今夜はどうか…
2002年5月13日夜、隣で眠ってるはずの竜樹さんがごそごそと起きたり寝たりを繰り返している。
私自身、多少は眠りにつけてたとはいえ、竜樹さんの動く気配につられるようにして、意識が途切れ途切れになる。
「…にゃ、どしたん?」
「どうもなぁ…寝られへんねん」
そう言っては、時折寄ってきては体に触れたり頬をなでたりする。
そうすると暫くは安心できるようなので、竜樹さんに出来るだけ近づく形で横になり、触れるがままにしていたり、時折言葉を交わしたりしながら朝を迎える。
7時に携帯のアラームが鳴り、みんな一斉に起き上がる。
その直後、私の携帯が鳴る。
びっくりして出てみると、金岡母。
「…あんた、昨日帰ってくるんじゃなかったん?心配して眠れへんかったわ」
出かけしなにいつ帰ると念押しをしなかったのが悪かったらしい。
「ここんとこ、みんな具合が悪くなったりいろいろあって心配してるんだから、気をつけてよね?」
ちょっと不安げな声の金岡母にただただ謝り倒して、電話を切る。
大事なことはしつこいくらいに念押ししないといけないなと、改めて痛感。
よく眠った竜樹さんのご両親、特に竜樹父さんはやたら元気で起き上がってすぐにお風呂に向かっていった。
みんな帰り支度をしながら竜樹父さんを待ち、それから食堂へ向かう。
「霄、行くで(*^-^*)」
そう言って右手を差し出す竜樹さん。
ここへきてからずっと手を差し伸べてくれるのが嬉しくて、その手を握り返すとゆっくりと歩き始める。
食堂に行くと、既に多くの宿泊客の人たちは楽しそうに朝食を取っていた。
朝食は、焼き鮭にお漬物、煮物に温泉卵にお味噌汁。
おまけにコーヒーまでついてくる。
いつも朝食を取らない私には少しばかり辛い量だったけれど、朝ごはんくらいはちゃんと食べないといけないのだろうと、出されたものをすべて平らげた。
みんなの食事が済んでから部屋に戻ってまた歓談。
「これから何処へ行く?」という話になったけれど、みんな取り立てて行きたいところがあった訳でもないので、そのままフロントでタクシーの手配をして保養所を後にする。
竜樹邸から有馬温泉に向かう時は、随分遠くまで来たなぁと思ったけれど、帰るとなったら早いものであっという間に竜樹邸まで戻ってきてしまった。
昼ご飯にはまだ早いので、またお昼時に相談しようということで一旦解散。
私と竜樹さんは竜樹邸に戻った。
竜樹邸に入ってまず最初に確認しないといけないのが、お魚の安否。
留守中にヒーターが加熱しすぎて火事になっては困るとヒーターを切って出たので、温度が下がると具合の悪い魚の安否が気になっていた。
けれど、みんな無事だった。
餌をやって、適当に荷物を片付けてから2人で横になる。
「…あぁ、やっと帰ってきたわぁ」
昨日眠れなかったのがよほど堪えたのか出先でしんどくならないようにと気を張っていたからだろうか、妙にほっとしたような声の竜樹さん。
「お疲れ様ぁ」
そう言って竜樹さんの横に転がった私に触れる竜樹さん。
疲れていてそれどころではないはずなのに、安心を求めるように、何かを確かめるように。
ゆっくりとゆっくりと熱を帯びていく。
いつもよりもずっとずっと受け渡すものの質量も多く、互いを受け止めあう時間も随分長かったような気がする。
時々外の陽気と互いの熱でむせ返りそうになると、竜樹さんが身体を拭いてくれる。
私も竜樹さんの身体を拭いては抱きしめる。
長い長い受け渡しと熱を放って、安堵を迎える。
暫く寝入ってしまったらしく、時計を見ると13時近かった。
「お昼、どうしますか?」と聞いてもはっきりした答えの出ない竜樹さんに代わって、竜樹邸にあるもので見繕うことにする。
冷凍庫の中のひき肉とフライドオニオンを炒め、転がってたトマト缶を放り込み味付けをしながらパスタのソースを作り、パスタを茹でて竜樹さんを呼ばねばとばたばたしてると、ことことと竜樹さんが降りてきた。
「…霄、ここにいたんかぁ。起きたらおれへんから、びっくりしてん」
「ご飯を作ってくるよ」と言ったことを覚えてらっしゃらないのか、不安の色が消えない竜樹さん。
「…すごい、怖い夢を見てん。
助けたいのに助けられへんくって、どうしようもなくって目が覚めて、でも起きたら霄いぃへんし、びっくりしてん…」
いつもの竜樹さんに見られない様子に驚いた。
「…私はどっこも行かへんよ?ちゃんと近くにおるよ?」
そう言って抱きしめる以外の術は私の中からは見つけられなかった。
落ち着くまでずっと竜樹さんの傍にいて、やっとこ落ち着いた頃、遅い昼食を食べ始める。
昼ご飯を綺麗に食べて、暫く他愛もない話をして過ごした後、また竜樹さんは休んでいた。
今度はどこへも行かず、竜樹さんの隣でテレビを見たり、携帯を触ったりしながら過ごした。
安心したような表情で眠る竜樹さんを見てると、甘いような痛いようなヘンな気持ちになる。
いつまでこの場所にいられるかは判らないけれど、ただ竜樹さんの心にとって安心できる人であれるなら、それが一番嬉しいのだと。
以前はその寝顔を見ると、切なさとやるせなさばかりが先に立って心に少しばかりの痛みが走ったけれど。
私がいるから安心して眠れるのだというのなら、それがとても嬉しいのだと、今なら思える。
気がつくと、あたりが暗くなってきてて、時計を見ると19時近くになっていた。
「…竜樹さん、私はもうすぐ帰るけど、夕飯どうします?」
あまりに安らかに眠っておられたので起こすかどうか躊躇していたけれど、竜樹さんが起きた時、私がいなかったらきっと嫌だろうと思ったから。
「…ん?何時や?今?」
「もうすぐ19時ですよ?」
「そしたら、起きて飯食おっか?」
そう言って、のそっと起きて階下へ降りる。
竜樹さん母さんが昼過ぎに届けてくださったエビフライ弁当が二つ。
それを仲良く開けて食べ始める。
「…ホンマに時間が過ぎるの、早いなぁ」
「ですね。どうします?今晩から私、いませんよ?」
「もう一泊、してもらおっかぁ?」
…(*゜o゜*)
いつもなら到底聞かれないような台詞が飛び出してびっくり。
明日も有給は取ってるし、ライブは夕方からだからいようと思ったらいられるけど…
「…って、いられる訳ないよなぁ」
苦笑いする竜樹さんに、「家に電話して、もう一日いられるようにしましょうか?」と答えたけれど。
「いや、今朝もお母さん心配して電話してきてはったやん?今日は帰り?」
竜樹さんが矛を収めてしまったので、結局帰ることに(しょぼーん)
それでも食事が終わった後、ずいぶん長いこと抱きしめてくれたりキスをたくさんくれたりしたけれど…
帰り際、「楽しかったです、ありがとう」ってキスをする私に、「こっちこそ、楽しい時間をありがとな」と竜樹さん。
最後まで私を金岡邸に送り届けられないことを悔やんでおいでだったけれど。
一人で竜樹邸を後にして、バスや電車を乗り継いで帰りつき、竜樹さんに帰りましたの報告。
「旅行の前後に、二人っきりの時間が取れたのがよかった(*^-^*)」
電話を切るまで終始ご機嫌さんな竜樹さんが嬉しくて。
電話を切った後もただそれが嬉しくて、竜樹さんの暖かな想いに包まれて眠った。
今夜はどうか、竜樹さんが怖い夢を見ることもなく安心して眠れますように…
彼の中に住む小さな私が、彼の不安を掃うものでありますように…
私自身、多少は眠りにつけてたとはいえ、竜樹さんの動く気配につられるようにして、意識が途切れ途切れになる。
「…にゃ、どしたん?」
「どうもなぁ…寝られへんねん」
そう言っては、時折寄ってきては体に触れたり頬をなでたりする。
そうすると暫くは安心できるようなので、竜樹さんに出来るだけ近づく形で横になり、触れるがままにしていたり、時折言葉を交わしたりしながら朝を迎える。
7時に携帯のアラームが鳴り、みんな一斉に起き上がる。
その直後、私の携帯が鳴る。
びっくりして出てみると、金岡母。
「…あんた、昨日帰ってくるんじゃなかったん?心配して眠れへんかったわ」
出かけしなにいつ帰ると念押しをしなかったのが悪かったらしい。
「ここんとこ、みんな具合が悪くなったりいろいろあって心配してるんだから、気をつけてよね?」
ちょっと不安げな声の金岡母にただただ謝り倒して、電話を切る。
大事なことはしつこいくらいに念押ししないといけないなと、改めて痛感。
よく眠った竜樹さんのご両親、特に竜樹父さんはやたら元気で起き上がってすぐにお風呂に向かっていった。
みんな帰り支度をしながら竜樹父さんを待ち、それから食堂へ向かう。
「霄、行くで(*^-^*)」
そう言って右手を差し出す竜樹さん。
ここへきてからずっと手を差し伸べてくれるのが嬉しくて、その手を握り返すとゆっくりと歩き始める。
食堂に行くと、既に多くの宿泊客の人たちは楽しそうに朝食を取っていた。
朝食は、焼き鮭にお漬物、煮物に温泉卵にお味噌汁。
おまけにコーヒーまでついてくる。
いつも朝食を取らない私には少しばかり辛い量だったけれど、朝ごはんくらいはちゃんと食べないといけないのだろうと、出されたものをすべて平らげた。
みんなの食事が済んでから部屋に戻ってまた歓談。
「これから何処へ行く?」という話になったけれど、みんな取り立てて行きたいところがあった訳でもないので、そのままフロントでタクシーの手配をして保養所を後にする。
竜樹邸から有馬温泉に向かう時は、随分遠くまで来たなぁと思ったけれど、帰るとなったら早いものであっという間に竜樹邸まで戻ってきてしまった。
昼ご飯にはまだ早いので、またお昼時に相談しようということで一旦解散。
私と竜樹さんは竜樹邸に戻った。
竜樹邸に入ってまず最初に確認しないといけないのが、お魚の安否。
留守中にヒーターが加熱しすぎて火事になっては困るとヒーターを切って出たので、温度が下がると具合の悪い魚の安否が気になっていた。
けれど、みんな無事だった。
餌をやって、適当に荷物を片付けてから2人で横になる。
「…あぁ、やっと帰ってきたわぁ」
昨日眠れなかったのがよほど堪えたのか出先でしんどくならないようにと気を張っていたからだろうか、妙にほっとしたような声の竜樹さん。
「お疲れ様ぁ」
そう言って竜樹さんの横に転がった私に触れる竜樹さん。
疲れていてそれどころではないはずなのに、安心を求めるように、何かを確かめるように。
ゆっくりとゆっくりと熱を帯びていく。
いつもよりもずっとずっと受け渡すものの質量も多く、互いを受け止めあう時間も随分長かったような気がする。
時々外の陽気と互いの熱でむせ返りそうになると、竜樹さんが身体を拭いてくれる。
私も竜樹さんの身体を拭いては抱きしめる。
長い長い受け渡しと熱を放って、安堵を迎える。
暫く寝入ってしまったらしく、時計を見ると13時近かった。
「お昼、どうしますか?」と聞いてもはっきりした答えの出ない竜樹さんに代わって、竜樹邸にあるもので見繕うことにする。
冷凍庫の中のひき肉とフライドオニオンを炒め、転がってたトマト缶を放り込み味付けをしながらパスタのソースを作り、パスタを茹でて竜樹さんを呼ばねばとばたばたしてると、ことことと竜樹さんが降りてきた。
「…霄、ここにいたんかぁ。起きたらおれへんから、びっくりしてん」
「ご飯を作ってくるよ」と言ったことを覚えてらっしゃらないのか、不安の色が消えない竜樹さん。
「…すごい、怖い夢を見てん。
助けたいのに助けられへんくって、どうしようもなくって目が覚めて、でも起きたら霄いぃへんし、びっくりしてん…」
いつもの竜樹さんに見られない様子に驚いた。
「…私はどっこも行かへんよ?ちゃんと近くにおるよ?」
そう言って抱きしめる以外の術は私の中からは見つけられなかった。
落ち着くまでずっと竜樹さんの傍にいて、やっとこ落ち着いた頃、遅い昼食を食べ始める。
昼ご飯を綺麗に食べて、暫く他愛もない話をして過ごした後、また竜樹さんは休んでいた。
今度はどこへも行かず、竜樹さんの隣でテレビを見たり、携帯を触ったりしながら過ごした。
安心したような表情で眠る竜樹さんを見てると、甘いような痛いようなヘンな気持ちになる。
いつまでこの場所にいられるかは判らないけれど、ただ竜樹さんの心にとって安心できる人であれるなら、それが一番嬉しいのだと。
以前はその寝顔を見ると、切なさとやるせなさばかりが先に立って心に少しばかりの痛みが走ったけれど。
私がいるから安心して眠れるのだというのなら、それがとても嬉しいのだと、今なら思える。
気がつくと、あたりが暗くなってきてて、時計を見ると19時近くになっていた。
「…竜樹さん、私はもうすぐ帰るけど、夕飯どうします?」
あまりに安らかに眠っておられたので起こすかどうか躊躇していたけれど、竜樹さんが起きた時、私がいなかったらきっと嫌だろうと思ったから。
「…ん?何時や?今?」
「もうすぐ19時ですよ?」
「そしたら、起きて飯食おっか?」
そう言って、のそっと起きて階下へ降りる。
竜樹さん母さんが昼過ぎに届けてくださったエビフライ弁当が二つ。
それを仲良く開けて食べ始める。
「…ホンマに時間が過ぎるの、早いなぁ」
「ですね。どうします?今晩から私、いませんよ?」
「もう一泊、してもらおっかぁ?」
…(*゜o゜*)
いつもなら到底聞かれないような台詞が飛び出してびっくり。
明日も有給は取ってるし、ライブは夕方からだからいようと思ったらいられるけど…
「…って、いられる訳ないよなぁ」
苦笑いする竜樹さんに、「家に電話して、もう一日いられるようにしましょうか?」と答えたけれど。
「いや、今朝もお母さん心配して電話してきてはったやん?今日は帰り?」
竜樹さんが矛を収めてしまったので、結局帰ることに(しょぼーん)
それでも食事が終わった後、ずいぶん長いこと抱きしめてくれたりキスをたくさんくれたりしたけれど…
帰り際、「楽しかったです、ありがとう」ってキスをする私に、「こっちこそ、楽しい時間をありがとな」と竜樹さん。
最後まで私を金岡邸に送り届けられないことを悔やんでおいでだったけれど。
一人で竜樹邸を後にして、バスや電車を乗り継いで帰りつき、竜樹さんに帰りましたの報告。
「旅行の前後に、二人っきりの時間が取れたのがよかった(*^-^*)」
電話を切るまで終始ご機嫌さんな竜樹さんが嬉しくて。
電話を切った後もただそれが嬉しくて、竜樹さんの暖かな想いに包まれて眠った。
今夜はどうか、竜樹さんが怖い夢を見ることもなく安心して眠れますように…
彼の中に住む小さな私が、彼の不安を掃うものでありますように…
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