不意に現れたのは…
2002年10月24日竜樹さんからの電話の後、すっと眠った。
朝身体が重いのは定例だけど、気持ちが上向きなら何とか動けるもので。
行く先がどこであれ、少しばかり軽い気持ちで家を出た。
今日は竜樹さんが病院に行く日。
入院していた病院の方に行くので、道中についてはあまり心配しなくても済む。
昨日は寒かったとはいえ、そこそこ元気そうだったので、診断結果もそれほど悪くはないのだろうと勝手に安心しながら仕事を始める。
仕事の流れは穏やかなようで手ごわい要素がそこここに散らばってる感じ。
それはきっといつものことなんだけれど。
特にいつもと変わりなく、電話は噛み付くように鳴り響き、空き時間ができると仕事を前倒しして進める努力の繰り返し。
ボスのちゃちゃ入れも相変わらずで、ストレスフルなのも含めていつもと同じような光景。
…竜樹さんの診察結果はどうだったんだろう?
たまにそんなことを考えられる程度の余裕があることはありがたかったかもしれない。
午前中もぱりぱりと仕事をし、昼休みも半分ほどは雑用で潰し、昼からの仕事に挑む。
昼からの仕事はいつもよりも幾分穏やかだという程度で、取り立てて忙しすぎず暇すぎず。
ただ空き時間が出来ると、明日すればいいような作業をこちこちと片付ける。
殆ど午前中と変わりない仕事の流れにちょっと疲れて目線を上げた時、鞄が揺れたのに気がつく。
携帯にメールがひとつ届いていた。
…竜樹さんからだった。
「只今帰宅しました[^。^]V。
特に問題なし。薬を山ほど、もらったぐらいかな」
…その後に、「今日こちらにおいで」という内容の文章が続いていた。
ちょっと……(/-\*)な表現だったから、思わず下を向いたまま顔をあげられずいたけれど。
何気ない1日が特別な1日に変わることがとても嬉しかった。
その後、またもう1通メールが届く。
「返信はあとでいいよ。(’v’)/ (^^)/。」
…そう言われても、早く行けることを伝えたい。
お茶の時間に乗じて、こっそりメールを送る。
贈った瞬間から、仕事に対する取り組み方まで変わる(爆)
何が何でも定時に会社を出たくて、ミスが内容に気をつけながら前倒し大会と通常フローを平行して進める。
幸い、ややこしい問題を孕んだ電話も業務依頼も少ない。
かなり余裕をもった状態で仕事を片付けていく。
そこへまた鞄が揺れる。
「チキンのセットが待ってるよ(^.^)食べたいでしょう?
いつものところまで迎えに行くからね[^。^]V 。」
さらに仕事のペースは加速していく。
お陰様で仕事に足止めを食らうことなく、事務所を後にした。
いつもなら疲れてよろよろと転がす自転車も、風を切るように走らせられる。
仕事の後に楽しみが待っていると、これほどまでに違うものなのかと呆れながら、竜樹さんが待つ場所へ大急ぎで自転車をかっ飛ばす。
駐輪場に自転車を片付け、いつも落ち合う場所で待っていると、竜樹カー到着。
「お疲れ〜♪(*^-^*)」
「お疲れ様です〜♪(*^-^*)」
突然やってきた放課後デートが始まる。
渋滞をかいくぐって竜樹邸に到着すると、暖かなチキンセットが食卓にちょんと置いてある。
お茶とお皿を用意して、2人で「いただきます♪」
竜樹邸に行くと時々登場するチキンセットがやたら美味しくて、チキンをかじってる間は殆ど会話がない。
時折、チキンをかじるのを休んでお話しして、またかじって。
テレビを見ながらお話しながら食事を続ける。
食事が一段楽して、じゃれっこな雰囲気になってきて…
熱を帯びた時間を過ごす。
ひとしきりいろんなものを受け渡すと、少しお疲れになったらしく竜樹さんは眠ってしまった。
「テレビをつけててもいいよ」と言われたけれど、寝るのに差し障りがありそうな気がして、そっと階下に降りる。
テレビを見ながら、時々携帯を触ってメールを打ったり、携帯から見れるサイトを散歩してみたりして竜樹さんが起きるのを待っていた。
…ふと、心に痛みが走る。
最近とんとご無沙汰していた悲しい感情を呼び起こすような表現に出会ってしまった。
もうそんなことを考えなくてもよいところに今はいてるのに。
どうして心が痛むのか判らなかった。
文字の一つ一つが心を締め上げるような感じがして、涙が止まらなかった。
元気になった竜樹さんの隣にいる私には、もう必要のない感情だというのに。
何で今頃思い出したように、心をかきむしっていくんだろう。
自分でも訳が判らなかった。
ただの情緒不安定と笑えるものならいいのだけど…
竜樹さんが起きてきた時涙目だと心配される。
携帯を鞄の中に放り込み、暫く目を閉じていた。
時折、テレビを眺めながら涙の跡が残ってないか鏡で何度も確認していたけれど。
目の赤みは引きそうにない。
「…霄、泣いてたんか?」
慌てて振り返ると、竜樹さんが降りてきていた。
「…や、目が疲れてるみたいで、涙止まらないんですよ」
「そか?大丈夫ならええねんけど…」
我ながらへったくそな誤魔化し方やなぁと呆れていると、「お腹、空いたー」と竜樹さん。
台所に取って返し、冷蔵庫を探しまわして即興焼そばをひとつ作る。
「美味いで♪食べてみ?(*^-^*)」
そう言って差し出してくれるお皿を受け取り、もぐもぐと食べる。
ご機嫌さんな竜樹さんを見てるうちに、突如湧いてきた悲しい感情はまた心の奥に還っていったような気がする。
食事の後片付けを終えて、竜樹さんが送ってくれるというので、お言葉に甘えることにした。
…竜樹さんと一緒にいるなら、もうそんな風に思うことはないんだよ?
…でも大事な人に対してだからこそ、ああいう想いは生まれることもあるんだよ?
小さな葛藤を収めこむのに必死で無口になる。
時々、ぽつぽつと言葉を投げかけてくれる竜樹さんに何だか申し訳なくて、なけなしの明るさを繰り出してみたけれど。
きっとヘンな感じに見えたんだろうなって思う。
それでも、ただそこにいてそっとしておいてくれてることが、今の私にはありがたかったんだ。
暖かな時間にふいに現れた悲しい感情。
何故それがそこに現れたのかは判らないけれど。
幸せな気持ちでいてることに違いがないのに、不意に現れたのは心の闇。
それがいつか本当に幸せな状態を自ら壊しにかかるようなものにまで成長しないことをただ願った。
大切に想ってる人をただ大切に想いつづけてさえいれば、そんな感情に出逢わなくても済むのかどうかは判らないけれど。
どうやったってそんな感情が時々顔を出すというのなら、せめて竜樹さんの心に暗い影を投げかけない程度の大きさに留められたらと、強く強く思った。
朝身体が重いのは定例だけど、気持ちが上向きなら何とか動けるもので。
行く先がどこであれ、少しばかり軽い気持ちで家を出た。
今日は竜樹さんが病院に行く日。
入院していた病院の方に行くので、道中についてはあまり心配しなくても済む。
昨日は寒かったとはいえ、そこそこ元気そうだったので、診断結果もそれほど悪くはないのだろうと勝手に安心しながら仕事を始める。
仕事の流れは穏やかなようで手ごわい要素がそこここに散らばってる感じ。
それはきっといつものことなんだけれど。
特にいつもと変わりなく、電話は噛み付くように鳴り響き、空き時間ができると仕事を前倒しして進める努力の繰り返し。
ボスのちゃちゃ入れも相変わらずで、ストレスフルなのも含めていつもと同じような光景。
…竜樹さんの診察結果はどうだったんだろう?
たまにそんなことを考えられる程度の余裕があることはありがたかったかもしれない。
午前中もぱりぱりと仕事をし、昼休みも半分ほどは雑用で潰し、昼からの仕事に挑む。
昼からの仕事はいつもよりも幾分穏やかだという程度で、取り立てて忙しすぎず暇すぎず。
ただ空き時間が出来ると、明日すればいいような作業をこちこちと片付ける。
殆ど午前中と変わりない仕事の流れにちょっと疲れて目線を上げた時、鞄が揺れたのに気がつく。
携帯にメールがひとつ届いていた。
…竜樹さんからだった。
「只今帰宅しました[^。^]V。
特に問題なし。薬を山ほど、もらったぐらいかな」
…その後に、「今日こちらにおいで」という内容の文章が続いていた。
ちょっと……(/-\*)な表現だったから、思わず下を向いたまま顔をあげられずいたけれど。
何気ない1日が特別な1日に変わることがとても嬉しかった。
その後、またもう1通メールが届く。
「返信はあとでいいよ。(’v’)/ (^^)/。」
…そう言われても、早く行けることを伝えたい。
お茶の時間に乗じて、こっそりメールを送る。
贈った瞬間から、仕事に対する取り組み方まで変わる(爆)
何が何でも定時に会社を出たくて、ミスが内容に気をつけながら前倒し大会と通常フローを平行して進める。
幸い、ややこしい問題を孕んだ電話も業務依頼も少ない。
かなり余裕をもった状態で仕事を片付けていく。
そこへまた鞄が揺れる。
「チキンのセットが待ってるよ(^.^)食べたいでしょう?
いつものところまで迎えに行くからね[^。^]V 。」
さらに仕事のペースは加速していく。
お陰様で仕事に足止めを食らうことなく、事務所を後にした。
いつもなら疲れてよろよろと転がす自転車も、風を切るように走らせられる。
仕事の後に楽しみが待っていると、これほどまでに違うものなのかと呆れながら、竜樹さんが待つ場所へ大急ぎで自転車をかっ飛ばす。
駐輪場に自転車を片付け、いつも落ち合う場所で待っていると、竜樹カー到着。
「お疲れ〜♪(*^-^*)」
「お疲れ様です〜♪(*^-^*)」
突然やってきた放課後デートが始まる。
渋滞をかいくぐって竜樹邸に到着すると、暖かなチキンセットが食卓にちょんと置いてある。
お茶とお皿を用意して、2人で「いただきます♪」
竜樹邸に行くと時々登場するチキンセットがやたら美味しくて、チキンをかじってる間は殆ど会話がない。
時折、チキンをかじるのを休んでお話しして、またかじって。
テレビを見ながらお話しながら食事を続ける。
食事が一段楽して、じゃれっこな雰囲気になってきて…
熱を帯びた時間を過ごす。
ひとしきりいろんなものを受け渡すと、少しお疲れになったらしく竜樹さんは眠ってしまった。
「テレビをつけててもいいよ」と言われたけれど、寝るのに差し障りがありそうな気がして、そっと階下に降りる。
テレビを見ながら、時々携帯を触ってメールを打ったり、携帯から見れるサイトを散歩してみたりして竜樹さんが起きるのを待っていた。
…ふと、心に痛みが走る。
最近とんとご無沙汰していた悲しい感情を呼び起こすような表現に出会ってしまった。
もうそんなことを考えなくてもよいところに今はいてるのに。
どうして心が痛むのか判らなかった。
文字の一つ一つが心を締め上げるような感じがして、涙が止まらなかった。
元気になった竜樹さんの隣にいる私には、もう必要のない感情だというのに。
何で今頃思い出したように、心をかきむしっていくんだろう。
自分でも訳が判らなかった。
ただの情緒不安定と笑えるものならいいのだけど…
竜樹さんが起きてきた時涙目だと心配される。
携帯を鞄の中に放り込み、暫く目を閉じていた。
時折、テレビを眺めながら涙の跡が残ってないか鏡で何度も確認していたけれど。
目の赤みは引きそうにない。
「…霄、泣いてたんか?」
慌てて振り返ると、竜樹さんが降りてきていた。
「…や、目が疲れてるみたいで、涙止まらないんですよ」
「そか?大丈夫ならええねんけど…」
我ながらへったくそな誤魔化し方やなぁと呆れていると、「お腹、空いたー」と竜樹さん。
台所に取って返し、冷蔵庫を探しまわして即興焼そばをひとつ作る。
「美味いで♪食べてみ?(*^-^*)」
そう言って差し出してくれるお皿を受け取り、もぐもぐと食べる。
ご機嫌さんな竜樹さんを見てるうちに、突如湧いてきた悲しい感情はまた心の奥に還っていったような気がする。
食事の後片付けを終えて、竜樹さんが送ってくれるというので、お言葉に甘えることにした。
…竜樹さんと一緒にいるなら、もうそんな風に思うことはないんだよ?
…でも大事な人に対してだからこそ、ああいう想いは生まれることもあるんだよ?
小さな葛藤を収めこむのに必死で無口になる。
時々、ぽつぽつと言葉を投げかけてくれる竜樹さんに何だか申し訳なくて、なけなしの明るさを繰り出してみたけれど。
きっとヘンな感じに見えたんだろうなって思う。
それでも、ただそこにいてそっとしておいてくれてることが、今の私にはありがたかったんだ。
暖かな時間にふいに現れた悲しい感情。
何故それがそこに現れたのかは判らないけれど。
幸せな気持ちでいてることに違いがないのに、不意に現れたのは心の闇。
それがいつか本当に幸せな状態を自ら壊しにかかるようなものにまで成長しないことをただ願った。
大切に想ってる人をただ大切に想いつづけてさえいれば、そんな感情に出逢わなくても済むのかどうかは判らないけれど。
どうやったってそんな感情が時々顔を出すというのなら、せめて竜樹さんの心に暗い影を投げかけない程度の大きさに留められたらと、強く強く思った。
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