逆境の中で願うこと
2001年8月21日相変わらず朝もねむねむ。
外は雨が降っている。
理由もなく、機嫌が悪くなる。
会社に入ると眠気はピークで、コーヒーばかり飲んでいた。
頭の中で、どこか起死回生図りたい自分がいてるけど。
台風が近づいてて気圧がおかしくなってるからか、異常に増えてる湿気が原因なのか。
何となく投げやりな感じ。
仕事をしてても、何か頭の上を滑っていくようで。
かろうじて業務の流れを止めずには済んだけれど、やっぱり虚脱感が抜けない。
それに気がついていたのか、いないのかは判らないけれど。
ボスがやたらお軽くお寒いギャグを飛ばしたり、突然歌いだしたりする(笑)
かろうじて、ボスのやることに笑いながら突っ込みを入れられるだけの余力はあったようで。
顔をあげると、にぱっと笑うボス。
ボスとのやりとりで何とか一日繋いだ感じがした。
定時に会社を脱出できたから。
電気屋に行って買い足さないといけないものを買おうと、意気込んでチャリをかっ飛ばしたけれど。
駅に着いて、ふと柱を見ると張り紙ひとつ。
「台風の影響で電車が運休する可能性がございます。ご了承ください」
大阪くんだりまで出かけて、帰り台風のおかげで家に帰るのに随分時間がかかったり、帰れなくなって友達の家に厄介になったことを思い出し、仕方なく直帰。
出るのは、ため息ばかり。
意味もなく弱ってくると、胸の奥に押し込めてるものは一気にぶちあがってくる感じがして。
また、情緒不安定に陥りそうになる。
そのまま家に帰りたくなくて、バスに乗る前に本屋によって本を眺めてから帰ることに。
本屋を出て、移動してた時。
強い風が私の目の前を吹き抜ける。
その感じに、ふと頭を掠めたことに気を取られてしまった。
そして、何気に思う。
「…あ、だいぶ『左側』強く出てきてるな」
それは少し厄介なこと。
なぜなら、「弱ってますよ」っていうシグナルの一つだから。
弱ってくると頭を擡げること。
それは小さな予見。
その予見が意識の大半を占めてくると、非常にヤバい。
…竜樹さんとのことを否定的な側面からしか見られなくなるから
すし詰め状態のバスを降り、よろよろ家に帰ってのろのろ夕飯を取る。
つけっぱなしのテレビをボーっと眺めていると、「プロジェクトX」の総集編が始まる。
…この番組、好きなんだよね?
時間や家族の見たい番組との折り合いがついたときだけ見てるのだけど。
今日のテーマは「逆境を越えて」
いろんな人がいろんな困難を越えていく中で口にした言葉の総集編。
何とはなしに見ていた。
見ているうちに泣きそうになった。
小さな予見の大基は、私と竜樹さんの置かれている状況とそこから推し量られること。
私も竜樹氏も一緒にいるための未来のために自分にできることを精一杯やってるつもりだけど。
…ごめん、本当は。
常に現状の変化の度合いやその先のことに目を向けては、時々ひとり小さなため息をついている。
それができるのか、できないのかを見通して、ため息をついている。
情けない話なんだけど…
そんな私を竜樹さんは知らない。
竜樹さんの前で笑顔しか見せてないんだから、知らなくて当たり前。
だから、弱る私を支えるために「左側」がフォローに回る。
「誰がどう言おうとどう思おうと関係ねぇだろ?自分が走りたいように走りゃいいんだよ」
「誰が自分を好きでいようが嫌いでいようがどうでもいいことだろ?
本当に大事なのは竜樹氏だろ?一番大事なものを見落として歩いてんじゃないよ!」
「変えようとする意思のないヤツに、変えられる未来なんざ与えられるわけはないんだよ」
強い調子で心の内から飛び出す言葉に身を委ねてるけれど。
それを「本当に」自分のものに出来てないような感じがして、しっくりこない。
ぼけっと番組を眺めている私の耳に、こんな言葉が飛び込んできた。
「できるかできないかは考えない ただやるだけだ」
…あ、そっか。
足りないもの少し、見えた気がしたんだ。
最近の私は、私なりの一生懸命で向き合ってるつもりでも、どこかで「できる、できない」を無意識に選び取り、そこからルートを探してる。
基本的に「負けると判ってる勝負はしない」と公言して生きてきた私が何とはなしに身につけてたやり方だったけど。
竜樹さんと出逢ってから暫くはそのやり方は使わないようにしてた。
正確には、使うことを忘れていたんだけど。
竜樹さんと一緒にいることで生じた家族との軋轢も、前の会社でのことも。
竜樹さんの闘病生活のことも、すべて。
「できる、できない」だけで振り分けてたのでは、乗り越えられないことばかりだったから。
「できる、できない」以上に「竜樹さんと一緒にいたい」って気持ちを優先させてたから。
「未来の可能性」を予見するところまで意識がまわらなかったんだ。
…無我夢中でやること、どこかに忘れてきてやしないか?
そんな風に思いながら、ずっと番組を見てた。
たくさんの逆境を越えた人たちの言葉を少しずつゆっくり飲み込んでいった。
「逆境の中でやり遂げる執念が必要だ」
うん。そうだね?そうかもしれない。
共に在るといっても一緒にい続けることは「現実」だから、絵空事だけでやってけることだけでないことは十分判ってる。
けど、もう一度思い出しながら取り返しながら、歩いていかないといけない気がする。
自分が決めたことを叶えるための執念を取り戻そう。
実現するために自分の中に小さな嵐を呼び起こそう。
窓の外の強い風に煽られるようにそう思ったんだ。
「金岡は台風のようなヤツだよな?
台風の中心は晴れて割に穏やかだけど、一歩外に出るとすんごい勢いがあるやろ?
お前を見てるとな、何となくダメなもんでも勢い一つでひっくり返せるような気がするんだ」
かつて「あの人」が私にそう言ったことをふと思い出す。
「あの人」と一緒にいた頃は、誰のことも容れることなく自分の目指すもののためだけにその力を行使してたけど。
竜樹さんと一緒にいてから、少なくとも5年近くの間は、ただひたすらに一緒にいるためだけに頑張ってた気がする。
得られる結果よりも、傍にいる事実を大事に守ろうとしてたんだ。
ただ、それだけでよかったんだ。
今もまだ私の中に、そんな台風のような勢いはあるのだろうか?
今一度、自分自身と話してみよう?
こんな私を誰が好くとか嫌うとか、今は考えないでおこう。
ただ、「竜樹を好きな霄」としての自分自身のあり方だけを見つめよう。
逆境の中で、それでもなお手に入れたいと希うものを手に入れたいって気持ちだけに従ってみたいと思ったんだ。
外は雨が降っている。
理由もなく、機嫌が悪くなる。
会社に入ると眠気はピークで、コーヒーばかり飲んでいた。
頭の中で、どこか起死回生図りたい自分がいてるけど。
台風が近づいてて気圧がおかしくなってるからか、異常に増えてる湿気が原因なのか。
何となく投げやりな感じ。
仕事をしてても、何か頭の上を滑っていくようで。
かろうじて業務の流れを止めずには済んだけれど、やっぱり虚脱感が抜けない。
それに気がついていたのか、いないのかは判らないけれど。
ボスがやたらお軽くお寒いギャグを飛ばしたり、突然歌いだしたりする(笑)
かろうじて、ボスのやることに笑いながら突っ込みを入れられるだけの余力はあったようで。
顔をあげると、にぱっと笑うボス。
ボスとのやりとりで何とか一日繋いだ感じがした。
定時に会社を脱出できたから。
電気屋に行って買い足さないといけないものを買おうと、意気込んでチャリをかっ飛ばしたけれど。
駅に着いて、ふと柱を見ると張り紙ひとつ。
「台風の影響で電車が運休する可能性がございます。ご了承ください」
大阪くんだりまで出かけて、帰り台風のおかげで家に帰るのに随分時間がかかったり、帰れなくなって友達の家に厄介になったことを思い出し、仕方なく直帰。
出るのは、ため息ばかり。
意味もなく弱ってくると、胸の奥に押し込めてるものは一気にぶちあがってくる感じがして。
また、情緒不安定に陥りそうになる。
そのまま家に帰りたくなくて、バスに乗る前に本屋によって本を眺めてから帰ることに。
本屋を出て、移動してた時。
強い風が私の目の前を吹き抜ける。
その感じに、ふと頭を掠めたことに気を取られてしまった。
そして、何気に思う。
「…あ、だいぶ『左側』強く出てきてるな」
それは少し厄介なこと。
なぜなら、「弱ってますよ」っていうシグナルの一つだから。
弱ってくると頭を擡げること。
それは小さな予見。
その予見が意識の大半を占めてくると、非常にヤバい。
…竜樹さんとのことを否定的な側面からしか見られなくなるから
すし詰め状態のバスを降り、よろよろ家に帰ってのろのろ夕飯を取る。
つけっぱなしのテレビをボーっと眺めていると、「プロジェクトX」の総集編が始まる。
…この番組、好きなんだよね?
時間や家族の見たい番組との折り合いがついたときだけ見てるのだけど。
今日のテーマは「逆境を越えて」
いろんな人がいろんな困難を越えていく中で口にした言葉の総集編。
何とはなしに見ていた。
見ているうちに泣きそうになった。
小さな予見の大基は、私と竜樹さんの置かれている状況とそこから推し量られること。
私も竜樹氏も一緒にいるための未来のために自分にできることを精一杯やってるつもりだけど。
…ごめん、本当は。
常に現状の変化の度合いやその先のことに目を向けては、時々ひとり小さなため息をついている。
それができるのか、できないのかを見通して、ため息をついている。
情けない話なんだけど…
そんな私を竜樹さんは知らない。
竜樹さんの前で笑顔しか見せてないんだから、知らなくて当たり前。
だから、弱る私を支えるために「左側」がフォローに回る。
「誰がどう言おうとどう思おうと関係ねぇだろ?自分が走りたいように走りゃいいんだよ」
「誰が自分を好きでいようが嫌いでいようがどうでもいいことだろ?
本当に大事なのは竜樹氏だろ?一番大事なものを見落として歩いてんじゃないよ!」
「変えようとする意思のないヤツに、変えられる未来なんざ与えられるわけはないんだよ」
強い調子で心の内から飛び出す言葉に身を委ねてるけれど。
それを「本当に」自分のものに出来てないような感じがして、しっくりこない。
ぼけっと番組を眺めている私の耳に、こんな言葉が飛び込んできた。
「できるかできないかは考えない ただやるだけだ」
…あ、そっか。
足りないもの少し、見えた気がしたんだ。
最近の私は、私なりの一生懸命で向き合ってるつもりでも、どこかで「できる、できない」を無意識に選び取り、そこからルートを探してる。
基本的に「負けると判ってる勝負はしない」と公言して生きてきた私が何とはなしに身につけてたやり方だったけど。
竜樹さんと出逢ってから暫くはそのやり方は使わないようにしてた。
正確には、使うことを忘れていたんだけど。
竜樹さんと一緒にいることで生じた家族との軋轢も、前の会社でのことも。
竜樹さんの闘病生活のことも、すべて。
「できる、できない」だけで振り分けてたのでは、乗り越えられないことばかりだったから。
「できる、できない」以上に「竜樹さんと一緒にいたい」って気持ちを優先させてたから。
「未来の可能性」を予見するところまで意識がまわらなかったんだ。
…無我夢中でやること、どこかに忘れてきてやしないか?
そんな風に思いながら、ずっと番組を見てた。
たくさんの逆境を越えた人たちの言葉を少しずつゆっくり飲み込んでいった。
「逆境の中でやり遂げる執念が必要だ」
うん。そうだね?そうかもしれない。
共に在るといっても一緒にい続けることは「現実」だから、絵空事だけでやってけることだけでないことは十分判ってる。
けど、もう一度思い出しながら取り返しながら、歩いていかないといけない気がする。
自分が決めたことを叶えるための執念を取り戻そう。
実現するために自分の中に小さな嵐を呼び起こそう。
窓の外の強い風に煽られるようにそう思ったんだ。
「金岡は台風のようなヤツだよな?
台風の中心は晴れて割に穏やかだけど、一歩外に出るとすんごい勢いがあるやろ?
お前を見てるとな、何となくダメなもんでも勢い一つでひっくり返せるような気がするんだ」
かつて「あの人」が私にそう言ったことをふと思い出す。
「あの人」と一緒にいた頃は、誰のことも容れることなく自分の目指すもののためだけにその力を行使してたけど。
竜樹さんと一緒にいてから、少なくとも5年近くの間は、ただひたすらに一緒にいるためだけに頑張ってた気がする。
得られる結果よりも、傍にいる事実を大事に守ろうとしてたんだ。
ただ、それだけでよかったんだ。
今もまだ私の中に、そんな台風のような勢いはあるのだろうか?
今一度、自分自身と話してみよう?
こんな私を誰が好くとか嫌うとか、今は考えないでおこう。
ただ、「竜樹を好きな霄」としての自分自身のあり方だけを見つめよう。
逆境の中で、それでもなお手に入れたいと希うものを手に入れたいって気持ちだけに従ってみたいと思ったんだ。
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