Clackked Moon

2000年12月22日
部屋に戻ってから、夜店で買ったものを食べたり夜景を眺めたりしながら、二人でゆっくり話をした。
そのうち、話の成り行きから「一緒にいること」について話し合うことになる。

ここんとこ、私は小さな疑問を抱えていた。
最近、何かと竜樹さんに怒られる。そんなに怒り散らさなきゃならないようなヤツと何で未だに一緒にいてるのか、私には判りかねた。
「やっぱり、一緒にいた時間に対する贖罪のつもりなんだろうか?」
思い切って聞いてみることにした。

「何で四六時中怒ってなならないような人間と一緒にいたいと思うのか、その理由が私には判りません。一緒にいてくれるのは、それまでいた時間に対する贖罪ですか?」

その答は、喜んでいいものかどうかわからないようなものだった。

「俺は情に流されない性質やから『贖罪』なんかじゃない。もし、お前の両親が『長い時間、娘を縛りつけた責任を取れ』って捻じ込んできても、『何度も別れようって言ったのに、それでも一緒にいつづけたのは娘さんの判断なんだから、俺は責任なんて取らない』って言うで」

…贖罪ではないのはありがたいけど、そういう言い方されると、何か引っ掛かかるよなぁ。

「それじゃあ、どうして私とずっと一緒にいようって思ったの?」

「お前の『血統』がいいからや」

それがこの件に関する彼の答だった(゜o゜)
彼曰く、(私の話を聞く限りでは)私の父も母も優れてるらしい。親から受け継いだ素養を育てて、私の芯の強さと合わせたら、2人は必ずよい方向に向かっていけるのだと。その可能性を信じてるからなのだと。

…それでは何ですか?
私があなたの言う「素養のない」両親から生まれた子だったら、あなたの傍にいてる価値はないってか!?
今、一番私たちの障害になってる連中のおかげで、私はあなたの傍に置いて頂いているのだと?


「それじゃあ、私の存在価値は『血統』にしかないってことやんね」

そう搾り出すように言うのがやっとだった。

「アホか、お前は?俺の言葉の裏を読まずに表の部分だけ上げ連ねてそういう風に解釈するようなバカじゃ話にならない」

そう言い放った。

言葉の裏なんて判る訳ねぇじゃん?
何も言わずにいつでも真意なんて取れるなら苦労しないよ!?
『血統』のよさって言葉の裏にあるものって何よ、それ?あなた流の解釈なんて、話さなければ判らないよ。
そう言い返すのすら空しくなってきた。


「私はあなたとこれからもずっと一緒にいたいって思っています。だけど、このままずっと怒られつづけたり、一生自分を折り曲げつづけなければならないなら、あなたのプロポーズを受け入れるかどうか迷ってしまいます」

言っていいかどうか判らなかったけど、自分の思ってることを正直に伝えてみた。


「お前が迷ってるなら、ご両親になんて話す必要はない。俺は他にもしないといけないことが沢山あるから、伴侶が決まらないままでも、俺はするべきことを片付けていく」

と彼は真っ直ぐな目をして言った

「だけど、俺が(お前のすることに対して)怒る以外にお前にしてることをトータルして考えてもらったら、俺がどれほどお前を大切に思ってるか、判ってもらえると思うけど…」

そう付け加えて、彼はバスルームに消えた。


私はベッドの上でひとしきり泣いた。
彼の言葉の裏が読めないために、私は置いていかれるのだと。
今までのように振り返って待つことなく、どんどん自分の意思に従って歩いていってしまうのだと。
私が何を言っても曲げないと決めたら自分の考えを曲げることのない人。
…もう何を話しても折り合いなんてつけようないんだ。

彼の言うように「怒ること以外に私に対してしてくれたこと」思い返したら、自分を立て直すことも彼が言う「大切に思ってる」ことも理解できたかもしれない。
でも、心が塞がってる時は、悪いことばかり飛び込んでくる。

これで本当に終わりなんだ。

そう思うと、涙が止まらなかった。

彼がお風呂から上がってきた後、私はバスルームでも泣いた。

「どうしたらずっと一緒にいられるんだろう?」
「どうやってこの恋に幕を下ろしたらいいんだろう?」

二つの考えを行きつ戻りつしてるうちに、時間ばかりが過ぎていった。
冷めていくお湯の中で眠ってしまいそうだったので、目の赤いのが引くのを待って、寝室へ戻った。


「もう寝ようか?」

何事もなかったように声をかける竜樹さんの言葉を受けて、私も眠ることにする。

竜樹さんの方を向くと辛くて涙が出そうだったので、彼に背を向けて寝ようとしたら、彼が私の方に手を差し伸べてきた。
抵抗することなく近寄ると、ぎゅっと抱きしめてくれた。
「甘いなぁ」と思わない訳ではなかったけど、彼の言う「言動の裏」を読むと、これは彼が甘える時や許してほしい時のサイン。
キツイ事を言ったなぁって、ちったぁ気にしてくれてたんだろうか?
結局、彼を撥ね付けることも出来ず、されるがままになってしまった(爆)


とりあえず、少し時間を貰おう。
彼が待っててくれなくて、私以上にいい女性見つけたら、その時は自分なりの決着をつけよう。

「俺がどれほどお前を大切に思ってるか、判ってもらえると思う」

それをきちんと理解できるよう、もう少し時間をかけて見つめ直してみよう。


…まだ暫くは、心に入ったひびは癒えそうにないんだけれど

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