6回目の春

2001年3月29日
外に出ると空は鈍色だった。
今にも雨が降り出しそうな気配。

「…あ。今日も竜樹さんの背中痛くなるんだろうなぁ」

そう思うと、ため息ひとつ。


今日は竜樹さんと一緒にいはじめて迎える6度目の春。
どうせなら会社なんて行かずに、2人で向かい合って過ごしたかった。
でも、こんな空模様じゃ竜樹さんの調子は悪いんだろうし、私の体調も今ひとつだから会っても暖かな気持ちには程遠い空気ばかり流れるんだろうな。
だとしたら、竜樹さんに会えずに会社に行くのもいいのかもしんない。

…そう思うと、またため息ひとつ


今までこの日を迎える時、どんな気持ちでいたんだろうか?
何気に振り返ってみたりする。

1年目は、両親の猛烈な反対を受けてたから「よくもったなぁ」って感心しきり。

2年目は、竜樹さんが倒れてしまってそのことだけで精一杯だった。

3年目は手術に向けて入退院を繰り返してる竜樹さんのフォローで精一杯。

4年目は、竜樹さんの手術が終わったものの回復が思わしくなくて、その後の対応考えるのに精一杯。

5年目は、竜樹さんの健康状態は安定しつつあったものの、竜樹さんの気持ちも私の気持ちもどことなくささくれ立っていて、喜んで迎えるような気にはなれず。
本当に次の1年どうなるんだろうと不安だけが強かった気がする。

…そして、6年目。
直前に喧嘩を買ってしまって、それを修復できないまま迎えてしまった。


昨日、「明日で6年目の春を迎えるよ」ってメールを送ったけれど、
竜樹さん、ちゃんと読んでくれたんだろうか?
メールの返事がこなかったから、再び約束(?)破って携帯に電話入れたけれど、出てはくれなかった。

昨日も昼間に雨が降ったから、竜樹さんがしんどくなったとしても別におかしくは無いけど、
今はそれを100信じることが出来ない。

…本当に私が隣にいててもいいのかな?

竜樹さんにきちんと答えてもらえなければ自力で進んでいけない自分が情けないとは思うけれど…
二人で一緒にいるようになった日にすら気持ちを割けないくらい、体調悪いのかな?
それとも本当は関係を維持なんてしたくなくて、私からエンドマーク出すのを待ってるのかな?
一緒にいられたことが何より大切なことのはずなのに、空模様に引っ張られるように心まで鈍色に変わっていく。

「…今晩はちょこっとだけでも、声が聞けたらいいな」

私も本調子じゃないから、会社帰りになんて会いにはいけないし、
行ったところで風邪を感染しちゃったら竜樹さんに迷惑かけるから。
そんな真似はしないけれど…
せめて、二人で何かを話せたら、「一緒にいられたんだ」って想いを共有する時間が少しでも取れたら、
また気持ちを持ち直して歩いていけるかな?
そう思った。


仕事帰り、「竜樹さんメール」を一つ。

「今日は暖かいですね。お元気ですか?
今日は6周年記念日。お付き合いいただいてありがとうm(__)m
もし、お嫌でなければ、引き続きよろしくお願いします」


…返事は返ってこなかった。

「今日も背中が痛いのかな?」

そう思って空を見上げると、雨が降ってきてた。

「今日はもう話せないだろうなぁ…」

空を見上げてまたため息一つ。


この1年間どうだったんだろう?

年始にパソコンを買って竜樹さんの病気について調べようと感じるほど、
その当時は竜樹さんの体の調子は思わしくなかったけれど。

何気に診察してもらった病院で装具を変えてもらったら、長時間体を起こしたり歩いたりできるようになった。

とても嬉しかった。
竜樹さんの顔に少しだけ笑顔が増えた。
申し訳なさそうな表情が少し減った。

…でも、お互いに我儘が増えた。
互いが互いに勝手な理想押し付けて、叶わないと不満げな態度とってみたり。
思い遣りが減った気もした。

でも、「二人で歩いていこう」って確かめ合えた。
いいこと悪いこといろいろあっても、二人は並んで歩いていくんだと決めたんだ。

…なのに、直前で大喧嘩。
二人のわだかまりが解けたかどうかよくわからない状態で「6回目の春」はやって来た。

私たちは何処に行くんだろう?
7回目の春は二人で迎えられるんだろうか?
今までは「二人の前に立ちはだかる困難を共に切り抜ける」のが課題だった。
今年は「二人の中にある我儘」と向き合うのが課題になりそう。

「互いの我儘」を自分の「正義」で封じあうのではなく、
「互いの我儘」をなるだけ「愛しいもの」として受け入れたい。

とてつもなく難しい課題だって思う。
でも、これを越えたら無敵の二人になれるって、
理由もなくそう思ったりするんだ。


…まずは仲直りから始めないといけないんだろうけど…

「本当に『仲直り』なんて出来るのかな?」

湿気を含む空を見上げてそう呟いた。


「そらちゃんが頑張っているのは彼も解ってるんだから自然と伝わっていくものだよ。
相手のことを考えていなかったら、5年も続いたりしないよ。
惹き合いながら、歩いてきたんだもの。
彼にとって、かけがえのない人になっているはずだから
手放してはいけないよ、それはいつでも出来るんだから。」


私が憧れてやまない人がそう励ましてくれた。

竜樹さんが本当にそんな風に私の気持ちや存在を受け取ってくれてたらいいけれど…

「私の差し出す気持ちや私自身をなるべく形を変えずに受け留めてくれたらいいな」

今はたまらなくそう願っているんだ。

…そしてもっと願ってやまないこと。

「竜樹さんの背中が痛くならないように、暖かく穏やかな天候が続きますように…」


今週末会えたなら、思い切り竜樹さん甘やかしてあげようかな?
素直な「ごめんなさい」がでなかったら、そうしてみようかな?

…それよりもっと伝えたいこと。

「いいことも悪いこともいろいろあるけれど、これからもずっと二人で歩いて行こうね
 7回目も8回目もずっとずっと二人で『一緒にいれるようになった春』を迎えようね」


伝える機会だけでも、与えてもらえますように。
どうか竜樹さんを手放さずに済みますように。

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