ほんのりと暖かな時間
2002年8月3日今日はあちらこちらで花火大会がある。
特に大きいのは神戸と淀川の花火で、予てより竜樹さんはどちらかの花火大会に行きたいと話していた。
早く起きてなるべく早く竜樹邸に向かおうと目覚ましまでかけて起きたけれど、体を起こそうとした途端、激しい頭痛で目が眩む。
暫く暑苦しい布団の中でくるりと丸くなりながら、うんうんうめいていた。
ようやっと起きて用意が出来た頃には昼前だった。
ひとまず竜樹さんに電話を入れたけれど、出ては貰えず。
暫く用意をしながら涼んでいると、竜樹さんから電話が入る。
「今日の調子はどうですか?」
「朝、ずっと頭が痛かってんけど、少し寝直したらマシになったわ」
「あ、私も頭が痛かったんですよ」
「そっか、俺だけやなかってんなぁ」
他愛もない話をして、ひとまず花火大会に行っても行けなくてもどちらでもよいような準備をして出かける。
外は相変わらず蒸し暑い。
むせ返りそうな熱気を肌で感じながら、何となく花火大会には行けないだろうなぁという気がする。
花火が始まる直前に現地に入ってただぼけっと見てられるならともかく、花火が上がる3時間も前から場所取りをして、それから花火を見てまた竜樹邸に戻ってくるなんてことが出来るような気にはとてもじゃないけれどなれない。
…夕方にはせめて蒸し暑いのだけでもマシになりますように(-人-)
そんな風に祈りながら、電車を乗り継ぎ、改札を出る。
バス停前のスーパーで買出しをして、重い荷物を提げながらバスに乗る。
土曜日の昼間はどういう訳かバスの中には人がいっぱい。
窓の外を浴衣を着た女の子たちが楽しそうに通り過ぎていく。
…確実に行けると判っているなら、着てきたんだけどなぁ
2年前に2人で買いに行った浴衣は竜樹さんのお気に入り。
それを着て花火大会に出かけられたなら、きっと心持ち機嫌はよかっただろうけれど。
花火に行けないなら浴衣はいろんな作業をしにくくするだけ。
…どっちに転んでも、今日はこれでいいんだろうね?
竜樹邸の最寄のバス停に着き、のたのたと竜樹邸に向かう。
「暑いところをよぉ来てくれたなぁ」
口調は相変わらずだけど、顔色は心なしかいつもよりも少しばかりよいような気がする。
少しでも元気そうだと、とても嬉しくなる。
「霄のお母さんがくれた紅茶、飲んでみるか?」
そう言ってポットを暖め、紅茶を入れてくれる。
ちょっと葉を多く入れてたせいか濃かったけれど、ミルクを入れるととても美味しいミルクティが出来た。
それを飲みながら花火の話をする。
「何かねぇ、いい場所を取るには17時頃には現地で場所取りしないとダメだってさ」
「それやったら、今から出ないと間に合わへんやんか」
すぐに竜樹邸を出て場所取りに挑むには辛いらしい。
結局、出るとも出ないともつかない状態で2人で話を続ける。
そのうち部屋着に着替えようと部屋の隅っこの方でちょろちょろしてると、竜樹さんに捕獲される。
そのままずるりずるりと抱っこされる形に…(/-\*)
普段口下手なのが、ぱちんとスイッチが入れ替わるように。
触れる指先も交わすキスもどこか饒舌な気がする。
想いの底を浚うように、ゆっくりと熱を帯びながら互いの持つものを受け渡しあう。
そこで交わした言葉自体がどれほどの真実を握り締めてるかを確かめる間もなく、堰を切ったような想いの渦に飲み込まれてくような気がする。
受け渡した熱情の果てに、ちいさな睡魔がひとつ。
それに捕らわれ続ける私をそっと抱きしめてくれてた竜樹さん。
花火に行くどころの話ではなく、ただ抱きしめあって横になっていた。
時計を見ると、花火が始まる1時間ほど前。
「花火に行けないなら、せめて夕飯くらい作らないと」と起き上がる私に、「今日は外食しよう?」と竜樹さん。
「だいじょぶ?移動中にしんどくなったりしない?」
「いや、車を運転して出かけるくらいならできそうな気がするし、俺、久しぶりに焼肉食いたいねん♪」
外食するなら、竜樹さんのご両親にも一応声をかけておこうということでお誘いしたのだけれど、食べるものが焼肉ということであっさりお断りを言われてしまった。
出かける前に紙包みをひとつ。
開けてみると、竜樹さんが何年か越しで探していたという小さな鞄が入っていた。
「俺からのボーナス。霄やったら似合うやろうなぁと思って(*^-^*)」
前々から「霄ちゃんにボーナス、何を贈ろうかなぁ?」と話してた竜樹さんに、「何もいりませんから、竜樹さんをください」とだけ返してきたけれど。
最後まで何かを贈ろうと考えていた竜樹さんに脱帽。
で、喜んで鞄に最低限の荷物を詰め替え、出かける用意をする。
本当に、本当に久しぶりの外食。
竜樹さんの家から比較的近いところに、焼肉屋さんが出来ていたことを思い出し、薄らぼんやりした記憶を頼りに車で出かける。
少しばかり入る道を間違えたりはしたけれど、無事に焼肉屋さんに到着。
カウンター席だとすぐに用意できるとのことで、そのままカウンターに並んで二人で食べ始めることにした。
カウンターで並んで食べるということも随分ご無沙汰していたので、ちょっとヘンな感じ。
竜樹さんは身体を支えがてら、私の方に寄り添う形でお座りになっている。
傍目にはあまあまモードを醸し出しているようだけど、いざ食べ始めるとその近すぎる距離が却って食べにくいなと感じてしまう。
「…せっかく外食してるんやし、俺、霄と話したいのに。
何か肉焼いてると、それに夢中で会話になれへんなぁ…"(ノ_・、)"」
竜樹さんがちょっと情けなげにそう言った時初めて、ただただ黙々と食べていたことに気づく。
一生懸命あまあまな雰囲気を醸し出そうと竜樹さんが頑張っていたのかもしれないのに、私は七輪の上の食材の様子ばかり見ていた。
「俺、ちゃんとよく焼けてる肉を霄に渡してるのに、霄は黙々と食べてばっかり…"(ノ_・、)"」
「いや、お肉が目の前にあると食べないとダメだぁって思って、食べるのに一生懸命になるから…」
「そう言えば、先週の日曜日の話、俺、聞いてへんかったよなぁ?
女の子同士の集まりやって言うてたけど、ホンマは合コンかなにかやったんちゃん?(-"-;)」
…竜樹さんがここまで拗ねるとは思わなかった。
日曜日の昼下がりに話してたちょっぴり不穏な話を、七輪の上の食材を気にしつつ話す。
すると、相槌打つ竜樹さんはいつもよりも心なしか穏やか。
「形にならない関係もそれなりに厄介だけど、結婚したらしたでいろいろあるんですね?」
ハラミを食べながらそう呟いた私に、
「何言ってるん?俺ら籍入れてへんだけで、夫婦みたいなもんやろ?」
…………(゜д゜)!?…………
大真面目にそう言う竜樹さんに、箸で掴んだ玉ねぎをぽとりと落としてしまった。
「え?そうだったんですか?」
「おんなじようなもんやろ?8年も一緒にいたら」
そうだったのかぁと素で感心しながら食べつづける私をよそ、焼肉の宴は続く。
ただ外へ食べに出たというだけの話なのに、それが花火を観に行く以上の特別なもののように思える。
ささやかな外食が連れてくるのは、ほんのり暖かな時間。
それを享受しながら、やってくる食材を食べつづけた。
特に大きいのは神戸と淀川の花火で、予てより竜樹さんはどちらかの花火大会に行きたいと話していた。
早く起きてなるべく早く竜樹邸に向かおうと目覚ましまでかけて起きたけれど、体を起こそうとした途端、激しい頭痛で目が眩む。
暫く暑苦しい布団の中でくるりと丸くなりながら、うんうんうめいていた。
ようやっと起きて用意が出来た頃には昼前だった。
ひとまず竜樹さんに電話を入れたけれど、出ては貰えず。
暫く用意をしながら涼んでいると、竜樹さんから電話が入る。
「今日の調子はどうですか?」
「朝、ずっと頭が痛かってんけど、少し寝直したらマシになったわ」
「あ、私も頭が痛かったんですよ」
「そっか、俺だけやなかってんなぁ」
他愛もない話をして、ひとまず花火大会に行っても行けなくてもどちらでもよいような準備をして出かける。
外は相変わらず蒸し暑い。
むせ返りそうな熱気を肌で感じながら、何となく花火大会には行けないだろうなぁという気がする。
花火が始まる直前に現地に入ってただぼけっと見てられるならともかく、花火が上がる3時間も前から場所取りをして、それから花火を見てまた竜樹邸に戻ってくるなんてことが出来るような気にはとてもじゃないけれどなれない。
…夕方にはせめて蒸し暑いのだけでもマシになりますように(-人-)
そんな風に祈りながら、電車を乗り継ぎ、改札を出る。
バス停前のスーパーで買出しをして、重い荷物を提げながらバスに乗る。
土曜日の昼間はどういう訳かバスの中には人がいっぱい。
窓の外を浴衣を着た女の子たちが楽しそうに通り過ぎていく。
…確実に行けると判っているなら、着てきたんだけどなぁ
2年前に2人で買いに行った浴衣は竜樹さんのお気に入り。
それを着て花火大会に出かけられたなら、きっと心持ち機嫌はよかっただろうけれど。
花火に行けないなら浴衣はいろんな作業をしにくくするだけ。
…どっちに転んでも、今日はこれでいいんだろうね?
竜樹邸の最寄のバス停に着き、のたのたと竜樹邸に向かう。
「暑いところをよぉ来てくれたなぁ」
口調は相変わらずだけど、顔色は心なしかいつもよりも少しばかりよいような気がする。
少しでも元気そうだと、とても嬉しくなる。
「霄のお母さんがくれた紅茶、飲んでみるか?」
そう言ってポットを暖め、紅茶を入れてくれる。
ちょっと葉を多く入れてたせいか濃かったけれど、ミルクを入れるととても美味しいミルクティが出来た。
それを飲みながら花火の話をする。
「何かねぇ、いい場所を取るには17時頃には現地で場所取りしないとダメだってさ」
「それやったら、今から出ないと間に合わへんやんか」
すぐに竜樹邸を出て場所取りに挑むには辛いらしい。
結局、出るとも出ないともつかない状態で2人で話を続ける。
そのうち部屋着に着替えようと部屋の隅っこの方でちょろちょろしてると、竜樹さんに捕獲される。
そのままずるりずるりと抱っこされる形に…(/-\*)
普段口下手なのが、ぱちんとスイッチが入れ替わるように。
触れる指先も交わすキスもどこか饒舌な気がする。
想いの底を浚うように、ゆっくりと熱を帯びながら互いの持つものを受け渡しあう。
そこで交わした言葉自体がどれほどの真実を握り締めてるかを確かめる間もなく、堰を切ったような想いの渦に飲み込まれてくような気がする。
受け渡した熱情の果てに、ちいさな睡魔がひとつ。
それに捕らわれ続ける私をそっと抱きしめてくれてた竜樹さん。
花火に行くどころの話ではなく、ただ抱きしめあって横になっていた。
時計を見ると、花火が始まる1時間ほど前。
「花火に行けないなら、せめて夕飯くらい作らないと」と起き上がる私に、「今日は外食しよう?」と竜樹さん。
「だいじょぶ?移動中にしんどくなったりしない?」
「いや、車を運転して出かけるくらいならできそうな気がするし、俺、久しぶりに焼肉食いたいねん♪」
外食するなら、竜樹さんのご両親にも一応声をかけておこうということでお誘いしたのだけれど、食べるものが焼肉ということであっさりお断りを言われてしまった。
出かける前に紙包みをひとつ。
開けてみると、竜樹さんが何年か越しで探していたという小さな鞄が入っていた。
「俺からのボーナス。霄やったら似合うやろうなぁと思って(*^-^*)」
前々から「霄ちゃんにボーナス、何を贈ろうかなぁ?」と話してた竜樹さんに、「何もいりませんから、竜樹さんをください」とだけ返してきたけれど。
最後まで何かを贈ろうと考えていた竜樹さんに脱帽。
で、喜んで鞄に最低限の荷物を詰め替え、出かける用意をする。
本当に、本当に久しぶりの外食。
竜樹さんの家から比較的近いところに、焼肉屋さんが出来ていたことを思い出し、薄らぼんやりした記憶を頼りに車で出かける。
少しばかり入る道を間違えたりはしたけれど、無事に焼肉屋さんに到着。
カウンター席だとすぐに用意できるとのことで、そのままカウンターに並んで二人で食べ始めることにした。
カウンターで並んで食べるということも随分ご無沙汰していたので、ちょっとヘンな感じ。
竜樹さんは身体を支えがてら、私の方に寄り添う形でお座りになっている。
傍目にはあまあまモードを醸し出しているようだけど、いざ食べ始めるとその近すぎる距離が却って食べにくいなと感じてしまう。
「…せっかく外食してるんやし、俺、霄と話したいのに。
何か肉焼いてると、それに夢中で会話になれへんなぁ…"(ノ_・、)"」
竜樹さんがちょっと情けなげにそう言った時初めて、ただただ黙々と食べていたことに気づく。
一生懸命あまあまな雰囲気を醸し出そうと竜樹さんが頑張っていたのかもしれないのに、私は七輪の上の食材の様子ばかり見ていた。
「俺、ちゃんとよく焼けてる肉を霄に渡してるのに、霄は黙々と食べてばっかり…"(ノ_・、)"」
「いや、お肉が目の前にあると食べないとダメだぁって思って、食べるのに一生懸命になるから…」
「そう言えば、先週の日曜日の話、俺、聞いてへんかったよなぁ?
女の子同士の集まりやって言うてたけど、ホンマは合コンかなにかやったんちゃん?(-"-;)」
…竜樹さんがここまで拗ねるとは思わなかった。
日曜日の昼下がりに話してたちょっぴり不穏な話を、七輪の上の食材を気にしつつ話す。
すると、相槌打つ竜樹さんはいつもよりも心なしか穏やか。
「形にならない関係もそれなりに厄介だけど、結婚したらしたでいろいろあるんですね?」
ハラミを食べながらそう呟いた私に、
「何言ってるん?俺ら籍入れてへんだけで、夫婦みたいなもんやろ?」
…………(゜д゜)!?…………
大真面目にそう言う竜樹さんに、箸で掴んだ玉ねぎをぽとりと落としてしまった。
「え?そうだったんですか?」
「おんなじようなもんやろ?8年も一緒にいたら」
そうだったのかぁと素で感心しながら食べつづける私をよそ、焼肉の宴は続く。
ただ外へ食べに出たというだけの話なのに、それが花火を観に行く以上の特別なもののように思える。
ささやかな外食が連れてくるのは、ほんのり暖かな時間。
それを享受しながら、やってくる食材を食べつづけた。
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