今日は快晴。
竜樹さんの体調、今日はマシかな?
今日こそは話せるといいんだけど…

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あれからずっと気になってたんだ。
あの時、颯くんは何を言おうとしたのか?
それを聞けばよかったのか、聞かなくてよかったのか?
ずっと考えてたんだ。
けれど、そのあとちょっとした事情で金岡家の電話番号は変わってしまったし、
私も敢えて颯くんちに電話しなかった。
颯くんのいるバイト先にも足を向けなくなってしまった。

何となく、気まずくなりそうだったから。
動けば「何か」が始まったかもしれない。
「何か」が終わったかもしれない。
いつも白黒はっきりつけたがる私の心の中に、靄がかかったみたいな状態だったんだ。
靄の正体が「躊躇い」であることに気がついたのは、随分たってからだったけど。

…それにね、本当は判ってたんだ。
もしも、颯くんが気持ちを差し出してくれてたとしても、私はそれを受け取ることなど出来なかったんだと。
彼と私が共通して歩いてきた道程にはりっちゃんがいる。
二人が何気に友達時代の過去を振り返るとき、そこには必ずりっちゃんがいる。
二人の中に「りっちゃん」を見る時、必ず心冷える時間が来ることを。
あの時の私では心冷える時間に勝てはしなかっただろうことを。

…どうしようもないほどに判ってたんだ。

結局、彼の中にいる「りっちゃん」という名の過去に勝てずに、大切な想いを手放してしまったんだ。

その心の痛さは、ずっと消えることはなかったんだ。

…竜樹さんに出逢うまでは


「身体に触らせてくれへんから」っていう理由で長い時間かけて暖めた恋が破綻したこと。
心閉ざし続けて、やっと心開こうと思った人が現れたときには、手遅れだったこと。
大切な人の過去に勝てずに大切な想いを手放したこと。
不思議なことに、どの場面にも「雨」が降ってたんだ。
自分にとって悲しいことや間違ったものを選択する時に必ず雨が付き纏ってるような気がする。

…だから余計に雨が降るのは嫌いなんだ。

ただ…

竜樹さんと初めて互いの全てを分け合った日、
竜樹さんに「これからもずっと一緒にいよう」って言ってもらえた日。
実はこの時も雨が降ってたんだ。
竜樹さんと一緒にいる過程で大きな変化が加わる日にも雨は付き纏う。

…竜樹さんとの距離が縮まったことも、もしかして「間違い」だった?

そうは思いたくはないけれど…

でも、今降り注いでる雨を「間違いを選択しちゃう雨」ではなく、
「心の中の何かから卒業することを選択できた雨」にできたなら、
もう少し物事を動かすことに怯えずに済むんだろうか?
臆病だった自分を笑えるようになるんだろうか?


…颯くん
いつかね、晴れた日にまた逢えたらいいな。
何を話したらいいか、また迷うんだろうけどね。
私ね、颯くんのことがずっと好きだったんだ。
笑顔独り占めにしたいと願った数少ない人だったんだ。
今ごろはっきり判ったってどうしょうもないけどね(^^ゞ
最後に出逢った日、颯くんが何を言おうとしてたかずっと気になってたけど、
本当は颯くんが言いたかったことじゃなくて、自分の気持ちにきちんと決着つけれなかったことがずっと気になってたのかもしんない。

ずっとずっと颯くん一人しか愛せないと思ってたよ。
もう周りが命ずるままの生き方しかできへんって思ってたよ。

でもね、やっと出逢えたんだ。
隣にいてて安心できる人。
肩越しに颯くんの笑顔を見ずにすむ人。

すごくね、すごく大切な人なんだ。
最近はその人の期待になかなか添えなくて失望させてばかりだけど、
それでも自分の中でいろんなものを越えていこうとする気持ち、ちゃんと持てるようになったよ。
どんな結果が出ても後悔しないほど、いろんなことを変えていける力くれる人。
私の心がまだ愛情を生み出せると教えてくれる人。
私、ちゃんと見つけたから。

いつか、暖かな日に私たちがあの日別れてから互いにどんなことがあったか、話したいね。
二人が別れた雨の日から颯くんの心に私がずっといてたとしてもいてなかったとしても、
それはそれとしてきっと受け止められるって気がするんだ。
颯くんもきっともう「誰か」見つけちゃってるんだろうし、
あの時の若さを笑うことくらいはもう出来るような気がするのね、お互いに。


「今ごろあなたは何処で 何して暮らしてるのか
 淋しくなるとふと何故か思い出す横顔
 恋のままだから きっとよかった思い出なのかな
 触れ合う指先がほどけてしまったから

  My soul is still alive

   どんなに月日が流れても
   胸の奥で奏でている あなたへのrhapsody
   見つめていたよ いつもあなたを 
   輝いてた笑顔も意地悪も
   どうしてなの 言えなかった
   愛してたのはあなただけなのに


失うものなど本当は何もなかった頃に
隠した宝物はもう見つからないけど

 My soul is still alive

  どんなに時代は変わっても
  胸の奥に息づいてる あなたへのemphathy
  あなたの明日と私の明日が
  重なるその日はもう来ない
  だけど優しい気持ちで言える
  愛してたのはあなただけなのと

My heart is still with you

愛してたのはあなただけだから  」


…私の大好きな歌。
いつか竜樹さんのことも同じように歌に乗せて流れていってしまうのかもしれないけど…
でも、もう間違えないから。
このフレーズ聞いて切なくなるのはもう颯くんのことだけで十分だから。

…いつか笑いあって話そうね。
二人で笑って語り合って、想い出を送り出そうね。


…気が付いたら、雨が上がってた
また、「竜樹の霄」に戻ろう。
心の痛みの元の部分にある、大切な想いにまた蓋をした。

…そして、「現実」に戻った。


山のように降ってくる仕事をこなしてると、隣の席のいすの上においてるお弁当鞄の中で携帯が揺れてる。

「仕事、何時に終われそう?
 迎えに行くわ、早く帰る用事ある?」

…竜樹さんだ

「あと30分ほどしたら終わるから。早く帰る用事はないよ」

そう返して、仕事を片付けた。


…なんて日だろう。
颯くんのことを自分の中で決着つけられた日に、竜樹さんに逢えるなんて。
これは、「颯くんからのプレゼント」って思っていいのかな?

「昔のことに捕らわれずにやってみろや。今度は間違えるなよ?」

…うん、大丈夫やよ、間違えないからね。

何処にいるとも知れない颯くんにそう返して、竜樹さんの許へ向かった。


…この先、私が歩いていく道程がどんなものであったとしても、もう私は私自身に嘘をついたりしないからね。


「ありがとう、颯くん。またね」

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