でテレビを使うことないから知らなかったです」
画面を流れるアジアのどこかの川の映像を眺めながら、だんだん言葉の数が減ってくる。
竜樹さんの寝息が聞こえてきたので、そっとテレビを消して私もまた眠りにつく。
友達の朝メールの着信音で目を覚ます。
それにすぐさま返事をしようかと思うけれど、眠った時間が時間なだけに頭がどうもしゃんとしない。
どうお返事しようか考えてるうちに、またうとうととしてしまった。
暫くして目が覚めると、窓の外は青空が広がり、眩しいほどの日光が部屋に差し込んでる。
中途半端な寝方をしたせいなのか頭に鈍い痛みが走るけれど、もそっと起き上がり着替えて台所に立ち、昨日の料理の残りを暖めなおし、冷蔵庫の中のトマトを切る。
「…そらぁ、起きてたんかぁ(p_-) ...」
「さっき起きたとこですよ。珍しいですね、いつもは竜樹さんのが早いのに」
「寝た時間遅かったからなぁ…(p_-) ...」
「そうでしたね(^-^; 」
竜樹さんも起きてきて、コンロでちっさな目玉焼きを作り始める。
ごはんもある、おかずも十分ある、取り合わせはちょっとヘンだけれど、品数だけは豊富なブランチ。
「いただきます♪(*^人^*)」
普段の日なら考えられないほど、ゆったりとした暖かな時間。
会社に行ってれば昼食を摂るという作業そのものが煩わしくてならないと感じるのに、一緒に食べる人が違うだけで気分的にこんなに満たされるものなのか。
毎度毎度竜樹さんと食事する度にそれは感じていることだけれど、そんな風に思えること自体ありがたいことなんだろうなって思う。
いつもの日の昼食にしては沢山食べ、後片付けをする。
ひといきつこうかなと思っていると、目が真っ赤になって涙が止まらない。
よい天気だったから、ヒノキの花粉がまいまいしてたのかもしれない。
よりにもよって抗菌目薬も手元になく、目を擦ってはいけないと思いながらもつい擦ってしまう。
竜樹さんの方もあまり調子はよくないらしく、2人してぐずぐずしてしまう。
部屋の中にいても日の光に当たっているとそれだけで随分気分はよくなるけれど、どうせならどこかに出かけたいなぁっていう気もする。
特に竜樹さんはその思いが強いようで、何とかして出かけたいといろいろ工夫しては見るけれど、どうも日差し以外の部分で竜樹さんの身体に思わしくない何かがあるのか、結局部屋でひなたぼっこ状態。
日が翳るまで、何をするでもなくひなたぼっこして過ごした。
日が少し傾いてきて、窓の外の空が少し赤くなってきた頃。
「霄、ちょっと外へ出よ?」
「身体の方は大丈夫ですか?」
「あんまり思わしくないけれど、1日家の中にいてる方が身体に悪そうや」
「…ですね(-_-; 」
そうして、ふたり並んで散歩に出る。
普段どちらかといえば足早に歩く私だけど、竜樹さんと歩く時は努めてゆっくり歩くようにしてる。
それは竜樹さんの身体に負担にならない程度のペースを保ちたいというのもあるけれど、ゆっくり歩くことで見える景色も同じ道を歩いてる時間も楽しみたいと思うから。
「いつもそらちゃんが買い物に行く店とは別の店も教えたるなぁ。
もしかしたら、そっちのが近いかも知れへんから」
そうして今まで殆ど歩いたことのない方向に向かって歩き始める。
竜樹邸の近所は既に探索済みのように思ってた感があって、大体行き着ける場所は決まっていたけれど。
竜樹さんがゆっくりと知らない場所への道を拓いてくれる感じがする。
ゆっくりゆっくりと歩いたので結構歩いた気になったけれど、竜樹邸からそれほど遠くない場所に私の知らないお店はあった
そこで冷凍して保存の利きそうな食材と竜樹さんが足りてないなと思う食材をいくつか買い足して、並んで竜樹邸まで戻る。
竜樹邸に戻って、食材を片付けてると、また竜樹さんが立ち上がる。
「もう少し歩きたいねんけど、そらちゃんも来る?しんどくなかったらやけど…」
「行きます♪」
歩くことは十分リハビリに結びつく。
能動的にそれをしようと思って動いていられる時は徹底的にお付き合いしたいと思うので、またジャケットを羽織って竜樹邸を出る。
竜樹さんはまた私が歩いたことのない道をゆっくりとしたペースで歩いていく。
時折外灯に照らし出される木々の翠に変に驚いたり、竜樹邸の近辺とは少し違う風景をのんびりと感じ取りながら歩く。
私が知らずにいた道はやがてよく走り回る道と合流する。
「一人で歩くのが不安な時は、いつも通ってる道を歩いたらええねんで。
一緒に歩くから、たまには違う道もええかと思って歩いてみただけやから」
まだまだ歩けそうな感じの竜樹さんに驚きながらも、あまり飛ばしすぎると後が大変だからと、また来た道を引き返す。
明るかった空は真っ暗になり、外灯がぽつぽつ点く道をまたゆっくりしたペースで引き返す。
ゆったりとした散歩の間は、目のアレルギー症状も幾分治まってた感じがして、不思議だった。
竜樹邸に帰り、やっと「何か食べたい」と仰った竜樹さん。
お待たせしないことだけを最優先に考えた結果、買出しの時に購入した牛肉を焼いて、何種類かのたれにつけて食べるという、これまたシンプルな夕食。
後片付けをして甘えたがる竜樹さんとくっついて過ごしてるうちに、今度こそ本当に帰らないとならない時間になる。
居心地のいい時間から離れて、またいつもの生活に戻る。
これもまた今に始まったことじゃないけれど、何度やってきても慣れることはない。
それは竜樹さんも同じなんだろうか?
何とか送っていこうと身体が痛むのに無理をしようとする。
「ゆっくり休んでてください。この時間帯ならちゃんと自分で帰れますから」
「あともう1日ここにいます」と言えない自分が嫌でならないけれど、それを言い出したらキリがないから。
重い腰を上げて、柔らかな時間に別れを告げる。
竜樹邸を出て、バスに乗って、電車に乗って…
寂しいという名の痛みは癒えることはないのだけど、竜樹さんと歩幅をあわせて歩いたようにゆっくりとその日を手に入れるためにまた歩こう。
竜樹さんと一緒にいられなくて寂しいという痛みに別れを告げるその日を手に入れるために。
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