対峙する想い

2002年6月11日
今日は相棒とデートの日。
そして、ドイツ・カメルーン戦の日。

窓越しに見える空は、鈍色。
朝方に雨が降ったのか、地面はいつも見るよりも濃い色彩を放ってる。

…あー、雨かぁ

友達からのメールで台風が近づいてることを知り、「そう言えば、昨日の韓国での試合は雨だったなぁ」と思い返す。


雨が降れば、竜樹さんの背中は痛む。
ドイツ戦のある静岡で雨なんて降られたら、何となくドイツは不利だろうなぁと思う。
「雨が降るなら午前中に降って夕方にはあがればいいのに」とか、「静岡でだけは降りませんように」と机の上の珂庵にそっとお願いしてから、用意をして家を出た。


駅に着いて、定期を持って出ることを忘れたことに気づく。
雨の中の観劇に備えて小さな鞄に必要最低限のものを入れ替えた時、入れ損なったのだ。
しかも、乗ってる電車は間違いなく遅刻ルート。
晩のドイツ戦が観れないことも憂鬱さを加速させていく。
恒例の朝メールを飛ばし、憂鬱な気持ちのまま会社に向かった。

人外魔境は今日もそれほど立て込まず、通常フローも雑用もこなしてまだ時間に少しばかり余裕が出来る。
それをやりくりしながら、雑用と気持ちの整理にあてながら、定時まで過ごし慌てて会社を出る。


電車に乗って相棒の待つ駅に向かう。
纏わりつく湿気にうんざりしながら、今日は見届けることの出来ないドイツ戦でカーン様が自陣を守りきることを祈りながら。
そして、竜樹さんが湿気に負けてしまわないことを祈りながら車中でじっとしてた。
電車が目的の駅に滑り込んだ時、携帯が鳴った。
相棒からだった。
相棒の待つ店の前に走っていくと、開口一番言われたのが「髪の毛、どしたん?やたら色が抜けてるやん?」

彼女に最後に会ったときも私の髪は赤かったけれど、毛先の方の色が抜けてる部分に近い色に合わせてカラーリングしたから、とんでもなく色が抜けてるように見えたんだろう。

本当に久しぶりのデートなんだなぁと思いながら、そこからは少し遠い会場まで歩き始める。


移動中2人が沸いたのは、W杯の話。
彼女は日本の明神と中山、イタリアのインザーギがお気に入り。
私はドイツのカーン様。
2人とも勝手気ままに話を展開。
それでもちゃんと会話が成立してるから、へんなもので。
一件ちぐはぐそうに見える言葉の受け渡しは、絶妙なバランスの会話となって切れ間なく続いていく。


会話の宴もたけなわ、会場も近づいてきた頃、携帯が鳴る。

…竜樹さんからだった。

「あんまりしんどくて動けないから来てくれへんか?」というお願いを「用事でどうしてもそちらに行くことが出来ない」と断る形になってしまったこと。
それを怒るわけでなく、少ししょげ気味に引き下がった竜樹さんのことを思うと、少しトーンが落ちる。

…これが竜樹さんのお願いを断るほどの「用事」だったんだろうか?

そんな疑問を抱える私に「自分の時間を自分のために使うのは霄ちゃんの当然の権利でしょ?あんたはたっちーの親やないねんから」と一蹴する相棒。

…確かにそうなんだけどね。

引き続き相棒とのトークバトルに戻りながら、簡単な食べ物と飲み物を買って会場に入る。


今日は「企画ユニット 地球ゴージャス」の「カルテ」。
毎年、岸谷五朗と寺脇康文がユニットを組んでゲストと共に創り上げていくお芝居。
今年のゲストは西村雅彦と高島礼子。
舞台右手の端の方の席だったから、少し観づらいかもと思ったけれど。

…今日は相棒と2人で笑えたらいい。

朝感じていた鬱モードはすっかり消えてなくなっていた。
それでも、竜樹さんに対する罪悪感が消えることはなかったけれど…


全篇通して笑いどころ満載。
岸谷五朗も寺脇康文も、西村雅彦も高島礼子も、これでもかこれでもかとばかりに笑える芸を披露。
あまりに笑いすぎて、これは芝居なのかコントなのか判らなくなるけれど。
自然に飛び出した笑いの後、「これで本当に良かったのかな?」と感じる気持ちがせめぎあってる感じが消えることはなかった。

内容が医療の現場の話だったから、シリアスな場面に入るとちょっと胸に来るものがあって。
胸に切ない何かが走る度に竜樹さんのこともまた胸を掠める。
二手からやってくる感情に締め上げられるような感覚を覚えながら、それでも話の中に散りばめられた笑いに素直に反応できる自分がいて。
それでも、やっぱり罪悪感に引きずり戻されて。
素直に「いいものが観れた♪」と喜ぶ自分と、「これでよかったのかな?」と思う自分が隣り合うまま幕は下りた。
カーテンコールは3回あったけれど、誰のコメント(主に寺脇康文が話してるんだけれど)もテンションが高く、楽しい気持ちを持続させてくれる。
辛うじて罪悪感に押しつぶされすぎることなく、会場を後にした。


外は大雨だった。
相棒と2人、元来た道を戻っていく。
ゴージャスなお姉さまがドイツ・カメルーン戦で大きな動きがあると都度メールをくれていて、それを読んではまた会話はいろんな方向に転がり、話の宴は盛り上がる。


ようやっと梅田に戻り、いざ食事処を探そうとすると、22時にオーダーストップになる店が多くて。
行けども行けども、食事の出来る店はない。
居酒屋かファーストフードしか食べる店がなくて、時間の関係上、ファーストフードの店に飛び込み、食べながら話をする。


ようやくW杯ネタは終了し、今度は互いの近況報告に花が咲く。
私の近況に話が及んだ時、あったことの事実だけを伝えるために話したことが、相棒に火をつけてしまった。

「一体、何様やねん!?たっちーヽ(`⌒´)ノ」


こないだ夜中に呼び出されたことや会社の帰りにお呼びがかかると寄って帰ること。
竜樹さんの都合次第では、札幌のドイツ戦を観に行くのを諦めようとしてたことや今日の出動要請を「用事」という形で断ったことを気にしてることにまで怒りの矛先が向く。

「何とか頑張るよー(^^ゞ」と呑気ににへらと笑う私に、相棒、また怒る。


「他人のことを大事すんのもええけど、もっと自分を大事にしてよ!
あんたやから黙って見てるけど、ホンマやったら無理にでも別れさすわ!!
こんな扱いされてて、黙って見てられるかーーーーヽ(`⌒´)ノ」


自分が怒らせてしまったのだからと平謝りするけれど、どうやら私が謝ってすむ次元の話ではないようで。
帰りの電車の中でも怒りつづけた彼女は、「たっちーの具合のいい時にでも、話し合いしぃや?黙っとったらあかんで」と言い残して降りていった。


相棒と話したことに思いを廻らし、「カルテ」を観ていた時に思っていたことを思い返したりしながら家に戻ったら、一気に疲れが出てしまった。

ドイツ戦の速報メールをお姉さまに送り、今日いけなかったことを謝るためのメールを竜樹さんに送り。
そのままドイツ・カメルーン戦の録画も観ずに、横になった。


…傍目に見てはっきり判るほど、今の私は病んでるのだろうか?


昔はそんな様子を隠し通せたと思ってたこと。
もしかしたら隠し遂せた「つもり」になってただけで、本当はまわりは黙ってただけなんだろうか?

不謹慎だとは思いながら。


竜樹さんに申し訳ないと思いながら、それでも自分を想ってくれる人が傍にいてくれる人がいるということを少し嬉しく思う自分がいる。


いろんな出来事が詰まっていた一日の中で、そっと隠れていた想いが対峙しているのを、
夜に横たわりながら意識が落ちるまで眺めていた。

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