Over and Over

2002年8月19日
暫く湯船でじっとしたまま目の赤みが引くのを待ち、お風呂からあがる。
着替えて竜樹さんの眠る部屋に戻る。
袋に入れてまわった荷物を一箇所に集め、今度は自分の帰る用意を始める。


竜樹さんは鎮痛剤が効いているのか、よく眠っておられる。
明日から会社なので、なるべく早く竜樹邸を出なければならない。
あまり遅くなりすぎるとバスがなくなるので、竜樹さんに声を掛けて竜樹邸をあとにしようとすると、

「タクシー乗って帰り?明日からまた大変やねんから」

そう言われたので暫く竜樹さんとお話したり、竜樹邸に来られた竜樹さんのご両親と少しお話をする。

…たいそうなこともしてないのに、沢山お土産を貰ってしまった(-_-;


竜樹さんと離れるのが忍びないなぁとは思ったけれど、これ以上いたところで私に何ができる訳でもない。
また泣きそうになったので、タクシー会社に電話してタクシーを手配。
暫くするとタクシーがやってきたので、竜樹邸を出る。

「ありがとうな。気をつけて帰ってな」
「竜樹さんもお疲れ出ませんように。明日から大変だけど、頑張ろうね」


そう残してタクシーに乗り込む。


タクシーの中でも終始無言。
時折、金岡邸までの帰るルートを運転手さんと話す以外はずっと俯いたり、車窓を流れる景色を眺めていた。


家に帰り着くと、お江戸から金岡母が戻ってきてたので江戸話を聞き、空笑いしてた。
本当ならこの場で、竜樹さんの入院の話をするべきだったかもしれないけれど、金岡父にしても金岡母にしても娯楽で過ごした盆休みではなかったから切り出す気になれず、自室に戻る。


部屋に戻って一人になると、涙は止まらなかった。

泊まりに行っても、結局は何の役にも立たなかったこと。
多分それはこの先も延々続いていくこと。
3年前には感じなかった感情はどんどん身体の中から食い破って出てくる。


…時間が経って培われたのは、無力な自分だけやったんや。


眠っても眠らなくても同じこと。
ならば、せめて会社ではまともでいられるように眠るべきだったのだろうけれど、意識が落ちることはなかった。
明け方無理やり眠って、また起き上がる。


…無力な自分であっても、今の自分の持ってるものでしか戦えはしないんだ。
だったら、嘆くよりも他にすることあるだろ?


他に出来るだろうことですら、自分の持ち合わせてる力の上限一杯まで出さなきゃ出来ないことだと知りながら。
常に上限一杯で動けるものでないことも知りながら。


それでも挑むしかないのだと思いながら、ひとまず会社へ行く用意をする。


正直、こんな精神状態で人外魔境のような場所に行きたくはない。
けれど、その普通すら維持できないなら、これから先へは進めない。


重い身体を無理やり動かして、家を出た。


鈍色の雲と、青空が同居してるヘンな天気
空気は湿気ているけれど、風があるだけマシ気がする。


…竜樹さん、昨日はちゃんと眠れたのかな?

竜樹さんでないと判らない荷物や書くことのできない書類。
それらの処理に終われて眠れなかったんじゃないだろうか心配。
けれど、病院に着けば不調をきたしてもすぐに病院の人たちが対処してくれるだろう。
その意味では、竜樹邸に留まっているよりかは安心な気もする。


ただ何となく気持ちを届けたくて、ただ元気でいてくれることを祈りながらメールを飛ばす。


「行ってらっしゃい。
何かあれば行くから、いつでも言ってね。
元気になるために、一緒にがんばろね♪」


…そう思い込んだり、見た目通り一遍な言葉を送ることが気休めでしかなかったとしても、そう思わなければ自分を動かすことなんて出来ない。


そう思いながら、行きたくもない会社を目指した。


休みボケした身体を動かすのは一苦労。
なかなか仕事モードに切り替わらない自分にイライラもしたけれど、それは周りも同じだったようで、予想してたよりもはるかに業務は楽だった。

ボスや社長は休みがよほど退屈だったのか、朝から賑やか。
何かと飛んでくるお話に答えながら仕事をするだけのゆとりと、余計なことを考えずに済むだけの受け答えの機会を与えてもらえたことには感謝しないといけないのかもしれない。

そう思いながら仕事を進め、会社を出た。


今日は朝も昼も夕方も誰かしらが携帯にメールをくれていた。
どうしたら元気な返事を返せるだろうと思いながら、けれどただ「ありがとう」という気持ちだけを届けたくて、シンプルに、ところどころ脱線モードな言葉を交えながら返事をし続けた。


自宅に帰ってから、なるべく早く夕飯を食べて片付けて、自室で竜樹さんからの電話を待ち続けたけれど、かかってはこなかった。


…きっと、準備の残りと書類関係の処理に追われたんだろうなぁ


昨日も絶不調だったんだ。
きっと今頃ゆっくり休んでいるんだろう。
無理して連絡をくれるよりかは、ちゃんと休んでくれてる方がいい。


…それでも、声が聞けたらいいなぁと思ってはいたんだけど(-_-;


道は続いている。
それが更なる絶望を呼ぶ明日に続いているのか、それとも絶望の素に引導を渡せる明日に続いているのか。
それは判らないけれど。


決意がが固まろうが固まるまいが。
気力がついてこうがついてかまいが。
道はどこまでも続いている。


「こけたら何度でも立ち上がればいい」


そんな言葉を曇りなく言えるほどに、迷いなくいられてる訳ではないけれど。
良くなる方向の明日へ続く道を選び取れるように。
転んでも何度でも立ち上がれる自分を作り上げながら、来る日を目指してただ歩こうと思う。


竜樹さんと一緒に歩こうと思う。

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