いつかここで…

2002年4月20日
たけのこのあく抜きをして、鍋の中で冷ましている間、金岡妹と金岡母と3人で話をしていた。

金岡妹は仕事の後、休む間もなく出かける支度をしてこちらにやってきて、明日は朝から金岡父の見舞いに行かなければならないというのに、話は止まらない。
よほど普段思うところがあるのだろう。
そんな時でなければまともに話なんて聞くことも出来ないから、ひとまず妹の気が済むまで延々と話を聞いて受け答えしていた。

そのうち金岡母が眠り、「構って、構って♪」と襲い掛かってくるプードルさんと格闘しながら、金岡姉妹の話は続いていく。
私も会社のことでは相当鬱憤が溜まっていたから、話は留まることを知らない。
二人ともがマシンガントークかましながら、構って攻撃のプードルさんと戦いながら。
一体どれくらい話したのか判らないけれど。
ひとまず部屋の時計が2時をさしていたので、慌ててそれぞれの部屋に戻る。

…金岡父の入院とか関係ないときに話したかったね。

何とはなしにそう思いながら、暫し睡眠をとることにした。


そうして次に目が覚めた時には、もう日が高かった。

…あ、たけのこの処理をしなきゃ。

そう思って慌てて飛び起きてリビングに下りると、パスタ鍋の中のたけのこたちは綺麗に皮を剥かれて、透き通った水の中に沈んでいた。
可燃ゴミの回収時間に間に合うように、金岡母が剥いてくれてたらしい。

…たけのこご飯を作ってたんじゃ、一緒にお散歩できるような時間にはつかないだろうなぁ


ひとまず、ベーグルに挟むテリヤキチキンを焼きながら、ジャガイモを茹でてつぶしたものにツナ缶とクリームチーズを混ぜ込んだものを作る。
それを見ていた金岡妹はあきれたように、呟く。

「お姉ちゃんすごいねぇ。結婚もしてないのに、料理して彼氏に差し入れすんねんや?」

「それっくらいしか取り得ないからさぁ」と答える私に、「私なんて旦那にも旦那の友達に『海衣ちゃんは料理なんてぜってぇしないよなぁ』て言って笑われててんよ。腹立つわーヽ(`⌒´)ノ」と思い出し怒り炸裂のご様子。
昨日の金岡姉妹会談でも、旦那さんの愚痴は飛び出してたから、その延長なんだろう。

「でもまぁ、結婚して海衣はちゃんとやっとうやん。偉い思うよ?」

そうなだめて、見舞いの準備をさせる。


金岡母と妹一家が出かける時、「まだいるでしょ?すぐに戻るから、鍵持たずに行くし」と金岡母が言っていたので、思わぬ足止めを食らうことになる。
既にベーグルサンドを作り終え、たけのこ料理の下拵えに入るかどうか迷っていた。
言葉どおり早く戻ってくるなら、あまり悠長にもしてられないと思うと判断に困り、たけのこ料理の下拵えに着手できずにいる。
暫く後片付けをしながら、帰りを待っていた。


けれど。


待てど暮らせど、金岡母も妹一家も戻ってこない。

…どうしよう。日が高いうちに竜樹邸に行って、竜樹さんと散歩に出かけたいのに/( ̄□ ̄)\ !

気持ちばかり焦るけれど、とんと音沙汰がないので出るに出られない。

「もう出るからね」と金岡母の携帯にも金岡妹の携帯にも電話してみるけれど、電源が切られていてかからない。
気が付くと時計は14時を回っていた。


…このままだと竜樹邸に着くのは16時まわっちゃうよ

気ばかり急くところに、電話がひとつ。
出てみると、金岡妹からだった。
どうやら、彼らは病院に着いてから二手に分かれて行動してたらしくて、金岡母と姪御、妹の旦那さんとが行方不明らしい(爆)
で、金岡母から連絡がなかったかという確認のための電話だった。

…これじゃあ、どう考えても竜樹さんと日の高いうちにお散歩なんてできへんやん(T△T)


もう4月の終わりとはいえ、まだ夕方を過ぎると冷え込んでくるし、どういう訳か日が沈みかかると竜樹さんの体調は悪くなる。
これじゃあ、ベーグルサンドなんて持って出ても何の意味もない。


…こんなんになるんやったら、もう少し早く起きてみんなが出かける前に出かけといたらよかった


しても仕方のない後悔が錯綜するけれど。
何も知らずに待ってるだろう竜樹さんにこれ以上の待ちぼうけを食らわすわけには行かない。


竜樹さんに電話して、今日は中止にしてもらった。
昨日から逢えることを楽しみにしていたから、へこみ方も半端じゃなかったけれど。

「明日でええやん?
ベーグルサンドもたけのこも冷蔵庫に入れてたら、明日食べれるやん?(*^_^*)」

そう言って快く延期を認めてくれたけれど。

…でも、私は逢いたかったんだよぉ(TヘT)


誰に怒りをぶつけることも出来ず、さりとて気持ちを切り替えられる要素もなく、リビングでぺたりと座り込んでいた。
友達に励ましメールを送りついでにこちらの事情を説明したら、「明日の朝は寝坊しないように起こしてあげましょう」と申し出てくれた。


…いくら朝が弱いたぁいえ、自分のことやのに友達に起こしてもらってええんかな?

遠慮と情けなさと申し訳なさがぐちゃまぜになったけれど。
ひとまず起こしてもらうことをお願いするメールを飛ばして、また明日の用意を始める。
そうして、たけのこの下拵えにかかろうかなと思った頃になって、ようやく金岡母たち一行が帰ってきた。


予定が中止になって少々ご機嫌斜めな私だったけれど。
結果的には1日家にいたおかげで金岡妹や姪御とは接触できたからよかったかも知れない。


…しかし、姪御よ。「きゃはははー♪」と満面の笑顔で人の頭を叩くのはやめろよ?

これまた真剣に怒るわけに行かず、時々「めっヽ(`⌒´)ノ」と怒るけれど。
悲しいかなオババカなのか。
姪御の笑顔には終始負けっぱなしだった。
そうやって、姪御と格闘してるうちに、いつのまにか金岡母は大量のたけのこを調理し始めている。


「あのー、明日竜樹さんとこにも持っていきたいんだけど…」
「判ってるわよ。だからご飯5合炊いてるし、若竹煮も沢山作ってるから」

手順を遠くから細かく説明はしてくれるけれど、いざ狭い台所に一緒に立とうとすると、
「邪魔やし、向こう行ってて」と邪魔者扱い。
リビングにはにこやかな姪御が立ちはだかる。
結局、姪御とプードルさんに散々遊ばれて、一日が終わってしまった。


明日竜樹さんと食べるだろうたけのこご飯と若竹煮が今日の金岡家の夕食。
金岡ファミリーと竜樹さんが同じものを食べるというのはなんだかヘンな感じがする。

…いずれはこの面子の中に、竜樹さんも参加することになるんだろうか?

あり得るようなあり得ないようなそんな光景に思いをめぐらせて、一人で赤くなったりしたけれど。
いつかそんな風に何気なく、私の大好きな人がこの家に来れるようになったらいいなと思った。


ばたばたと一日が過ぎて思うのは。
滅多にない賑やかな週末というのも悪くはないなということ。
竜樹さんがいないことを差し引いても、笑顔の多い一日はありがたいものだと。

…なるだけ早いうちにみんなが揃う日が来るといいね。


今はまだ病院にいる金岡父と、やがては来ることになるかもしれない竜樹さんが。


いつかここで集えるように。
そして笑顔溢れる時間が過ごせるようにと。


誰にという訳でもなく、ただそう願った。



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