1年の一番最後と一番最初
2002年12月31日自宅に戻ってきてから、トイショップで買った袋をおもむろに開ける。
身体は疲労感を訴えてるしそのまま眠ってしまってもよかったのだけど、なぜか気持ちがヘンに高ぶってる。
そのまま横になったところで眠れるはずもないから、袋から箱を取り出して中身をばりばりと空けていく。
箱の中を開けてしまったら最後。
組立要領書を開き、ニッパーと鑢片手に黙々と組み立てはじめる。
毎度のことながら黙々と何かを作り上げる作業は好きで、毎度毎度はまることは違えど音のないような世界に飛び込めるような感覚が欲しくて始めるけれど、プラモデルを組む手に涙が落ちる。
去年の年末年始も確かに精神的にはどことなく不安を抱えてはいたけれど、ここまでひどくはなかった気もする。
何が元で生まれたのかさっぱり判らない不安感はみるみるうちに大きくなってきてる気がする。
今までだって不安を覚えることは何度となくあったはずなのに、どうしてここまで根拠レスな不安は居座り続けるのか。
自分自身に対する疑念と根のない不安に駆られて落ちる涙は止まるところを知らなくて、殆ど子供がえぐえぐ泣きながらプラモデル組んでるような感じで作業を続ける。
悲しいことに、プラモデルは3時間足らずで終わってしまった。
…やっぱり、もちょっとグレードの高いやつにすればよかったかな?
そうしたらもう少し長い間気が紛れたかもしれないなどと、どう考えても大切な誰かに背中を向けられてるのかなと不安を抱えてる人間が考えるとは思えないようなことを考えた自分がひどく緊迫感のない人間に思えてならなかったけれど、何かをしている間だけは目に入れなくて済む何かがあるのだということもまたよく知っているから、他のものに目を向けることで思考の渦から逃れようとしてしまう。
どことなく関節部分が緩やかで不安定さの伴うプラモデルにに倒れない程度の適当なポーズを取らせて横になった。
朝になってリビングに下りると、年末最終日の金岡家ではすることが殆ど残ってないという。
海衣一家が神戸に行くという話しを聞いて、もう一度私もどこかへ出かけようかな?と思っていると、「どうせなら海衣たちと一緒にでかけてきたら?」と金岡母に背中を押されて、慌てて用意をして家を出る。
海衣の旦那さんの運転で一路神戸に向かう。
車の中の会話はすっかり家族で、部外の私にはちょっと変な感じが否めない。
その暖かさや柔らかさは今の私には得られないものであって、正直場違いな感じがする。
ちょっとだけ、早く車を降りてしまいたい気分に駆られてしまったけれど…
思ってたより早く車は目的地に着き、海衣と私が途中下車。
海衣の旦那さんと姪御は別の場所に行き、私と海衣とも途中で別れる。
一人で神戸の街を歩き、神戸で知ってる数少ない店に向かう。
街はすっかり年末の色を漂わせている。
行き交う人も町並みもどこかやってくる新年に向けて、微妙に変化の色を見せている。
こんな風景の中に身をおいてること自体にも違和感があるのだけれど…
それでもせっかく出てきたのだからと、行ってみようと思った店まで歩きつづける。
目的の場所に着いて、案内板を眺めて必要なものを揃えられそうな階を見つけて移動する。
買い物かごに必要なものをぽこぽこ放り込んでは、ぼんやりと考える作業がちょっと下向き気味の気持ちに加速をつけずに済んだようで、レジで生産をする頃には少しばかり気持ちが上向きになっていた。
店の外に出ると雨が降っている。
目に飛び込んだカフェまでダッシュして、コーヒーとサンドイッチを買って雨宿り。
ここもまた今年最後の日だからなのか、時間が時間だからなのか見渡す限り人、人、人。
海衣に雨宿りしてる店の場所を伝えるメールを送り、ぼんやりと買ったものを眺めながらコーヒーとサンドイッチを食べながら海衣が来るのを待ち続ける。
20分くらいして海衣が到着。
互いに戦利品(?)を見せ合って、暫し歓談。
海衣の旦那さんがいつ拾ってくれるかを海衣が確認して、あとどれくらいで店を出なきゃならないと話しているところに私の携帯の着信音。
「霄?どうしてるん?」
大好きな声に驚いた瞬間、ぱぁっと嬉しさがこみ上げてくる。
「今ね、三宮に来てるんですよ。竜樹さんは元気ですか?」
「…いや、あれからずっと寝込んでて、今日やっとマシになってん。
あ、出先やったら悪いし、切るなぁ」
「あと1時間もしたらうちに帰ってると思いますから、こちらからかけますね。
しんどかったら出はらへんでもいいですから」
最後に会った時、少しひっかかりを残すような別れ方をしてるから、私自身もいろいろ考えてしまったのだけど、もしかしたら竜樹さんも何か思ってたのかな?
…どうせ聞いても素直には言わないんだけどね、竜樹さんは。
「お姉ちゃん、彼氏から〜?o(^-^o)o(^-^)o(o^-^)o」
「そそ、電話で話すのご無沙汰さんだったのよ」
「相変わらずラブラブやねー( ̄ー+ ̄)」
…や、ラブラブな人達が連絡とるのに躊躇したり、年末年始の予定を組まなかったりはしないと思うけど(^-^;
それでも嬉しいと感じた時は嬉しいに乗っかってたい。
竜樹さんの声が聞けたから根拠レスな不安はかなり消し飛んだ感じがする。
また暫く話し込んで時計を見ると、海衣の旦那さんと落ち合う時間が近づいてきたので店を出てげんなり。
雨脚は強くなってきてる。
それでもめげるわけでなく、取り留めなく話しながら待ち合わせ場所まで歩き、旦那さんに拾ってもらって家路を急ぐ。
積んでたナビに逆らって走ったために途中で道を間違えたりもしたけれど、どうにかこうにか夕飯に間に合うような形で家に着く。
自室に戻って慌てて竜樹さんに電話したけれど、竜樹さんは出られなかった。
多分まだ具合がよくなくて、寝ておられるのだろうと思って、そのまま夕飯の支度を手伝いにいく。
リビングでは、紅白と第九を同時に見てる人々。
画面は半分に分割され、紅白と第九の画像が映り、音は第九。
なんだかへんな感じ。
やがて第九が終わると、今度は第九が移ってたはずのところに猪木ボンバイエが映り、音は紅白というけったいな取り合わせ。
格闘技嫌いの金岡母は嫌そうな顔をして台所に逃げ込み、海衣の旦那さんと金岡父が講釈をたれながらボンバイエを見てる。
暫くすると年越しそばを食べ、またそれぞれリビングで好きにくつろいでる。
再度電話しようと自室に戻ると、携帯の着信音。
去年、今年とさんざんお世話になった友達から電話がかかってきた。
「竜樹さんからは連絡ありました?」
「うん、夕方にあったけれど…」
「え?年末恒例のカウントダウン電話はないんですか?」
「家に帰ってから電話したけど出はらへんかったから、もうかけるのやめとこうかなと思って…」
そうして暫く話してると、今度は部屋の電話が鳴る。
一旦友達の電話を切ってもらって出てみると、竜樹さんからだった。
「帰ってから電話をくれててんなぁ」
「うん♪(o^−^o)」
普段と変わらない会話だけど、たったひとつ違うとしたら互いの背後から除夜の鐘の音が聞こえてること。
「今年ももう終わりますねぇ」
「…そやなぁ、あ、あけましておめでとう」
「あ、日付変わってる。おめでとうございます」
そうしてまた暫く他愛もない話をして会話を終え、先ほど電話で話してた友達に電話をしなおし長電話。
1年の1番最後と新しい年の1番最初に竜樹さんと話せたこと。
それは心の中に立ち込めてた霧を晴らしてくれたような気がする。
過ぎ去った年がどんな年で、新しい年がどんな年で。
振り返ったり先のことを考えたりして、また今日から歩き始める。
竜樹さんと歩き始める。
身体は疲労感を訴えてるしそのまま眠ってしまってもよかったのだけど、なぜか気持ちがヘンに高ぶってる。
そのまま横になったところで眠れるはずもないから、袋から箱を取り出して中身をばりばりと空けていく。
箱の中を開けてしまったら最後。
組立要領書を開き、ニッパーと鑢片手に黙々と組み立てはじめる。
毎度のことながら黙々と何かを作り上げる作業は好きで、毎度毎度はまることは違えど音のないような世界に飛び込めるような感覚が欲しくて始めるけれど、プラモデルを組む手に涙が落ちる。
去年の年末年始も確かに精神的にはどことなく不安を抱えてはいたけれど、ここまでひどくはなかった気もする。
何が元で生まれたのかさっぱり判らない不安感はみるみるうちに大きくなってきてる気がする。
今までだって不安を覚えることは何度となくあったはずなのに、どうしてここまで根拠レスな不安は居座り続けるのか。
自分自身に対する疑念と根のない不安に駆られて落ちる涙は止まるところを知らなくて、殆ど子供がえぐえぐ泣きながらプラモデル組んでるような感じで作業を続ける。
悲しいことに、プラモデルは3時間足らずで終わってしまった。
…やっぱり、もちょっとグレードの高いやつにすればよかったかな?
そうしたらもう少し長い間気が紛れたかもしれないなどと、どう考えても大切な誰かに背中を向けられてるのかなと不安を抱えてる人間が考えるとは思えないようなことを考えた自分がひどく緊迫感のない人間に思えてならなかったけれど、何かをしている間だけは目に入れなくて済む何かがあるのだということもまたよく知っているから、他のものに目を向けることで思考の渦から逃れようとしてしまう。
どことなく関節部分が緩やかで不安定さの伴うプラモデルにに倒れない程度の適当なポーズを取らせて横になった。
朝になってリビングに下りると、年末最終日の金岡家ではすることが殆ど残ってないという。
海衣一家が神戸に行くという話しを聞いて、もう一度私もどこかへ出かけようかな?と思っていると、「どうせなら海衣たちと一緒にでかけてきたら?」と金岡母に背中を押されて、慌てて用意をして家を出る。
海衣の旦那さんの運転で一路神戸に向かう。
車の中の会話はすっかり家族で、部外の私にはちょっと変な感じが否めない。
その暖かさや柔らかさは今の私には得られないものであって、正直場違いな感じがする。
ちょっとだけ、早く車を降りてしまいたい気分に駆られてしまったけれど…
思ってたより早く車は目的地に着き、海衣と私が途中下車。
海衣の旦那さんと姪御は別の場所に行き、私と海衣とも途中で別れる。
一人で神戸の街を歩き、神戸で知ってる数少ない店に向かう。
街はすっかり年末の色を漂わせている。
行き交う人も町並みもどこかやってくる新年に向けて、微妙に変化の色を見せている。
こんな風景の中に身をおいてること自体にも違和感があるのだけれど…
それでもせっかく出てきたのだからと、行ってみようと思った店まで歩きつづける。
目的の場所に着いて、案内板を眺めて必要なものを揃えられそうな階を見つけて移動する。
買い物かごに必要なものをぽこぽこ放り込んでは、ぼんやりと考える作業がちょっと下向き気味の気持ちに加速をつけずに済んだようで、レジで生産をする頃には少しばかり気持ちが上向きになっていた。
店の外に出ると雨が降っている。
目に飛び込んだカフェまでダッシュして、コーヒーとサンドイッチを買って雨宿り。
ここもまた今年最後の日だからなのか、時間が時間だからなのか見渡す限り人、人、人。
海衣に雨宿りしてる店の場所を伝えるメールを送り、ぼんやりと買ったものを眺めながらコーヒーとサンドイッチを食べながら海衣が来るのを待ち続ける。
20分くらいして海衣が到着。
互いに戦利品(?)を見せ合って、暫し歓談。
海衣の旦那さんがいつ拾ってくれるかを海衣が確認して、あとどれくらいで店を出なきゃならないと話しているところに私の携帯の着信音。
「霄?どうしてるん?」
大好きな声に驚いた瞬間、ぱぁっと嬉しさがこみ上げてくる。
「今ね、三宮に来てるんですよ。竜樹さんは元気ですか?」
「…いや、あれからずっと寝込んでて、今日やっとマシになってん。
あ、出先やったら悪いし、切るなぁ」
「あと1時間もしたらうちに帰ってると思いますから、こちらからかけますね。
しんどかったら出はらへんでもいいですから」
最後に会った時、少しひっかかりを残すような別れ方をしてるから、私自身もいろいろ考えてしまったのだけど、もしかしたら竜樹さんも何か思ってたのかな?
…どうせ聞いても素直には言わないんだけどね、竜樹さんは。
「お姉ちゃん、彼氏から〜?o(^-^o)o(^-^)o(o^-^)o」
「そそ、電話で話すのご無沙汰さんだったのよ」
「相変わらずラブラブやねー( ̄ー+ ̄)」
…や、ラブラブな人達が連絡とるのに躊躇したり、年末年始の予定を組まなかったりはしないと思うけど(^-^;
それでも嬉しいと感じた時は嬉しいに乗っかってたい。
竜樹さんの声が聞けたから根拠レスな不安はかなり消し飛んだ感じがする。
また暫く話し込んで時計を見ると、海衣の旦那さんと落ち合う時間が近づいてきたので店を出てげんなり。
雨脚は強くなってきてる。
それでもめげるわけでなく、取り留めなく話しながら待ち合わせ場所まで歩き、旦那さんに拾ってもらって家路を急ぐ。
積んでたナビに逆らって走ったために途中で道を間違えたりもしたけれど、どうにかこうにか夕飯に間に合うような形で家に着く。
自室に戻って慌てて竜樹さんに電話したけれど、竜樹さんは出られなかった。
多分まだ具合がよくなくて、寝ておられるのだろうと思って、そのまま夕飯の支度を手伝いにいく。
リビングでは、紅白と第九を同時に見てる人々。
画面は半分に分割され、紅白と第九の画像が映り、音は第九。
なんだかへんな感じ。
やがて第九が終わると、今度は第九が移ってたはずのところに猪木ボンバイエが映り、音は紅白というけったいな取り合わせ。
格闘技嫌いの金岡母は嫌そうな顔をして台所に逃げ込み、海衣の旦那さんと金岡父が講釈をたれながらボンバイエを見てる。
暫くすると年越しそばを食べ、またそれぞれリビングで好きにくつろいでる。
再度電話しようと自室に戻ると、携帯の着信音。
去年、今年とさんざんお世話になった友達から電話がかかってきた。
「竜樹さんからは連絡ありました?」
「うん、夕方にあったけれど…」
「え?年末恒例のカウントダウン電話はないんですか?」
「家に帰ってから電話したけど出はらへんかったから、もうかけるのやめとこうかなと思って…」
そうして暫く話してると、今度は部屋の電話が鳴る。
一旦友達の電話を切ってもらって出てみると、竜樹さんからだった。
「帰ってから電話をくれててんなぁ」
「うん♪(o^−^o)」
普段と変わらない会話だけど、たったひとつ違うとしたら互いの背後から除夜の鐘の音が聞こえてること。
「今年ももう終わりますねぇ」
「…そやなぁ、あ、あけましておめでとう」
「あ、日付変わってる。おめでとうございます」
そうしてまた暫く他愛もない話をして会話を終え、先ほど電話で話してた友達に電話をしなおし長電話。
1年の1番最後と新しい年の1番最初に竜樹さんと話せたこと。
それは心の中に立ち込めてた霧を晴らしてくれたような気がする。
過ぎ去った年がどんな年で、新しい年がどんな年で。
振り返ったり先のことを考えたりして、また今日から歩き始める。
竜樹さんと歩き始める。
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