心にそっと触れたとき…
2002年6月22日携帯メールの着信音で目が覚める。
昨日電話で話した友達が起こしてくれたのだ。
長時間つまらない話を聞かされただけでもご迷惑だっただろうに起こしてまで貰って申し訳ないなと、起き上がって携帯に頭を下げる。
休日の朝は頭痛で始まるのは殆どお約束のような状態なのに、今日は珍しく頭痛がない。
気分がよくて、散らかり倒してる机の上を片付けてみたりする。
時折、竜樹さんに電話をしてみるけれど、なかなか出ない。
…今日もまたお出かけかな?
車の運転をしてる時は絶対に電話に出ない人なのでそんな風に思うのだけど、札幌の一軒があって以来、連絡が取れなければその週は逢うのはやめようという話になっているから。
ようやっと固まった決意がぐらつかないうちに逢っておきたくて、時間をおいて何度か連絡を取る。
そうしてお昼前にようやく捕まる。
あまりに不調が過ぎるので、病院をはしごされていたらしい。
ひとまず「来て」ということなので、W杯の録画予約をして出かける。
電話口の竜樹さんが「外は暑い」を連発しておられたので、薄着にしてではみたものの。
意外と涼しかったりする。
のらりくらりと坂道を降り、電車に乗って竜樹邸に向かう。
ヘンなもので逢ってない間、特にあの電話があってから2日間ほどは心が固まったみたいになってて、いろんな意味で竜樹邸訪問が心の中で重くのしかかっていたのだけれど。
今はナチュラルにただ竜樹さんに逢ってみたいと思ってる。
逢って話をした結果、2人がどういう道を歩くにせよ、何もはっきりさせられずただ心に重い石を抱いたみたいな状態でいるよりかはいいだろうと思ったから。
竜樹邸に入り、振り返る竜樹さんに簡単に挨拶をして作業を始める。
ポリタンクの水を空いてるペットボトルに詰め替え、それが済んだら流しに溜まっていた洗い物を黙々とこなす。
洗い物が済んで振り返ると、「やっと、こっち来た♪(*^-^*)」と竜樹さん。
竜樹さんに差し出されたバナナを食べながら、お医者さんへ行ってきた話を聞く。
「…ごめん、そっちのテーブルのコップ取ってくれへんか?」
「悪いねんけど、そこの新聞取ってくれるかなぁ?」
ここ何週間かは、「これを取ってくれ」「こうしてくれ」と命令口調で何でも仰る傾向があったけれど、今日は私に何かを頼むたびに「ごめん」や「悪いねんけど」という冠がつく。
…目一杯気を遣ってはるんやなぁ
表情ひとつとっても、どこか険しさのオーラが薄れたような感じ。
しんどいと尖ってくるはずの竜樹さんは、どこか申し訳なさそうな感じ。
…これでは自分の主張を押し通せるはずなんてないじゃないか(-_-;)
「ずっこい!ヽ(`⌒´)ノ」と心の中で少し思ってることを見抜いたのか、見抜いてないのか。
「霄、こっち来てくれへんかぁ」とちょっと情けない表情の竜樹さん。
…ホンマ、ずっこいわヽ(`⌒´)ノ
そう思いながら、竜樹さんの傍に寄っていく。
ただ抱きしめる竜樹さん。
それに応える私。
言葉が足りない部分を何かで補うように、抱きしめ合う。
「…ちゃんと好きですか?」
「ちゃんと好きやで?」
普通の状態では殆ど聞くことのないことを、熱を預かる時にこそっと問い掛ける。
それが熱に浮かせた戯言なのか真実なのかはわからない。
それを量る私自身が熱で浮かされてるのかもしれないのだから。
ただ、託される熱と感情を受け取り、自分の熱と僅かながらの感情を明け渡す。
つきっぱなしのテレビでは、スペイン・韓国戦が映し出されてる。
でも関心すらそちらにはいかなくて、ただそこにある熱を受け取ることだけにすべてを割いた。
気がつくとうつらうつらしていた。
「テレビ見るんやったら、見たらええで」
テレビの方に身体を向けて横になる私を後ろから抱きしめる。
その温度に安心感が生まれる。
意識がはっきりしてきた頃には、だんだんスペインの監督・選手共にキレはじめていた。
ボールがスペインチームに渡るたびに湧き上がるブーイングが奇しくも私の意識を呼び起こしていく。
その頃には私も竜樹さんも起き上がって、試合を見て会話を交わしていた。
私が引っかかってることは竜樹さんにも引っかかってたようで。
スペインの2度のゴールがノーカウントの扱いを受けたことを、「?」って面持ちで眺めている。
「いっそこのまま延長戦に入っても決着つかずで、そのままPKへもつれこんだ方がマシちゃう?」
二人の意見は一致した。
試合はそのまま延長戦でも決着がつかず、PK戦の末に韓国が逃げ切る。
スペインの選手の表情に言葉も出ない。
「勝負ってのはこういう側面を持ってるもんなんやで?」
何処となく諦めたように、竜樹さんが呟いた。
テレビから視線を外し、竜樹さんの方に向きを変える。
そして竜樹さんの顔をとっつかまえて、もう一度問い掛ける。
「竜樹先生、本当に私のこと、ちゃんと好きですか?」
「ちゃんと好きやで?何で?」
間髪入れずに返事が返ってきたのにはびっくりしたけれど。
「何でも感情が赴くまま振舞えばいいってもんじゃないですよ?」
「判ってるよ。どこにも感情を出されへんから、霄に見せてしまうねん」
「それが嫌で二度と連絡を取らなくなって、逢いに来なくなってもいいですか?」
「そんなん、いややぁ(ノ゜ο゜)ノ 」
…そう言われてしまったら、これ以上どう言えばいいってのさ?
「言葉を放つのも人間なら、受けるのも人間なんですから。
もう少し加減しましょうね?」
「判ってる。いつも悪いって思ってるねん(;_;)」
これ以上突っ込んだところで、ある意味百々巡りだろう。
都度それを指摘しない私にも問題はあるのだろう。
ひとまず「逢えなくなるのは嫌だぁ」ということなので、「時間を置きましょう」という刀の鞘は抜かずに置いた。
…来るべき時が来て、離れるべきものなら離れるべき方向へ向かうわ
ふとそう思ってそれ以上追求するのは止めた。
その後の竜樹さんの態度は、いつもとはどこか違う、とても気を遣ってると目に見えて判るものだったから。
体調不良でやるせない状態の人をこれ以上追い詰める必要はない。
不機嫌になるのを通り越して、ひどくせつないお顔をなさるので、笑顔をそっと向ける。
不思議なもので、それひとつでその辛そうな表情は少し柔らかくなる。
お風呂掃除をしてる間、竜樹さんは身体を動かすんだといって、家事をなさっている。
それが済んで暫くくっついて横になってるうちに、また眠ってしまった。
次に目が覚めたら19時。
慌ててご飯の用意をして、2人で食べ始める。
簡単なご飯ですら、ごくごく近くで一緒に食べるだけでも食欲が少し戻るらしく、「食べれない、食べれない」と仰ってた状態も解消する。
真相がどうであれ、少しばかり辛そうな表情が和らぐと、こちらの心のつかえも少しばかり取れたような気にもなる。
それがいつまで続くかは判らないけれど。
真相はゆっくり掘り起こしていってもいいのかもしれない。
相手に対する配慮は絶対的に必要なものであるのには違いないから、その点でどちらかが折れつづける必要はないとは思うけれど。
もう少しだけ互いの想いを信じてみてもいいかと思う。
心にそっと触れたとき、柔らかな空気がそこに生まれてるうちは…
昨日電話で話した友達が起こしてくれたのだ。
長時間つまらない話を聞かされただけでもご迷惑だっただろうに起こしてまで貰って申し訳ないなと、起き上がって携帯に頭を下げる。
休日の朝は頭痛で始まるのは殆どお約束のような状態なのに、今日は珍しく頭痛がない。
気分がよくて、散らかり倒してる机の上を片付けてみたりする。
時折、竜樹さんに電話をしてみるけれど、なかなか出ない。
…今日もまたお出かけかな?
車の運転をしてる時は絶対に電話に出ない人なのでそんな風に思うのだけど、札幌の一軒があって以来、連絡が取れなければその週は逢うのはやめようという話になっているから。
ようやっと固まった決意がぐらつかないうちに逢っておきたくて、時間をおいて何度か連絡を取る。
そうしてお昼前にようやく捕まる。
あまりに不調が過ぎるので、病院をはしごされていたらしい。
ひとまず「来て」ということなので、W杯の録画予約をして出かける。
電話口の竜樹さんが「外は暑い」を連発しておられたので、薄着にしてではみたものの。
意外と涼しかったりする。
のらりくらりと坂道を降り、電車に乗って竜樹邸に向かう。
ヘンなもので逢ってない間、特にあの電話があってから2日間ほどは心が固まったみたいになってて、いろんな意味で竜樹邸訪問が心の中で重くのしかかっていたのだけれど。
今はナチュラルにただ竜樹さんに逢ってみたいと思ってる。
逢って話をした結果、2人がどういう道を歩くにせよ、何もはっきりさせられずただ心に重い石を抱いたみたいな状態でいるよりかはいいだろうと思ったから。
竜樹邸に入り、振り返る竜樹さんに簡単に挨拶をして作業を始める。
ポリタンクの水を空いてるペットボトルに詰め替え、それが済んだら流しに溜まっていた洗い物を黙々とこなす。
洗い物が済んで振り返ると、「やっと、こっち来た♪(*^-^*)」と竜樹さん。
竜樹さんに差し出されたバナナを食べながら、お医者さんへ行ってきた話を聞く。
「…ごめん、そっちのテーブルのコップ取ってくれへんか?」
「悪いねんけど、そこの新聞取ってくれるかなぁ?」
ここ何週間かは、「これを取ってくれ」「こうしてくれ」と命令口調で何でも仰る傾向があったけれど、今日は私に何かを頼むたびに「ごめん」や「悪いねんけど」という冠がつく。
…目一杯気を遣ってはるんやなぁ
表情ひとつとっても、どこか険しさのオーラが薄れたような感じ。
しんどいと尖ってくるはずの竜樹さんは、どこか申し訳なさそうな感じ。
…これでは自分の主張を押し通せるはずなんてないじゃないか(-_-;)
「ずっこい!ヽ(`⌒´)ノ」と心の中で少し思ってることを見抜いたのか、見抜いてないのか。
「霄、こっち来てくれへんかぁ」とちょっと情けない表情の竜樹さん。
…ホンマ、ずっこいわヽ(`⌒´)ノ
そう思いながら、竜樹さんの傍に寄っていく。
ただ抱きしめる竜樹さん。
それに応える私。
言葉が足りない部分を何かで補うように、抱きしめ合う。
「…ちゃんと好きですか?」
「ちゃんと好きやで?」
普通の状態では殆ど聞くことのないことを、熱を預かる時にこそっと問い掛ける。
それが熱に浮かせた戯言なのか真実なのかはわからない。
それを量る私自身が熱で浮かされてるのかもしれないのだから。
ただ、託される熱と感情を受け取り、自分の熱と僅かながらの感情を明け渡す。
つきっぱなしのテレビでは、スペイン・韓国戦が映し出されてる。
でも関心すらそちらにはいかなくて、ただそこにある熱を受け取ることだけにすべてを割いた。
気がつくとうつらうつらしていた。
「テレビ見るんやったら、見たらええで」
テレビの方に身体を向けて横になる私を後ろから抱きしめる。
その温度に安心感が生まれる。
意識がはっきりしてきた頃には、だんだんスペインの監督・選手共にキレはじめていた。
ボールがスペインチームに渡るたびに湧き上がるブーイングが奇しくも私の意識を呼び起こしていく。
その頃には私も竜樹さんも起き上がって、試合を見て会話を交わしていた。
私が引っかかってることは竜樹さんにも引っかかってたようで。
スペインの2度のゴールがノーカウントの扱いを受けたことを、「?」って面持ちで眺めている。
「いっそこのまま延長戦に入っても決着つかずで、そのままPKへもつれこんだ方がマシちゃう?」
二人の意見は一致した。
試合はそのまま延長戦でも決着がつかず、PK戦の末に韓国が逃げ切る。
スペインの選手の表情に言葉も出ない。
「勝負ってのはこういう側面を持ってるもんなんやで?」
何処となく諦めたように、竜樹さんが呟いた。
テレビから視線を外し、竜樹さんの方に向きを変える。
そして竜樹さんの顔をとっつかまえて、もう一度問い掛ける。
「竜樹先生、本当に私のこと、ちゃんと好きですか?」
「ちゃんと好きやで?何で?」
間髪入れずに返事が返ってきたのにはびっくりしたけれど。
「何でも感情が赴くまま振舞えばいいってもんじゃないですよ?」
「判ってるよ。どこにも感情を出されへんから、霄に見せてしまうねん」
「それが嫌で二度と連絡を取らなくなって、逢いに来なくなってもいいですか?」
「そんなん、いややぁ(ノ゜ο゜)ノ 」
…そう言われてしまったら、これ以上どう言えばいいってのさ?
「言葉を放つのも人間なら、受けるのも人間なんですから。
もう少し加減しましょうね?」
「判ってる。いつも悪いって思ってるねん(;_;)」
これ以上突っ込んだところで、ある意味百々巡りだろう。
都度それを指摘しない私にも問題はあるのだろう。
ひとまず「逢えなくなるのは嫌だぁ」ということなので、「時間を置きましょう」という刀の鞘は抜かずに置いた。
…来るべき時が来て、離れるべきものなら離れるべき方向へ向かうわ
ふとそう思ってそれ以上追求するのは止めた。
その後の竜樹さんの態度は、いつもとはどこか違う、とても気を遣ってると目に見えて判るものだったから。
体調不良でやるせない状態の人をこれ以上追い詰める必要はない。
不機嫌になるのを通り越して、ひどくせつないお顔をなさるので、笑顔をそっと向ける。
不思議なもので、それひとつでその辛そうな表情は少し柔らかくなる。
お風呂掃除をしてる間、竜樹さんは身体を動かすんだといって、家事をなさっている。
それが済んで暫くくっついて横になってるうちに、また眠ってしまった。
次に目が覚めたら19時。
慌ててご飯の用意をして、2人で食べ始める。
簡単なご飯ですら、ごくごく近くで一緒に食べるだけでも食欲が少し戻るらしく、「食べれない、食べれない」と仰ってた状態も解消する。
真相がどうであれ、少しばかり辛そうな表情が和らぐと、こちらの心のつかえも少しばかり取れたような気にもなる。
それがいつまで続くかは判らないけれど。
真相はゆっくり掘り起こしていってもいいのかもしれない。
相手に対する配慮は絶対的に必要なものであるのには違いないから、その点でどちらかが折れつづける必要はないとは思うけれど。
もう少しだけ互いの想いを信じてみてもいいかと思う。
心にそっと触れたとき、柔らかな空気がそこに生まれてるうちは…
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