心がどれだけ漣立っても…
2002年11月27日昨晩自宅に帰ってから、昨日もめた件について一通り自分の中で整理して、その後どう対処すべきか考えた。
取り敢えず急を要することについては、率先して(?)解決する方向で動き出す用意をしよう。
それでもまだ治まらないと仰るなら、もう降りよう。
頭の中で気持ち悪いくらい、理路整然と考えは纏まっていた。
腹も括れてしまっている。
それが正しいかどうかはまともに眠ってもいない、祖母の件から心が完全に生活にシフトしきれてない状態ではわからない。
ひとまずお風呂に入って、無理やり休むことにした。
何度も何度も浅い眠りを繰り返し、ようやくちゃんとした眠りの域に入りかけた頃、携帯が鳴る。
受話器の向こうの竜樹さんは、体調の悪い時のそれとは違った不機嫌そうな声。
今回はちゃんと抑え抑え話をしようと思って、ずっと彼の話を聞いていたけれど。
…正直、何のためにわざわざこんな時間に電話してきたんだろうって思った。
「そこまで言うのかよ?」という言葉も食らった。
彼の言葉にかちんと来ることはそう珍しいことでもないけれど、「あんたがそれを言うん?へぇ?」ってくらいに冷めた気持ちになることは極めて稀。
というより、こんな感覚は初めて。
会話として成立してるかどうかも怪しい電話が終わって時計を見ると、5時。
寝直したら、身体には堪える。
でも置き続けても身体には堪える。
横になって出勤準備をする時間を待ち続け、時間がきて身体を起こしてびっくりした。
吐き気がひどくてまともに立てない。
頭痛と胃痛の併発程度なら無理やりにでも出勤するけれど、胃液ごと吐きそうで吐けない状態。
吐き気を抑えるために飲んだ薬が逆効果でもどしてしまい、力が抜けてく感じがする。
会社に電話して、半休を貰った。
…いい加減クビになるかもなぁ
祖母が亡くなり、竜樹さんともめて関係が破綻した上に会社もクビになったら、泣きはしないけど笑えもしない。
ひとまず昼からはちゃんと仕事が片付けられるように横になって休み、ようやく身体が落ち着きを取り戻してきた頃に用意をして家を出た。
通勤鞄以外に竜樹さんに返すものと渡すものを持っているから、ふらつき気味な身体には堪えるけれど、何としても今日片付けてしまいたかった。
ひとつに纏めて宅急便で送りつけてもよかったかもしれない。
その方が楽は楽だ。
顔を合わせて傷つけあう作業に及べばそれは不毛な結果しか齎さない。
煩わしいことを好まない私にはちょうどいいだろう。
けれど、この件が元でごきげんような結果になっても、最後くらいは顔見て話しておかなきゃならないだろう。
会うことの目的が、この関係を維持するためではないというのが今までとは大きく違うことだろうけど…
時間が経てば怒りは静まるだろうけど、今回のことは多分一生忘れない。
いつもは彼の気持ちを維持することを最優先に考えるけれど、危機の度に竜樹さんを宥めたり(傍から見ると)すがってるように見える真似をする気力が起こらない。
正直いろんなことで疲れ切ってしまってるから、今日で最後になるかもしれない。
維持してきた関係や想いを失うことに痛みも悲しみもない訳じゃないけれど、どんな洗濯をするにしても、今後の自分に不幸が及ばなければそれでいい。
「竜樹さんに不幸が及ばないようにするにはどうしたらいいんだろう?」って考えてた自分はどこに行ったのだろうかと考えはするけれど、どんな道を選んでも私は私でしかないから。
ふっと、物事が終わる時は意外とあっさりしたもんなのかもなぁって思った。
ごちゃごちゃ考えたって、今日のことも明日のことも判りやしないんだ。
きっとそんなもんなんだろう。
食事をとらずに社屋に入り、もくもくもくと机の上に鎮座してる仕事の山を捌かしていく。
定時がきて少しだけ仕事が残っていたけれど、明日の朝一番でも大丈夫な仕事なので敢えて取り組まず事務所を後にした。
自転車をとばして駅に着いて、意を決して竜樹さんに電話する。
朝方の電話とは違う穏かな声に少々面食らったけれど、終始敬語で話して電話を切る。
ホームに滑り込んできた電車に乗り、竜樹邸を目指す。
会社帰りに竜樹邸に寄るということは、日常生活の中でそう珍しいことでない。
しんどくても家でしなきゃならないことが残っていても、竜樹さんに会えるということ自体がとても嬉しかった。
竜樹さんの体調が悪くても、傍にいられたらそれでよかった。
でも同じ気持ちでここを訪れることももうないかもしれない。
ぼんやりとそんなことを考えてるうちに、竜樹邸に着いてしまった。
会わなくなるなら返さなきゃならない竜樹邸の鍵をキーホルダーから外して、竜樹邸の鍵を開けようとしたら鍵は開いていた。
「こんばんは」
「あぁ、来たんか。悪いけど、2階に来てくれるか?」
本当は玄関先で必要なものを一式渡してそのまま家に帰るつもりだったのに、竜樹邸にあがる羽目になってしまった。
2階にあがると、竜樹さんは椅子に腰掛けて本を読んでおられた。
コートも脱がず、持ってきたものを一通り説明して中身を確認してもらう。
その作業も済んだので帰ろうとすると、「コーヒー1杯くらい飲んで帰り?」
「いえ、すぐに失礼しますから」と答える私の目の前にマグカップになみなみと注がれたコーヒーが出てきた。
コートを着たまませっせと飲んでいると、「コート脱いでゆっくり飲んで帰ったらええやん」と竜樹さん。
あまり愛想のないのもどうかと思ったから、いつもと同じペースでコーヒーを飲んだ。
会話といえば、竜樹さんが話し掛けてこられることに私が敬語で返すの繰り返し。
言葉が及びすぎることで大喧嘩になるのを避けようとした結果なのだけど…
コーヒーも飲みきったので、今度こそ帰ろうと立ち上がると、今度は「雑炊1杯でも食べて帰り?」
竜樹さんに言われるまま1階に降りると、先に降りた竜樹さんは鍋の中の雑炊を温めている。
「いつものことで芸がないけど…」とふたつの丼鉢に雑炊を入れ、海苔を散らしてスプーンと一緒に差し出される。
お礼を言ってそれを受け取り黙々と食べ出すと、「こっち来て食べ?」
リビングに入ると、椅子を二つセットされている。
それも二つの椅子が向き合うようにとても近いところに。
それは2階にいる時も同じだった。
終始竜樹さんから遠い場所に座る私を、竜樹さんが近くになるように椅子をセットして「おいで」という。
いつもならそれを嬉しいと思うのだけど、今は少し戸惑ってる。
…私自身は連日のやりとりの内容から、別れ話は出るとふんでいたから
結局、雑炊を食べ終わった後も竜樹さんの話し掛けに答える形になってしまって、気がついたらすぐ帰るつもりが予定よりも1時間半ほど長くいてしまった。
結局、予想してた別れ話は出ず、だけど今後の約束は何一つしないまま、竜樹邸を後にした。
私は傍が思うよりもうんと気短だし、白黒ははっきりさせたい性分だけど。
結論を急ぐ様相のない時にまで、無理やり結論を出す必要はないのかもしれない。
…どこかすっきりしない部分はあるのだけど
いつものように竜樹さんは心身共にリミッターが振り切れた結果、鋭い口調になったんだろうとは思うけれど、私自身の想いの果ては見えた気がした。
そういう意味では、今までとは違う意味で危機はまだ去った訳ではない。
やりあう相手は他ならぬ自分自身だから、もっと厄介。
…けれど、確かなのは。
冷えた気持ちで竜樹邸に出向いて、彼の笑顔で心が少しでも暖かくなる自分はまだ死んではいない。
それだけは確か。
いつか2人の歩みが終わる日がきても、もしかしたらそれだけは変わらないのかもしれない。
小さいけれどまだ死んではいない暖かさはまだ私の中に残っていたのだということだけは、確かだった。
心がどれだけ漣立っても…
取り敢えず急を要することについては、率先して(?)解決する方向で動き出す用意をしよう。
それでもまだ治まらないと仰るなら、もう降りよう。
頭の中で気持ち悪いくらい、理路整然と考えは纏まっていた。
腹も括れてしまっている。
それが正しいかどうかはまともに眠ってもいない、祖母の件から心が完全に生活にシフトしきれてない状態ではわからない。
ひとまずお風呂に入って、無理やり休むことにした。
何度も何度も浅い眠りを繰り返し、ようやくちゃんとした眠りの域に入りかけた頃、携帯が鳴る。
受話器の向こうの竜樹さんは、体調の悪い時のそれとは違った不機嫌そうな声。
今回はちゃんと抑え抑え話をしようと思って、ずっと彼の話を聞いていたけれど。
…正直、何のためにわざわざこんな時間に電話してきたんだろうって思った。
「そこまで言うのかよ?」という言葉も食らった。
彼の言葉にかちんと来ることはそう珍しいことでもないけれど、「あんたがそれを言うん?へぇ?」ってくらいに冷めた気持ちになることは極めて稀。
というより、こんな感覚は初めて。
会話として成立してるかどうかも怪しい電話が終わって時計を見ると、5時。
寝直したら、身体には堪える。
でも置き続けても身体には堪える。
横になって出勤準備をする時間を待ち続け、時間がきて身体を起こしてびっくりした。
吐き気がひどくてまともに立てない。
頭痛と胃痛の併発程度なら無理やりにでも出勤するけれど、胃液ごと吐きそうで吐けない状態。
吐き気を抑えるために飲んだ薬が逆効果でもどしてしまい、力が抜けてく感じがする。
会社に電話して、半休を貰った。
…いい加減クビになるかもなぁ
祖母が亡くなり、竜樹さんともめて関係が破綻した上に会社もクビになったら、泣きはしないけど笑えもしない。
ひとまず昼からはちゃんと仕事が片付けられるように横になって休み、ようやく身体が落ち着きを取り戻してきた頃に用意をして家を出た。
通勤鞄以外に竜樹さんに返すものと渡すものを持っているから、ふらつき気味な身体には堪えるけれど、何としても今日片付けてしまいたかった。
ひとつに纏めて宅急便で送りつけてもよかったかもしれない。
その方が楽は楽だ。
顔を合わせて傷つけあう作業に及べばそれは不毛な結果しか齎さない。
煩わしいことを好まない私にはちょうどいいだろう。
けれど、この件が元でごきげんような結果になっても、最後くらいは顔見て話しておかなきゃならないだろう。
会うことの目的が、この関係を維持するためではないというのが今までとは大きく違うことだろうけど…
時間が経てば怒りは静まるだろうけど、今回のことは多分一生忘れない。
いつもは彼の気持ちを維持することを最優先に考えるけれど、危機の度に竜樹さんを宥めたり(傍から見ると)すがってるように見える真似をする気力が起こらない。
正直いろんなことで疲れ切ってしまってるから、今日で最後になるかもしれない。
維持してきた関係や想いを失うことに痛みも悲しみもない訳じゃないけれど、どんな洗濯をするにしても、今後の自分に不幸が及ばなければそれでいい。
「竜樹さんに不幸が及ばないようにするにはどうしたらいいんだろう?」って考えてた自分はどこに行ったのだろうかと考えはするけれど、どんな道を選んでも私は私でしかないから。
ふっと、物事が終わる時は意外とあっさりしたもんなのかもなぁって思った。
ごちゃごちゃ考えたって、今日のことも明日のことも判りやしないんだ。
きっとそんなもんなんだろう。
食事をとらずに社屋に入り、もくもくもくと机の上に鎮座してる仕事の山を捌かしていく。
定時がきて少しだけ仕事が残っていたけれど、明日の朝一番でも大丈夫な仕事なので敢えて取り組まず事務所を後にした。
自転車をとばして駅に着いて、意を決して竜樹さんに電話する。
朝方の電話とは違う穏かな声に少々面食らったけれど、終始敬語で話して電話を切る。
ホームに滑り込んできた電車に乗り、竜樹邸を目指す。
会社帰りに竜樹邸に寄るということは、日常生活の中でそう珍しいことでない。
しんどくても家でしなきゃならないことが残っていても、竜樹さんに会えるということ自体がとても嬉しかった。
竜樹さんの体調が悪くても、傍にいられたらそれでよかった。
でも同じ気持ちでここを訪れることももうないかもしれない。
ぼんやりとそんなことを考えてるうちに、竜樹邸に着いてしまった。
会わなくなるなら返さなきゃならない竜樹邸の鍵をキーホルダーから外して、竜樹邸の鍵を開けようとしたら鍵は開いていた。
「こんばんは」
「あぁ、来たんか。悪いけど、2階に来てくれるか?」
本当は玄関先で必要なものを一式渡してそのまま家に帰るつもりだったのに、竜樹邸にあがる羽目になってしまった。
2階にあがると、竜樹さんは椅子に腰掛けて本を読んでおられた。
コートも脱がず、持ってきたものを一通り説明して中身を確認してもらう。
その作業も済んだので帰ろうとすると、「コーヒー1杯くらい飲んで帰り?」
「いえ、すぐに失礼しますから」と答える私の目の前にマグカップになみなみと注がれたコーヒーが出てきた。
コートを着たまませっせと飲んでいると、「コート脱いでゆっくり飲んで帰ったらええやん」と竜樹さん。
あまり愛想のないのもどうかと思ったから、いつもと同じペースでコーヒーを飲んだ。
会話といえば、竜樹さんが話し掛けてこられることに私が敬語で返すの繰り返し。
言葉が及びすぎることで大喧嘩になるのを避けようとした結果なのだけど…
コーヒーも飲みきったので、今度こそ帰ろうと立ち上がると、今度は「雑炊1杯でも食べて帰り?」
竜樹さんに言われるまま1階に降りると、先に降りた竜樹さんは鍋の中の雑炊を温めている。
「いつものことで芸がないけど…」とふたつの丼鉢に雑炊を入れ、海苔を散らしてスプーンと一緒に差し出される。
お礼を言ってそれを受け取り黙々と食べ出すと、「こっち来て食べ?」
リビングに入ると、椅子を二つセットされている。
それも二つの椅子が向き合うようにとても近いところに。
それは2階にいる時も同じだった。
終始竜樹さんから遠い場所に座る私を、竜樹さんが近くになるように椅子をセットして「おいで」という。
いつもならそれを嬉しいと思うのだけど、今は少し戸惑ってる。
…私自身は連日のやりとりの内容から、別れ話は出るとふんでいたから
結局、雑炊を食べ終わった後も竜樹さんの話し掛けに答える形になってしまって、気がついたらすぐ帰るつもりが予定よりも1時間半ほど長くいてしまった。
結局、予想してた別れ話は出ず、だけど今後の約束は何一つしないまま、竜樹邸を後にした。
私は傍が思うよりもうんと気短だし、白黒ははっきりさせたい性分だけど。
結論を急ぐ様相のない時にまで、無理やり結論を出す必要はないのかもしれない。
…どこかすっきりしない部分はあるのだけど
いつものように竜樹さんは心身共にリミッターが振り切れた結果、鋭い口調になったんだろうとは思うけれど、私自身の想いの果ては見えた気がした。
そういう意味では、今までとは違う意味で危機はまだ去った訳ではない。
やりあう相手は他ならぬ自分自身だから、もっと厄介。
…けれど、確かなのは。
冷えた気持ちで竜樹邸に出向いて、彼の笑顔で心が少しでも暖かくなる自分はまだ死んではいない。
それだけは確か。
いつか2人の歩みが終わる日がきても、もしかしたらそれだけは変わらないのかもしれない。
小さいけれどまだ死んではいない暖かさはまだ私の中に残っていたのだということだけは、確かだった。
心がどれだけ漣立っても…
コメント