揺れ動く二つの心

2002年6月15日
昨日の夜も寝つきが悪かったけれど、竜樹邸に早く行くために目覚ましをかけて、無理やり眠る。
確かに、目覚ましが鳴った時間には起きられたけれど、起き上がると目がくらむので横になったのが悪かった。

…またしても、起きたら11時前だった。

竜樹さんに電話をしても捕まらない。
天気もいいし、多分一人で出かけてしまったんだろう。
リビングに下りて今日のドイツ・パラグアイ戦を録画するべく、ビデオをセットしてでかける。


今日はカーン様のお誕生日。
きっとカーン様ご本人は、試合が終わるまでそんなことけろりと忘れていらっしゃるんだろう。
是非とも今日の試合に勝って、思い出に残る誕生日にして頂きたいなと思う。


竜樹邸に向かう前に寄り道をすることにした。
大きなスポーツ用品店には、昨日日本が決勝リーグに進出決定した関係なのか、日本のユニフォームのレプリカを求める人が沢山いる。
その人ごみをかいくぐって目指すは、ドイツチームのレプリカ。
昨日見た時は、子供用サイズ(140cm)か極端に大きなサイズしかなかったのに、ホーム用もアウェー用も私が着るのに丁度いいSサイズ(インターナショナルサイズ)が出てた。
時計を見ると、悠長にしていられない時間帯。


…迷うことなく両方掴んでレジに並び、折り返しまた電車に乗る。


途中、竜樹邸に持ち込む簡単なお土産を買うのを忘れずに移動を繰り返し、竜樹邸に着いたのはキックオフ15分前。

「俺、さっき起きたとこやねん(ρ_―)oO」

昨晩も眠れなかったという竜樹さんは、身体をしゃんとさせたいからと散歩に出かけていった。
私は買ったばかりのレプリカ(アウェー用)に着替えて、テレビの前に鎮座する。


この一線はキーパー対決が話題になっていた。
カーン様とチラベルト。
自陣を脅かすものには果敢に立ち向かっていく、ごつくて声がでかくて、共にチームメイトからの信頼が厚いということ以外は対照的な2人。

ドイツはレギュラーメンバーのうちの3人がカメルーン戦のカードの余波で出場停止を食らってる。
全然気の抜けない試合だ。


ここが竜樹邸であることを忘れて、ぺたりと座り込んでじっと画面を眺めている。


前半戦はどっちつかずな何とものんびりした展開。
その展開に少々焦れてると、竜樹さんが戻ってこられた模様。
試合の様子についてぽつぽつ会話を交わした後、竜樹さんはお風呂に入ってしまった。
私はそれを気にも留めずに、テレビを見ている。


後半戦に入って竜樹さんがお風呂から上がってきて、一緒に観戦を始める。
徐々に試合が動き出してきて、微妙にやきもきしながら、それでも楽しんでみている。

再三のパラグアイの攻撃を凌ぐカーン様。
それを見てるだけで満足していた。
後半も終了間際、そろそろ両者とも延長戦を視野に入れ始めただろう頃、ヤンカーに代わって出場したヌビルが決勝点をあげる。

カーン様はご自身の誕生日を白星で飾った(*^-^*)


珍しく試合が終わるまで竜樹さんもちょっかいを出してはこられなかった。

試合が終わって、少しばかりじゃれあって、先週できなかった竜樹邸の飲み水を仕入に行くことにする。

「給水所までの行き方は判ってるから大丈夫だよ」と言ってるのに、「一緒に行く」と聞かない竜樹さん。
ご実家からもう一台自転車を借りることになって、自転車を使う理由を巡って竜樹さんと竜樹さんのお父さんが押し問答をしてる。


「霄ちゃんにそんなことをさせるのはおかしい」と仰る竜樹父さんに、

「霄にさせんなんことやから口出しせんといてくれ」と竜樹さん。

双方とも全然折れようとしない。


「いいんですよ。やり方覚えておくに越したことありませんから」と竜樹父さんには行ったけれど。
内心「何で私がするべきことのように言うんだろ?竜樹さん」とひっかかりを覚えた部分があったのも事実で。
給水所に向かう道すがら、引っかかりは消えることはなかった。


給水所に着いて水を汲んでいると後ろから手伝おうとしてくれる人がいる。

振り返ると竜樹父さんだった。

「こんなもん、わしがおる時はやるねんから、一生懸命せんでええで」

そう言いながら手際よくペットボトルに水を詰めていく。
そして、満タンになった20Lポリタンクを後ろの荷台に括りつけて、さっさか帰っていかれた。
その後ろを私と竜樹さんが残りのタンクやらペットボトルを積んで竜樹邸に戻る。


その後に更にかちんと来ることがあって、すべての作業が終わる頃には口をきくのすら嫌になっていた。


…どうして、こんな言い方しかできへんねやろ( ̄^ ̄)


しんどくなると物言いが多少ぞんざいになるのは今に始まったことじゃないけれど。
どうしてこれほどかちんと来るんだろう?

せっかく大好きなカーン様が大活躍したというのに、ドイツが勝ったというのに。
どうしてこんなにカチカチくるんだろう?

自分の感情の動き方があまりに狭量がない気がしたのもあったけれど、ただシンプルに竜樹さんの物言いが癇に障ったのも厳然たる事実だった。


竜樹さんは言葉を放つ本人だから、私がどう思ってるかなど露知らずで。
いつものように抱き寄せて互いの熱を交わそうとするけれど。
熱に絆されてなお、私の心の中に刺さった小さな刺は抜けることはなかった。
少しだけ眠って、夕飯の支度をするかどうか迷っていると、「一緒に作ろう」と竜樹さん。

結局、広くないキッチンに二人並んで簡単な夕飯を作り始める。


「これはこうしたらええねんで」という竜樹さんの指示そのものは判りやすいし勉強にはなるのだけれど。
どういう訳か、今日の私はそれがとても煩わしく思える。

…2人で一緒にご飯を作れるなんて、またとないことやんか?

それが外に食べに出るより楽しいことくらい、よくよく知ってるはずなのに。
「水汲み事件」は思ったよりも尾を引いてるらしい。


おかずを作り終え、食卓に並べ、食べ始めると…

『甘やかすだけが愛情じゃないですよね?』

テレビからそんな台詞が飛んできたのに、「そうやでぇ、甘やかすばかりが愛情ちゃうねんでー」と得意げに言う竜樹さんに、ぷちんと切れた。

「甘やかすばかりが愛情ではないけれど、同じ指摘するのでも言い方ひとつで受け手の気持ちは変わるものですよ?
正しければどんな言い方しても許されるわけでなし、ある程度の配慮は必要やと思うけど?」

どこか感情を掃ってしまったような言い方だったせいか、竜樹さんは黙ってしまった。
静かに刺してしまったんだとは知りながら、それに対するフォローを入れる気になれなかった。


食事が終わって後片付けをして、自力で帰ろうとすると「送るわ」と竜樹さん。
今日はしんどいと言っていたのに、どういう訳だろうと思いながら彼を眺めていると、
どこかしらに葛藤が見え隠れする。


体の具合が悪くて行き場のない心が尖って切っ先を向ける。
それは意図的にやってることじゃないことくらいは判ってる。
そうやって暴走して誰かを刺してしまった瞬間から葛藤が始まることも。
けれど、受け手が万全でなければ、刺しあい合戦になるだけ。
それを阻む術はないんだろうか?


心が揺れ動くたびに青空と鈍色の空が交互にやってくる。
人を傷つけ、気力を削ぐのも人間ならば、人を励まし気力を繋ぐのもまた人なのだと。


…判っていながら、揺れ動く二つの心が交差した日。



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