誕生日特別出張サービス
2002年1月16日今日は竜樹さんのお誕生日。
土曜日に逢った時、「会社帰りだとゆっくりできないから、ゆっくりできる時にしよう」って言われてしまったから、会えるとは思っていなかった。
外は雨が降っている。
元々、雨の日は体調自体が優れないけれど、連日3時間ちょっとの睡眠で身体を動かしてるせいか足許にきたみたいで、危うく外の玄関の階段から転げ落ちるところだった。
別にそんなしょうもないドジを踏みそうになったからだけじゃないけれど。
やっぱり雨は嫌い。
雨降りと寒い日には決まって体調を崩す竜樹さんを思うと、ため息が出る。
竜樹さんを思うと、連日頭を痛めてる件が頭を擡げて、またため息が出る。
雨とため息の無限ループ。
何とかそれを払拭したくて、早朝にメールをくれた友達にお返事を飛ばす。
何時間持つか判らない、小さな決意を文字に託して電車を降りる。
会社に着いて、仕事を始める。
午前中、噛み付かんばかりに鳴り響く電話の対応に追われて、昼休みはぐったりしていた。
昨日・今日とボスが不在で静か過ぎてつまらないけれど、茶々を入れられることもなくゆっくり昼寝できるのが救いだった(笑)
昼寝を終え、少しばかり時間があったので竜樹さんにメールを飛ばす。
「雨が降って少しばかり冷える気がするけど、体調悪くなりすぎてない?
お誕生日なんだから、もう少し暖かくなってくれるといいのにね。
お見舞いが必要なら、いつでもお声かけ下さい。
誕生日特別出張サービス実施中です♪」
お返事が来るとは思えないけれど。
いろいろあっても気持ちだけは傍にあれたらいいとそう思ってメールを飛ばした。
そうしてまた昼寝に戻り、午後の始業時間を迎える。
何気なく、お弁当鞄が揺れた気がして覗き込む。
すると、携帯にメールが一つ。
「昨日の注射で、マシです。だけど、落胆ぎみです。出張サービス、たのもかなぁー?又、連絡下さい。」
一連のことに自分の中で決着がついていない状態で、敢えて竜樹さんに逢いに行くのはどうかと思わなかった訳じゃない。
彼の命の根幹を守った彼女のことを甘く見すぎたこと、竜樹さんが私の気持ちを酌もうとしないこと、私の中でいろんなものが壊れてしまったこと。
それはもうどうにもならないこと。
この先の私の位置付けを決めるのも、彼女の位置付けを決めるのも、竜樹さんでしかなくて。
竜樹さんの中での彼女の立場が私のそれよりも優位であることは、もう崩れることはないのかもしれない。
それでも。
私が竜樹さんといることで幸せであり続けるなら。
私は私の心の中の靄に決着をつけられるかもしれない。
彼女の持ってるポジションとは違う、私だけのポジションを見つけられるなら、この件について決してチャラにはならなくても、「私の幸せ」は確立できるのかもしれない。
それが叶うのかどうか、彼に逢って確かめてみたかった。
そう思うと、俄然、仕事のペースはあがった。
短い時間でもいい、彼と一緒にいる時間が自分にとってどんなものであるのか?
そこからどんな感情が生まれるのか、知りたかった。
定時に会社を飛び出し、竜樹さんにメールを飛ばす。
いつものように電車に乗り込んだ時、竜樹さんから電話が入った。
「迎えに行くから、次の駅で降りて」という指示に従って途中下車して、竜樹さんを待つ。
それほど待たずして、竜樹さんと出逢えた。
「こっちの駅で待ち合わせする方が、いつもの場所で待ち合わせするよりも早く来れるねん♪」
注射を打ったというだけあって、元気そうでよかった。
途中、コンビニに寄って少し足りないものを調達して、竜樹邸に入る。
本当はスーパーにでも寄って足りない食材を足したかったけれど。
「今日はゆっくりしてられへんねんし、霄がこないだお土産に持って来てくれたハンバーグ、焼こうや?」
竜樹さんのその一言で、夕飯は即決。
早速、夕食の準備に取り掛かる。
ハンバーグを焼き、とろみのついた醤油ベースのソースをかけ、ネギのみじん切りを添え、
白菜と玉ねぎとエビを中華スープと薄口醤油で味付けしたものを付け合せにした。
「お誕生日、おめでとうございます♪(*^人^*)」
「いただきます♪」の掛け声の変わりに、お祝いの言葉で食事を始める。
竜樹さんはハンバーグがあまり好きではないけれど、どうやら私が作ったものはお気に召すらしく、すごい勢いで食べていらっしゃる。
「霄のハンバーグうまいから、冷凍して置いといてもらうと助かるねん♪」
そんな言葉に気をよくしながらふと竜樹さんの方を見ると、白菜の付け合せもなくなっていた。
お腹が一杯になると、相変わらずごろりと横になる。
ハモネプを見ながら、お布団の中でだっこしあう。
「誕生日特別出張サービスっていう言葉、ツボにはまってん。
慌しいのイヤやから逢わなくてもいいかって思ってたけど、逢えてよかったわ」
「ちゃんとお祝いしてくれる彼女がいてくれてよかったでしょ?」
「うん♪そやなぁ…(*^_^*)」
交わすキスはどこか会話のような感じで、仕草一つが想いを語るようでドキドキしながら。
何を話すわけでもないのに、何かを受け渡してるような気持ちになるのを不思議に思いながら。
会話からまた余計なことを言いそうになった私を制するように、ゆっくりとやりとりにもつれ込まそうとした竜樹さん。
「SAY YES」が聞こえた途端、がばっと起き上がってしまった。
それですっかりリビングモードに戻ってしまう。
あとから竜樹さんは「タイミングを逸した」と悔しそうだったけれど。
家に帰る時間が迫り、二人で竜樹邸を後にする。
一緒にいる時間があまりに暖かかったから、離れるとまたつまらない物思いに捕まりそうで離れたくはなかったけれど、帰らない訳にはいかないから…
運転中にはあまり話をしない竜樹さんがぼそっと言った。
「俺はな、売り言葉に買い言葉的に言ってしまった言葉は後に残さない性質やねん」
「…?」
「こないだ言ったことは、売り言葉に買い言葉やってん。だから、本気で言ったんじゃないから」
そこから先、お互いに言葉を発することが出来なかったけれど。
だけど二人を包む空気は尖ったものではなかった。
「出張サービス、ありがとうな♪楽しかった」
私を家の前で降ろし、そう言って別れた竜樹さん。
思うことはまだいろいろあったとしても、お互いの想いをつめる作業を怠らないようにさえすれば。
やがては笑える話として流せるようになるのだろうか
今まで以上にもっともっと二人は信じあって歩けるのだろうか?
それはまだ判らないけれど。
冷静に自分の心を見つめなおして、竜樹さんの隣を歩こう。
土曜日に逢った時、「会社帰りだとゆっくりできないから、ゆっくりできる時にしよう」って言われてしまったから、会えるとは思っていなかった。
外は雨が降っている。
元々、雨の日は体調自体が優れないけれど、連日3時間ちょっとの睡眠で身体を動かしてるせいか足許にきたみたいで、危うく外の玄関の階段から転げ落ちるところだった。
別にそんなしょうもないドジを踏みそうになったからだけじゃないけれど。
やっぱり雨は嫌い。
雨降りと寒い日には決まって体調を崩す竜樹さんを思うと、ため息が出る。
竜樹さんを思うと、連日頭を痛めてる件が頭を擡げて、またため息が出る。
雨とため息の無限ループ。
何とかそれを払拭したくて、早朝にメールをくれた友達にお返事を飛ばす。
何時間持つか判らない、小さな決意を文字に託して電車を降りる。
会社に着いて、仕事を始める。
午前中、噛み付かんばかりに鳴り響く電話の対応に追われて、昼休みはぐったりしていた。
昨日・今日とボスが不在で静か過ぎてつまらないけれど、茶々を入れられることもなくゆっくり昼寝できるのが救いだった(笑)
昼寝を終え、少しばかり時間があったので竜樹さんにメールを飛ばす。
「雨が降って少しばかり冷える気がするけど、体調悪くなりすぎてない?
お誕生日なんだから、もう少し暖かくなってくれるといいのにね。
お見舞いが必要なら、いつでもお声かけ下さい。
誕生日特別出張サービス実施中です♪」
お返事が来るとは思えないけれど。
いろいろあっても気持ちだけは傍にあれたらいいとそう思ってメールを飛ばした。
そうしてまた昼寝に戻り、午後の始業時間を迎える。
何気なく、お弁当鞄が揺れた気がして覗き込む。
すると、携帯にメールが一つ。
「昨日の注射で、マシです。だけど、落胆ぎみです。出張サービス、たのもかなぁー?又、連絡下さい。」
一連のことに自分の中で決着がついていない状態で、敢えて竜樹さんに逢いに行くのはどうかと思わなかった訳じゃない。
彼の命の根幹を守った彼女のことを甘く見すぎたこと、竜樹さんが私の気持ちを酌もうとしないこと、私の中でいろんなものが壊れてしまったこと。
それはもうどうにもならないこと。
この先の私の位置付けを決めるのも、彼女の位置付けを決めるのも、竜樹さんでしかなくて。
竜樹さんの中での彼女の立場が私のそれよりも優位であることは、もう崩れることはないのかもしれない。
それでも。
私が竜樹さんといることで幸せであり続けるなら。
私は私の心の中の靄に決着をつけられるかもしれない。
彼女の持ってるポジションとは違う、私だけのポジションを見つけられるなら、この件について決してチャラにはならなくても、「私の幸せ」は確立できるのかもしれない。
それが叶うのかどうか、彼に逢って確かめてみたかった。
そう思うと、俄然、仕事のペースはあがった。
短い時間でもいい、彼と一緒にいる時間が自分にとってどんなものであるのか?
そこからどんな感情が生まれるのか、知りたかった。
定時に会社を飛び出し、竜樹さんにメールを飛ばす。
いつものように電車に乗り込んだ時、竜樹さんから電話が入った。
「迎えに行くから、次の駅で降りて」という指示に従って途中下車して、竜樹さんを待つ。
それほど待たずして、竜樹さんと出逢えた。
「こっちの駅で待ち合わせする方が、いつもの場所で待ち合わせするよりも早く来れるねん♪」
注射を打ったというだけあって、元気そうでよかった。
途中、コンビニに寄って少し足りないものを調達して、竜樹邸に入る。
本当はスーパーにでも寄って足りない食材を足したかったけれど。
「今日はゆっくりしてられへんねんし、霄がこないだお土産に持って来てくれたハンバーグ、焼こうや?」
竜樹さんのその一言で、夕飯は即決。
早速、夕食の準備に取り掛かる。
ハンバーグを焼き、とろみのついた醤油ベースのソースをかけ、ネギのみじん切りを添え、
白菜と玉ねぎとエビを中華スープと薄口醤油で味付けしたものを付け合せにした。
「お誕生日、おめでとうございます♪(*^人^*)」
「いただきます♪」の掛け声の変わりに、お祝いの言葉で食事を始める。
竜樹さんはハンバーグがあまり好きではないけれど、どうやら私が作ったものはお気に召すらしく、すごい勢いで食べていらっしゃる。
「霄のハンバーグうまいから、冷凍して置いといてもらうと助かるねん♪」
そんな言葉に気をよくしながらふと竜樹さんの方を見ると、白菜の付け合せもなくなっていた。
お腹が一杯になると、相変わらずごろりと横になる。
ハモネプを見ながら、お布団の中でだっこしあう。
「誕生日特別出張サービスっていう言葉、ツボにはまってん。
慌しいのイヤやから逢わなくてもいいかって思ってたけど、逢えてよかったわ」
「ちゃんとお祝いしてくれる彼女がいてくれてよかったでしょ?」
「うん♪そやなぁ…(*^_^*)」
交わすキスはどこか会話のような感じで、仕草一つが想いを語るようでドキドキしながら。
何を話すわけでもないのに、何かを受け渡してるような気持ちになるのを不思議に思いながら。
会話からまた余計なことを言いそうになった私を制するように、ゆっくりとやりとりにもつれ込まそうとした竜樹さん。
「SAY YES」が聞こえた途端、がばっと起き上がってしまった。
それですっかりリビングモードに戻ってしまう。
あとから竜樹さんは「タイミングを逸した」と悔しそうだったけれど。
家に帰る時間が迫り、二人で竜樹邸を後にする。
一緒にいる時間があまりに暖かかったから、離れるとまたつまらない物思いに捕まりそうで離れたくはなかったけれど、帰らない訳にはいかないから…
運転中にはあまり話をしない竜樹さんがぼそっと言った。
「俺はな、売り言葉に買い言葉的に言ってしまった言葉は後に残さない性質やねん」
「…?」
「こないだ言ったことは、売り言葉に買い言葉やってん。だから、本気で言ったんじゃないから」
そこから先、お互いに言葉を発することが出来なかったけれど。
だけど二人を包む空気は尖ったものではなかった。
「出張サービス、ありがとうな♪楽しかった」
私を家の前で降ろし、そう言って別れた竜樹さん。
思うことはまだいろいろあったとしても、お互いの想いをつめる作業を怠らないようにさえすれば。
やがては笑える話として流せるようになるのだろうか
今まで以上にもっともっと二人は信じあって歩けるのだろうか?
それはまだ判らないけれど。
冷静に自分の心を見つめなおして、竜樹さんの隣を歩こう。
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