泣いても笑っても…

2002年6月21日
やっと、自分の中の想いの渦にひとつ整理をつける決意がついた。
追い詰められた果てに気づいたこと。
それに対して涙が零れ落ちた時、自然とその決意は固まっていった。


空はよく晴れ、風は心地よかった。
仕事を片付ければ、その後はドイツ・アメリカ戦。
その結果がどうであれ、ただ静かに想いと向き合い、弱りきってる感情に埋もれた何かを救い出せればいいと思った。

小さいけれど、不退転の決意を片手に社屋に入る。


人外魔境は何がどうという訳でもないのに、ばたばたしていて、自分の想いと向き合うだけの時間的余裕が取れなかった。
それでも、きちんと限られた時間の枠の中で仕事を片付け、来るドイツ戦を万全の状態で楽しめればそれでよかった。

カーン様から少しでも力を貰いたかった。
築き上げたものを守り抜く力を、その強さのかけらでも拾い上げられたら…

敢えて自分の心と向き合う時間を放棄して、仕事を片付けた。


定時に社屋を出て、家路を急ぐ。
携帯で15時30分からのイングランド・ブラジル戦の結果を眺める。

…ブラジルがあがってくるのか

決勝戦は(個人的な理由で)ドイツとイングランドだったらよかったのになぁと思ってたのだけど。
何はともあれとっとと家に帰り、録画の予約を始める。

どういう訳かこの日は金岡父も早く帰るとのことで、金岡邸は夕飯の用意で忙しい。
ドイツ戦の間は何もできないので、先にざっと友達の日記に目を通し、夕飯の用意を手伝って、家族揃って食事をとる。


W杯の番組が始まり、キックオフに間に合うようにと大急ぎでご飯を食べる私。
本当は明日のことが気になって、あまり能動的に物を食べようという気にはなれないのだけれど。
それでも、ご飯の片手間にカーン様の試合を観る気にはならなかったので、慌ててご飯を詰め込んでいると、机の上の携帯にメールが飛び込む。


…あれ?お姉さまからなんてメール来るはずないのになぁ


W杯期間中、決まって試合の始まる頃からメールをくれたのはお姉さま。
けれど今、彼女は海外旅行中でこちらにメールなど送れよう筈がない。

ディスプレイにメールが着信している間のアニメーションが消えて、着メロが流れてびっくり。


…あ、竜樹さんだ(゜o゜)


あの電話以来、ぶっつり連絡が途絶えてたので、「一体何事?」と思って開けてみると…


「いよいよ、ドイツ戦。
 ドイツ、勝ってくれー(>○<)
 勝たないと、俺がいびられるぅ」


………………………(゜д゜)


暫く箸を持ったままぽかんとしていたけれど、すぐさま箸を置いてメールを打つ。


「勝ったら土曜の夕飯は焼肉♪、負けたら冷奴でーす(笑)」


ここ2日のことを思ったら、正直「何を考えとうねん?」と思う部分もあったけれど、気がつくと自分もまたちゃらけたメールを送り返してる。


…どこまで行っても、懲りへんなぁ。私は


それでも、そうやって気に掛けてくれることが嬉しいと思うのは何なんだろう?
心なしかにこやかに、携帯片手にテレビの前のソファーに陣取る。


今大会5度目のドイツ国歌を聞く。
あと何回ドイツ国歌を聞けるか判らないけれど、カーン様の果敢なプレーが少しでも沢山拝めたらいいなと思いながら、どっぷりと中継に入っていく。

正直、ドイツとアメリカではレベル的にそうしんどくない試合だろうと思ってたので、今日はあまりカーン様の活躍は見られないだろうと思っていたけれど。


…とんでもない。


どちらかといえば、押しているのはアメリカでドイツは攻めあぐねてるという感じが否めない。
やたらドイツゴールは脅かされ、その度にカーン様大活躍という有様。


「きゃーーーっ、カーン様♪(≧∇≦)」
「こらーーーっ、カーン様にばっかり仕事させるなぁぁっヽ(`⌒´)ノ」


黄色い声と怒声が交互に飛ぶ状態。
金岡両親には「やかましい!!ヽ(`д´)ノ」と注意され、プードルさんには逃げられ、目が見えない猫には怯えられた。
いつカーン様のゴールが破られるか心配しながら、声を殺してテレビを眺めていた。


ドイツの2トップは、予選リーグではクローゼとヤンカーだったけれど、決勝リーグからはヌビルとクローゼに代わっている。
今大会得点王争いのトップにいるクローゼはマークがきつくて、なかなかボールが上手く通らない。
けれど、どんなに当たりがキツくても倒れもせず、ボールをいい場所まで持ち込むとこはとてもいい。
ボール持たせても器用にさばくし、いいところにボールを出せる。

そういう意味では、クローゼくんもお気に入り。


…クローゼくんが得点できますように。
…カーン様がドイツゴールを守りきりますように。


ぶつっと黙ったまま静かに祈っていた。


前半39分、アメリカゴール前でのフリーキック。
ツィーゲのキックにあわせて何人か飛んだ中の真中にいたバラックのヘッドに綺麗にボールは合う形で入る。

やっとこさ、ドイツに点が入った。


それからもますますドイツゴールを脅かそうとするアメリカの選手たち。
何回目かのアメリカのコーナーキックの時、カーン様がはじいたボールがフリンクスの身体に当たって外に出た場面。
少々もめはしたけれど、ゴールラインも割ってなかったしフリンクスの手にも当たってなかった模様。

大きな息を吐きながら、試合を見つめる。
時計の針を一気に進められるというのなら、進めてしまいたいような気持ちで試合終了のホイッスルを待つ。


試合終了のホイッスルがようやくピッチに鳴り響いた途端、カーン様はその場に大の字になって倒れこんだ。
今までのドイツ戦の中で、カーン様が試合後こんな風に倒れこんだことなんてなかった。
それはこの試合がどれほどカーン様にとって大変な試合だったかってことを窺い知るには十分すぎるもの。
暫くして、ツィーゲがやってきてカーン様を抱きしめた時、ようやくカーン様に笑顔が出た。


これもこの大会始まって初めてのこと。
カーン様の笑顔はさらに私の元気を呼び起こす。


「ドイツ勝ちました!明日は焼肉をゴチしましょう」


そうメールを打って夜空に放った。


ふと部屋で一人になって、私と共にドイツを応援してくれるといってくれた友達のことを思い出した。
一人でバカみたいに大騒ぎしてる私に付き合ってくれた友達に、勝手にお礼を言ってみたくなって電話してみた。


…お礼を言ったらすぐに電話を切るつもりが、調子に乗って話しすぎたけれど(^^ゞ


電話を切り、数時間後のことに思いを巡らせた時。
不退転の決意はすこしばかりのやわらかくなっていた。
それは決着をつけることに対して決意がぐらついたのではなく、ただナチュラルに挑んでいこうというスタンスにシフトしただけなのかもしれないけれど。


カーン様が必死に守り通そうとする姿に「諦めずにいればいい」という気持ちを取り戻し、友達と話をすることで「私の心は閉塞状態にまでは達していない」と理解できたこと。
それが今日一番の収穫だったのかもしれない。


…竜樹さんの何気ないメールも心やわらかくしてもらったよね(*^-^*)


泣いても笑っても数時間後。
出来るだけ、互いの心がやわらかくなるような結果に辿り着けるようにと祈りながら、眠りについた。


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