いつか晴れた気持ちで…
2002年12月1日竜樹さんとくっついてるうちに何時の間にか眠ってしまっていた。
気がついて時計を見てびっくり。
とうの昔に午前様だった。
慌てて着替えて用意をしてると、竜樹さんが送ってくれるという。
今からタクシーを呼ぶよりかは早く帰れるだろうと、ありがたくその申し出を受けた。
車の中でもどことなく空気が柔らかい感じがして、とても居心地がよかった。
ところが何気なく鞄を探って気がついた。
よりにもよって、自宅の鍵を持って出るのを忘れていた。
この時間なら金岡両親は眠ってるだろうけれど、雷が落ちるのさえ恐れなければ鍵は開けてもらえるだろう。
万が一起きてこなくても、どこからか入れるだろう。
雷が落ちることだけを覚悟して、そのまま車は自宅へ向かう。
竜樹さんは少し心配しておられたけれど、多分大丈夫とにへっと笑って車を降りる。
竜樹さんと別れ、玄関を上がりドアの呼び鈴を鳴らしたけれど、誰も起きてくる様子がない。
何度か鳴らしたけれど、もの音一つしない。
…そう言えば。
以前から鍵が開いてることの多かった出窓がひとつあった。
尤も最後に確認したのは数年前だから、さすがに数年間開きっぱなしなんてことはないだろうと思ったけれど。
さすがに開いてなかった。
脚立を使って自室から入ることも考えたけれど、実際脚立を組んでみたら結構な音はするし高さはあるし。
その音で気づいてくれよとも思ったけれど、一向に家の中からは物音ひとつ聞こえない。
…困ってしまった。
朝まで玄関前にいるには今日は妙に冷え込んでる。
こんなことは今までなかったので、油断してた。
竜樹さんが車中で仰ってたように、自宅のスペアキーを竜樹邸に置いといた方がよかったのだろうか?
いずれにしても、今更どうしようもない。
友達にメールを入れたりしながら1時間近く外で過ごした。
暫くして竜樹さんから「ちゃんと家の中に入れたか」と連絡を貰ったので、正直に事情を話した。
時折呼び鈴を鳴らしてたから、そのままめげずに続けてたらそのうち開けて貰えるとは思うよと答えて電話を切ろうとしたら、「迎えに戻る」とのこと。
いくらなんでも自宅までそう遠くないところまで戻ってる人にもう一度こちらに来てもらうのは気が引けた。
けれど、結局竜樹さんはもう一度金岡家まで来てくれた。
「鍵を忘れた上に、何度か呼び鈴を押したけれど鍵を開けてもらえなかったので、今夜は竜樹邸にいさせてもらいます」と郵便受けに書置きを残して、また竜樹邸に引き返す。
ぐっと冷え込んできた上に、長時間の運転は竜樹さんの身体には辛いもの。
ちょっと自分が気をつけてさえいれば、竜樹さんに迷惑をかけなくても済んだだろうし、翌日家に帰ってからのことを思って頭を痛めることもなかっただろう。
私が家でどうこう言われるのは私のことだからいいとして、竜樹さんに辛い思いをさせてしまったことがどうにも悔やまれてならない。
竜樹邸に入ってから、お風呂を沸かして竜樹さんに入ってもらってる間に2階にあがってお布団を敷いておく。
お風呂から上がって汗が引いたらすぐに休んでもらえるようにして、またリビングに降りて竜樹さんを待つ間テレビを見ていた。
竜樹さんが上がった後、お風呂に入る。
湯船の中に浸かりながら、自分の不手際を恨んだ。
今後どうしたらもう少しマシに行動できるものか考えながら入っていると、思ってたよりも長くお風呂場にいてしまったらしい。
「先に上がってる」という竜樹さんの声を聞いて、慌ててあがる。
ちょっとしんどそうな竜樹さんは、私のぽかに少々呆れながらもそれを責めることはなかった。
竜樹さんが差し出す腕を抱き締めるようにして、私も休んだ。
翌朝目が覚めると、やけに身体が重かった。
コートを着てたとはいえ、中はそう厚着してなかったので外にいてる間に風邪を悪化させたらしい。
竜樹さんにしんどい思いをさせた挙句に、風邪までうつしたらどうしようもない。
早く起きてできるだけ早く竜樹邸を後にした方がよさそう。
そう思って起き上がると、隣にいたはずの竜樹さんはいない。
階下に降りると、餅焼き器でテーブルロールを焼いておられた。
「…起きてはったんですか?」
「うん。目が覚めるのは早いからなぁ」
昨日大量に作ったポテトツナサラダとミネストローネとテーブルロール。
フライパンの中には目玉焼き。
立派な朝ごはんに驚きながら、竜樹さんの作業を手伝い朝ごはん。
朝食をとる竜樹さんは笑顔で元気そう。
昨日無理をさせてしまった影響は小さくて済んだのかなと安心したけれど。
時間が経つにつれ、昨日よりも冷えがきつくなってくる。
それが徐々に堪えてきたみたいで、竜樹さんの身体にはまた重い痛みが付き纏う。
薬を飲んで横になられても、まだ辛そうにしておられる。
本当は元気になるまで竜樹邸にいて様子を見たいけれど、今日は帰らないとならない。
必ずしもここにいれば、竜樹さんにとってすべてによい作用を齎すとは限らない。
彼自身もここに留まりつづけてますます私が家に帰りづらくなることを望みもしないだろう。
竜樹さんが横になってる間に、部屋の片づけをして。
それでもまだ時間はあるので、次の薬を飲む前に簡単に食べられるよう雑炊を作った。
雑炊も作り終えて、まだ竜樹邸でできることを探すけれど。
いい加減、自宅に帰った方がよさそうな時間。
一晩竜樹邸で過ごし、ここまで一度も連絡も入れないまま竜樹邸に居座りつづけるわけには行かない。
竜樹さんにコンロの上の鍋に雑炊があることを告げて、家を出る。
家に帰ると、ぼろかす怒られたのは言うまでもない。
黙って聞いていたら聞き捨てならないことを何度も言われ、「一体、いつまでこんなにがちがちに縛られんなんねやろ」と正直思ったけれど、この家にいてる間は金岡両親の言うことは聞かなきゃならないらしい。
金岡両親のことも考慮にあって未だこの家を出ずにいるけれど、どうもあの方たちは私がそれを視野に入れてるなんてことは夢にも思ってないらしい。
聞き捨てならないことを1グロス近く食らって、「家を出たら見てろよ?」って思いながらも、この家にいてる間だけはあまり帰宅が遅くならないよう気をつけておこうと思った。
大説教大会が終わり、へとへとになりながら自室に戻った。
…竜樹さん、ちゃんとごはん食べれたかな?
「雑炊食べれた?
昨日、今日とありがとうね♪」
そうメールを飛ばして、横になる。
この家にいてる間はこの家のルールには従わなければならない。
親にとってはいつまでも子供は子供のままなんだろう。
それも判ってはいるけれど。
…いい加減、やめてくれへんかなぁ
悪いのは自分だけど、手足を縮めてまで留まらなきゃならない理由なんてあるんだろうか?
この家を出ることでしか、過干渉を振りほどくことは出来ない。
だけど、この家を出たらもうここに戻るつもりはない。
ここを出るまでにしなきゃならないことは山のようにある。
一体どれだけ片付けられるか判らないけれど、取り敢えず片付けられるものはすべて片付けてから出て行こう。
光を遮る厚い雲を越えていけば、いつか青空のような気持ちに出会えるだろうか?
そこへ辿り着けたら、いつかわだかまりは少しでも小さくできるだろうか?
わだかまりなく、いつか晴れた気持ちで大切に思う人達と向き合えるように。
もう少しだけ、踏ん張ってみなきゃならない気がする。
気がついて時計を見てびっくり。
とうの昔に午前様だった。
慌てて着替えて用意をしてると、竜樹さんが送ってくれるという。
今からタクシーを呼ぶよりかは早く帰れるだろうと、ありがたくその申し出を受けた。
車の中でもどことなく空気が柔らかい感じがして、とても居心地がよかった。
ところが何気なく鞄を探って気がついた。
よりにもよって、自宅の鍵を持って出るのを忘れていた。
この時間なら金岡両親は眠ってるだろうけれど、雷が落ちるのさえ恐れなければ鍵は開けてもらえるだろう。
万が一起きてこなくても、どこからか入れるだろう。
雷が落ちることだけを覚悟して、そのまま車は自宅へ向かう。
竜樹さんは少し心配しておられたけれど、多分大丈夫とにへっと笑って車を降りる。
竜樹さんと別れ、玄関を上がりドアの呼び鈴を鳴らしたけれど、誰も起きてくる様子がない。
何度か鳴らしたけれど、もの音一つしない。
…そう言えば。
以前から鍵が開いてることの多かった出窓がひとつあった。
尤も最後に確認したのは数年前だから、さすがに数年間開きっぱなしなんてことはないだろうと思ったけれど。
さすがに開いてなかった。
脚立を使って自室から入ることも考えたけれど、実際脚立を組んでみたら結構な音はするし高さはあるし。
その音で気づいてくれよとも思ったけれど、一向に家の中からは物音ひとつ聞こえない。
…困ってしまった。
朝まで玄関前にいるには今日は妙に冷え込んでる。
こんなことは今までなかったので、油断してた。
竜樹さんが車中で仰ってたように、自宅のスペアキーを竜樹邸に置いといた方がよかったのだろうか?
いずれにしても、今更どうしようもない。
友達にメールを入れたりしながら1時間近く外で過ごした。
暫くして竜樹さんから「ちゃんと家の中に入れたか」と連絡を貰ったので、正直に事情を話した。
時折呼び鈴を鳴らしてたから、そのままめげずに続けてたらそのうち開けて貰えるとは思うよと答えて電話を切ろうとしたら、「迎えに戻る」とのこと。
いくらなんでも自宅までそう遠くないところまで戻ってる人にもう一度こちらに来てもらうのは気が引けた。
けれど、結局竜樹さんはもう一度金岡家まで来てくれた。
「鍵を忘れた上に、何度か呼び鈴を押したけれど鍵を開けてもらえなかったので、今夜は竜樹邸にいさせてもらいます」と郵便受けに書置きを残して、また竜樹邸に引き返す。
ぐっと冷え込んできた上に、長時間の運転は竜樹さんの身体には辛いもの。
ちょっと自分が気をつけてさえいれば、竜樹さんに迷惑をかけなくても済んだだろうし、翌日家に帰ってからのことを思って頭を痛めることもなかっただろう。
私が家でどうこう言われるのは私のことだからいいとして、竜樹さんに辛い思いをさせてしまったことがどうにも悔やまれてならない。
竜樹邸に入ってから、お風呂を沸かして竜樹さんに入ってもらってる間に2階にあがってお布団を敷いておく。
お風呂から上がって汗が引いたらすぐに休んでもらえるようにして、またリビングに降りて竜樹さんを待つ間テレビを見ていた。
竜樹さんが上がった後、お風呂に入る。
湯船の中に浸かりながら、自分の不手際を恨んだ。
今後どうしたらもう少しマシに行動できるものか考えながら入っていると、思ってたよりも長くお風呂場にいてしまったらしい。
「先に上がってる」という竜樹さんの声を聞いて、慌ててあがる。
ちょっとしんどそうな竜樹さんは、私のぽかに少々呆れながらもそれを責めることはなかった。
竜樹さんが差し出す腕を抱き締めるようにして、私も休んだ。
翌朝目が覚めると、やけに身体が重かった。
コートを着てたとはいえ、中はそう厚着してなかったので外にいてる間に風邪を悪化させたらしい。
竜樹さんにしんどい思いをさせた挙句に、風邪までうつしたらどうしようもない。
早く起きてできるだけ早く竜樹邸を後にした方がよさそう。
そう思って起き上がると、隣にいたはずの竜樹さんはいない。
階下に降りると、餅焼き器でテーブルロールを焼いておられた。
「…起きてはったんですか?」
「うん。目が覚めるのは早いからなぁ」
昨日大量に作ったポテトツナサラダとミネストローネとテーブルロール。
フライパンの中には目玉焼き。
立派な朝ごはんに驚きながら、竜樹さんの作業を手伝い朝ごはん。
朝食をとる竜樹さんは笑顔で元気そう。
昨日無理をさせてしまった影響は小さくて済んだのかなと安心したけれど。
時間が経つにつれ、昨日よりも冷えがきつくなってくる。
それが徐々に堪えてきたみたいで、竜樹さんの身体にはまた重い痛みが付き纏う。
薬を飲んで横になられても、まだ辛そうにしておられる。
本当は元気になるまで竜樹邸にいて様子を見たいけれど、今日は帰らないとならない。
必ずしもここにいれば、竜樹さんにとってすべてによい作用を齎すとは限らない。
彼自身もここに留まりつづけてますます私が家に帰りづらくなることを望みもしないだろう。
竜樹さんが横になってる間に、部屋の片づけをして。
それでもまだ時間はあるので、次の薬を飲む前に簡単に食べられるよう雑炊を作った。
雑炊も作り終えて、まだ竜樹邸でできることを探すけれど。
いい加減、自宅に帰った方がよさそうな時間。
一晩竜樹邸で過ごし、ここまで一度も連絡も入れないまま竜樹邸に居座りつづけるわけには行かない。
竜樹さんにコンロの上の鍋に雑炊があることを告げて、家を出る。
家に帰ると、ぼろかす怒られたのは言うまでもない。
黙って聞いていたら聞き捨てならないことを何度も言われ、「一体、いつまでこんなにがちがちに縛られんなんねやろ」と正直思ったけれど、この家にいてる間は金岡両親の言うことは聞かなきゃならないらしい。
金岡両親のことも考慮にあって未だこの家を出ずにいるけれど、どうもあの方たちは私がそれを視野に入れてるなんてことは夢にも思ってないらしい。
聞き捨てならないことを1グロス近く食らって、「家を出たら見てろよ?」って思いながらも、この家にいてる間だけはあまり帰宅が遅くならないよう気をつけておこうと思った。
大説教大会が終わり、へとへとになりながら自室に戻った。
…竜樹さん、ちゃんとごはん食べれたかな?
「雑炊食べれた?
昨日、今日とありがとうね♪」
そうメールを飛ばして、横になる。
この家にいてる間はこの家のルールには従わなければならない。
親にとってはいつまでも子供は子供のままなんだろう。
それも判ってはいるけれど。
…いい加減、やめてくれへんかなぁ
悪いのは自分だけど、手足を縮めてまで留まらなきゃならない理由なんてあるんだろうか?
この家を出ることでしか、過干渉を振りほどくことは出来ない。
だけど、この家を出たらもうここに戻るつもりはない。
ここを出るまでにしなきゃならないことは山のようにある。
一体どれだけ片付けられるか判らないけれど、取り敢えず片付けられるものはすべて片付けてから出て行こう。
光を遮る厚い雲を越えていけば、いつか青空のような気持ちに出会えるだろうか?
そこへ辿り着けたら、いつかわだかまりは少しでも小さくできるだろうか?
わだかまりなく、いつか晴れた気持ちで大切に思う人達と向き合えるように。
もう少しだけ、踏ん張ってみなきゃならない気がする。
コメント