今日は竜樹母さんの誕生祝の食事会の日。

いつもよりも幾分きれい目のカッコをして、鏡の前であぁでもないこうでもない…
そうしてるうちに家を出ないといけない時間になって、慌てて家を飛び出す。
朝メールを打とうとして、鞄を探って気がついた。

…あろうことか、携帯を忘れてきた(>へ<)


何処に忘れてきたかを思い返して、頭の中に?マークが飛び交う。
どうやら、台所に忘れてきたらしい。
何故そんなところに忘れてきたのか、さっぱり判らない。

昨日竜樹さんに「会社が終わったら電話で位置を確認しながら落ち合おう」と話していたところなのに…


とりあえず携帯を持ってないということを竜樹さんに知らせておきたくて、公衆電話から竜樹さんの携帯を鳴らすけれど、竜樹さんは出ない。
次の電車の時間が押し迫ってるので、仕方なく電話から離れて電車に乗る。

いつもならメールを打ってるうちに何時の間にか乗り換えの駅が来て、やがて会社の最寄駅に着くのだけれど、携帯がないというだけで一気に手持ち無沙汰になって移動の時間がやけと長く感じる。

それでも移動時間中ずっと携帯をにらんでいると、まだ不安定な右目には負担になるから、これはこれでよかったんだろうと無理やり納得させて長い移動の時間をやり過ごす。


事務所に入り、俄かに戦闘モードを発動させていく。
今日は仕事が後ろに引っ張ることは許されないから、時間が見繕えたら前倒しできるものは片っ端から前倒ししていく。

幸い、外から飛び込むイレギュラーの仕事がそれほど多くなかったから、定時ダッシュができそうなペースで仕事が片付いていく。


昼休みになって、竜樹さんに電話する。


「…もしかして、携帯忘れたんか?」
「そうです…(._.)
お店で集合にしましょうか?」
「いや、ややこしくなるから…」


結局、竜樹邸経由で料理屋さんに行くことに決定。
ますます仕事を後まで引きずるわけには行かない。
ご飯を食べ終わり、ボスティーを煎れた後、また仕事を片付け始める。
おかげで順調に片付いていく。


あと30分で定時というところで、ぶっち切れそうになるようなことが発生。
必要なものをすべて揃えて返した書類がないと、別の部署の社員さんが連絡を入れてきた。

何をどれだけの数揃えて返したかも知らせたけれど、さも私がなくしたようにぶつぶつ言ってくる。
ひとまず「こちらの方でも探します」と言ってはみたものの、2時間前に揃えて相手に返した書類が私の手元にあるはずもない。

彼がなくなったなくなったとキレ気味に騒いでる書類は、紛失したとなれば親会社の人の手を借りなければならなくなるようなちょっと特殊な書類。
この時点で定時まであと15分。
いくら書類の再発行をしてくれる親会社の社員さんに懇意にしてもらってるとはいえ、お願いしてすぐに出るような代物じゃない。


…自分の管理してるものくらい、自分で管理できませんか?


この会社でこれを言えば上を下をの大騒ぎになるだろう言葉が口をつきそうになるのを必死で抑えている。
時計をにらみながら対処を考え、書類をなくした当人に「対応は明日の朝一番にします。もし見つかったら連絡ください」とだけ言い残して、事務所を後にした。

対応を投げずにちゃんと決着つけたかったけれど、自分の書類の管理も出来ない上にその責を人に押し付ける人にお付き合いする気にはなれなかった。


今日は竜樹母さんのお誕生会の日だもの。


定時5分過ぎまで書類を捜して、ぱちんとスイッチが切れた。
慌てて着替えて自転車をかっ飛ばす。
駅のホームから竜樹さんに電話を入れて、電車に乗り込む。

乗り換えの駅から竜樹さんに電話を入れると、最寄の駅まで迎えに行くとのこと。
次の電車が何分に出るかを知らせて電話を切り、慌ててその電車に飛び乗る。


待ち合わせの駅に着いて、竜樹さんといつも落ち合う場所でぼけっと待つ。
料理屋さんに予約を入れた時間が迫ってきてるのに、竜樹さんの車は未だ来なくて気持ちだけが急いていく。

けれど、元を正せば私が携帯を忘れさえしなければ、もっと段取りよくいくはずだったんだ。
堂々巡りな思考回路に陥りそうになったところに、竜樹さんの車がやってきた。
後部座席を見ると、竜樹さんのご両親も乗っておられた。


「すいません、携帯忘れたばっかりにご迷惑をおかけしまして…」
「こちらこそ、会社帰りでしんどいやろうに出てきてもらって申し訳ないです…」

ひとしきり挨拶して車に乗り込み、予約してる料理屋さんを目指す。


会社帰りの時間帯になるから、道路は割と混んでいる。
それでも車が動かない程の渋滞ではないから、竜樹さんもそれほど機嫌を悪くされることなく運転に専念しておられる。
後部座席では竜樹母さんと竜樹父さんが話をしているけれど、竜樹母さんの話題がぼんぼん飛ぶので会話を冷静に聞いていると変化に富んで面白い。


…竜樹さんにそれをやると、途端に機嫌が悪くなりそうだけどね(-_-;)


辛抱強くお付き合いしてる竜樹父さんの懐の深さみたいなものを垣間見た気がする。
時々とんでくる話題に対応しながら、店までの移動を続ける。
もしかしたら、予約の時間から遅れるかもしれないと気を揉んでいたけれど、食事の時間よりも15分ほど前についた。


今日の料理は豆腐懐石。
コースの献立は竜樹さんに選んでもらった。
竜樹さんのご両親・竜樹さんと私がそれぞれ違うコースを取ることになる。
主賓の竜樹母さんに珍しいものを食べてもらいたくて、「汲み上げ湯葉のついたコースにしておいてね」とさりげなくお願いしたことを竜樹さんは考慮してくれてたみたい。

お店の人に案内されて入っていくと、個室を用意してくれていた。
部屋に入って少しくつろいだ後、ビールを頼んでまずは乾杯。
竜樹さんは運転するので、彼につがれたビールは私のところに回ってきたけれど…

そうしてるうちに、料理がどんどん運ばれてくる。
料理を運んでくれる人から料理の説明を受け、それぞれ感心しながら食べ始める。

あまり量を食べることの出来ない竜樹母さんからコースの料理を少し分けてもらいながら、楽しく話しながら料理を口にする。
竜樹父さんも竜樹母さんも何だか嬉しそうに食べてくれている。

そんな様子を見ていると、少々予算が高くついてもこれでよかったのだと思える。

竜樹さんのご両親の様子を眺めながらにこにこと料理を口にしつづける。
密かに「あ、これ今度作ってみよう」と考えながら食べている。
考えながら食べていると、竜樹さんが話し掛けてくる。


「霄に店を選んでもらってよかったわ。
こんなにゆったりくつろげる部屋で食事できるとは思わへんかった」


私も予約を入れたら個室にしてもらえるなんてことは知らなかったけれど、喜んでもらえるならそれが一番。
湯葉が出来上がるたびにお箸で取って食べるのだけど、それもにわかに盛り上がり。
湯葉を食す時に入れる柚子の削り方ひとつでもまた盛り上がり。

久しぶりに賑やかな食事の楽しさに触れた気がする。


「長く生きては見るものね」と竜樹母さん。
「こんなにいいところで食事をできるとは思わなかったもの」と続く。

「何を言うてはりますねん。まだまだこれからやないか」とは竜樹父さん。


そんなやりとりが暖かく思える。
2時間近く続いた食事会を終え、車に乗って家に向かう。
本当はお茶をして帰ろうかという話もあったけれど、まだ明日も仕事があるということで体力温存策をとろうということで落ち着いた。


「またお茶は次回のお楽しみということで♪」


帰りの車の中でも、ずっと話に花が咲く状態。
運転に集中したい竜樹さんには傍迷惑だったかもしれないけれど、竜樹さんのご両親の明るい表情が見れたことがただただ嬉しかった。


竜樹さんのご両親とは竜樹さんと一緒にいはじめてそれほど間がない頃にお会いしてる。
金岡両親とのことやそれまでの経過を思うと、必ずしも手放しで喜べる話ばかりでなかった。
そのことを思うと、とてもじゃないけど竜樹さんのご両親に私が大事にされよう筈はなKったと思うのに、竜樹さんのご両親はとてもかわいがってくださる。


ありがたいと思うのと同時に申し訳ない気持ちで一杯になるけれど…


楽しい宴の後に自分の気持ちを伝えるなら。
きっと「申し訳ございません」ではなく「楽しい時間をありがとうございます」の方がいいのだろう。
いずれ竜樹さんともっとずっと一緒にいることになる時、否が応でも「申し訳ございません」と心から頭を下げなければならない日も来るのかもしれない。

それなら今日は「ありがとう」と伝えたらいい。
自分たちが考えて作り上げた時間や計画を額面以上に楽しんでくれたこと。
そのことが嬉しいという気持ちだけを伝えたらいい。

そんなことをぼんやり考えているうちに、竜樹さんの車は金岡家の前に着いてしまった。


「今日は楽しんで頂けたのが嬉しかったです。
また一緒にご飯を食べに行けたら嬉しいです。
ありがとうございました」


そう言って、車を降りた。
外の風は冷たかったけれど、心はとても温かだった。



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