暖かさを力に変えて…
2002年4月14日昨晩も寝つきが悪いままネットをふらつき、友達を捕獲して散々喋り倒した後、うつらうつらしてるうちに朝を迎えた。
…今日は何をおいても、行くんだ。
そう思って、重い身体を起こして、用意を始める。
家を出られそうになった頃、竜樹さんに電話をしたけれど、出てはもらえない。
でも、多分竜樹邸に行けばいるのだろう。
そう信じて出かけようとしたら、金岡母から金岡父の病院に届け物をして欲しいと頼まれたので、右手に竜樹さんに差し入れる食料、左手に預かりものの大きな紙袋をを提げて出かけた。
外は暑いくらいの陽気。
不安だらけの気持ちを抱える自分が、そんな暖かく明るい場所にいるのはあまりに不似合いな存在のような気がして、気が滅入りそうになるけれど。
…気が滅入ったからって、放りだすわけいかへんねん。
大丈夫、私は負けたりせぇへん。
心持ち下向き加減な気持ちを振り払うように、金岡父のいる病院を目指しててくてくと坂道を下る。
途中、花壇に黄色い花がたくさん植わっているのを見て、心がふっと元気になったような気がする。
…どんな時でも、心に元気が戻る要素は必ずあるねんから(*^_^*)
ヘンに確信めいた思いを抱いて病院に入った。
病室の父は、昨日にも増して辛そう。
昨日気になっていた、反応の悪さがいっそうひどくなった気がする。
父の会社に連絡するための書類にどんなことを書けばいいのか聞くけれど、言葉がすっと出てこない。
それは下がらない熱のせいなのか、それとも言葉が出ないほどに弱りきってしまってるのか?
…この生活が長く続いたら、ヤバいな
小さな不安は胸を締め上げていく。
言葉が出づらくなってる父が謂わんとすることを、自分の言葉を足して確認しながら箇条書きにしていく。
…そこから文章を組み立てるのは、私がすればいいや。
メモを纏め上げ、金岡母が再度出向かずともよいように、足りないものを補充するべく買出しに出かける。
水を6リットル、ティッシュを1パック買って、よろよろと病室に帰る。
父の使い勝手のよいように片付けたり配置したり、野球観戦をする父に時々話し掛けたりしてるうちに時間が押してきたので、仕方なく病室を後にして駅に向かう。
…さっき見た姿は、現実なのか?
昨日みたよりもさらに悪い状態に愕然としながら。
そんな父の姿が、本当に現実のものなのかまだ信じられなくて、また気持ちは沈んでいくような感じがする。
それでも、その気持ちを引きずっていいのは竜樹邸の前まで。
竜樹さんにはせめて、いくらかの笑顔が渡せるようでありたい。
そう願いながら、病院での父の姿について思うことに鍵をして、移動を繰り返した。
バスを降りて、呼吸を整えながら歩く。
少しでも暖かな笑顔を渡せますようにと祈りながら…
「…こんにちはぁ」
竜樹邸に入ると、ちょっと上気した顔の竜樹さんがいた。
「よぉ来てくれたなぁ(*^_^*)」
そう言う竜樹さんはしんどそうではあるけれど、金曜日の電話の時よりかは幾分余裕があるみたい。
「身体を動かさないのがいかんのかと思って散歩してきてん」
…あぁ、なるほどね。
竜樹さんの心の滅入りが減った分、少しマシに見えるんだ。
事態が変わったわけではないけれど、そんなささやかな明るさが嬉しくて、笑顔が自然とこぼれていく。
ぽつりぽつりと会話を交わしながら、竜樹さんは遅い昼食を取っていた。
暫くすると、また背中が痛んできたらしく、休憩がてら2階に移動してお話を続ける。
2階に上がると、ホワイトデーの時に貰った指輪のサイズ直しがあがったものと、(何処から手に入れたのか)ヴィトンのアクセサリーポーチを貰った。
「本当は今年のクリスマスとか来年の誕生日とかに渡した方がええねやろうけど、使わないで置いておくよりは早く使って欲しいなって思ってん(*^_^*)」
しんどそうなんだけれど、どこか暖かな笑顔の見える竜樹さん。
「気分転換に出かけた時、ふらっと寄ったらあってん。
霄が持ったらええやろうなぁって思って、そん時の手持ちぎちぎちやったけど買ってん」
…この人はしんどい時でも、私のことを頭に置いててくれてるんだ。
そう思うと、連絡が取れないことで、逢えないことで根拠レスなニヒリスティックを抱えた自分ってなんてしょうもないねんやろ?
泣き笑いのような笑顔を返したのだろうか。
竜樹さんは「しょうがねぇなぁ」って感じで頬をなでてくれた。
暫くするとちょっと体を起こしてるのがしんどくなったのか、竜樹さんは横になった。
私は所在なげにベタの赤ちゃんと知らない間に大量発生してた石巻貝の赤ちゃんを眺めながら、またぽつりぽつりと会話を交わす。
「…なぁ、霄ぁ。こっちおいで」
傍によると、触れてくる竜樹さん。
触れるに任すうちに心まで動く感じがして、竜樹さんとの距離を縮めたい衝動に駆られたけれど。
「…今日はアカンで?霄に感染るとあかへんから」
そう言って、キスはお預けになった。
何かを欲しがるように触れる竜樹さんに何かを渡したいと希う私。
…けれど、なんともカッコの悪いことに、おなかがぐー(笑)
「何か食べといでぇや。俺は元気を取り戻す準備に入るから」
そう言われて、ことことと階段を下り、ソバを作って食べた。
食べ終わって後片付けが済んでもまだ竜樹さんは降りてこられないので、空になったペットボトルに飲み水を汲むために外に出る。
何回も水汲みを繰り返してるうちに竜樹さんはいつのまにか1階にいた。
「そんなにちょろちょろ動き回ってんと、ちょっとは休み?
横になってもかまへんから」
そう言われて横になってるうちに、気が付いたら眠ってしまっていた。
はっきりしない意識の中で、ふくらはぎのあたりをとんとんと叩かれる感覚を覚える。
「霄ぁ、起きれるか?」
…もう帰らんなん時間なん?
そう思って慌てて起きると、じゃれっこモードの竜樹さん。
「…身体、しんどないか?」
そう尋ねる竜樹さんの顔がいつか見た、ちょっと情けないような表情だったのに負けた。
何かを預かるように、預けるように、ゆっくりと抱きしめ返す。
まるで、暖かさを知らない子供が欠けた何かを埋め合わせるように。
ただ互いの温度で欠けた何かを埋め合わせようとするように、抱きしめ抱きしめ返す。
そうして互いの温度に満たされるように、また眠りの中に落ちていった。
そこにあるのは、ただ暖かな感覚だけだった。
今日は自力で帰らないといけない状態で、また竜樹さんに起こされて竜樹邸を後にした。
「…ホンマはなぁ、お父さんとこに何か買いに行くために車出したりして手伝いたいねん。
俺がこんな状態やから申し訳ないねん。ごめんなぁ」
帰り際、ぽつりと呟く竜樹さん。
「その気持ちだけで十分やよ?ありがとう(*^_^*)」
心からの「ありがとう」が届いたかどうかは判らないけれど。
竜樹邸を出た私は竜樹さんの温みを纏うようにしてそのまま家に帰った。
どんな状態にあっても。
互いを想う気持ちと相手の温みを忘れずにいて。
ただその暖かさを力に変えて歩きつづけてさえいれば、いつかは出逢えるのだろうか?
大切な人たちが笑顔でいられる場所に。
いつか出逢えると信じて、頑張ろう。
…今日は何をおいても、行くんだ。
そう思って、重い身体を起こして、用意を始める。
家を出られそうになった頃、竜樹さんに電話をしたけれど、出てはもらえない。
でも、多分竜樹邸に行けばいるのだろう。
そう信じて出かけようとしたら、金岡母から金岡父の病院に届け物をして欲しいと頼まれたので、右手に竜樹さんに差し入れる食料、左手に預かりものの大きな紙袋をを提げて出かけた。
外は暑いくらいの陽気。
不安だらけの気持ちを抱える自分が、そんな暖かく明るい場所にいるのはあまりに不似合いな存在のような気がして、気が滅入りそうになるけれど。
…気が滅入ったからって、放りだすわけいかへんねん。
大丈夫、私は負けたりせぇへん。
心持ち下向き加減な気持ちを振り払うように、金岡父のいる病院を目指しててくてくと坂道を下る。
途中、花壇に黄色い花がたくさん植わっているのを見て、心がふっと元気になったような気がする。
…どんな時でも、心に元気が戻る要素は必ずあるねんから(*^_^*)
ヘンに確信めいた思いを抱いて病院に入った。
病室の父は、昨日にも増して辛そう。
昨日気になっていた、反応の悪さがいっそうひどくなった気がする。
父の会社に連絡するための書類にどんなことを書けばいいのか聞くけれど、言葉がすっと出てこない。
それは下がらない熱のせいなのか、それとも言葉が出ないほどに弱りきってしまってるのか?
…この生活が長く続いたら、ヤバいな
小さな不安は胸を締め上げていく。
言葉が出づらくなってる父が謂わんとすることを、自分の言葉を足して確認しながら箇条書きにしていく。
…そこから文章を組み立てるのは、私がすればいいや。
メモを纏め上げ、金岡母が再度出向かずともよいように、足りないものを補充するべく買出しに出かける。
水を6リットル、ティッシュを1パック買って、よろよろと病室に帰る。
父の使い勝手のよいように片付けたり配置したり、野球観戦をする父に時々話し掛けたりしてるうちに時間が押してきたので、仕方なく病室を後にして駅に向かう。
…さっき見た姿は、現実なのか?
昨日みたよりもさらに悪い状態に愕然としながら。
そんな父の姿が、本当に現実のものなのかまだ信じられなくて、また気持ちは沈んでいくような感じがする。
それでも、その気持ちを引きずっていいのは竜樹邸の前まで。
竜樹さんにはせめて、いくらかの笑顔が渡せるようでありたい。
そう願いながら、病院での父の姿について思うことに鍵をして、移動を繰り返した。
バスを降りて、呼吸を整えながら歩く。
少しでも暖かな笑顔を渡せますようにと祈りながら…
「…こんにちはぁ」
竜樹邸に入ると、ちょっと上気した顔の竜樹さんがいた。
「よぉ来てくれたなぁ(*^_^*)」
そう言う竜樹さんはしんどそうではあるけれど、金曜日の電話の時よりかは幾分余裕があるみたい。
「身体を動かさないのがいかんのかと思って散歩してきてん」
…あぁ、なるほどね。
竜樹さんの心の滅入りが減った分、少しマシに見えるんだ。
事態が変わったわけではないけれど、そんなささやかな明るさが嬉しくて、笑顔が自然とこぼれていく。
ぽつりぽつりと会話を交わしながら、竜樹さんは遅い昼食を取っていた。
暫くすると、また背中が痛んできたらしく、休憩がてら2階に移動してお話を続ける。
2階に上がると、ホワイトデーの時に貰った指輪のサイズ直しがあがったものと、(何処から手に入れたのか)ヴィトンのアクセサリーポーチを貰った。
「本当は今年のクリスマスとか来年の誕生日とかに渡した方がええねやろうけど、使わないで置いておくよりは早く使って欲しいなって思ってん(*^_^*)」
しんどそうなんだけれど、どこか暖かな笑顔の見える竜樹さん。
「気分転換に出かけた時、ふらっと寄ったらあってん。
霄が持ったらええやろうなぁって思って、そん時の手持ちぎちぎちやったけど買ってん」
…この人はしんどい時でも、私のことを頭に置いててくれてるんだ。
そう思うと、連絡が取れないことで、逢えないことで根拠レスなニヒリスティックを抱えた自分ってなんてしょうもないねんやろ?
泣き笑いのような笑顔を返したのだろうか。
竜樹さんは「しょうがねぇなぁ」って感じで頬をなでてくれた。
暫くするとちょっと体を起こしてるのがしんどくなったのか、竜樹さんは横になった。
私は所在なげにベタの赤ちゃんと知らない間に大量発生してた石巻貝の赤ちゃんを眺めながら、またぽつりぽつりと会話を交わす。
「…なぁ、霄ぁ。こっちおいで」
傍によると、触れてくる竜樹さん。
触れるに任すうちに心まで動く感じがして、竜樹さんとの距離を縮めたい衝動に駆られたけれど。
「…今日はアカンで?霄に感染るとあかへんから」
そう言って、キスはお預けになった。
何かを欲しがるように触れる竜樹さんに何かを渡したいと希う私。
…けれど、なんともカッコの悪いことに、おなかがぐー(笑)
「何か食べといでぇや。俺は元気を取り戻す準備に入るから」
そう言われて、ことことと階段を下り、ソバを作って食べた。
食べ終わって後片付けが済んでもまだ竜樹さんは降りてこられないので、空になったペットボトルに飲み水を汲むために外に出る。
何回も水汲みを繰り返してるうちに竜樹さんはいつのまにか1階にいた。
「そんなにちょろちょろ動き回ってんと、ちょっとは休み?
横になってもかまへんから」
そう言われて横になってるうちに、気が付いたら眠ってしまっていた。
はっきりしない意識の中で、ふくらはぎのあたりをとんとんと叩かれる感覚を覚える。
「霄ぁ、起きれるか?」
…もう帰らんなん時間なん?
そう思って慌てて起きると、じゃれっこモードの竜樹さん。
「…身体、しんどないか?」
そう尋ねる竜樹さんの顔がいつか見た、ちょっと情けないような表情だったのに負けた。
何かを預かるように、預けるように、ゆっくりと抱きしめ返す。
まるで、暖かさを知らない子供が欠けた何かを埋め合わせるように。
ただ互いの温度で欠けた何かを埋め合わせようとするように、抱きしめ抱きしめ返す。
そうして互いの温度に満たされるように、また眠りの中に落ちていった。
そこにあるのは、ただ暖かな感覚だけだった。
今日は自力で帰らないといけない状態で、また竜樹さんに起こされて竜樹邸を後にした。
「…ホンマはなぁ、お父さんとこに何か買いに行くために車出したりして手伝いたいねん。
俺がこんな状態やから申し訳ないねん。ごめんなぁ」
帰り際、ぽつりと呟く竜樹さん。
「その気持ちだけで十分やよ?ありがとう(*^_^*)」
心からの「ありがとう」が届いたかどうかは判らないけれど。
竜樹邸を出た私は竜樹さんの温みを纏うようにしてそのまま家に帰った。
どんな状態にあっても。
互いを想う気持ちと相手の温みを忘れずにいて。
ただその暖かさを力に変えて歩きつづけてさえいれば、いつかは出逢えるのだろうか?
大切な人たちが笑顔でいられる場所に。
いつか出逢えると信じて、頑張ろう。
コメント