時計を見ると、19時半。
自力で帰宅することを視野に入れて、粕汁を作り出す。

ニンジンは輪切り、小芋は3分ほど茹でて皮を剥いて輪切り、白菜はザク切り、大根はいちょう切りにしておく。
水を5カップほど鍋に入れ、昆布とカツオで合わせだしをとり、その中に下準備した野菜と、一口大に切った豚肉を入れる。
野菜が程よい堅さになったら、酒粕(100gと本にはあった)と味噌(60グラム)を溶いて入れ、砂糖を少々加えて味をみる。
金岡母がいつも作ってるものよりも味が薄い気がしたので、酒粕を足し味を調えた。
その頃になると少しだけ竜樹さんは元気を取り戻したのか、机のセッティングをしたりこちらに甘栗や(何故か)煮干を持ってきて食べさせてくれる。

「煮干食べて、顎を鍛えるとええねんで(*^_^*)」

何がいいのかまでは突っ込んでは聞かなかったけれど(^-^;
何気なく私の身体にいいだろうものを積極的に食べさせようとしてくれる気持ちが嬉しい。
そうしてるうちに、鍋の中の粕汁もすっかり出来上がり、どんぶり鉢についで持っていく。
アボガドとサーモンのわさび醤油・マヨネーズ和えも持っていく。

「いただきます♪(*^人^*)」

「アボガドのはあつあつご飯に乗せて食べるといいんですって」
「そぉか、試してみるわ(*^_^*)」

その食べっぷりを見てると、さっきまでくたってた人とは思えない。

「美味い♪o(^-^o)o(^-^)o(o^-^)o」

どうやら、アボガドとサーモンのわさび醤油・マヨネーズ和えは竜樹さんの口にあったよう。
ネギトロの感覚で食べられるのが気に入ったらしい。

粕汁の方はどうかな?と思っていたけれど…
こちらの方もお気に召して頂けたよう。

「最初味見した時、酒粕が多い気がしてんけど、この方が身体が温まってええわ(*^_^*)」

どんぶり鉢についだのは、お椀がなかったのとおかずが少なかったからだけど(笑)
気が付くと、キレイに粕汁もアボガドご飯もなくなっていた。
私はちょっと疲れてしまっていて、一足先に横になっていた。
私が寝ているお布団にもぐりこんでくる竜樹さん。

「…ちょっと触らせてなぁ」

そう言って竜樹さんが触れてくるのに任せている。
ところがどういう経緯かまたしても、じゃれっこモードに入ってしまう。
お昼の違和感の話をしていたのだけれど、違和感が生じたら止めてくれたらいいし(ごにょごにょ)……ってことでそのまま流れていく。
じゃれあうようなキスはやがて熱を帯びてくる。
竜樹さんのキスは唇だけでは留まらず、額にも頬にも瞼にも降り注ぐ。
ただのじゃれっこで終わるはずが、火が付いてしまって…(/-\*)
結局のっぴきならないところまで来てしまった。


終始、痛みも違和感もなかったけれど、今度こそ起きれない私。
のっぴきならなくなったら、本当に調子が悪くなるのは竜樹さんなのに。
「横になると送って行けなくなるから…」とたったか着替えて後片付けを始めてる。
「私、やるから…」と起き上がろうとしたら、「暫く寝とり〜ヾ(^-^)」と竜樹さん。
申し訳ないなと思いながら、竜樹さんのお言葉に甘えてしまった。

互いの体調や気持ちの部分が合わない時は、逢うのをやめた方がいいような気はいつもするけれど。
逢って触れ合ってしまえば、そんな気持ちが飛ぶから不思議なもので。
結局こうして互いが互いの温度に絆されて笑顔を分け合っていくのかなぁという気がする。

それでも、私の方が絶対的に配慮が足りないなって思うから。

「早く心も身体も元気になって、竜樹さんの役に立てるように頑張るからね」

黙々と片付け物をする竜樹さんの背中にそっと呟いた。
そして、少しだけ眠った。


「…そろそろ、起きぃやぁ」

竜樹さんにそっと起こされて、着替えたり帰る用意をしたりする。
玄関に掛けられたコートを着ると、片方が少し重い。
「…あれ?」と思ってると、「ポケットに何が入ってるんかなぁ?」と竜樹さん。
見てみると、THE DOGの小さなぬいぐるみがひとつ。

「…あれ、今日は柴?」
「そそ。ご飯が美味しかったから♪」

竜樹さんが特別おいしいと感じたご飯を作れた日はこうしてぬいぐるみをくれる。
THE DOGのぬいぐるみはこれで4個目。
「作っても、どうせ無駄になるんだし…」なんて思って、暫く作らずにいた自分が恥ずかしい(-_-;)
竜樹さんは努力をしたらした分だけ、ちゃんと認めてくれるんだから。
臆せず、ただ頑張ればいいんだよね?と思う。


柴を鞄にしまい込み、26日に忘れて帰った指輪を受け取る。
その時、竜樹さんに指輪の号数を聞かれる。

「ん?7号だけど?」
「そしたら、こっちは暫く預かるなぁ」

そう言って、誕生日プレゼントに貰ったルビーの指輪を片付けてしまった。

「別に直さなくてもいいよぉ」
「いや、ちゃんと直してつけてても不恰好でないようにした方がいいから」

「指輪が直るまでの間…」そう言って、赤い箱から緑色のキャッツアイのついた指輪を渡される。

「これはあげられへんねんけどなぁ…」

そういって、キャッツアイの指輪が合う指を探してくれる。

…竜樹さん。これ、誰にあげるつもりだったんですか?
すんごい大きいんですけど?(^-^;

中指に入れてもくるくると回るほどの大きさで。
けれど、デザイン的に親指では不似合いだからと、中指にはめて帰ることに。
落とさないようにずっとグーのままの私に、「そこまでせんでもええけどさ…ヾ(^-^)」と竜樹さん。

…「あげられへんけど」と仰るからには、この石の色が気に入ってるんでしょ?竜樹さん?

昔なら必要以上に勘繰っただろうけれど、彼がただ指輪についてる石に惚れて買ってしまうことがあることは判っているから。
私のために買ってくれた指輪が直るまでの間、竜樹さんのお気に入りを大切に持ってよう。
そう思いながら、竜樹邸を後にした。


帰る車の中でも、交わす会話はどこか静かで穏やかだ。
本当は互いに疲れが残っていて、自分のことだけで精一杯なんだろうけれど。
それでも、相手を想うことを優先しようとする気持ちが暖かさを生むようで、とても居心地よく感じられる。

私の家の前に着いたら、いつもなら早々に帰る竜樹さんが、何故か今日は暫くお話をしつづけてる。
私も別れがたくて、ずっと車を降りることができずにいる。
ようやっと、降りて別れたけれど。


いつか、竜樹さんと別れることなくいられたらいいなぁって思う。


それが叶うまでに、これからもまたいろんな出来事や感情に出逢うんだろう。
嬉しいことも悲しいことも、楽しいことも辛いことも。
願いも祈りも、迷いも痛みもそこには付き纏うんだろうけれど。


その全ての先にある不確かだけど確かに欲しいと希うものを、竜樹さんと二人で手に入れられたら嬉しいと思う。


それはきっと生きている中で一番の宝物のような気がするから。



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