一緒にいられるという事実
2002年3月23日いつのまにか眠ってしまっていたらしい。
休みの日は早く目が覚めることはあまりないのに、目が覚めて時計を見るとまだ7時過ぎだった。
隣にふと目をやると、竜樹さんが眠っている。
痛みを忘れるために薬を飲んで眠る時とは違う、穏やかな寝顔。
それを暫くじっと眺めていた。
竜樹さんの寝顔を見て、何となくほっとしてる自分がいる。
…以前ならその寝顔を見ると、何故かやるせない気持ちになったのにね。
昔はキツめの鎮痛剤を飲んで、半ば痛みを紛らわせるために眠りについてる状態だったから。
その寝顔を見るたびに、竜樹さんの肩越しに小さな川を見ているような気がしていた。
その小さな川を垣間見るたびに、涙が落ちそうな感覚に陥っていたけれど。
自分の気持ちの移り変わりに意識をやりながら、一時のことを思えばこれでもいい状態に近づいているんだろうなという兆しだけを感じ取りながらまた意識が落ちていくのに任せる。
何回もそれを繰り返して目が覚めてびっくりする。
もうお昼を回っていた(-_-;)
台所から見える小さな空は、快晴の色。
台所から入り込んでくる空気は少しひんやりしてる気がしてなかなかお布団から抜け出すことは出来なかったけれど。
…せっかく朝から竜樹邸にいたんだから、早く起きて竜樹さんと散歩にでも出ればよかった(T^T)
心の中に後悔の色が差し込む前に布団を抜け出そうとすると、横になっていた竜樹さんは目を覚ましてる。
「…あれ?起きてたの?」
「うん」
「外はいい天気みたいだよ?ちょっと肌寒い気がするけれど、出かけるにはいいかもしんない」
「…なんかなぁ、昨日にもまして調子悪いねん(ノ_<。)」
竜樹さんのほっぺたに触ると、ちょっと熱っぽい。
こんな状態で外に無理やり連れ出すのが得策のようには思えない。
ひとまず遅いお昼ご飯を食べてから、様子を見ようということになる。
昨日温野菜のサラダを作るときにちぎりすぎた春キャベツと玉ねぎのスライスにひき肉を加えて炒めておいて、茹でたパスタとあわせ梅こぶ茶と少しの醤油で味付けしたものを作る。
それほど時間は経ってなかっただろうけれど、出来上がった頃には竜樹さんはまた眠っていた。
「できたよぉ」
「先に食べといて…」
仕方がないので一人で食べ、後片付けをして竜樹さんの寝てる部屋に戻る。
竜樹さんの寝顔を眺めてるうちに、また寝てしまった。
次に目が覚めたら、竜樹さんはじゃれっこモード入ってて、ちゃんとしたじゃれっこができない状態の私に触れてくる。
結果的に煽られたような形になった私がなんとなくすっきりしないまま時間が過ぎたけれど。
ささやかな、でも少々理不尽なふれあいが終わった後、また竜樹さんは眠りに還っていった。
このまま竜樹さんと一緒になって寝たくれるのもどうかと思ったので、2階にあがってベタと貝の赤ちゃんを見ていた。
水槽に顔を近づけると、「ご飯くれ!ご飯くれ!」とばかりに水面近くをちょろちょろするベタの赤ちゃんとベタ両親にご飯をあげ、また暫くのたりのたりと側面の苔を食べてる貝を見ていた。
そのうちまた冷えてきたので、1階に降り今度は冷蔵庫の上にいるアカヒレとペンギンテトラにご飯をあげ、竜樹さんの寝てる部屋に戻る。
すると、いつのまにか竜樹さんはご飯を食べ、薬を飲んでいらっしゃった。
そうして穏やかな寝顔を眺めてるうちに、また私も眠ってしまった。
次に起きたら、17時を回っていた(゜o゜)
慌てて飛び起きて、夕飯の支度を始める。
竜樹さんにご飯が食べれるかどうか聞いてみたら、あっさりしたものならと仰るので、
また冷蔵庫の掃除状態のメニューになる。
今日の夕飯は、豚しゃぶと春キャベツの温サラダ(ニンジン抜き)と小芋の煮付けの2品。
恐ろしく簡単に、恐ろしく淡々と料理は出来上がってしまった。
そこへ竜樹お父さんから内線が入り、炊きたてご飯を貰う。
そこへ外出先から戻った竜樹お母さんも加わり、暫く雑談大会。
その間も竜樹さんはずっと横になりつづけている。
雑談大会が終わった頃、やっとご飯が食べれるようにはなったようで、二人で夕飯を食べ始める。
何となく二人とも元気がなくて、随分暗い感じの夕飯ではあったけれど。
竜樹さんは出したものを残さずに食べてくれた。
それだけで十分だった。
どうにもこうにも調子がよくならない竜樹さん。
竜樹さんの様子を見てると、そのまま一人にして家に帰るのが躊躇われて、もう1泊しようかなと思ったけれど。
「お互いにちゃんと休んだ方がいいから」ということで、結局帰ることになる。
いつも無理をして家まで送ろうとしてくれるんだけれど、この状態で車を運転させる方が危険極まりない気がしたので、バスがあるうちに竜樹邸をあとにすることにした。
「外は冷え込んでるみたいだから…」と、竜樹さんは臙脂色のフリースを貸してくれた。
竜樹さんは起きるのも辛かったみたいなのに、家の門の外まで送ってくれた。
そして私が角を曲がるまで、ずっとそこにいてくれた。
一生懸命笑顔を探し出して、竜樹さんに見えるはずもないだろうに笑顔を向けた。
角を曲がってから、急に悲しくなった。
バス停でバスを待ちながら、思った以上に冷え込みがきついことを実感する。
竜樹さんが持たせてくれたフリースがやけに暖かかった。
…結局、私は竜樹邸に何をしに行ったんやろ?
「連休中、いつもと違うことがしたい」
そう言う竜樹さんと、いつもと違うことを一緒に出来るようにと思って行ったはずだったのに、結局ご飯を作ってただ一緒に寝たくれるだけだった。
竜樹さんの体調も悪かったんだし仕方がなかったのかも知れないけれど、結局「当事者」でないものは、何をしてあげることも出来ないんだなということだけをまた痛烈に思い知った気がする。
…「当事者」じゃないから、肝心なところで外野扱いされて締め出し食らうんだよなぁ。
辛気臭い思考は、穿り返さなくてもいい記憶の断片すら拾い集めに行こうとする。
…自分を責めるだけじゃ、何の解決にもならないのにね?
ただ「二人でいられる特別な時間」に対して甘えてるだけでいいんだろうか?
いろんな状況の中で私に出来ることも許されることもうんと少なくなってることも承知してるから、このままでいてていいはずはないと思うけれど。
「一緒にいられて嬉しい」って気持ちだけを抱きしめて、出来なかったことに対して何をすれば出来るのか。
もしくは、私の力では何も出来ないのか。
考えながら、歩きつづけるしかないんだろうね?
しんどい中でも私に対して出来る限り心を割いてくれた竜樹さんに出来る限り気持ちが割けるように、一緒にいられるという事実だけを柱にして歩きたい。
今はその事実が自分自身を責めていく思考を逸らすための要素に過ぎなくても。
ただ、その事実を大切にしていたいと、たまらなくそう思った。
休みの日は早く目が覚めることはあまりないのに、目が覚めて時計を見るとまだ7時過ぎだった。
隣にふと目をやると、竜樹さんが眠っている。
痛みを忘れるために薬を飲んで眠る時とは違う、穏やかな寝顔。
それを暫くじっと眺めていた。
竜樹さんの寝顔を見て、何となくほっとしてる自分がいる。
…以前ならその寝顔を見ると、何故かやるせない気持ちになったのにね。
昔はキツめの鎮痛剤を飲んで、半ば痛みを紛らわせるために眠りについてる状態だったから。
その寝顔を見るたびに、竜樹さんの肩越しに小さな川を見ているような気がしていた。
その小さな川を垣間見るたびに、涙が落ちそうな感覚に陥っていたけれど。
自分の気持ちの移り変わりに意識をやりながら、一時のことを思えばこれでもいい状態に近づいているんだろうなという兆しだけを感じ取りながらまた意識が落ちていくのに任せる。
何回もそれを繰り返して目が覚めてびっくりする。
もうお昼を回っていた(-_-;)
台所から見える小さな空は、快晴の色。
台所から入り込んでくる空気は少しひんやりしてる気がしてなかなかお布団から抜け出すことは出来なかったけれど。
…せっかく朝から竜樹邸にいたんだから、早く起きて竜樹さんと散歩にでも出ればよかった(T^T)
心の中に後悔の色が差し込む前に布団を抜け出そうとすると、横になっていた竜樹さんは目を覚ましてる。
「…あれ?起きてたの?」
「うん」
「外はいい天気みたいだよ?ちょっと肌寒い気がするけれど、出かけるにはいいかもしんない」
「…なんかなぁ、昨日にもまして調子悪いねん(ノ_<。)」
竜樹さんのほっぺたに触ると、ちょっと熱っぽい。
こんな状態で外に無理やり連れ出すのが得策のようには思えない。
ひとまず遅いお昼ご飯を食べてから、様子を見ようということになる。
昨日温野菜のサラダを作るときにちぎりすぎた春キャベツと玉ねぎのスライスにひき肉を加えて炒めておいて、茹でたパスタとあわせ梅こぶ茶と少しの醤油で味付けしたものを作る。
それほど時間は経ってなかっただろうけれど、出来上がった頃には竜樹さんはまた眠っていた。
「できたよぉ」
「先に食べといて…」
仕方がないので一人で食べ、後片付けをして竜樹さんの寝てる部屋に戻る。
竜樹さんの寝顔を眺めてるうちに、また寝てしまった。
次に目が覚めたら、竜樹さんはじゃれっこモード入ってて、ちゃんとしたじゃれっこができない状態の私に触れてくる。
結果的に煽られたような形になった私がなんとなくすっきりしないまま時間が過ぎたけれど。
ささやかな、でも少々理不尽なふれあいが終わった後、また竜樹さんは眠りに還っていった。
このまま竜樹さんと一緒になって寝たくれるのもどうかと思ったので、2階にあがってベタと貝の赤ちゃんを見ていた。
水槽に顔を近づけると、「ご飯くれ!ご飯くれ!」とばかりに水面近くをちょろちょろするベタの赤ちゃんとベタ両親にご飯をあげ、また暫くのたりのたりと側面の苔を食べてる貝を見ていた。
そのうちまた冷えてきたので、1階に降り今度は冷蔵庫の上にいるアカヒレとペンギンテトラにご飯をあげ、竜樹さんの寝てる部屋に戻る。
すると、いつのまにか竜樹さんはご飯を食べ、薬を飲んでいらっしゃった。
そうして穏やかな寝顔を眺めてるうちに、また私も眠ってしまった。
次に起きたら、17時を回っていた(゜o゜)
慌てて飛び起きて、夕飯の支度を始める。
竜樹さんにご飯が食べれるかどうか聞いてみたら、あっさりしたものならと仰るので、
また冷蔵庫の掃除状態のメニューになる。
今日の夕飯は、豚しゃぶと春キャベツの温サラダ(ニンジン抜き)と小芋の煮付けの2品。
恐ろしく簡単に、恐ろしく淡々と料理は出来上がってしまった。
そこへ竜樹お父さんから内線が入り、炊きたてご飯を貰う。
そこへ外出先から戻った竜樹お母さんも加わり、暫く雑談大会。
その間も竜樹さんはずっと横になりつづけている。
雑談大会が終わった頃、やっとご飯が食べれるようにはなったようで、二人で夕飯を食べ始める。
何となく二人とも元気がなくて、随分暗い感じの夕飯ではあったけれど。
竜樹さんは出したものを残さずに食べてくれた。
それだけで十分だった。
どうにもこうにも調子がよくならない竜樹さん。
竜樹さんの様子を見てると、そのまま一人にして家に帰るのが躊躇われて、もう1泊しようかなと思ったけれど。
「お互いにちゃんと休んだ方がいいから」ということで、結局帰ることになる。
いつも無理をして家まで送ろうとしてくれるんだけれど、この状態で車を運転させる方が危険極まりない気がしたので、バスがあるうちに竜樹邸をあとにすることにした。
「外は冷え込んでるみたいだから…」と、竜樹さんは臙脂色のフリースを貸してくれた。
竜樹さんは起きるのも辛かったみたいなのに、家の門の外まで送ってくれた。
そして私が角を曲がるまで、ずっとそこにいてくれた。
一生懸命笑顔を探し出して、竜樹さんに見えるはずもないだろうに笑顔を向けた。
角を曲がってから、急に悲しくなった。
バス停でバスを待ちながら、思った以上に冷え込みがきついことを実感する。
竜樹さんが持たせてくれたフリースがやけに暖かかった。
…結局、私は竜樹邸に何をしに行ったんやろ?
「連休中、いつもと違うことがしたい」
そう言う竜樹さんと、いつもと違うことを一緒に出来るようにと思って行ったはずだったのに、結局ご飯を作ってただ一緒に寝たくれるだけだった。
竜樹さんの体調も悪かったんだし仕方がなかったのかも知れないけれど、結局「当事者」でないものは、何をしてあげることも出来ないんだなということだけをまた痛烈に思い知った気がする。
…「当事者」じゃないから、肝心なところで外野扱いされて締め出し食らうんだよなぁ。
辛気臭い思考は、穿り返さなくてもいい記憶の断片すら拾い集めに行こうとする。
…自分を責めるだけじゃ、何の解決にもならないのにね?
ただ「二人でいられる特別な時間」に対して甘えてるだけでいいんだろうか?
いろんな状況の中で私に出来ることも許されることもうんと少なくなってることも承知してるから、このままでいてていいはずはないと思うけれど。
「一緒にいられて嬉しい」って気持ちだけを抱きしめて、出来なかったことに対して何をすれば出来るのか。
もしくは、私の力では何も出来ないのか。
考えながら、歩きつづけるしかないんだろうね?
しんどい中でも私に対して出来る限り心を割いてくれた竜樹さんに出来る限り気持ちが割けるように、一緒にいられるという事実だけを柱にして歩きたい。
今はその事実が自分自身を責めていく思考を逸らすための要素に過ぎなくても。
ただ、その事実を大切にしていたいと、たまらなくそう思った。
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