初めてのイブ
2002年12月24日部屋がやたら冷える感じがして、目が覚めた。
寒いけれど、窓の外はよく晴れた空が広がる。
今日はクリスマスイブ。
8年目にして初めてイブを竜樹さんと過ごすことになった。
今まで竜樹さんの仕事の関係で12月のこの時期から3月までは会う時間を見繕うことがかなり難しかったので、イブを過ごすこと以前に竜樹さんと会える時間が取れれば御の字の状態だったから意識したことはなかったのだけど…
竜樹さんが闘病生活に入って初めて一緒にイブを過ごすことになるなんていうのも、随分皮肉な話かもしれない。
今2人が置かれてる状態は決して手放しで喜べる状態出など有りはしないけれど、それでも一緒に過ごせることはやっぱり嬉しいから。
考えようによっては、こんなことでもなければイブを共に過ごすなんてことは叶うはずもなかったのだから、これはこれでいいのだろう。
ひとまず、今日の仕事が過剰に荒れないことを願いながら家を出た。
思考を巡らせながら用意をしたのが災いしたのか、竜樹さんに渡すつもりで買っていたプレゼントを自宅に置き忘れてしまった。
何も持っていかなくてもきっと竜樹さんは不満がりはしないだろうけど、何もないのもなんだかなぁって思うから、竜樹邸に向かう前に小さなプレゼントを用意しようと決意。
何が何でも仕事が後ろに引っ張らないように精一杯頑張ろうと(珍しく)意気込んで社屋に入る。
立ち上がりがかなりゆったりしたペースだったので、「もしかしたら楽勝で定時ダッシュできるかも…」と思っていたけれど、俄かにアクシデントが満載状態になってくる。
今日は何が何でも仕事を後ろに引きずるわけには行かないからと、常にきりきりばたばた(最後の方にはいらいら)と仕事を片付けていく。
会社にいてる間、クリスマスイブの時間を控えてる人とは思えないほど殺気立った状態で仕事を片付ける。
それでも、15時ごろから完全にトラップに引っかかってしまい、定時脱出は叶わず。
少しばかりの残業をした後、いらいらしたまま事務所を飛び出す。
いらいらと鬱々とが交じり合ったような状態でロッカールームで着替えていると、竜樹さんから電話が入る。
「ケーキは買っておいたから。気をつけておいで」
竜樹さんの声に鬱々といらいらを解いてもらって、社屋を飛び出した。
いつもよりも数倍の勢いで自転車をかっ飛ばし、ホームに滑り込んできた電車に乗る。
竜樹邸に向かうまでにすることは、金岡家用のケーキと竜樹さんに贈るちっさなプレゼントを調達するのみ。
目的地の駅に着き、人ごみ掻き分けて改札を飛び出し、目的の店に向かう。
最初に目指すはトイショップ。
リハビリを兼ねたあるアイテムを竜樹さんは愛用しているのだけど、なかなか売ってる店を見つけられなくて「壊したらどうしよう」となかなか思い切って遊ぶことすらできなくなっていたから、予備品を購入しようと目的のコーナーに向かう。
多分竜樹さんが喜ぶだろうと思えるものは見つかったし、とっとと精算して先を急がねばと思ってレジに向かうと…
長蛇の列に顎を外しそうになった(爆)
思えば今日はクリスマスイブ。
プレゼントを前もって準備せず、当日用意する人がこれほど多いとは思わなかったけれど、それはそれで当たり前の姿かもしれない。
メールをくれる友達にお返事を返しながら、精算の番が来るのをじっと待っている。
やっとこ順番が来て精算を済ませて、今度は金岡家に持って帰るためのケーキを購入。
こちらも長蛇の列だった。
プレゼントですら駆け込み購入するのだもの、日持ちしないケーキを今日購入するために人が殺到するのはある意味当たり前のこと。
すべて段取りをちゃんとしておかなかった自分が悪いとはいえ、あまりのタイミングの悪さに泣きそうになった。
それでも、トイショップの待ち時間ほどには待たされずにケーキを調達して、いよいよ竜樹邸を目指したけれど、またしてもタイミング悪くてバスが行ったところ。
…今度は15分のロス?(>へ<)
時間がふんだんにあるなら15分のロスなど大した問題でもないのだろうけど、いっしょに過ごせる時間は限られてるのだからこんなところでぐずぐずしてる場合じゃないのに…
ちょうどタクシーも出払ってる時間なのか、タクシー乗り場も長蛇の列。
イライラを通り越して、本当に泣きそうになってしまった。
ようやっと来たバスに飛び乗り、竜樹低を目指す。
「お疲れー、よう来てくれたなぁ」
よれよれの状態で竜樹邸に入ると、竜樹さんは笑顔で迎えてくれる。
体調はそれほどよくなさそうなのに、柔らかい笑顔で迎えてくれる竜樹さんの空気に触れて、やっと緊張が解けた感じがして、キッチンの床にへたり込む。
「本当は迎えに行ってやりたかってんけど、チキンが来るのを待ってたから…」
机の上にはデリバリーのチキンパックの箱がある。
多分ケーキが調達できてるよという電話の時にまだ会社にいたから、ここへ来てからチキンを焼くのは無理と判断されたんだろう。
昨日用意したスープとサラダを盛り、チキンパックを開けて遅い夕飯を食べる。
すべて自分で作りたかったという思いはあるけれど、2人で食べる夕食はどんなものでも美味しいのだと思えるから、これはこれでよかったのだろう。
…しかし、つけっぱなしにしてるテレビから流れてるのが何かの物まね大会だったのには腰砕けだったけれど
物まね大会に暫し笑いながら、竜樹さんが調達してくれたかわいらしいケーキを食べ、小さなプレゼントを渡す。
「…え?これ、売ってるとこあるの?」
「ええ、まだあるんですよ。私も最近になって気づいたんですよ」
「遊んでみてもええか?」
「どうぞどうぞ、そのために持ってきたんだから(*^_^*)」
箱から取り出したおもちゃで遊び始める竜樹さん。
最近では殆ど見られなくなった子供みたいな表情を眺めてると、段取り悪くてずっこけまくったような経過も笑って流してしまえそうな感じがする。
「これを引っ張る時に背筋を使うから、リハビリにもなるねん(*^_^*)」
すっかりご機嫌さんな竜樹さんを傍で見つめてて、やっと幸福感が身体中を包み込むような感じがする。
ふと目が合うと、自然と零れる笑顔にほっとしながら、残り少ないイブの時間を過ごした。
自力で帰るならそれほど長くは一緒にいられないからと、寂しく思いながらも少しずつ帰る用意を始めていると、
「今日は送っていけそうやから、もう少しゆっくりしとき」と竜樹さん。
その言葉に甘えて、竜樹さんと暫くくっついて過ごし、竜樹さんに家まで送ってもらい、これまた珍しくキスして別れた。
世間にいる人々のイブの過ごし方とは程遠い、週末の延長のような時間かもしれない。
それでも、今まで一緒に過ごすことの叶わなかったクリスマスイブを二人で過ごせたことがただ嬉しい。
誰と比べることも何と比べることも必要のない、暖かくて柔らかな時間が過ごせたことが私には宝物だから。
8年目にしてやってきた初めてのイブはとても暖かなもの。
これから何度一緒にイブを過ごすことができても、きっと今日のことは忘れない。
「大切な時間を割いてくれてありがとう。
沢山待たせた挙げ句に送らせてしまってごめんなさい。
穏やかな時間を一緒に過ごせて嬉しかったです。
ありがとう」
心の底から生まれる言葉をそっと文字に置き換えて、夜空に飛ばした。
寒いけれど、窓の外はよく晴れた空が広がる。
今日はクリスマスイブ。
8年目にして初めてイブを竜樹さんと過ごすことになった。
今まで竜樹さんの仕事の関係で12月のこの時期から3月までは会う時間を見繕うことがかなり難しかったので、イブを過ごすこと以前に竜樹さんと会える時間が取れれば御の字の状態だったから意識したことはなかったのだけど…
竜樹さんが闘病生活に入って初めて一緒にイブを過ごすことになるなんていうのも、随分皮肉な話かもしれない。
今2人が置かれてる状態は決して手放しで喜べる状態出など有りはしないけれど、それでも一緒に過ごせることはやっぱり嬉しいから。
考えようによっては、こんなことでもなければイブを共に過ごすなんてことは叶うはずもなかったのだから、これはこれでいいのだろう。
ひとまず、今日の仕事が過剰に荒れないことを願いながら家を出た。
思考を巡らせながら用意をしたのが災いしたのか、竜樹さんに渡すつもりで買っていたプレゼントを自宅に置き忘れてしまった。
何も持っていかなくてもきっと竜樹さんは不満がりはしないだろうけど、何もないのもなんだかなぁって思うから、竜樹邸に向かう前に小さなプレゼントを用意しようと決意。
何が何でも仕事が後ろに引っ張らないように精一杯頑張ろうと(珍しく)意気込んで社屋に入る。
立ち上がりがかなりゆったりしたペースだったので、「もしかしたら楽勝で定時ダッシュできるかも…」と思っていたけれど、俄かにアクシデントが満載状態になってくる。
今日は何が何でも仕事を後ろに引きずるわけには行かないからと、常にきりきりばたばた(最後の方にはいらいら)と仕事を片付けていく。
会社にいてる間、クリスマスイブの時間を控えてる人とは思えないほど殺気立った状態で仕事を片付ける。
それでも、15時ごろから完全にトラップに引っかかってしまい、定時脱出は叶わず。
少しばかりの残業をした後、いらいらしたまま事務所を飛び出す。
いらいらと鬱々とが交じり合ったような状態でロッカールームで着替えていると、竜樹さんから電話が入る。
「ケーキは買っておいたから。気をつけておいで」
竜樹さんの声に鬱々といらいらを解いてもらって、社屋を飛び出した。
いつもよりも数倍の勢いで自転車をかっ飛ばし、ホームに滑り込んできた電車に乗る。
竜樹邸に向かうまでにすることは、金岡家用のケーキと竜樹さんに贈るちっさなプレゼントを調達するのみ。
目的地の駅に着き、人ごみ掻き分けて改札を飛び出し、目的の店に向かう。
最初に目指すはトイショップ。
リハビリを兼ねたあるアイテムを竜樹さんは愛用しているのだけど、なかなか売ってる店を見つけられなくて「壊したらどうしよう」となかなか思い切って遊ぶことすらできなくなっていたから、予備品を購入しようと目的のコーナーに向かう。
多分竜樹さんが喜ぶだろうと思えるものは見つかったし、とっとと精算して先を急がねばと思ってレジに向かうと…
長蛇の列に顎を外しそうになった(爆)
思えば今日はクリスマスイブ。
プレゼントを前もって準備せず、当日用意する人がこれほど多いとは思わなかったけれど、それはそれで当たり前の姿かもしれない。
メールをくれる友達にお返事を返しながら、精算の番が来るのをじっと待っている。
やっとこ順番が来て精算を済ませて、今度は金岡家に持って帰るためのケーキを購入。
こちらも長蛇の列だった。
プレゼントですら駆け込み購入するのだもの、日持ちしないケーキを今日購入するために人が殺到するのはある意味当たり前のこと。
すべて段取りをちゃんとしておかなかった自分が悪いとはいえ、あまりのタイミングの悪さに泣きそうになった。
それでも、トイショップの待ち時間ほどには待たされずにケーキを調達して、いよいよ竜樹邸を目指したけれど、またしてもタイミング悪くてバスが行ったところ。
…今度は15分のロス?(>へ<)
時間がふんだんにあるなら15分のロスなど大した問題でもないのだろうけど、いっしょに過ごせる時間は限られてるのだからこんなところでぐずぐずしてる場合じゃないのに…
ちょうどタクシーも出払ってる時間なのか、タクシー乗り場も長蛇の列。
イライラを通り越して、本当に泣きそうになってしまった。
ようやっと来たバスに飛び乗り、竜樹低を目指す。
「お疲れー、よう来てくれたなぁ」
よれよれの状態で竜樹邸に入ると、竜樹さんは笑顔で迎えてくれる。
体調はそれほどよくなさそうなのに、柔らかい笑顔で迎えてくれる竜樹さんの空気に触れて、やっと緊張が解けた感じがして、キッチンの床にへたり込む。
「本当は迎えに行ってやりたかってんけど、チキンが来るのを待ってたから…」
机の上にはデリバリーのチキンパックの箱がある。
多分ケーキが調達できてるよという電話の時にまだ会社にいたから、ここへ来てからチキンを焼くのは無理と判断されたんだろう。
昨日用意したスープとサラダを盛り、チキンパックを開けて遅い夕飯を食べる。
すべて自分で作りたかったという思いはあるけれど、2人で食べる夕食はどんなものでも美味しいのだと思えるから、これはこれでよかったのだろう。
…しかし、つけっぱなしにしてるテレビから流れてるのが何かの物まね大会だったのには腰砕けだったけれど
物まね大会に暫し笑いながら、竜樹さんが調達してくれたかわいらしいケーキを食べ、小さなプレゼントを渡す。
「…え?これ、売ってるとこあるの?」
「ええ、まだあるんですよ。私も最近になって気づいたんですよ」
「遊んでみてもええか?」
「どうぞどうぞ、そのために持ってきたんだから(*^_^*)」
箱から取り出したおもちゃで遊び始める竜樹さん。
最近では殆ど見られなくなった子供みたいな表情を眺めてると、段取り悪くてずっこけまくったような経過も笑って流してしまえそうな感じがする。
「これを引っ張る時に背筋を使うから、リハビリにもなるねん(*^_^*)」
すっかりご機嫌さんな竜樹さんを傍で見つめてて、やっと幸福感が身体中を包み込むような感じがする。
ふと目が合うと、自然と零れる笑顔にほっとしながら、残り少ないイブの時間を過ごした。
自力で帰るならそれほど長くは一緒にいられないからと、寂しく思いながらも少しずつ帰る用意を始めていると、
「今日は送っていけそうやから、もう少しゆっくりしとき」と竜樹さん。
その言葉に甘えて、竜樹さんと暫くくっついて過ごし、竜樹さんに家まで送ってもらい、これまた珍しくキスして別れた。
世間にいる人々のイブの過ごし方とは程遠い、週末の延長のような時間かもしれない。
それでも、今まで一緒に過ごすことの叶わなかったクリスマスイブを二人で過ごせたことがただ嬉しい。
誰と比べることも何と比べることも必要のない、暖かくて柔らかな時間が過ごせたことが私には宝物だから。
8年目にしてやってきた初めてのイブはとても暖かなもの。
これから何度一緒にイブを過ごすことができても、きっと今日のことは忘れない。
「大切な時間を割いてくれてありがとう。
沢山待たせた挙げ句に送らせてしまってごめんなさい。
穏やかな時間を一緒に過ごせて嬉しかったです。
ありがとう」
心の底から生まれる言葉をそっと文字に置き換えて、夜空に飛ばした。
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