Fanatic Love

2002年6月23日
(22日のつづき)
時計を見ると、20時を回っていた。
昼のスペイン・韓国戦の録画の時に延長戦を考慮して録画してたので、夜からのトルコ・セネガル戦の録画予約ができず、竜樹邸で録画させてもらうことにした。
サッカー2立てでしんどそうな竜樹さんには申し訳なかったけれど、竜樹邸を出るまでの間でいいからとわがままを言って見せてもらっていた。


食事の後、相変わらず竜樹さんは背中が痛むらしく、横になる。
お供して寄り添って横になる。
時計だけは気にしていたけれど…
21時を回って何となく竜樹さんから離れがたくて、ずるずるとくっついてるうちに22時。
延長戦に入る前には帰らないといけないと思いながら、竜樹さんが触れるのを弾き飛ばせないまま、23時。

…うわぁ、これだとタクシーで直帰コースだ


竜樹さん自身も体調が戻らなくて、「今日はごめん、タクシーで帰って」と言うので、定期入れからタクシー会社のカードを取り出して電話しようとすると、

「もう少し待ってくれるか?もうちょっとしたら送っていけそうやから」
「そんなん無理しなくっていいですって…」
「日付が変わる前に帰りつけたらええねやろ?」

そう言って結局、タクシー会社に電話するのを止められてしまった。


…ちゃっちゃとビデオのことは竜樹さんに任せて、早く竜樹邸を出たらよかった。

体温に絆されて眠りこけてる場合じゃなかった。

「今日はしんどいのに、お風呂の掃除もしてくれたし、ご飯もしてくれたから」
「でも、掃除はし損ねましたよ?」
「ええって、そんなん」


…こないだまでの言動と違いすぎることに面食らうのには違いないけれど、ひどく穏やかな表情で受け答えする竜樹さん。

「ただ痛み止め飲んでるから、ゆっくり走るけどええか?」
「そんなんいいです。ちゃんとここまで無事に戻ってきて欲しいもの」

竜樹さんが出れる状態になるまで、後片付けをして竜樹さんが帰ってきたら寝るだけでいいような状態にしておく。


竜樹さんはゆっくりと車を走らせる。
薬を飲んでるので、注意力が散漫になるといけないから、なるべく話し掛けないよう、周りを気をつけてみてる。

信号待ちの時にそっと竜樹さんの方を眺めると、静かで穏やかな感じ。
その空気は私の家の前に着くまで変わることはなかった。


「本当にごめんなさい。気をつけて帰ってね」
「ありがとな。ちゃんとゆっくり帰るし」

そう言って、柔らかな笑顔を見せて車を走らせた。
一日のことを振り返りながら、変な気持ちで入るとメールがひとつ。

心配してくれてる友達からだった。


報告がてら連絡を取ると、とても心配してくれてたご様子。
切り札は出さずに帰って来たと話すと、「甘い」と怒られてしまったけれど。
それでも、一生懸命私に付き合ってくれるのがありがたくて、結構遅い時間まで話してしまった。

また別の友達も心配してくれてたようで、少し話した。
話せば何が変わるという訳でもないのかもしれないけれど、人の心の温度が穏やかな気持ちを呼び起こす。


会話を終えて、横になる。
次に起きた時は、週末恒例頭痛でスタートだったけれど。
1日ゆっくりと何もせず、ただ一連の想いの奇跡を眺めていた。


本当に追い詰められていたには違いないんだ。
自分がすることを少しだけでいいから認めて欲しいと思っていたこと。
自分の手足として使えることと同じように「私自身」を見ててくれたらいいなと思ったこと。
それは多分叶わないだろうこと。

私個人の置かれてる状況もろくでもないものだから、竜樹さんに求めるものは多かったのかもしれない。

それは竜樹さんも同じだっただろうけど。


でも、なくすかもしれないという川の岸に立って。
自分の想いの渦の中からシンプルに知りたいことを投げかけて、答が返ってきて。
それが竜樹さんの本意かどうかまでは判らないけれど。
理由はどうあれ、ひとまずは手を離さなくてもいいのだと思えたこと。

何故かその結果にほっとしてる自分がいる。


…以前のことを思ったら、随分ヤキがまわったなぁと思うけれど


あまり人には執着しないのがポリシーだったのにとわが身を振り返って笑うけれど。
いつ自分の立ってる場所から2人のことを振り返ってみても、「これが最後だろう」と思ってた。


Fanatic Loveと呼ぶには、熱も勢いもない気はする。
けれど、何処まで行っても維持したいと願いつづける辺りの感情は既にある種の熱狂の域には達してるんだろう。


竜樹さんの何がそれほどまでに一緒にいたいと願わせるのだろう?
物理的側面や現状から見る今後の展開を思えば、いい加減降りてもよさそうなものなのにね?


…どっちでもいいや。


常に何かに理由はあるのだと思っている。
必ずしも理由があって何かがあるわけではないと知りながら、理由を探しつづける。
けれど、自分の中に眠る小さいけれどある種熱を帯びた愛情を守りたいと願うことに、あえて理由付けをしなくてもいいのかもしれない。


一緒に歩くに当たって、折れててはダメなことはちゃんと言う。
相手の状況は常に見ながら判断しなきゃならないだろうけど。
だけど、理由すら振り払う熱狂に乗ったまま最後まで歩くのも悪くはないのかもしれない。


…竜樹さんには縁がなさそうだね、Fanaticなんて感情は


それでもいいや。
ある種の熱がいろんなものを連れてきたんだ。
守れるところまで、この熱狂的な愛情を守ってやろう。


自分の中にはじめて生まれて、恐らく最後になるだろう熱を帯びつづける愛情の花を。

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