窓を開けると、外は小雨が降っていてとても寒い。
いろいろと用意をしたり、ダウンしていた金岡母に出来ることをして家を飛び出す。

今日は相棒と宝塚観劇。
新春公演なんて行くのは何年ぶりだろう?
竜樹さんと会えなかった年末年始。そしてすっきりしないまま別れた昨日。
そんな状態の中、比較的早い時期に相棒に逢えることが嬉しかった。

…なのに、電車に乗り遅れてしまった。

相棒に電話を入れ、先にいつも一緒にご飯を食べる店に行っててもらうことにする。
予定より10ほど遅れて相棒の待つ店に到着。
ごったがえす店の前でメニューを片手に、二人で席が空くのを待つ。

その間、いろんな話をした。
相棒も遠慮会釈なく話すので、私もつられて話してしまう。
「話してもどうしようもないこと」であることはお互いに判ってはいるんだろうけれど。
それでも相棒のペースに私も乗っかる形で救われてる。
それでも、年末から年始にかけて竜樹さんに対して思っていたことだけは、何となく話せずにいたけれど。


ふとしたことから、去年の終わり頃からずっと引っかかっていたことをぼろっと溢してしまった。
それこそ言っても仕方のないことだったけれど。
自分にない感覚について相棒が認知できるものなら、もしかしたら受け入れられるのかもしれない。
何となくそんな気分に駆られてしまった。

私が口火を切った時、相棒は少しばかり双眸を見開いていた。
「…そんなことで、ぐちぐち思ってる私がおかしかったかな?」と感じてた私に、彼女は一言こう言った。

「そんなヤツ、相手にしなくていいんだよ?」

相棒は私が鬱々と考えてきたことをばっさりと切って捨てた。

「幸せなんてさ、自分の物差しがすべてやん?
それを誰かと比べて、『誰々さんと比べたら自分は幸せなんだ』って思い込まなそう感じられへんってことは、そいつ幸せじゃないんだよ。
本当に幸せなヤツって、誰かと比べも僻みもしなけりゃ優越感も感じない。
むしろ『自分の幸せ、あげちゃあう♪』ってはた迷惑なくらい、幸せ気分ばら撒くやん?
そんなもんでしょ?」

冷静に考えればそれはすぐに見えてくるものであったとしても。
相棒は私の頭に擡げている雨雲を一瞬で掃ってしまう。
それはこの件に関してだけじゃなくて、いつでもそうだった。
竜樹さんと一緒にい始めて家族との軋轢が生まれた時も、前の会社でいろいろあった時も、
そしてそのあともずっと。
何かと曇りがちな私の心に小さな晴れ間を齎してくれる。
人の好意に疎くて、何かと人のことを信じるのに躊躇する私に、

「安心し!少なくとも私は霄ちゃんのことが大好きやからね!」

大切な言葉をさも当たり前のようにぽぉんと投げてくれる。
だから、「言っても仕方のないこと」でも話せたし、彼女の「言っても仕方のないこと」も預かりたいと思ったんだ。

…いつも、サンキュね♪

心の中で小さく呟きながら、相棒の「言っても仕方のないこと」を預かる。

店を出て、相変わらずの調子で言いたい放題言いながら、劇場に向かう。


今日観るのは、月組公演の「ガイズ&ドールズ」。
(一部の場所では16年程前と書いてしまったけれど)18年前に大地真央がトップだった頃に上演されたブロードウェイミュージカルの再演。
幕が上がる前にトップの挨拶が流れるのだけれど、正月の間はいつもと違ってお正月バージョンの挨拶。

「…何日までの公演が『正月』の挨拶だったっけ?」
「さぁ、7日くらいまでと違うのん?」

相変わらず、すっとぼけたコメントを発しながら、舞台に入っていく。
二人とも、18年前の初演は見そびれていたので、楽しみにしていたけれど。
前半が終わって、二人同時に口にしたのは…

「りかちゃん(月組トップ・紫吹 淳)はカッコよいけど、18年前の『ガイズ〜』が観たかったね」

傍から見ると、なんとも見当違いなコメントをほぼ同時に発していた。
この公演のプログラムを買いに行って、店に飾ってあるポスターを観てきゃーきゃー喚き倒し、席に戻ってプログラムを眺めながら、あさって向いたような昔話が繰り広げられる。
そして、二人が同時に引っかかったささやかな疑問を抱えながら、後半の幕が上がる。
劇を見ながら、時々その筋書きに自分の立場や想いを照らしながら。
それでも、相棒と幕間の間に抱えたささやかな疑問の答に考えを巡らせながら、華やかな舞台を眺めていた。

公演がすべて終わったあと、相棒と交わしたコメントは幕間の間に抱えたささやかな疑問の答だった(爆)

…りかちゃん、ごめんなさい。今月もう一度来ますから、その時はちゃんと「りかちゃんの公演」を楽しみますのでm(__)m

劇場の外に貼ってある、りかちゃんのポスターに意味もなく謝りながら、外に出た。

観終わった後、とりたてて何もすることがなかったから、そのまま解散かと思われたけれど。
ランチを食べた店である飲み物が二人とも気になっていて、それを飲もうということでお店に入る。


二人とも気になるアイテムが割と近いところがあって、食事をしたりすると殆ど食べるものが同じものだったりする。
食べたいと思うものも似てて、メニュー片手に互いの思うところ語っては笑ってしまう。
結局、二人で一つのデザートのプレートを取り、気になる飲み物と合わせてオーダー。
昔の宝塚の話から取り留めない愚痴話まで、飲み物が冷え切るまで続いた。
そして、その取り留めない話は駅のコンコースでも繰り広げられたけれど。
ひとまず、冷え込んできたしということで、撤収。
数週間後、また宝塚観劇と称して、とりとめなく楽しい時間が繰り広げられることを楽しみにして。
雨雲が切れて晴れ間が見え始めた心を抱えて、家路についた。


家に帰ると、年始から塞いでいたことを心配してくれる友達からメールが届いていた。
心配かけっぱなしでドロンを決め込んでしまったことを申し訳なく思いながら、それでも暖かな言葉は心の中に垂れ込める雨雲を更に掃っていってくれることを嬉しく、ありがたいもののように思う自分がいる。

話しても仕方のないことと知りながら。
それでも心配をかけてしまってることを申し訳なく思うし、もう大丈夫だってことをきちんとした形で知らせたくて、キーボードを叩き始める。


いつでも暖かな想いは私を包んでくれるのだと。
その暖かな想いが私の中に垂れ込める雨雲を少しずつ掃っていってくれるのだと。
私を取り囲む状況はは相変わらず鈍色の様相を見せているけれど。
それでも、雨雲の向こうにあるものはきっと暖かな想いに包まれた笑顔なのだと。

竜樹さんに対するどこかすっきりしない想いはまだ解消されていないけれど。
相棒や大好きなお友達に雨雲を掃ってもらったのだから。
今度は自分自身の手で最後の大きな雨雲を掃おう。
雨雲を掃い終えるまでは、きっとすっきりはしないだろうけれど。


雨雲の向こうにあるものを、今度は自分自身で手に入れたい。


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