夏休み終了まで、あと2日。
その最後の2日間は竜樹さんと一緒に過ごすことになっていた。
金岡父とプードルさんを残していくのは少々不安な気はするけれど、金岡母がお江戸に行く前から約束してたから反故にする気にはなれず。
さりとて終始遊びっぱなしもどうかと思うから、少しばかりの家事をこなして家を出た。


今日も外は蒸し暑い。
昨日異常なる暑さの中、姉さまとのデートに出かけた疲れは少しばかり残っていて、どことなくふらふらとはしてるけれど。
竜樹さんに逢えればそれでよし♪
いつものように電車を乗り継ぎ、食料を調達してバスに乗る。

バスを降りると少しばかり風がある。


…もしかしたら、行けるかも知れない


今日もこちらの方面では何箇所かで花火大会が行われる。
比較的行きやすい距離のところでも花火大会があると聞いていたので、竜樹さんの体調がよければ行こうかって話をしていた。

おそらくこれを逃すと、今年の花火は一度も見れないまま終わるだろう。


竜樹さん自身が再手術の前に何かひとつでも多く、楽しみごとを見出したかったというのは事実だし、私自身も竜樹さんが元気なら一緒に出かけられるに越したことはない。

あとは、竜樹さんの体調次第。


何となく、少しばかり湿気を帯びた空気に、その計画が実行されることはないかなぁと言う嫌な感じを受けたけれど…


「暑いのに、ようこそやなぁ♪(*^-^*)」


竜樹さんは幾分穏やかな感じ。
それは昨日、病院に行ってきはったからだろうか。
昨日、先生と何を話したのか、聞こうとする前竜樹さんが口火を切る。

「あんなぁ、俺の入院、早まってん。」
「…へ?また随分急な話ですね」
「そやねん、来週の月曜日から来いって言うねんで」


………………(゜Д゜)!!


「そんなに早くなるんですか!?」
「そやねん、俺もてっきり8月末頃やって踏んでたのに、明後日から来いやって」


確かにお盆休み明けならまだベットも空いているからだろう。
けれど、私が予想してたよりもはるかに竜樹さんの体調が悪いということなのかもしれない。
昨日も蒸し暑さと長距離の移動ですっかりダウンしてたというし…

もしかしたらちょっと曇った表情をしてたのかもしれない。


「霄、おなかすいたやろ?これ、食べ?(*^-^*)」


竜樹さんはほにゃと笑って、菓子パンとミルクコーヒーをくれた。

「…あ、ありがとう」


それをぱふんと口にする。
食べ物を口にしてる様子を見て安心されたのか、横になる竜樹さん。
渡されたパンとコーヒーをきれいにして、竜樹さんの隣に寄り添う。


傍によると触れてくる竜樹さんはまるで安心が欲しい子供のよう。
ただ伝わる感覚が安心に結びつくから触れるらしいけれど、私には少し感じを変えて伝わるので、どこかヘンな感じ。
やがて、少しばかり火がついてしまうような形で抱きしめ合う。


私が来た時間もそれほど早くはないからあまり悠長にしてると、花火に間に合わなくなる。
熱を帯びすぎたいちゃいちゃが過ぎれば、当然のように暫くは何も出来ないわけだし。


…て、単に離れたくなくて、ぺたとくっついてるのが悪いんだけど(^^ゞ


案の定、想いや熱を受け渡せば、そのままくっついて動こうともせず。


「花火、どうするんですか?竜樹さん」
「…俺、動かれへぇん(>_<、)"」


…結局、こうして花火を見に行くのはお流れになってしまった。


花火を見に行気なくなった時のために、家で楽しめるものは準備してきてたけれど、それが「外で夏を楽しみたい」という竜樹さんにとってそれがどれほどの気休めになるのかもわからないけれど。
少なくとも竜樹さんが思うほど、私は外に出ないことが苦痛でもなく、ただ竜樹さんの傍にいられたらそれでいいのだということだけ、そっと受け取ってもらえたらそれでいい。

眠る竜樹さんの隣からそっと置きだして着替えてまた竜樹さんの傍に座る。
すると携帯が鳴った。


出てみると姉さまだった。


姉さまに頼まれごとをして、その後話しつづける。
その間、竜樹さんはずっと私の身体に触れている状態なので、その手を握り締めながら話しつづける。
次に気がついたら、私のおなかに手を回したまま、再び竜樹さんは眠っていた。
電話を終え、そのままの姿勢で、ぼけっとしてる。


出かけないなら、ご飯の支度もしないといけない。
けれど、このぼんにゃりと暖かな時間を自ら壊す気になれなくて、そのままじっとしてる。


遠くからぼにょんとした花火の音が聞こえ始める。
意外と遠くの音も聞こえるものだなぁと感心しながら、けれど、やっぱりすぐ傍で見ることは出来なかったんだなぁと実感する。
ちょっとぺこんときかかった時、また携帯が鳴る。
出たはいいけれど、すぐに切れてしまった。
また暫くしたら、携帯が鳴る。


出てみると、今度は大好きなお友達。


電話の向こうはものすごい音。


「何の音か、判りますか?」


轟音の中から友達が問い掛けるのを聞いてるうちに思い出した。


…遠い地である花火大会に彼と2人で行くと言ってたっけ。


こちらでかすかに聞こえるぼにょんとした音ではなく、はっきりした音。
楽しそうな雰囲気は電話の向こうから確かに伝わる。

「ありがとうね(*^-^*)」

ちょっと機嫌を良くして降りていくと、竜樹さんが起きていた。

「そんなに喜んで、2階から花火見えたんか?」
「いいえ、そんな遠くのものが見えたらびっくりでしょう?
友達から電話だったんです」


暫く取り留めのない花火話をして、花火の代わりのイベントの準備を始める。


ちっさなコンロを囲んでのたこ焼きパーティ(笑)


「もしも花火が流れたら…」と思って密かに買って竜樹邸に置いといて貰ったんだ。
茹でたたこを切り、粉を溶いたり材料を準備したりする。

「ごめんなぁ、ホンマやったら花火見にいけたのに…"(ノ_・、)"」
「何言ってるんですか?何処にいても、楽しいことはそれなりにできるもんですよ?」


食卓にセッティングして、小さな宴を始める。


夏の花火は見損ねたけれど、楽しいことはどんなところにいてもあるものだから。


…2人でいられるなら、いつでも楽しいんだよ?


竜樹さんに伝わるといいな。
そう思いながら小さな宴に臨んだ。

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