少しでもたくさん笑顔でいられるように…
2002年8月31日竜樹さんが入院して2回目の週末。
休みの日にしては珍しく朝早く目が覚めた。
今週は竜樹さんの具合がいまひとつで、外泊届は出されなかったそう。
だから、今日は病院へお見舞い。
昨日連絡を貰った時、「ゆっくりでいいから、病院に着く時間帯が判ったらメールくれる?」とのことだったので、ちょっとぼんにゃりして用事を片してから家を出る。
階下に降り、遅い昼食を食べて後片付けを済ませて出かけようとすると、「今日は夕飯何を作るんや?」と金岡父に聞かれた。
竜樹邸に行くとご飯を作るというのは既に金岡家では周知の事実なので、家を出る前には決まって聞かれることなんだけれど。
咄嗟に言葉を濁してしまった。
…まだ、金岡両親には竜樹さんが入院したことを話していない。
入院が決まった段階できちんと話すつもりでずっと様子を見ていたけれど、なかなか話す機会がなかったのと、食事がてらさらりと世間話程度に流してしまうのもどうなんだろうと考えてるうちに、どんどん日ばかりが過ぎてしまった感じ。
多分、今更竜樹さんが入院してることや再手術を受けることを話したところで彼らの中で何が変わるとも思わないけれど。
昔の癖か、それとも最悪の事態になるかもしれないという不安がよぎるからか、すっと切り出すことができなかった。
どちらにしても、いつもよりもうんと早く帰宅すれば帰宅が早い理由は聞かれるだろう。
その時にきちんと説明したら、自然な流れで話を進められるような気はした。
…もしかしたら、それが新たな波乱を巻き起こすかもしれないけれど(-_-;)
ひとまず遅くなりすぎても具合が悪いので、家を出た。
今日も暑いとはいえ、幾分湿気が少ないのでまだマシ。
病院は空調が効いてるので、多分気温の影響を受けることなく穏かには過ごしてるんだろうとは思うけれど、冷房漬けになるのも考えもの。
身体にダメージが少なければいいなと思いながら、坂道をてくてくと歩く。
ホームに滑り込んできた電車に乗り、「15時頃に着きます」というメールを送る。
夏休み最後の週末だからという訳でもないのだろうけど、車内は割と込んでいる。
冷房が効いてたかなと思っても、人が乗り込んでくるごとに温度が上がるような感じがする。
よろよろと電車を乗り継ぎ、病院を目指す。
前回入院した病院は遠すぎるので、今回は竜樹さんちから比較的近いところに入院させてもらったのだけど、そのせいか随分移動時間は短くて済んでる。
前はあまりに遠かったせいか半ば遠足気分で通ったものだけれど、私の家からもそれほど遠くない病院ならゆっくり身体を休めてから出かけても余裕を持って病院にいられる。
病院に長くいられれば手伝えることも増える。
私にとっても都合がよかったのかもしれない。
電車の乗換えを繰り返し、病院の最寄駅で降りる。
そこから夏日の道をてくてくと病院目指して歩く。
ひたすら歩きつづけてやっとこたどり着いた。
前回入院してた病院よりもはるかに大きくてきれいな病院だった。
竜樹さんから知らされていた部屋番号を確認しながら、鰻の寝床のような通路をうろちょろ歩く。
途中、喫煙場所や待合室でごろりと横になってる人がいてびっくり。
前の病院じゃそんなことをしてようものなら、看護婦さんが注意しておられたから…
「随分いろんな人がいるなぁ」と思いながら、てくてくと通路を歩く。
やっとこエレベーターに辿り着き、竜樹さんがいると思われる階まであがる。
看護婦さんの詰め所前で記帳していると、右側に人影が見える。
…待ちくたびれた竜樹さん、迎えに来てくれていた(o^−^o)
「よぉ来てくれたなぁ(*^-^*)」とほにゃと笑う竜樹さん。
思ったよりも元気そうで嬉しくなる。
竜樹さんのいる部屋に入ると、あまりにキレイなのでびっくりしてしまった。
「随分、キレイなところにいはるんですね」
「せやろ?前の病院と比べたらはるかに設備ええやろ?」
急に具合が悪くなっても、対応が早くてよいらしい。
それを聞いていて安心した。
病室に入って暫くすると、竜樹さんは煙草を吸いに階下に降りていかれた。
竜樹さんのベッドのお隣にはもう一人いらっしゃるとは聞いていたけれど、カーテンで間仕切られた向こうからは何の気配もなかった。
それでも患者さんがおられるのだからと、一人静かに竜樹さんが戻ってこられるのを待っていた。
竜樹さんは飲み物を持って戻ってこられた。
暫く竜樹さんは椅子に座り、私は(どういう訳か)空っぽの竜樹さんのベッドの上に座って暫くお話をしていた。
すると、何度も看護婦さんが出たり入ったりする。
最初はそれほどでもなかったけれど、だんだんその間隔が詰まってくる。
「お隣さん、お加減悪いのかな?」と気にしているのに気づいたのか、「しょっちゅうナースコール鳴らすねん」と耳元で竜樹さんが言った。
さっき来てもらってたと思ったら、また押しての繰り返し(^-^;
…病院というところはいろいろあるのだなと思いながら、なるべく騒がしくならないようにそっと話していた。
時折竜樹さんは落ち着かないのか、そっと触れてくるけれど。
あまりそちらに意識を向けないように気をつけていた。
「やっぱり、病院やとなんか落ちつかへんなぁ。甘える訳にもいかへんし」
「そんなん、当たり前やないですか」
具合が悪くて病院に残ったのは竜樹さんやんと思いながら、ちょっと情けなさそうにしてる竜樹さんが何だかかわいくて、よしよしと頭をなでた。
その間も頻繁に看護婦さんは出たり入ったりしている。
…確かに、甘えるのあの字もでぇへんような状態やね、これって
身体に触れる触れられないとかいう話じゃなくて、本当に落ち着かないなぁと思いながらぽつりぽつりと話していた。
そのうち食事の時間がやってきた。
「割と食事、美味しいねんで(*^-^*)」
病院食というとあまり美味しくないんだろうなぁと思っていたけれど、ほにゃと笑う竜樹さんがの表情を見てると、食生活もそう不自由してないんだと安心できる。
お隣さんもおうちの方がお見えになって、病室中が賑やかになる。
…お隣さん、1日病室で寂しいんだなぁ
そんな風に思いながら竜樹さんが食事してるのをぼんやり見ていると、お隣さんの奥さんがお裾分けにとケーキ屋さんのゼリーを持ってこられた。
…そのお裾分け、私が頂いてしまったのだけど(^^ゞ
お裾分けで幸せな気分になりながら、また暫く竜樹さんとお話してると、面会時間も終わりに差し掛かる。
竜樹さんが玄関まで送りがてら、どんなところにどんなものがあるかを教えてくれるというので、2人で並んで歩く。
あちらこちら案内してもらっても、やっぱりそんなに沢山の時間一緒にいられるわけではなく、あっという間に玄関に着いてしまった。
「今日はありがとうな、嬉しかった」
「また明日来れたら、来ますね」
「無理したら、アカンで。どっちかと言えば手術後頑張ってもらわんなんから」
そう言って、2人で暫く手を繋いだままその場に立ち尽くし、どちらもなかなか繋いだ手を離そうとしない。
そんな様に互いに少し笑って、その手を離した。
帰り道は何だか切ない。
まだまだ先は長いのに、何だか胸が痛くなるけれど。
竜樹さんがどこにいても、そのほにゃっとした笑顔を見せてくれるなら、まだ頑張っていられる。
竜樹さんが少しでもたくさん笑顔でいられるように、私は頑張る。
そんな風に思いながら、電車を乗り継ぎ家に戻った。
休みの日にしては珍しく朝早く目が覚めた。
今週は竜樹さんの具合がいまひとつで、外泊届は出されなかったそう。
だから、今日は病院へお見舞い。
昨日連絡を貰った時、「ゆっくりでいいから、病院に着く時間帯が判ったらメールくれる?」とのことだったので、ちょっとぼんにゃりして用事を片してから家を出る。
階下に降り、遅い昼食を食べて後片付けを済ませて出かけようとすると、「今日は夕飯何を作るんや?」と金岡父に聞かれた。
竜樹邸に行くとご飯を作るというのは既に金岡家では周知の事実なので、家を出る前には決まって聞かれることなんだけれど。
咄嗟に言葉を濁してしまった。
…まだ、金岡両親には竜樹さんが入院したことを話していない。
入院が決まった段階できちんと話すつもりでずっと様子を見ていたけれど、なかなか話す機会がなかったのと、食事がてらさらりと世間話程度に流してしまうのもどうなんだろうと考えてるうちに、どんどん日ばかりが過ぎてしまった感じ。
多分、今更竜樹さんが入院してることや再手術を受けることを話したところで彼らの中で何が変わるとも思わないけれど。
昔の癖か、それとも最悪の事態になるかもしれないという不安がよぎるからか、すっと切り出すことができなかった。
どちらにしても、いつもよりもうんと早く帰宅すれば帰宅が早い理由は聞かれるだろう。
その時にきちんと説明したら、自然な流れで話を進められるような気はした。
…もしかしたら、それが新たな波乱を巻き起こすかもしれないけれど(-_-;)
ひとまず遅くなりすぎても具合が悪いので、家を出た。
今日も暑いとはいえ、幾分湿気が少ないのでまだマシ。
病院は空調が効いてるので、多分気温の影響を受けることなく穏かには過ごしてるんだろうとは思うけれど、冷房漬けになるのも考えもの。
身体にダメージが少なければいいなと思いながら、坂道をてくてくと歩く。
ホームに滑り込んできた電車に乗り、「15時頃に着きます」というメールを送る。
夏休み最後の週末だからという訳でもないのだろうけど、車内は割と込んでいる。
冷房が効いてたかなと思っても、人が乗り込んでくるごとに温度が上がるような感じがする。
よろよろと電車を乗り継ぎ、病院を目指す。
前回入院した病院は遠すぎるので、今回は竜樹さんちから比較的近いところに入院させてもらったのだけど、そのせいか随分移動時間は短くて済んでる。
前はあまりに遠かったせいか半ば遠足気分で通ったものだけれど、私の家からもそれほど遠くない病院ならゆっくり身体を休めてから出かけても余裕を持って病院にいられる。
病院に長くいられれば手伝えることも増える。
私にとっても都合がよかったのかもしれない。
電車の乗換えを繰り返し、病院の最寄駅で降りる。
そこから夏日の道をてくてくと病院目指して歩く。
ひたすら歩きつづけてやっとこたどり着いた。
前回入院してた病院よりもはるかに大きくてきれいな病院だった。
竜樹さんから知らされていた部屋番号を確認しながら、鰻の寝床のような通路をうろちょろ歩く。
途中、喫煙場所や待合室でごろりと横になってる人がいてびっくり。
前の病院じゃそんなことをしてようものなら、看護婦さんが注意しておられたから…
「随分いろんな人がいるなぁ」と思いながら、てくてくと通路を歩く。
やっとこエレベーターに辿り着き、竜樹さんがいると思われる階まであがる。
看護婦さんの詰め所前で記帳していると、右側に人影が見える。
…待ちくたびれた竜樹さん、迎えに来てくれていた(o^−^o)
「よぉ来てくれたなぁ(*^-^*)」とほにゃと笑う竜樹さん。
思ったよりも元気そうで嬉しくなる。
竜樹さんのいる部屋に入ると、あまりにキレイなのでびっくりしてしまった。
「随分、キレイなところにいはるんですね」
「せやろ?前の病院と比べたらはるかに設備ええやろ?」
急に具合が悪くなっても、対応が早くてよいらしい。
それを聞いていて安心した。
病室に入って暫くすると、竜樹さんは煙草を吸いに階下に降りていかれた。
竜樹さんのベッドのお隣にはもう一人いらっしゃるとは聞いていたけれど、カーテンで間仕切られた向こうからは何の気配もなかった。
それでも患者さんがおられるのだからと、一人静かに竜樹さんが戻ってこられるのを待っていた。
竜樹さんは飲み物を持って戻ってこられた。
暫く竜樹さんは椅子に座り、私は(どういう訳か)空っぽの竜樹さんのベッドの上に座って暫くお話をしていた。
すると、何度も看護婦さんが出たり入ったりする。
最初はそれほどでもなかったけれど、だんだんその間隔が詰まってくる。
「お隣さん、お加減悪いのかな?」と気にしているのに気づいたのか、「しょっちゅうナースコール鳴らすねん」と耳元で竜樹さんが言った。
さっき来てもらってたと思ったら、また押しての繰り返し(^-^;
…病院というところはいろいろあるのだなと思いながら、なるべく騒がしくならないようにそっと話していた。
時折竜樹さんは落ち着かないのか、そっと触れてくるけれど。
あまりそちらに意識を向けないように気をつけていた。
「やっぱり、病院やとなんか落ちつかへんなぁ。甘える訳にもいかへんし」
「そんなん、当たり前やないですか」
具合が悪くて病院に残ったのは竜樹さんやんと思いながら、ちょっと情けなさそうにしてる竜樹さんが何だかかわいくて、よしよしと頭をなでた。
その間も頻繁に看護婦さんは出たり入ったりしている。
…確かに、甘えるのあの字もでぇへんような状態やね、これって
身体に触れる触れられないとかいう話じゃなくて、本当に落ち着かないなぁと思いながらぽつりぽつりと話していた。
そのうち食事の時間がやってきた。
「割と食事、美味しいねんで(*^-^*)」
病院食というとあまり美味しくないんだろうなぁと思っていたけれど、ほにゃと笑う竜樹さんがの表情を見てると、食生活もそう不自由してないんだと安心できる。
お隣さんもおうちの方がお見えになって、病室中が賑やかになる。
…お隣さん、1日病室で寂しいんだなぁ
そんな風に思いながら竜樹さんが食事してるのをぼんやり見ていると、お隣さんの奥さんがお裾分けにとケーキ屋さんのゼリーを持ってこられた。
…そのお裾分け、私が頂いてしまったのだけど(^^ゞ
お裾分けで幸せな気分になりながら、また暫く竜樹さんとお話してると、面会時間も終わりに差し掛かる。
竜樹さんが玄関まで送りがてら、どんなところにどんなものがあるかを教えてくれるというので、2人で並んで歩く。
あちらこちら案内してもらっても、やっぱりそんなに沢山の時間一緒にいられるわけではなく、あっという間に玄関に着いてしまった。
「今日はありがとうな、嬉しかった」
「また明日来れたら、来ますね」
「無理したら、アカンで。どっちかと言えば手術後頑張ってもらわんなんから」
そう言って、2人で暫く手を繋いだままその場に立ち尽くし、どちらもなかなか繋いだ手を離そうとしない。
そんな様に互いに少し笑って、その手を離した。
帰り道は何だか切ない。
まだまだ先は長いのに、何だか胸が痛くなるけれど。
竜樹さんがどこにいても、そのほにゃっとした笑顔を見せてくれるなら、まだ頑張っていられる。
竜樹さんが少しでもたくさん笑顔でいられるように、私は頑張る。
そんな風に思いながら、電車を乗り継ぎ家に戻った。
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