「もし」や「たら」で物を話すのは好きじゃない。
在り得ないことを持ち出して話を進めることは、いまここにある何物も受け入れていないような気がするから。

だけど。

そのIfにすべてを預けられたなら、どれほど心の痛みは和らぐのだろうか?
そう考える瞬間も確かにあるんだ。


眠る前にふとしたことから、そんな風に感じてしまったせいだろうか?
身体はあまり眠りの恩恵を受けることの無いまま、朝を迎えてしまった。
心の中に小さな棘が刺さったまま家を出る。

朝方に知った友達の話に何か自分の言葉を返したくて、心のうちを探っていくけれど。
きちんとした形にならずに、焦れる自分がいる。
それでも、心に走る僅かな言葉を携帯メールに託して、いつもよりも少しばかり暖かな空に放った。
それが大切な人の心を癒すものになるとは思えなかったけれど、私の気持ちのかけらが届けばそれでよかった。


昨日1日休んでしまったから、会社についたらどれくらい仕事が溜まってるだろうかとびくびくしながら、事務所に入り机の上の書類を片付けるけれど。
「昨日1日、本当にこれだけしか仕事なかったの?」って首を捻るくらい、仕事がなかった。
幸か不幸か、今日の分の仕事の殆どが午前中には片付いてしまい、昼からは眠気と格闘することに専念する羽目になる(爆)

眠気と格闘しながらも、「もしも」で始まり「たら」で終わるセンテンスが頭の中を掠めていく。


「もしも」竜樹さんの病気がもっと軽いものだっ「たら」
「もしも」竜樹さんが病に倒れなかっ「たら」

「もしも」執刀医の先生を紹介したのが彼女じゃなかっ「たら」…


…すべての「もしも」と「たら」は、私と竜樹さんが歩く道程の上にはないものなんだよ?
「今」あるものを放り出して歩けるほどの余裕も遊びもないんだから、
「もしも」と「たら」に何かを預けるつもりなら、やめちまえよ?
在りもしないことに寄っかかりながら歩いていけるほど、2人のこれからは生易しい道程じゃないんだから。


いろんな出来事の中で、正直推し進める「強さ」を保つことに疲れていた時期があって、
あるはずもないことに明日を預けてみたくなったり、放り出してみたくなったりしたこともあったけれど。

一度崩れたかと思った竜樹さんと私の繋がりは、まだそこにあって。
竜樹さんは懸命にそれを繋ごうと努力してくれてる。
竜樹さんの言動に、彼の持つ空気の中に諦めない何かが見えてるうちは、私も投げ出したりはしないんだと。
そこにないものは、今あるものには勝てはしないのだと思えるところまで何とか這い上がれたのだということは自分自身で確認できたことが嬉しい。


眠気と格闘がてら自分への問いかけをしてるうちに、仕事がどかっとやってくる。
ちと油断しすぎたか、定時を20分ほど回ってから事務所を後にする。
ふとお弁当鞄の中の携帯を見ると、メールがひとつと、着信がひとつ。
どちらも竜樹さんからだった。

慌てて電話をかけなおすと、「今日は病院に行って調子がいいから晩ご飯を食べにおいで♪」とのこと。
慌てて会社を飛び出し、駅に向かう。

…どしたんだろう?竜樹さん?

このところ、ちょっと竜樹さんは妙な感じ(笑)
今まで「平日は会社があってばたばたしてるだろうから、週末ゆっくり逢ったらええやん」って言ってたのに、先週くらいから時々こんな風にお呼び出しがかかる。
しかも、今週末なんかは「泊まりにおいで」ってお誘い頂くし…
一連の騒動から、竜樹さんの言動が今までと少しずつ変わってきてる気がして、ちょっと面食らってる。

…それでも、嬉しいんだけどね(*^_^*)

乗り換えの駅から竜樹さんに到着時間をメールで飛ばし、慌てて電車に飛び乗る。
竜樹邸の最寄り駅に着くと、竜樹さんが迎えに来てくれてた。
車に乗り、いろいろと話しながら竜樹邸に向かう。


竜樹邸に入ると、カツオだしの匂いがした。

「今日はだしから自分でとってみてん♪」

そう言って、手際よく肉うどんを作ってくれた。
至れり尽せりのサービスにまたも面食らいながら、うどんを食べる。

…おいしい(*^_^*)

「これだけできるんやったら、もう私、料理しなくてもいいですよね?」
「それはそれ、これはこれやん」

そんなやりとりをしながら、ご飯を食べ終えテレビのある部屋に移る。
ニュースを見ながら他愛もない話をしてるうちに、竜樹さんが甘えたモードに入っていく。

…昨日雨が降って冷え込んだせいで、辛かったって言ってたもんなぁ

そんなことを思い返しながら、竜樹さんを抱き締める。
竜樹さんから暖かなキスをたくさん貰い、抱き締め返される。
そうして、想いを受け渡すようにそれは始まる。

「…ずっと傍にいるんやで?」
「ずっと傍にいてね?」

時折、どちらからともなくそんな言葉をかけては、想いを返す。
やりとりの中でそんな言葉の受け渡しをすること自体がなんだか久しぶりな気はするけれど。
言葉尻に思考を会わせようとする度に、竜樹さんに捕まって引きずり戻される。
それを延々繰り返してるうちに、私は眠ってしまったらしい。


「…霄?コーヒー、入ったで?」

竜樹さんのそんな声で目が覚めた。

「あんまり寝すぎたらまた夜寝られなくなるから、もう起きや?」

優しい声で起こしてくれた竜樹さんに何気ない、でもたっくさんの笑顔を返す。
また他愛もない話をし、暖かな時間は流れていく。

それでもあと2日会社があるから、家に帰ることになったんだけど(T_T)

竜樹さんの車の中で、また2人は他愛もない話を繰り返す。

「…あのさ、今週末泊まりに来た時にバレンタインを前倒しにするって言ってはったでしょ?
うちでアリバイ工作せんなんから、バレンタイン用のケーキ焼いて持ってこれませんよ?」

恐る恐る言うと、

「ケーキは次の週でもええねん、大事なんは一緒にいる時間やろ?
それを一番に考えようや?」


とてつもなく嬉しい言葉が返ってきた。


「もし」や「たら」のない現実は、私を苦しめる側面もあるけれど。
「もし」や「たら」のないところに竜樹さんの心はあるのだから。


「…If」に預けられない明日を大切に生きよう。
「…If」のない想いを2人で繋ごう。


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