確かなるもの

2002年12月5日
最近は夜中に雨が降っているのか、朝窓を開けると屋根が濡れている。
知らない間に雨は降り、何時の間にかやんでいる。
夜中に雨が降ってたことに竜樹さんが気がつかないくらいにきちんと眠れていたらいいのだけれど。

もし昨夜眠れてなかったとしても、せめて行く予定だと言っていた病院には行けますようにと願いながら家を出る。


12月に入る少し前くらいから、にわかに竜樹さんの体調が不安定な気がする。
神戸小旅行に出る前にも病院に寄っていくという話はされていた。

再手術が終われば、すべて終わるんじゃなかったのか?

いや、終わる訳ではないのだと手術が済んだ時にはそう思ってはいたけれど、術後の経過が目覚ましくよかっただけについ勘違いしそうになる。


一体、いつになればこんな状態に別れが告げられるのか、それすら見えてこない現状が歯がゆい。
本当に辛いのは私じゃなくて竜樹さん自身で、辛そうにしてる竜樹さんを見てるしか出来ないことが何よりも辛いのだけれど…
手術を終えて迎える最初の冬は、決して身体に思わしい状態を齎さないことは彼も私も承知している。
だから、今すぐになんて言わない。
来年の今頃、寒い風が吹いても笑っていられるならそれでいい。

そんな風に思いながら、いくつかの朝メールを飛ばして社屋に入る。


今日の仕事の立ち上がりは割と穏やかな方だと思う。
周りの課員さん達が慌しくしてるのはいつものことだけれど、特筆して言うならばボスが係長のぽかから引き起こした大クレームの処理にばたばたしておられたことくらいだろうか。
ばたばたばたとクレーム対応に追われながらも、ツンドラギャグをにこにこ笑って吐きまわるあたりがボスがボスである所以かもしれないなぁとヘンに感心しながら、時折資料を揃えを手伝ったりして過ごした。


昼から仕事の前倒しが一段楽した頃、鞄が揺れた。
竜樹さんからだと思って覗き込んでみると、姉さまからだった。

何でも、会社を休んでセールに来ているのだそう。
今年の販売物品の傾向と休みの日に行くなら招待状を送ったげるよっていう内容だった。


…セールかぁ


11月の初めに(私にしては)大きな買い物をしてしまってるから、ちょっと首を捻ったけれど、ここのセールはいつもいいものが破格値で出てくるから行くととても楽しかったりする。


…行きます行きます行きます行きます♪o(^-^o)o(^-^)o(o^-^)o


心の中では一人浮かれているけれど、さすがに1日の中で一番忙しくなる時間帯に堂々とでもこっそりとでも携帯からお返事を打つわけには行かない。
ぐっと堪えて鞄を目に入らないように机の中にしまい込み、きりきりと大一番の仕事に取り掛かる。

14時頃までの作業の貯金が効いたのか、かなり楽な状態で会社を後にした。
駅のホームに辿り着いてから、慌てて姉さまにメールを飛ばす。


「お疲れ様ですm(__)m
いい買い物はできた?
今週は竜樹さんとは会わないから、招待状分けて頂けるならありがたいです♪
…久しぶりにスカート穿きたいのだ、スカート(笑)


…こないだ海衣が帰省した時にもスカート貰ったけど(^^ゞ」


自転車をかっとばして通勤する都合上、ここ数年めっきりスカートはご無沙汰だった。
別にそれで竜樹さんががっかりする訳でもなかったし、かえって活動的でよいと言われてたから余計に穿かないでいたけれど。
何故だか、今年はスカート穿きたい心境だったりする。
どうしてそうしたいのか、私自身よく判らないのだけれど…


何度か電車を乗り換えして、今度は竜樹さんにメールを飛ばす。


「お加減いかがですか?
今日は暖かかったね。診察お疲れ様でした。
明日で仕事は終わりだから、頑張ります」


そのお返事はなかったから、もしかしたら病院に行ってそのまま眠ってしまってるのかもしれないけれど。


そのまま部屋でぼけっとしながら、ふと思う。


降る気配もなく突然闇夜の空から降る雨のように、突然現れる想いも出来事もある。
逆に知らぬ間にそっとどこかへ行ってしまう想いも出来事もある。
そのどちらにも毎日出逢いながら、1日という時間を歩きつづける。

何気なく生まれる欲求がどうして生まれるのかを知りたいと思い、何気なく起こってしまったことをどうしてそれが起こるのか知りたい自分がいる。
それを知ることが必ずしも自分にとっていいことばかりとは限らなくても、お構いなしに知ってみたい衝動に駆られるときもあるのかもしれない。

そんな自分は一生自分の中に住みつづけるのかもしれない。


何故、雨が降る前に竜樹さんの身体が痛み、どうしてこんなに長くその痛みが続くのか。
どうして今までそんな欲求がなかったにもかかわらず、突然スカート穿いてみたくなる私がいるのか。

次元の違ういくつもの疑問が自分の中で同時に生まれてはまた流れていったりそのまま自分の中に根付いてしまったり。
その答が出るものもあれば出ないまま終わるものもあるけれど。


いくつもの突然が齎す何かから、いつかひとつでもいいから確かなものを手にしたいって思う。
たったひとつでいいから確かな何かを手にしてみたいって思う。


もしも、それが竜樹さんとの想いについての何かであるのならば、それは何より嬉しいもの。


何気ない生活の中で突如降って湧くいくつもの事象に対して、思考を錯綜させた結果に残ったものは、それらの要素とは全然関係のない答であっても今の私には確かなるもの。


ただひとつ欲しいと希う確かなるもの。

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