笑顔の裏側

2001年4月20日
朝から何だか熱っぽい。
風邪薬ひとつ飲んで、会社へ行く。

今日の昼休み、電気の点検のために全社的に停電なる。
パソコンの電源が入らないということは、先輩とゲームすることは出来ない。
昨日先輩にその旨を伝えたら、
「明日どうやって時間を潰そうかな?」と言ってはった。
私の方は先輩が上がってくるまでの間、パソコンで日記の本文を作ってるからそれをどうするかで頭が一杯。

…そうだ、どうせゲームできへんのやったら、メモ用紙に日記の本文を書こう。
いつもよりはたくさんの時間が取れるし。

ただ、単純にそう考えてた。


昼休みになって、いっせいに電気が消える。
窓は書類棚でほとんど塞がれてるために、非常に暗い中で昼食を取る羽目になる(>_<)
それでもとっとこ食べて、下書きを始めた。
しばらくして部屋の中が一瞬明るくなったと思ったら、非常階段から先輩が入ってきた。

…え?パソコンの電源入らへんって昨日言ったやん?

そう思ったのが、口をついて出てしまった。

「先輩、何しに来はったんですか!?」

先輩は目を丸くして聞き返す。

「…何で、怒ってるねん!?」
「怒ってませんよ。でも、パソコンの電源入らへんって言ったじゃないですか?」
「俺、来たらあかんかったんか!?」

…この人、何をこんなにムキになってるんやろ?

不思議に思ってると、ボスが声をかける。

「金ちゃんもそんな怒らんと。お前(先輩を指して)も『金岡さんとコミュニケーションを図りに来たんです』くらい言えよ」

…そのフォロー、何かヘンじゃないです?


先輩はむっとしながら差し出した本を話しながら見る。
そのうち点検が済み、パソコンに電源が入れられるようになって、先輩はゲームを始める。

「ちょっと言い過ぎたのかな?」

そう思って、いつもなら自分の用事をするのに、珍しく先輩がしてるゲームを見てる。

ゲームの中でご飯を食べるシーンがあって、その効果音の表現がちょっとえっちい感じだったんだ(爆)

「食事ネタでそんなえっちい音の表現すんなよぉ」
ぼそっと呟いてしまった。
すると先輩、一言。
「別にえっちな表現でいいんじゃ!」

…はぁ?何を突っかかってんねん?この人?

訳判らなくて、「食事とえっちと一緒の音はいややよぉ」って言ったら…
「女はなぁ、えっちでええねや!」と返ってきた。

…かちんときた。

「仕事を離れてる私に命令口調で話していい男は、私の父親と竜樹だけや!」

私の奥底で眠ってる、「もう一人の霄」がそう言って目を覚ます。

「…私は私の美意識に基づいて生きとうねん。
 そこに触るようなヤツ彼氏になんてせぇへんし、
 誰であっても蹴っ飛ばしたるわ!」

気が付くと、そう口にしてた。
…先輩は黙ってしまった。

午後の始業時間が迫り、ゲームも終わってしまった。
「来週から何をしますか?」
そう聞いたら、
「特にやりたいものがなかったら、暫く休憩するか?」
いつもなら「あれをやろう、これをやろう」という先輩がそう投げやりに言った。

私の何がそんなに悪いの?一体、何なん?

…考えるのに疲れてしまった


「霄はそこいら中でぼーっと笑顔を振り撒きすぎやねん!」

竜樹さんと同じ職場にいた時、そう言って怒られたことがある。
実際、楽しい会話なら何も考えずに笑って聞いてるところはある。
そのせいで、ヘンな誤解されて竜樹さんの部下に追いまわされて、随分怒られたんだ。
「人の中に『裏』があることを見なさ過ぎだ」って。

…でもね、
あまりに思惑めいたものが見えすぎてるときは、「決まった人がいます」って言えばいいけど。
会社で、しかもボスがいる前で、相手が自分を「そういう風」に見てるって根拠もないのに、いちいち釘を刺す訳?


…もういろんなことを考えずに「私は竜樹さんのものです」って言ってまわりたい


この会社で竜樹さんのことを話したら、いろいろ厄介なことがある。
うちの部内は(結婚を前提に)付き合ってる人ができたり、結婚したり子供が出来たりすると、ボスの家に連れて行って「お披露目」せんなん(爆)
しかも、ボスは影で結構ひどいことを言う人なんだ。
「できちゃった結婚」した社員さんのことも「あんな順序違いなことをするのは常識がない、最低や」って平気で切り捨てる。

…いやなんだ。

そんな人の前に竜樹さんを引きずり出して、言いたい放題言われるのは。
「霄」にではなく、「竜樹」に対して言われるのなんて、絶対にヤなんだ。
だから、竜樹さんのこと隠してるのに…

でも、周りの思惑にたきつけられるようなカップリングされるのも、へんな誤解されるのも気持ちの押し付け受けるのもヤなんだ。
それをどうやってやり過ごしていいのか、判らない。
体がちゃんとしてたら「ほっといたらいいわ」って片付けられるのに…


頭の中がぐちゃぐちゃのまま仕事を片付け、会社を出た。
まだ考えは同じところを巡る。
このまま考え続けても、いい考えなんて浮かぶはずもない。
また、竜樹さんとの結婚を「何かから逃れるため」の手段としてしか考えなくなりそうで、とてもイヤだった。

…ごめんね、竜樹さん

心の中で謝った。
言いようのない不安な気持ちと切ない気持ちで一杯になる。

…竜樹さん、竜樹さん、竜樹さん、竜樹さん………

気が付いたら、竜樹さんの名前を心の中で呟いてた。
そんなことしたところで何が変わるわけでもないのに、何度も何度も竜樹さんの名前を繰り返した。


突然、「初恋」の着メロがお弁当鞄から鳴る。

…竜樹さんだ

バスの中だと判るとすぐに電話を切ってしまいはったけど、
竜樹さんの声を聞いた途端持ち直した気がした。

家に帰って、再び竜樹さんと話す。
「今日はすんごい冷え込んだから、もう話せないんだと思ってたよ」
「…いやなぁ、霄がどうしてるのか気になったからさぁ…」

…こんな言葉、久しぶりに聞いた気がする。
この人の声と何気ない言葉がどれほど私に安心感をくれるか。
笑顔の裏側に潜む漣だった気持ちを抑えてくれる、そんな気がするんだ。
竜樹さんってやっぱり私にとっては必要な人なんだ。
この人でないとダメなんだよね。
改めてそう思ったんだ。


竜樹さんにとっても私がそんな人でありますように。
いつかそんな人になれますように。

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