熱を奪う雨

2002年6月24日
週明けの朝はいつもおぞましいもので。
最近はずっと胃痛と吐き気がセットになってやってくる。

「どっかで有給貰おうかな?」

毎日毎日そう思うけれど、予定が入った時に休めなくなるのが嫌で届を書くこともなく家に帰る毎日。
そして、「どっかで休みたい」と思う毎日。


どっかで嫌な連鎖を断ち切りたいのに、断ち切れない。
重い身体を引きずって家を出る。


外に出た途端、傘を持って出た方がいいなって思った。
今にも地面に落ちてきそうなくらい重たさを感じさせる鈍色の雲。
なのに何となく傘を持つ気になれなくて、そのまま歩き始める。
肌に触る空気はどことなく湿気を帯びていて、嫌な感じだけを増長させていく。


…この空気が間違いなく、誰かの身体の調子を狂わせていくだろうことが予想できるから。


会社に入ってもどことなくしっくりこなくて。
仕事の連携がぺちと途絶えるたびに癇に障る。
連携がよくなるように網を張れば文句が飛ぶような状態で。
いちいち「念のために確認してください」という冠をつけないといけない。


…めんどくさいなぁ、もう


それが仕事なのだからとは思うけれど、気持ちはどんどこ沈んでいく。


昼休み、ふと思い立って、私が使ってる会社のパソコンの壁紙を変えてみた。
ちょっと見た目威嚇してるような表情の大好きな人の写真に、淡々とした文字でとんでもない言葉が書かれている。
そのバランスがあまりに絶妙で、ソフトを切り替えるたびに笑みが零れる。


…ただ、いきなり見た人はちょっと面食らいそうなので、すぐにスクリーンセーバーに切り替わるようにはしておいたけれど。


壁紙に力を貰い、ようよう仕事を片付けたけれど、窓の外から聞こえる音はどれもこれも湿気を感じさせるような音。
階段の踊場の小さな窓から外を覗くと、激しい雨が降っていた。


…傘、持ってきたらよかったなぁ


週明けからとんでもない展開で、いい加減うんざりしてくるけれど。
待っていても一向にやみそうにないので、そのまま激しい雨の中自転車を走らせた。


…夏に向かう雨はこんなに冷たかったっけ?


温かい雨になんて確かに当たったことはないけれど、今日の雨は肌からどんどん体温を奪っていくような感じがする。


たまたま持って出てたハンドタオルで雨に濡れたところを拭きながら、竜樹さんのことを思った。


雨が降る前から徐々に身体に痛みが走ること。
それが元で呼吸しにくくなること。
その様をすぐ近くで見たことがあるから、余計に詳細に辛いだろうことが予想できる。


雨が降ること云々よりも、それに付帯する苦しみの方が辛いんだ。
身体を濡らした水滴を拭い去っても、体温を奪われる状態は続く。
奪われる体温と一緒に心の温度まで奪われてしまうような気がする。


体調の微妙なよしあしはあって然るべきものだと思うけれど。
特定の気象条件を恨みに思わなければならない状態は、一体いつになったら終わるんだろう?
いい加減に嫌なものの連鎖など断ち切りたいのに、断ち切れはしないことなど、とうの昔に判ってたことのはずなのに。

雨が降るたび、気温差が激しくなるたび。
怒りにも似た感情と気力をそがれていく感覚と向き合わざるを得なくなる。


降り止まぬ雨は気力を削ぐ雨。
その冷たい雨は気持ちから、暖かなものをひとつずつ奪い取っていく。


そんな風にしか思えなくなってる今の自分の状態を情けなく思いながら。
何をする訳でも出来る訳でもないままで、ただ冷たい雨がやむのを待ち続ける。


竜樹さんから痛みから開放されて、どんな天気でも恨まずに済むような時が来ることを、心からも身体からも熱を奪う雨がやむのを待ちながら願いつづけた。

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