確かな暖かさ

2002年9月5日
昨晩少しパソコンの前で姉さまに頼まれた作業を終えて一息ついていると、メールが届いた。


…あ、竜樹さんからだ。


多分打ち合わせで疲れたから、電話ではなくメールなんだろう。
てっきり手術の最終打ち合わせの話を報告してくれるものだとばかり思っていた。


「おやじから今日連絡あったー?」

手術の打ち合わせの内容は竜樹父さんから連絡があるだろうと、こないだお見舞いに行った日に聞かされていた。
けれど、自宅に戻ってから一度も連絡はない。


「ないよ。お疲れでたのかな?今日も暑かったし。
具合はいかが?」

随分呑気な返事だとは思ったけれど、取り敢えずそう返した。
すかさず、メールが飛び込む。


「こないだ親父に話しておいてくれって頼んだ話、電話しとけっていったのに、してないやろヽ(`⌒´)ノ」

怒りの顔文字がついたメールを見て、思い返す。


お見舞いに行って家に帰り着いてから、竜樹さんのご実家に電話をした。
私に持ってくるように言われたものとは別に、竜樹父さんに伝言しておいて欲しいといわれたことがいくつかあったから。
竜樹さんが伝えて欲しいと思われるだろうことは私も感じ取れてはいたので、説明するだけの時間的な余裕を見繕ってくれはるなら、きちんと説明できたとは思う。


…ところが、電話の向こうからは何だかてんやわんやしてるのが見て取れる。


翌日は竜樹さんの手術の最終の打ち合わせ。
竜樹さんのこと以外にもいろいろと抱えていらっしゃってご多忙な竜樹さんのご両親は、いつもにもましてバタバタしておられるご様子。
明日病室に入る前に伝えておきたいことんだけれど、事情説明してちゃんと把握してもらえそうな雰囲気ではなかったので、火急に竜樹さんが必要としてる書類のことだけ伝えて電話を切った。


竜樹さんが仰ってることは、きっとそのことなんだろう。
メールの調子からして、危惧した問題は起こってしまったのかも知れない。


「バタバタしてはったみたいで、ゆっくりお話しできそうになかったんです。
何をおいても話すべきでした。
いつまでも役に立たなくて、ごめんなさいm(__)m」


そう飛ばすと、すかさずお返事。

「あの時、霄はどう思ったん?」


言葉に詰まった。
微妙な内容の話だったから、きちんと時間を取って伝えたかった。
必要以上に誇張されて伝わったり、軽んじられていい話ではなかった。
だけど、伝えなかったことで問題は起こってしまったんだろう。
でなきゃ、竜樹さんはそんな風に怒らないだろうから。

お見舞いに行った日に自分が感じたことをそのまま文字に置き換えて、そのまま夜空に飛ばした。
それっきり、竜樹さんから返事はなかった。


…また、逆戻りだ


竜樹さんの体調が悪かった時、何度となく起こってはぼこんとへこんだ時の感じと同じ。
竜樹さんに思うことを少しずつでも伝えていく過程の中で少しずつ私自身も改善されたんだと思ってたけれど。
こんな風に問題が発生した時は、結局何にも変わってないのかなという気になる。


どんどこ落ち込んでいってるところに、またメールがひとつ。
着信音で竜樹さんではなく、姉さまだと判ったけれど。
姉さまの質問に答えて、おまけついでに簡単な事情説明だけしてメールを飛ばし、床に携帯転がしてそのまま横になる。

こんな心境で眠れるはずはないけれど、ひどく疲れてしまった感じが抜けずに何時の間にか眠ってしまってた。


頭の中でぼんにゃりと部屋電の呼び出し音が聞こえる。


…電話が鳴るということは朝なのかな?


ナンバーディスプレイも眺めずにそのまま出る。


「……にゃい(p_-)」
「…霄?起こしてもたか?」


…竜樹さんだった。


「どうかしはったん…ですか?」
「…いや、メールでやり取りしてた話についてやねんけど…」


何処となく声の感じが弱い気がしてどきりとする。
自分の思ったこと、それが叶わなかったこと。
意識はぼんやりしていたけれど、その事実の部分だけを掬い上げて伝えられるように注意深くゆっくりと言葉を選びながら話す。

「…そら、そやわなぁ。そんな状況が電話口から判るんやったら、親父ら相当バタついてたんやろ。
霄の判断のが正しいわ。
ごめんなぁ、言い過ぎたわ……」

「いや、もっと的確に伝える方法はあったのかも知れへんし…」
「そんな状態で親父に話しても殆ど右から左やで。これでよかったんや」
「私の感じ取ったこと、あさって向いてました?」
「いや、俺が思ってたことをよう汲み上げてる。ありがとうな」


その話が終わった後、手術の打ち合わせの話を少しだけして電話を切った。
何処となく不安そうな竜樹さんの声に少し力が戻ったのを感じ取ってほっとした。


時計を見ると、5時。
これから寝なおすとしんどいだろうとは思ったけれど、少しだけ眠いので寝直した。

…案の定、二度寝したら却って眠気も体のだるさも増したけれど


今日の会社は昨日は午前中、自分勝手に持って来られる仕事を投げ散らかすのに手間どって終日忙しく、日中に会ったことを振り返るとボスだけがやたら明るかったことくらいしか思い返せないけれど。


行き違いを起こしても、臆せず互いの思うことを話し合えること。
そうしてでも2人でいるために、詰めていけること。
そんなことはごくごく当たり前のことかもしれないけれど。


それをありがたいものとして受け止められること。
互いの想いを詰めることでより心の傍にいられること。
それがただ嬉しいのだと。


齟齬を超えて得たものは、小さいけれど確かな暖かさ。
私にはそれが嬉しかったんだ。


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