ありがとう

2001年8月28日
朝、家を出る前に何気ないことで心をぶつけてしまった。
竜樹さんともめたわけじゃない。
両親とケンカしたわけでもない。

理由は本当に大人気ないこと。


大切な友達とまたお別れすることになってしまったこと。


ずっとの別れじゃないかもしれない。
またいつか逢えるかも知れない。
こんな私を拾いに来てくれるかも知れない。
こんなことは別にこれがはじめてじゃない。
「今更、何をバカなことを」と思った。

けれど。

心をぶつけた痛みが消えない。


会社のある日には殆ど使わない、竜樹さんの大好きな香りをまとってみた。
今使ってるシャンプーと相性がいいのはBABY DOLLなんだけど。
「霄ぁ、いい匂いやなぁ」って言っては抱き締めてくれる、その香りの力を借りることにした。


電車に乗って、竜樹さんの笑顔を思い返しながらも、痛みが消えることがなくて。
何となく友達にメールをひとつ。
最近何かと心の近くに暖かな言葉をくれる友達に、思ってることを少し溢してみた。
今までなら、自分で飲み込んで済ませてきたのに、この弱さは何?と少し自己嫌悪を覚えたけれど。
とりあえず、午前中頑張ろうと思った。


会社では、相変わらずボス節が炸裂。
ここんところ何かにつけてへこみがちの私にはありがたいことで。
意味もなくけらけらと笑った気がする。
けれど、階段の踊場から見える小さな空を見てるうちに、何となくこの場に留まってたくなくなってきて。
小さなため息と意味のない笑いを繰り返す。


昼休みになって、携帯と鞄を持って脱兎のごとく事務所をあとにした。
自転車に乗って、ちょっと遠出する。
産業道路沿いに走ると、車の排気と照り返しで暑かったけれど、吹いてくる風が気持ちよくて自転車を飛ばす。
コンビニに寄って夕方に食べるおやつを買って、店の外で何気に携帯を見ると。
朝メールを送った友達から返事がきてた。


…その返事が暖かくて、ちょっと泣いてしまった。
泣いてしまう以上に嬉しい気持ちが先にたって、景気よく自転車をかっとばした。


人は出逢った時からもう既に別れの道を歩いているのだってことはよく知ってる。
見た目も言動も「強気」がウリの私は、本当は別れや拒絶に弱い。
でも、そんな弱さを見せたくなくて、そんな場面ではいつも視線は外し気味。
ちょっと笑ってみたりもする。
そんな風に本音を見せなければ、やがてこんな痛みとは適当に折り合いつけて生きてけるようになる。
そうなれないなら、そうなれるまで、ごまかしごまかし生きてやるさ。

そう思ってた。

けれど。


「寂しさを感じることに慣れることは、できないんでしょうね」


そう友達に声をかけてもらって、やっと思えたんだ。


…慣れなくても、いいんだ。
          無理して笑わなくてもいいんだ。


「ついてたるから、やりたいようにやってみろ!」って人の背中を叩くことには慣れてるけれど。
迷惑にならない程度に甘えることを知らない私は、つい甘えすぎるか頼らなさ過ぎるかのどちらかしかとりようがなくて。
甘えたの部分を出しすぎてしまったために、去っていった友達を知ってるから。
なるべく、自分の心が痛いと感じてることは口にしないようにしてたつもりだけど。

判ってくれる人がいるってこと。

…それがとても嬉しかったんだ。


日々、「闘う」ことに手一杯で。
生傷が絶えない自分を加療することや、弱ってる時に友達に頼る術がぱっと思いつかなくて。
一人で沈みきるまでじっと待って、あとは上がるだけの力にいろんなものを預けてきたけれど。

私の「弱さ」を預かってくれる人もいるんだ。


そう思うと、気持ちが楽になった気がしたんだ。


いつか、きっと。
いろんなことで傷ついても。
痛みも喜びもすべて誤魔化さずに受け入れようと願う気持ちをもってはじめて、
本当に「誰か」を預かれるようになるのかな?


「心に重くのしかかってることを話したからと言って、事態が何も変わるわけじゃないから。
話して気が休まるわけじゃないから」

そう言って何も言わない竜樹さん。
そのくせ、私の些細なことはよく見つけてしまって。
私の隠し遂せられなかったいくつかの「弱さ」をそっと預かってくれる竜樹さん。
何処まで行っても、思考の果てには竜樹さんがいて。
彼の役にもまた、立ててないことに気が付いて落ち込んだけれど。


私の「弱さ」を預かってくれる、友達に出逢って。
いろんな友達から毎日、いろんな言葉や暖かな気持ちを貰って。
私の中でいろんなものが生まれている、今日この頃。

いつの日か、大切な人たちの「弱さ」をちゃんと預かれるようになって。
やがて、自分の中で大切な人たちと上手に向かい合えるようになったとき。
「言っても仕方ないんだ」と言ってすべてを飲み込んでしまう竜樹さんの「弱さ」もまた預かれるようになるんだろうか?


青い空を吹き抜ける風は、迷いや不安を飛ばしてくれるけれど、また新しい迷いや不安も連れてくるんだろう。
けれど。
それと同じ分だけ、暖かな何かもまた連れてきてくれるんだろう。


別れにへこむ気持ちと自分の中に潜む小さな枷を取ってくれた暖かな気持ち。


風は同時に連れてきてくれた。
毎日、いいことも悪いこともいろいろあるけど。
歩いていく先にいつでも暖かな気持ちが待っていることを。
信じながら、「今」を歩こうか?


そうして身に付けていく小さな力が、いつか私の大切な人たちに還っていきますように。
竜樹さんの心にもまた還っていきますように。


暖かな気持ちをくれる大切な人たちに「ありがとう」

弱さを受け止めてくれた友達に「ありがとう」


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