小さな力のかけら

2002年8月13日
今日の仕事が終われば、夏休み。
親会社は既に休みに入っているので、暇々デーになるのは目に見えてるけれど、後々のためにも休みは残しておいた方がいいので、敢えて出勤することを選んだ。

…と言いながら、単に休みを闇雲に取っても肝心の予定がないというのもあったのだけれど


どろりどろりと家を出て駅に着いてみると、いつも来るはずの電車が来ない。
反対側のホームを眺めていても、いつも来るはずの電車が来ない。
「あれれ」と思う。
反対側のホームにいる人も「あれれ?」という顔をしている。

そこへ、アナウンスがひとつ。

「本日は土曜ダイヤで運行しております」


……………。。゛(ノ><)ノ ヒィ


平日ダイヤならぎりぎりで間に合うものが、土曜ダイヤでは余裕で遅刻路線。
あまりのショックに思わずお姉さまにメールを送ると…


…お姉さまも土曜ダイヤの罠にかかったらしい(^-^;


2人して遅刻街道まっしぐらという、ヘンな仲のよさ。
不名誉だなぁと思うけれど、きっと多少遅れても仕事が立て込むことなんてないわさぁと半ば理不尽な居直りモードに切り替えて移動する。


…会社は読みどおり、気持ち悪いくらい暇だった。


親会社から書類が届かないので、先輩の許に書類を取りに走る必要もなければ、親会社からの書類を片す必要もない。
他の仕事があればまだしも、それすらない。
同僚さんが休んでいて雑用がまわってくると言え、それをしてもまだ暇。


こんなことは滅多にないと、喜んでいいのか悪いのか。
時間を潰すために、遅れがちの日記の下書きを始める。
1日分が終わってあとがきも終わって。
2日目に突入して書き終わって。
さすがにあとがきも3日目の日記の下書きに取り掛かるのは気が引けてやめてしまったけれど、本当にすることがない。

これでいいのだろうかと思いながら、パソコンの前でぱたぱた。
時折事務机に戻ってがさがさ。


…こんなに暇なら、竜樹さんところでゆっくりぺったりしてきたらよかったかなぁ。


忙しければ忙しいで文句たれるくせに、暇なら暇で文句たれる金岡霄(爆)


事務所にはボスしかいない。
ボスも暇らしく、他愛もない話をしてこられるので、それに受け答えする。
何の話から横道にそれたかは覚えていないけれど。
何となくここ数日ふつふつきてたことを口にした。


「何度言っても判ってくれない人に判って貰えるようにものを言うのは、難しいですね」


先輩を名指しで言う訳にはいかないし、言うつもりもない。
表立って彼の批判をすることはこの会社ではやらない方がいいんだろうし、他人を下げて自分をあげるような話のもっていき方自体が気に入らないから。

けれど、表に出してみたくなったのかもしれない。

先輩に事あるごとに足止めを食らって、昼休み食いつぶして仕事を片付けないとならないこと。
時には認めても貰えるはずのない残業にもつれ込むこともあること。
それが間違っても本意ではないということ。
何らかの形で示してみたくなったのかもしれない。


「たとえば、どんなことや?」


…言葉に詰まった。

ボスと話すと、ペース狂わされがちなんだ。
ただの世間話で終わらせるつもりがそうでなくなる。
5年間彼の下にいてて、何度そんなヘマをやらかしたか(-_-;)
極力、誰と特定できないような話を挟んでいく。


最初、ボスは親会社の社員のことを言ってるのだと思ったみたい。
けれど話をすすめていくうちに、先輩のことだと判ってしまったようだ。
俄かにボスの問いかけも核心に迫ってくる。
それを当り障りなく、よけよけしながら話すのもなかなかしんどい。


いくつか言葉を交わすうちに、つい溢してしまった。


「業務時間中に、仕事と関係のない話で30分も40分も話し込んでるのを見たら、傍の人は『何を遊んどんねん』って思うんでしょうね」


これで誰のことを言ってるのか、はっきりわかってしまっただろう。
この会社でさしたる用事もなく、私に足止め食らわせる人間なんて先輩を置いて他にいるはずなんてないんだから。

小さな会社でそれを知らない人なんてない。
今までみんな先輩に足止め食らわされてるのを見て見ん振りした人もいれば、面白おかしく噂を垂れ流して歩いてた人だっている。
回りまわって、その話が私に返ってきたことも。
「彼とは付き合わないの?」と無責任なことを面と向かって言って来た人もいる。

別に好き好んで業務時間中に話し込んでたわけじゃない。
けれど、先輩のやってること自体に誰も触れようとはしなかった。
社長にしても、ボスにしても、彼のお兄さんである幹部さんにしても。

彼の言うことに承服してるわけじゃないと、彼自身に対して自分で示すより他に方法なんてなかった。
だから先輩の嫌な言い方をされたときも、派手に真っ向から噛み付いた。
その結果、それを見ていたボスから「やりすぎだ」と窘められたこともあった。


…こんなことをここで話したって無意味だ。


「無意味なことを言ってしまった」というばからしさと暗黙の了解を破ったことについて「しまった」と思う気持ち。

それでもなお、「彼のやることを決して甘んじて受けてるわけじゃない」と示したかった気持ち。

いろんな気持ちが渦を巻く。


「誰もそんな風には見てへんで」


冗談めかしてない、すごく静かなボスの言葉がそこにあった。


ボスに話したところで、何の解決にもならないことは承知している。
何せ、自分が気に食わなければ、自分の親父さんの次に会社で偉いボスの言うことにでもケンカ腰で挑んでくるアホったれだ。
彼に意味もなくケンカ腰でつっかかられて、本気で叱り飛ばしそうになってたのを寸止めしたボスを何度も見ている。


だから、話しても何の問題解決にもならない。

そもそも、こんなこた自分自身で解決すべきことなんだとも思うし、都合が悪くなったからって大人の手を借りるというのもずっこいだろう?


けれど、無駄だと判っていてもなんだか嬉しかったんだ。
ただ「好き好んでやってることじゃない」ってこと。
同僚さん以外の人に判って貰えたなら、今はそれで十分なんだと思うから。


竜樹さんの手術の経過がよければ、来年の今頃には辞める準備に入っていることだろう。
自分の進退に目鼻がつけば、このくだらない我慢にもようやく期限が切れるんだ。

…こんなことを言って居残る羽目になったら洒落にならないけれど。


それでも、判ってもらえてるかもしれないこと。
それを少しの力に変えて、あと少しの間頑張ろう。


夏休み前に降って来た、小さな力のかけらを握り締めて夏休みを迎えよう。

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