少しずつ…

2002年4月17日
昨日も寝付かれなくて、目が覚めてもどこか体が重い。
カーテンを開けると、目の前の空はまたしても鈍色。
鈍色の空からは湿気の塊が勢いよく降り注いでいる。
どこかしらに憂鬱さは抱えてるけれど、無理やり体を起こして家を出る。


電車に乗り、毎回恒例の朝メール+少しばかりの勇気を届けるためにメールをひとつ飛ばす。
すべてのメールを鈍色の空に放って電車を降りると、傘をささなくても済む程度の雨脚になっていた。
自転車を豪快に転がして、社屋を目指す。


今日はボスと一番若い社員さん、同僚さん、社長の5人だけしか事務所にいない。

不思議なことに、こんなに人口密度が少ない日は決まっていない人宛に厄介なトラブルや電話が入る。
しかも性急に連絡をとらなければならない人に限って、携帯を持って出ていないという有様。
朝から噛み付くようになる電話の対応でへろへろ。
けれど、午前中に片さないといけない仕事は殆ど午後からの業務に持ち越すことなく済ませることが出来た。

それに気をよくしながら、昼食を取る。

業務時間中と昼休みに届いたメールのお返事を昼休み中に打とうと考えていたけれど。
どういう訳か、今日はボスがやたら話し掛けてくる。

わざわざ人の顔を覗き込むように話し掛けてこられるのに、いくらなんでも携帯片手に下向き加減にメールをコチコチ打ちながらお返事するのも失礼だと思って、昼休み中のお返事大会は諦めた。

ボスは上機嫌で他愛もないことを話している。
空き時間くらい自分の好きにさせてくれよと思うけれど、不思議とボスにちゃちゃ入れられても腹が立たない。

…私、よっぽど疲れた顔してるんだろうなぁ


ボスがやたら張り切ってちゃちゃを入れてくる時は、決まって私の表情が険しい時だったり、仕事が行き詰まってる時だったりするのは、5年近くいてれば判るから。
ボス自らがそうやって嫌な空気を解きにかかってくれるってこと自体、ありがたいことなんだろうから。
そう思って、午後の仕事が始まるまで、ずっとお話を続けていた。


昼からの仕事は気持ち悪いくらい静かで、考えを纏めたり、いつもできない雑用をしたりして過ごす。
ちょうどキリのいいところで終業時間が来たので、とっとと事務所を後にした。


更衣室で着替え、自転車に乗ろうとして、ふと自販機が目に留まる。


…あ、そう言えば。

元気を取り戻しつつある金岡父は最近、缶コーヒーを飲みたがるそうで。
しかも、「これが飲みたいねん♪」などと、えり好みをするとか。
ちょうどその缶コーヒーがあったので、それを2本・新製品を1本買ってお弁当鞄に詰め込んで、駅に向かう。

…帰りがてら、届けに行くか。

特に病院に寄るつもりはなかったけれど、缶コーヒーも買ってしまったことだしと、病院に寄って帰ることにした。


金岡父のいる病院に入り、病室を目指す。
ドアをノックして入ってびっくり。

…金岡父、病院の夕飯を完食していた。

しかも、点滴のついたがらがら(←名前がわかりません)を引いて、ちょろちょろしてる。
振り返って父は一言。

「どうしてんや?」


…ホンマに、嘘みたいに元気やんか?(-"-;)


一体、あの眠れない数日は何だったと言うのだろう。
日曜日までのあのボケっぷりは何だったんだろう。
自分が心配してたことが無駄になってよかったはずなのに、なんだか力がへなへなと抜けていく感じがする。
コーヒーを渡して、様子を見てると。

「…あ、これやこれや。俺が好きなん」

見てびっくりだ。
母から聞いていたカフェオレではなく、新商品の方のコーヒーがいいときゃっきゃと喜んでいる。

「…ねぇ、カフェオレがご所望じゃなかったん?」
「いや。これもカフェオレやで?生クリーム入りとか書いてあるやん」
「それは『ラテラテ』とかいう名前の新商品よ?」
「そうそう、名前判らんかってんけど、これやねん。『ラテラテ』♪」

これで元気やったら、お腹をぷにーんと引っ張ってやろうかと思ったけれど(爆)
こんなしょうもないことで喜ぶ姿は滅多に見れないものだ。
これはこれで、ええんでしょう。

ひとしきり喜んで、ベッドサイドの机の上にお気に入りの『ラテラテ』を置くと、
プードルさんやネコの様子ばかり聞いてくる、金岡父。

「プードルさんが(お父さんがいなくて)寂しそうにしてるよ」と言った途端。

「(プードルさんが)待っているから、もう帰り」


…えーーーーーーーっ\(◎o◎)/!


金岡母には「甘いもんでも、食べていき?」と言ったのに、私には帰れだぁ?

…まぁ、確かに娘より自分の女のが大事だわなぁ

そう納得して病室を出ようとすると、「夕食の空き容器をさげに行くついでに、送ったるわ」とがらがら引っ張って、立ち上がる金岡父。
歩く姿はまだちょっと頼りない感じがするけれど、「お夕食、どうでした?」と尋ねる看護婦さんに「美味しかったです♪」と笑顔で返す憎いやつ(笑)

…まぁ、ここまで元気になったんやったら、ええか?


安心して病院を後にして、毎週恒例のスーパーの水曜市に行く。


スーパーに入ると、野菜が安い。
ふと、今週の土曜日、サンドイッチのお弁当でも作って、少し早めに家を出て竜樹さんをお散歩にでも連れ出そうかなと思った。
そうしてサンドイッチの材料を籠に入れてふと目線を下にやると、梅酒を仕込むのに使うでかい瓶がある。

…そう言えば。


竜樹邸で生まれたベタの赤ちゃんの住み分けのための水槽代わりに、梅酒の瓶を探してたっけ?竜樹さん。

30日に逢った時、夜桜を見ながら買出しをした時、竜樹さんが梅酒の瓶を探しているのを見ていたから、「買おうかな?」と思ったけれど、もしかしたらもう手に入れてるかもしれない。

今日は雨降りだったし、竜樹さんの体調がいいはずなんてないからどうせかけても出てはもらえないんだとは思うけれど。

…ダメ元で電話してみるか。

そう思って、携帯取り出して電話をしてみると…

「…はい!(-"-;)」

…うへぇ、なんだか不機嫌そう"(ノ_・、)"

黙って電話を切ろうと思ったけれど、一応梅酒の瓶がいるかどうか聞いてみると、

「…かさばるやろから、ひとつだけ買うといて。よぉ気がついてくれたなぁ」

心なしか出だしより柔らかな、労いの声に絆されてすっかりご機嫌さん。
結構な量の食材と梅酒の瓶を提げて、よたよたとスーパーを出て、友達から入ったメールに返事を打って送信。
そのままバスに乗って、家に帰った。


少しずつ、少しずつ…
事態は緩やかによい方向に動き出している。
いいことばかりでないように、きっと悪いことばかりでもない。
鈍色の雲が垂れ込めるように、鬱屈とした想いが心を塞ぎ続けたけれど。


少しずつ、少しずつ…
晴れ間は見えてきてるのかな?
いつかはすべてをありのまま受け止めて、日々の中から暖かなものだけをそっと受け取りながら、穏やかにたおやかに歩いていけるのかな?


焦らずに、気負わずに、少しずつ、少しずつ…
そんな明日を目指して歩こう。



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